No.418783

魔法少女リリカルなのはStrikerS00(仮)--08 金色の願いとは?--

ケイさん

再び魔法少女の世界へ降り立ったガンダムマイスター刹那・F・セイエイ。イノベイターへと変革した刹那に訪れる再会と新たなる出会い。魔法少女リリカルなのはA's00~とある日常~(仮)の設定を踏まえたクロスオーバー作品です。読みづらい、誤字脱字等の至らないところが多々あると思います。作者の原作知識は、それほど高くありません。また、オリジナル設定が含まれておりますので、原作を大切にされている方はご注意ください。

2012-05-05 21:08:22 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:12381   閲覧ユーザー数:11412

導入部八話目です。

--金色の願いとは?--

 

朝食を終えて、なのはが出勤するまでの僅かな時間を二人で寛いでいた。

「今日は午後からフェイトちゃんと模擬戦をするんだって?」

「ああ。先日、連絡を受けた時に模擬戦の約束をしたら、今日がいいと言われた」

「そっか。でも、フェイトちゃんとは何度も模擬戦をしたことがあるんだよね?」

「したと言っても【闇の書】の前だからな。カートリッジを組んだ後のフェイトとはまだ一度も無い」

「勝てそう?」

「どうかな。元々フェイトはスピード重視の万能型だが、カートリッジによる更なるスピードアップ……ソニックと言ったか、あれになられると俺でも対処しきれるか分からないな」

「刹那君には切り札(・・・)があるでしょ?」

なのはが言う切り札とは、TRANS-AM(トランザム)のことだ。

一時的に機体性能、この世界では自身の能力が上昇するまさしく切り札とも言えるものだ。

「あれは負担が大きすぎる。そう易々と使うものではない」

これは建前だ。

負担があるのは確かだが、あまりなのは達の前でトランザムを見せないためでもある。

「そうなの?」

「ああ。ところで、そろそろ時間ではないか?」

壁掛け時計を見てなのはに言う。

「あ、本当だ。……はぁ~、もうちょっとのんびりしたいなぁ」

「……すまない」

「え?なんで刹那君が謝るの?」

「いや、ただでさえ忙しいだろうに俺が居候しているせいで、余計に手間をかけさせているだろう?」

「そ、そんな。刹那君の所為じゃないよ。私が言っている『のんびりしたい』って言うのは、その……え~と……」

何故か指を弄りながら俯いてしまった。

「?……俺に出来ることがあれば遠慮せずに言ってくれ。協力する」

「う、うん。ありがとう。あ、そろそろ行くね」

そう言うなり、急に立ち上がって自室へ向かうなのは。

「なのは、あまり慌てると……」

ガンッ!

「い、痛い……」

「……」

足の小指をテーブルの脚にぶつけて、涙目になっていた。

 

なのはが作っておいてくれた昼食を済ませ、ニュースを見ていた時だった。

《マスター。バルディッシュから連絡が入りました。まもなく、こちらに到着されるそうです》

「そうか」

暫くすると、ピンポーンと呼び鈴がなった。

玄関のモニターを見て、フェイトの姿を確認する。

例えフェイトが来ると分かっていても、迂闊にドアを開けて出たりはしない。

理由はただ一つ。

エースオブエースが住まう部屋から男が出てくる所を見られないようにするためだ。

外出する時や、戻る時はかなり気を配っている。

ドアロックだけを解除し、フェイトに念話をする。

(いいぞ)

ガチャ、とドアノブを回す音がしてドアが開く。

「刹那、迎えに来たよ」

「ああ」

「出掛ける準備は?」

「既に出来ている。いつでもいいぞ」

「うん」

肯くと、一度周りを見てから「大丈夫だよ」と。

その言葉を聞き、玄関から出る。

 

マンションの駐車場へ行くと、黒い車が停まっていた。

「これは……」

「私の車。地上での移動手段として」

助手席に座り、フェイトに尋ねる。

「どこへ行くんだ?」

「まずは転送ポート。そのあと、本局」

「本局?」

「本局の訓練室を貸し切ったから」

「そうか。ところで、フェイト」

「なに?」

「昼は食べたのか?」

「え?」

「時間的に食べる時間があったとは思えなくてな」

午前中は仕事だと言っていた。

なのはの部屋に来たのは午後1時を少しまわったところだった。

食事をとった時間があったとは思えない。

「実は……まだ。刹那は?」

「済ませてある」

「そっか」

「転送ポートか本局に着いたら食事をしておけ、模擬戦をするのだろう?」

「うん」

 

本局に着いてからフェイトが遅めの昼食を済ませ、共に訓練室へ向かった。

「ここが今日使う訓練室だよ」

中へ入ると、かなり広い訓練室だった。

「随分広いな」

「特別訓練室だからね」

「特別訓練室?」

「地上と違って、なかなか広いスペースってないんだけど、狭いと空戦魔導師は思い切り動けないからね」

「それで、特別に広く作ってあると」

「そう」

「フェイトさん」

「シャーリー」

制御室から眼鏡を掛けた女性が出てきた。

「彼女は?」

「私の副官だよ」

「はじめまして、シャリオ・フィニーノです。刹那・F・セイエイさん」

「俺のことを?」

「フェイトさんからお聞きしています」

「フェイトから?」

「そりゃあ、もう。毎日……」

フェイトが慌ててシャリオと名乗った女性の口を塞いで笑っている。

「あ、あはは……」

「む~……むぅ~!」

「……そろそろ離してやれ。苦しそうだぞ」

「はっ……ご、ごめんね」

「ぷはっ……大丈夫です」

「シャリオ・フィニーノは見学か?」

「シャーリーで構いませんよ。見学もありますけど、実は私も機動六課へ参加するんです。ですから、丁度いい機会でしたので挨拶をしておこうと思いまして」

「そうか」

「それに、シャーリーは六課でのデバイスメンテナンスも担当するんだよ」

「デバイスを……もしかして、デバイスマイスターか?」

「はい。それから、マリエルさんから、刹那さんのデバイス。【エクシア】が凄いって聞いて!だから、見てみたいなって!」

シャリオ・フィニーノが祈る様に手を組んで、目を輝かせながらこちらを見てる。

「……解析はさせないぞ」

「分っていますよ。それにしてもフェイトさん……」

シャリオが少し困った様な顔でフェイトの方を向く。

「なに?」

「休まなくて大丈夫ですか?ここのところ働きっぱなしですよ?」

「大丈夫だよ」

「休んでいないのか?」

「あ、うん」

「刹那さんからも言ってくだいよ。フェイトさん全然休みを取らないうえに、今日だって午後は休みのはずだったんですよ」

シャリオの言葉を聞いて、何故今日なのか理解した。

忙しい仕事の合間にできた休み。

それを今日の模擬戦にあてたのだ。

「休める時に休むことも大事なことだぞ」

ため息混じりにフェイトに言う。

「それは、分かってるよ。でも、私にとっては……」

そこでまで言って俯いて黙ってしまった。

と、フェイトの言葉を引き継ぐような形でバルディッシュが話始めた。

《主にとっては、たとえ模擬戦であったとしても貴殿と「バルディッシュ!!」……失礼しました》

「?」

バルディッシュの言葉はフェイトに遮られた。

いったい何を言おうとしたんだ?

《マスター……分かりませんか?》

「ああ。お前は分かるのか?」

《ええ。バルディッシュは「エクシア」……失礼しました》

エクシアの言葉は、再びフェイトに遮られた。

 

「さて、フェイト。早速やるのか?」

「そうだね。シャーリーは制御室へ行ってくれるかな?」

「はい」

フェイトに言われ、制御室へ向かうシャリオを見届けて室内の中央へ向かう。

「刹那」

「どうした?」

「ただ模擬戦をしてもつまらないし、何か賭けない?」

「賭け?」

「そう」

「お前がそんなことを言うのは珍しいな」

「変かな?」

「いや。しかし、俺は賭けられるような物は持っていないぞ」

「物じゃないよ」

「なら……」

「え~と、ね」

「?」

今朝のなのはと同じ様に、少し俯いて指を弄っている。

「その、負けた方が勝った方のお願い……言うこと聞くっていうのはどうかな?」

「……俺が勝ったら、お前は俺の言うことを聞くというのか?」

「う、うん」

「その逆もある、と」

「ど、どうかな?」

「いいだろう」

「本当?」

「ああ」

「それじゃあ、勝利数が多い方が勝ちね!」

先程までの俯き加減が嘘の様に明るくなる。

「勝利数……1戦だけではないのか?」

「勿論!まずは、3戦。2勝した方が勝ちだよ」

「……」

 

「バルディッシュ・アサルト」

《セットアップ》

金色の光がフェイトを包みこむ。

《バリアジャケット・インパルスフォーム》

現れたフェイトの姿は、以前の服装(ジャケット)とはかなり変わっていた。

黒を基調とした軍服を連想させるような。

左手と足には金属の防具。

白いマント。

ツインテールと黒いリボンは変わっていなかった。

そして、右手には戦斧【バルディッシュ】。

「それが、今のお前の姿か」

「うん」

「……エクシア」

 

刹那が青と白を基調とした鎧を纏う。

修復の時に見たのと同じ、新品の鎧。

右腕には、刀身が折り畳まれた武器。

確か、GNソードって言ってた。

左腕には、盾。

GNシールドってところかな?

『フェイトさん。刹那さん。準備はよろしいですか?』

「うん」

「ああ」

『それでは』

バルディッシュを両手で持ち構える。

刹那も刀身を起こして構える。

『レディ……ゴー!』

 

開始合図と共に両者が互いに突進しながら、武器を振りかぶる。

金属がぶつかり合う甲高い音が室内に響き渡る。

右腕をそのまま力を込めて振り抜くとフェイトが後方へ飛ばされる。

「……っ!」

態勢を立て直す前に、一気にたたみかける!

刀身を起こしたまま距離を詰め、再び武器がぶつかり合う。

今度はフェイトも力を込めて互いに後方へ飛ぶ。

「プラズマランサー」

《プラズマランサー》

六つの金色の球体が出現する。

「ファイア!」

フェイトがバルディッシュを向けた瞬間、高速で帯電した矢が飛んでくる。

反射的に右に避けると、全ての矢が後方の壁にぶつかり爆発する。

「速度はなのはのシューター以上だな」

 

「ファイア!」

高速で迫る帯電した矢を刹那が避ける。

「避けられちゃったね」

1、2発は当たるかと思ったけど。

《この距離で回避するとは……かなりの反応速度ですね》

「だね。でも、まだまだ始まったばかりだよ。カートリッジロード」

《ハーケンフォーム》

ガシュ、と音がすると鎌の様な形になり魔力刃が出現する。

ハーケンフォームのバルディッシュを力強く握って、高速で刹那に向かう。

「はあああぁぁぁ!」

「くっ!」

振りかぶった刃は、刹那が瞬時に後方へ下がったことで、空を斬る。

刹那は右腰から何かを引き抜くと、ピンクの刃が出現した。

「あれは、ガジェットを切り裂いた武器?」

魔力で形成された刃みたいだけど……。

AMFを持つガジェットを魔力で切り裂くとなると、かなり高い魔力が込められているってことかな。

左腰の後方を向いている物も同じ可能性が高いかな。

一応、警戒はするとして、

「このまま、睨めっこしてても仕方ないよね」

《はい》

「行くよ、刹那!」

「……」

バルディッシュを再び構えて刹那に接近する。

今度は、下がらずに左の魔力刃でハーケンの刃を受け止める。

魔力刃同士がぶつかり合い、バチバチと音を立てる。

すると、刹那が右腕を少し引いた。

その動作を見て、咄嗟に下がった。

先程まで自分がいた場所には、刹那が突いた大剣があった。

 

ハーケンフォームの魔力刃をサーベルで受け止める。

押し返すことは可能だが、力の拮抗でフェイトは硬直している。

ならば……。

右腕を少し引いく。

狙いはフェイトの腹部。

そこにGNソードを突き出すが、フェイトが身を引いたことで、空を突くだけに終わった。

「……避けられたか」

《フェイトさん、いい判断でしたね。威力設定はしていますからジャケットは抜きませんが、実戦(・・)なら確実に致命傷になる突きでしたよ》

「以前よりも速い。やはり、十年という歳月は……」

《仕方ありませんよ。それよりも、今は……》

「ああ。行くぞ」

GNソードをライフルモードにして連射する。

フェイトはそれを易々と左に避ける。

だが、止めずにそのまま射撃を続ける。

左に移動し続けるフェイトに……フェイト行く先を見越して左手のビームサーベルを投擲し、刀身を起こしてそこへ向かう。

案の定フェイトは一瞬動きを止めてビームサーベルを上昇して避ける。

上に避けたフェイト……の上からGNソードを振り下ろす。

「うっ!」

受け止めると見込んでいたが、フェイトはそれを右に避けて、離れていく。

「あれを避けるとは……ここまで速いとはな」

 

刀身が折り畳まれたGNソードからの射撃をかわし続けていると、突然短剣が迫ってきた。

咄嗟に回避先を変えて上昇すると、いつの間にか目の前には刹那が剣を振りかぶっていた。

速度を上げて、その攻撃を何とか避ける。

「あ、危なかった~」

短剣の投擲とその後の攻撃。

こちらの動きが分っているかのような的確な攻撃だった。

「さて、次はこっちの番だね。……ハーケンセイバー!」

バルディッシュを思いっきり振りかぶって……振り抜く。

《アサルトフォーム》

魔力刃が回転しながら刹那に迫っていく。

刹那は少し移動してやり過ごそうとしたようだけど、セイバーには追尾性能が多少付いている。

刹那が移動した方にセイバーが向かっていく。

「プラズマランサー」

《プラズマランサー》

最初よりも多い、8つの球体が出現する。

「ファイア!」

ランサーがセイバーを追い抜き、刹那に高速で迫る。

高速で迫るランサーを右に避ける刹那に、今度はセイバーが迫る。

そのタイミングで刹那の左からバルディッシュを振りかぶって迫る。

 

「!?」

右からは魔力刃。

左からは、フェイト。

回避選択は、上か下の二択だが……。

「ちぃ!」

刀身を折り畳んで左腰のサーベルを抜き、フェイトの攻撃をシールドで受け止める態勢をとる。

フェイトのバルディッシュがシールドにぶつかる直前、少し傾ける。

ガキイィ、と金属が擦れる音がしたのと同時に腕を左へ払う。

上手く受け流せたか。

次は……。

「うおおおぉぉぉ!!」

回転する魔力刃に同じ角度で、サーベルを力強く振るう。

魔力同士がぶつかり合い、爆発が起こり爆煙が舞う。

その隙に、爆煙の外に出て態勢を整える。

「何とかなったか」

右手に持っていたサーベルを左手に持ち替えながら爆煙を見つめる。

あそこにはまだフェイトがいる。

機会を伺っているはず……。

 

バルディッシュが盾にぶつかって、金属音が響くのとほぼ同時に刹那が腕を払った。

「わわっ!」

受け流された。

態勢を整えて刹那の方を見ると、セイバーと刹那の魔力刃がぶつかって爆煙が起きるのが映った。

瞬く間に煙が刹那の姿を隠す。

「セイバーを相殺するなんて……」

多分、刹那は煙の外に出て様子を伺っている。

「どうしようかな……」

 

爆煙の中から矢が四つ飛び出してきた。

左に避けると、視界に左から迫るフェイトの姿が映った。

「くっ!?」

左手のサーベルを払うが、

《ソニックムーブ》

既にフェイトの姿はなく、後ろからバルディッシュを首元に置かれていた。

軽く息を吐いて、「見事だ」と一言。

すると、フェイトはバルディッシュを引いて、

「まずは、私の1勝……だよ」

「ああ」

お互い床に降りて、ジャケットを解除する。

 

「お二人ともお疲れ様です!」

制御室へ行くと、シャリオが興奮気味に出迎えた。

「フェイトさんの強さは知っていますが、刹那さんもお強いですね!」

「負けたがな」

「まだ1戦目じゃないですか」

シャリオの言葉に苦笑する。

「そういえば……」

「どうした?」

フェイトが何かを思い出したかのように呟いた。

「あの時、私とセイバーの挟撃の時。上下どちらかに回避できたはずなのに、どうして避けなかったの?」

「……勘だ」

「勘?」

何となく(・・・・)、回避は危険だと思った」

「そ、それだけ?」

「ああ」

あの時、イノベイターとしての勘が危険を察知した。

だから、回避行動をせず迎え撃った。

「何か仕掛けていたのか?」

「設置バインド」

「……挟撃から逃れた場合は、バインドで拘束されて終わり……か」

「結局、意味がなかったけどね」

フェイトが苦笑しながら言った。

「……ところで」

「なに?」

フェイトのジャケットがかなり変わっていたことで、確認の意味でも質問をしてみた。

「バリアジャケットは、本人のイメージに魔力を込めて作るものだったか?」

「私やなのははそうだね」

「他者がイメージして作るというのもありますよ」

俺の質問にフェイトとシャーリーが答える。

「シグナム達は、はやてがイメージしたものだよ」

「そうか……」

イメージ……か。

「刹那?」

「いや、何でもない」

「そう?……そういえば、刹那は?」

「俺のイメージではない。本来のエクシアが人間のサイズになったものだ」

「本来……の?」

フェイトとシャーリーが頭に疑問符を浮かべているが、今は話す時ではないな。

それに、話を始めたら時間がかかる。

 

2戦目はオーバーブーストを使用して何とか勝てたが、3戦目でまた負けた。

結局、フェイトとの模擬戦は1勝2敗で俺の負けだった。

3戦目を終えて、床に降りてジャケットを解除する。

「俺の負けだな」

「はぁ~。何とか勝てた」

肩の力を抜いて、フェイトが呟く。

「約束だったな」

「え?」

「賭けだ。まさか、自分で言っておいて忘れていたのか?」

「わ、忘れていたわけじゃないよ」

「それで?」

「あ、うん。その……ね」

「……はっきり言ってくれ」

「な、なのはと同じみたいに。い、一緒に……写真を……」

「……」

「だ、駄目かな?」

俯いてしまった。

ため息を一つつく。

「エクシア」

《セットアップ》

「あ」

「これでいいのだろう?」

「う、うん。バルディッシュ」

《お任せを》

なのはといいフェイトといい、何故こうもエクシアの写真を撮りたがるのだろうか?

確かに珍しいバリアジャケットだとは思うが……。

二人共、意外と機械好きなのだろうか?

と、的外れなことを考えている刹那の横で、少し顔を赤くしたフェイトが微笑んでいた。

「ところで、フェイト」

「なに?」

撮影を終えて制御室に戻る途中、フェイトに疑問をぶつけてみる。

「写真のためだけに賭けをしたのか?」

「え?」

「あの程度のことなら普通に言えば聞き入れた。それは、お前もわかっていたのではないか?」

「そ、それは……」

「あるのだろう?別の頼みが」

「……うん」

「で?」

「あ、あのね……」

 

帰宅し、なのはと夕食をとっていると今日のフェイトとの模擬戦について聞かれた。

「フェイトちゃんとの模擬戦はどうだった?」

「3戦中、1勝2敗で俺の負けだ」

「刹那君が負けたの?」

「ああ。やはり、フェイトのスピードに翻弄された」

「切り札は?」

頭を振って否定する。

「そっか」

「まあ、機動六課でまたやることになるだろうからな。その時は……」

「うん。頑張ってね」

「ああ」

「あ、その時はまた私と模擬戦してね?

「……ああ」

 

シャワーを終えて、自室のベッドに腰掛けて今日の模擬戦の事を思い出す。

《フェイトさんのスピードはかなり速かったですね》

「ああ。翻弄されっぱなしだったな。それに、まだ本気ではなかったな」

《そうなんですか?》

「ソニックもザンバーも使わなかった。まだ、実力を隠している」

《確かに使いませんでしたね》

トランザムを使えば、勝敗は違った結果だったかもしれないが、それは今更な話だ。

それとは別に、フェイト程の速度を持つ者が敵対者として現れた場合、トランザム以外で対抗する術がない。

「トランザムは必要か……。それに……」

ガンダムセブンソード。

「セブンソードであれば、もう少し戦術が広がるんだが……」

《申し訳ありません。(リペア)ⅡではGNブレイドの運用は入っていませんので……》

「無い物ねだりしても仕方がないな。お前が気にするな。現状で出来ることをするだけだ」

《はい》

 

翌日。

「おはようございます。フェイトさん」

「おはよう。シャーリー」

シャーリーと挨拶を交わす。

昨日までの疲労感が嘘の様にない。

やっぱり、模擬戦で思いっきり体を動かして、いいリフレッシュが出来たからだろうなぁ。

自然と顔が綻ぶ。

「フェイトさん。何か良いことありましたか?」

「どうして?」

「……いえ、何でもありません。今日もよろしくお願いします!」

「うん。よろしく」

「そういえば、フェイトさん」

「なに?」

「私は昨日、2戦目が終わった後に途中で帰っちゃいましたけど、勝負はどうなりました?」

「3戦して私が2勝」

「フェイトさんの勝ちですか。流石ですね~」

「刹那、本気じゃなかったしね」

「そうなんですか?」

「うん」

刹那は本気を……全力を出していなかった。

その証拠に、あの力を使わなかった。

全力を出さなかったのは、自分もだけど。

 

二人の少女が陸士隊の隊舎の中を、肩を並べて歩いていた。

「もう直ぐ試験だね」

「そうね」

「頑張ろうね。ティア」

「当たり前でしょ」

 

機動六課発足まで、あと僅か……。

読了おつかれさまでした。

某サイト掲載時より加筆修正しました。(削除した部分もありますが)


 
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