No.398741

高みを目指して 第12話

ユキアンさん

なぜだ、なぜなんだ父さん。
なぜオレの記憶だけを。
オレは、オレの思いは何だったんだ。
by零樹

2012-03-27 16:55:16 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2482   閲覧ユーザー数:2387

弟子入り、思い、真実

 

 

side 零樹

 

 

「お願いします。僕を鍛えて下さい」

 

「だから、オレの前にいきなり来るな。一瞬手が出そうになっただろうが」

 

一方的な蹂躙があったその晩、赤髪の少年がオレのテントにやってきて弟子入りを頼み込んできた。言葉の通り一瞬手が出そうになったがヴィヴィオがすぐ傍にいるのを思い出してなんとか止まることができた。

 

「大体、最初に言っただろう。技術体系が違いすぎてオレが何かを教えることは出来ないと。その歳で殺人処女を捨てたいのかお前は」

 

オレは目の前の少年より幼い頃に捨てちまったけど。

 

「それでも学べる物は多いと感じました」

 

似てやがるな、アレにどこまでも。だからこそ余計に関わりを持ちたくない。でも、アレをオレが育てたらどうなるのかも気になる。どうするかな?

 

「なんで強くなりたいんだよ。強くなればなる程、面倒事に巻き込まれる。それも周囲を巻き込む様な面倒事にだ」

 

「でも、僕はフェイトさんに恩返ししたいんです」

 

「誰だ?そのフェイトってのは」

 

「今日の模擬戦の時にいた金髪の人です。僕はあの人に助けて貰ったんです」

 

「それだけじゃないな。隠し事をするようならオレは断らせてもらう」

 

「……絶対に秘密にしてもらえますか」

 

「ああ、もちろんだ」

 

「……僕は、プロジェクトFと呼ばれる実験で産み出されたクローンなんです」

 

プロジェクトFでクローン。おそらくギリシャ神話に出てくる運命の三女神から来ているんだろう。運命と言っても人間の誕生、生涯、死を司っているからな。成る程、つまりフェイトさんとやらもプロジェクトFで産まれたクローン、しかも最初の成功体なんだろうな。じゃねえとそんな名前付けねえよ。

 

「僕の両親が僕のオリジナルが死んだ代わりにと産み出したのが僕なんです。でも、それは違法で僕は管理局の施設に送られました。そこで僕はフェイトさんに引き取ってもらったんです」

 

ふむ、管理局の施設に引き取られたか。これは狙ってやったのか?ここで恩を売っておけば、いずれは管理局の戦力になると考えていたのか?確認する必要があるな。念話でギンガにヴィヴィオの面倒を頼み、立ち上がる。

 

「少年、名は」

 

「エリオ・モンディアルです」

 

「ならばエリオ。そのフェイトとか言う人の所まで案内してくれ。少しお話、最悪OHANASHIをしないといけないからな」

 

「はっ、はい」

 

殺気が漏れていたのかエリオとヴィヴィオが震えながら抱き合っているが今は関係ない。少し経ってやってきたギンガにヴィヴィオを任せて、エリオの案内で隊舎に向かう。目的の部屋に辿り着きインターフォンをエリオが押す。

 

「エリオです。あの、えっと「零樹で構わない」零樹さんがフェイトさんに話があるというので」

 

すぐに件のフェイトが出てきたので率直に用件を伝える。

 

「君に取ってエリオとは一体なんだ?」

 

「え?」

 

「君に取ってエリオとは、家族とは何なんだ。こんなに幼い少年少女を戦力として使わねばならない管理局に入れる君は何を考えている」

 

「それは僕が」

 

「エリオは黙っていろ。これは親として聞いておかなければならないことだからな」

 

「……私は、貴方から見れば駄目な親なんだと思います。どう接すれば良いのか分からずに、たまに会って遊んであげる位しか出来ませんでした。だからエリオやキャロが管理局に入った時も何も言えませんでした。理由を聞いても私に恩を返したい、自分で決めたことだと言う言葉に何も。だからできるだけ傍で見ていられる様にこの部隊に呼び寄せて、でも結局は仕事が忙しくてあまり面倒を見てあげれなくて」

 

「フェイトさん」

 

「駄目な親かも知れません。でも、私は二人の親です。二人が望むことを出来るだけ叶えてあげたい」

 

「そうか。オレの用件はこれだけだ。エリオ、次は高町一尉の所だ」

 

「なのはならこの部屋だけど、どうしたの?」

 

「エリオをオレの弟子にする。だから今の高町一尉が描いている部隊像をできるだけ壊さない様にする為にこれからエリオをどう育てるつもりだったのかを聞こうと思ってな」

 

「急にどうしたの?」

 

「オレにも思う所があるんだよ。それよりどうなんだ?」

 

「そろそろ個人スキルを鍛える段階だからエリオの教官をしてくれるなら大体のことは任せるよ。エリオも自分に何が必要なのかは分かってるよね」

 

「はい」

 

「よし、ならばエリオを預かるぞ。早速改造を始めるぞ」

 

「「「改造!?」」」

 

「誤解するな。ちょっとした魔法薬で対Gを高めたり、対毒、内臓機能の強化、自然治癒能力の強化、etcしないとオレの修行(拷問)に耐えられんからな」

 

「今修行が他の言葉に」

 

「さあ、楽しい楽しい修行(拷問)の始まりだ。ちなみにオレの修行(拷問)を受けきった者は歴史に名を残す程の者達ばかりだ。良い意味でも悪い意味でもだがな」

 

英雄に革命家、世界を敵に回した科学者、不治の病を撲滅したシスター、魔法世界の為の人柱になった少女。他にも数人いるが変な奴らばかりだな。エリオがどうなるか面白そうだがな。

エリオを引きずりながらテントに戻りダイオラマ魔法球に放り込み、改造を始める。

 

 

 

 

 

 

「エリオ君、大丈夫?」

 

「ごめん、キャロ。今は話しかけないで」

 

次の日の訓練、エリオに取っては1週間ぶりになる訓練においてエリオが屍の様に倒れている。今日の午後から個人スキルの訓練に入るのだが午前中の合同訓練でエリオはダウンしている。理由は簡単だ。エリオに渡したネックレス、これには重力を操作する術式が込められている。これにより今のエリオは2倍の重力を感じながらの訓練を行なっている。そして、いつも通り動こうとしてバランスを崩し、スタミナもガリガリ削られ、倒れ込んでいる。

 

「さ~て、エリオよ。こいつを飲むのだ」

 

嗅覚をカットした状態で影の倉庫から一本のフラスコを取り出す。中には紫色の魔法薬が詰められており、もの凄い悪臭を漂わせている。全員がこの場から離れる中、エリオも必死に逃げようとしているが身体に力が入らず這って逃げようとしている。

 

「一気に飲め」

 

無理矢理魔法薬を流し込む。今飲ませたのは内臓強化の為の漢方をベースにした魔法薬だ。内側からの強化は東洋の方が優れているからな。まあ、反動で半日は動けないだろうから再びダイオラマ魔法球に放り込みシスターズに面倒を見させておく。もちろん通称数の子シリーズと呼んでいるシスターズがいないダイオラマ魔法球にだ。なんか面倒事になりそうだったからな。

 

「予想より才能はあるし、根性もある。中々楽しめる人材だな」

 

エリオの改造計画に修正を加えてからテントに向かう。

エリオを鍛えることにしたが基本は管理局に借りを作らない為にテントで暮らしている。ヴィヴィオも基本はテントでオレが召還した人工精霊と遊んでいる。見た目は子供受けしそうなヴィヴィオと同じ大きさ位の東方キャラだがな。護衛も兼ねてるし。

 

「あっ、パパ」

 

オレがテントに入るとすぐにヴィヴィオが駆け寄ってくるので抱き上げて肩車をする。

 

「ただいま、ヴィヴィオ。いい子にしてたか?」

 

「うん」

 

「咲夜、藍。何か問題は?」

 

「強いて言うなら皆様方の遊ぶ為の広い場所があれば良いのですが」

 

「あとで内外差が無いダイオラマ魔法球を用意しておく。管理は藍に任せる」

 

「はい」

 

「あっ、零樹だ。あたいと勝負しろ」

 

「食事の後でだ。皆を呼んで来いチルノ」

 

「は~い」

 

とりあえず召還したのが面倒を見させる為に咲夜と藍、遊び相手としてチルノ、大妖精、プリズムリバー3姉妹、空、ルーミア、こいし、小傘、あとおまけでゆっくりれいむとまりさ。基本的にはオレのイメージで生成されているので若干性格が違ったりするが特に問題ないだろう。

 

「それじゃあ、いただきます」

 

『いただきます』

 

昼食であるカレー(激甘)を食べる。人工精霊である皆も身体を維持する上で食事は必要なので揃って食べる。

こんなにゆっくりとした時間を過ごすのは久しぶりだな。最後にゆっくりとしたのはシスター・リミアの所にいた時、体感で700年前か。こんなゆっくりとしていていいのかと疑念が浮かぶが目の前で一生懸命になってカレーを食べているヴィヴィオを見ていると少し位良いのではないかと思ってしまう。嫁に出るまでは守ってやろう。さすがに死ぬまで一緒にいてやることは出来ないが、それ位なら良いだろう。ヴィヴィオと出会ってから決めたんだ。昔の、最初の頃のオレに戻ろうと。

 

 

 

 

 

 

「さて、エリオ。お前に足りないものと自慢出来るものは何か分かるか?」

 

「たりないものは色々あります。力とか経験とか。自慢出来るのは早さです」

 

「オレから見れば早さも足りないんだが、徹底的に速さ関連を鍛えるぞ。物理法則的に速さ=力だからな。その為にそのネックレスを渡しているんだ。その内重くしていって出動時のみ外……すと転けそうだから、たまには外すのを許可する。でだ、オレが教えるのは肉体強化の方法と、瞬動と呼ばれる技術だ」

 

「瞬動?ですか」

 

「見せながら説明した方が良いな。とりあえず地面を蹴る方の足裏に魔力を集中させて、蹴ると同時に放出」

 

短距離、と言っても10m程離れた所まで一瞬で移動して帰ってくる。

 

「こんな風に動ける。利点は他の高速移動用の魔法と併用することができる点と、これを発展させた虚空瞬動、空中歩法が存在することかな。欠点は一度瞬動に入ると真直ぐにしか動けないことだがエリオの場合はデバイスを構えて瞬動を使えば問題は無いだろう。ちなみに一番恐ろしい戦場での使い方は直射系の砲撃魔法で軍にスキマを作り、そこに馬鹿でかい大剣、最低でも50m位のを両手に構えて超長距離瞬動で一気に戦線を崩すというエグイ戦法だ」

 

「……あの、魔力ってそんな風に扱えるんですか?」

 

「……えっ?そこからなのか」

 

一日かけて調べた結果、どうやらこちらの世界の魔力では瞬動が出来ないことが判明したため気を運用して行く方向に。こちらも一から教える必要がある為時間がかかりそうだ。ヴィヴィオと一緒に習わせようかな。チルノ達との競争に勝てないって泣いてたし。

後日、ヴィヴィオの方が先に肉体強化、瞬動、虚空瞬動、舞空術を完璧にマスターしてしまいエリオが落ち込んだ。ヴィヴィオ本人はこれで皆に置いて行かれなくてすむと喜んで空を自由に駆けている。エリオに才能が無い訳ではない。むしろヴィヴィオの才能が異常だっただけだ。だが、あまりにもかわいそうになり闇への適正も高そうだったので『闇の魔法(マギア・エレベア)』を伝授する。なお、リミッターとしてエリオのデバイスであるストラーダに強制解除の術式を施しておいた。

ちなみに修行は全てダイオラマ魔法球において行なわれている。エリオには不老の指輪を渡した上で出る際に記憶を少し弄らせてもらっている。とりあえずそこそこ動ける様にはなってきているから小技とかも教え始めるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

朝からフォワード陣と隊長陣が任務で六課から放れているので久しぶりにヴィヴィオと遊んでいるのだが、何か嫌な予感がする。

 

「どうしたのパパ?」

 

「……おやつに何を作ろうか考えてただけだよ。ヴィヴィオは何が食べたい?」

 

「ケーキ」

 

「分かったよ」

 

咄嗟に誤摩化しながら咲夜達に警戒態勢を取らせる。何も無ければいいんだが。

こう思ったのがフラグだったのだろう。地上本部と六課に対してガジェットとナンバーズと呼ばれる戦闘機人が襲撃を仕掛けてきた。幸い防衛戦力も六課に残しているみたいなので戦闘には一切参加していない。他の非戦闘員と共に避難している。お前も戦えという視線が幾つも来るがオレは一応民間人だ。指揮系統を混乱させる訳にはいかないからな。まあ、本格的にヤバくなればでるけど。

最終防衛ラインとしてヴァイスが近づいてくるガジェットを撃ち落としている。

 

「良い腕前だなヴァイス陸曹」

 

「昔取った杵柄ですよ。それよりはフォワード陣の方が気になりますよ」

 

「大丈夫だろう。エリオの修行(拷問)もかなり進んだからな。今のあいつなら隊長陣共やりあえるぞ」

 

「そりゃあ頼も」

 

そこで建物全体が大きく揺れる。天井の一部が崩れてくるので素早く結界を張り防御する。

 

「くそ、一体なんだ」

 

ヴァイスがロングアーチに通信を繋ぎ情報を得ようとしているがオレには分かった。今の揺れ具合は覚えがある。フェイトがよく使う『冥府の石柱』の振動だ。あのとき手を掴めなかったのはオレだけ。つまりは姉さん達も来ているのか?

 

「ヴァイス、ここは任せたぞ。オレは外に出てくる。咲夜達はヴィヴィオを守っていろ」

 

瞬動を使い、外に飛び出すとそこには姉さん達がいた。ザフィーラとシャマルは血の海に沈んでいる。治療用の符を二人に投げて姉さん達に対峙する。

 

「久しぶりです姉さん」

 

「ええ、久しぶり」

 

「それで、一体どんな御用でここに?しかもここで『冥府の石柱』を使わせるなんて無茶にも程がありますよ」

 

実際、フェイトがかなり消耗している。かなりの精神と魔力を持っていかれたのだろう。

 

「私達と貴方はこの世界に辿り着くまでの時間差があったわ。約10年程ね。そして、貴方がこの世界に来たと同時に発見もしたけどその時の貴方の行動を見て今日まで接触を断って監視だけしていたわ」

 

「なぜそんなことを」

 

「貴方の為に必要だと思ったからよ。そして、今なら大丈夫かもしれないと判断して告げるわ」

 

「何を言っているんだい」

 

「これを聞いて、貴方がどういう行動を執っても良いわ。でもお願いだから私に討たれる様な状況だけには、あの頃の様な状態にだけはならないで」

 

リーネ姉さんの眼から涙がこぼれる。なんだ、一体何を隠しているんだ。

 

「これを知ったとき、すぐに伝えた方が良いのすら考えたわ。でも貴方がどうなるか分からなかった」

 

「姉さん。何を、何を知っているんだ」

 

普段では考えられない位動揺しているのが自分でも分かる。

 

「貴方が、貴方が無くしたと、亡くしたと思っている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           シンとアリスは生きている」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、姉さんは何を言った?

シンとアリスが生きている?

今更何を言って「貴方が見る夢に関する刷り込みを解くわ」そう言われると同時に何かが崩れさる。

 

「あ、あああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

全部。全部思い出した。姉さんが言う夢以外の、父さんが施した封印が解けて、全てを。そんな、ならアリスはずっと、ずっとオレを。シンも、シンも全てを知った上で。

なんで、なんでオレだけが、オレだけを

 

「落ち着きなさい零樹」

 

何故だ、何故なんだ父さん

そこで殴られる感覚と共に意識が落ちる。

 

 

side out

 

 

 

 

 

side リーネ

 

 

様子が明らかにおかしい。まるで刷り込みを解くと同時に他の何かも解かれたみたいに。すぐに刹那が動いて気絶させたから問題は亡いみたいだけど。

そんな時にルーから通信が入る。

 

「どうしたのルー?」

 

『強いのがいる』

 

映し出された映像に東方キャラが映っている。零樹がヴィヴィオの為に召還していた人工精霊ね。私達なら問題ないけど、ここは素直に協力して貰いましょう。転移でルーのすぐ傍に転移し、こちらも同じ人工精霊を召還して時間を稼ぐ。その隙にヴィヴィオに近づく。泣きそうになっているのを必死に我慢しているヴィヴィオの頭に手を乗せて話す。

 

「ヴィヴィオちゃん、パパを助けてあげるのを手伝ってくれない」

 

「パパを助ける?」

 

「そうパパはね、今もの凄く、もの凄く苦しんでいるの。だからその苦しみから少しでも眼をそらす為に手伝って欲しいの。でもね、その為にヴィヴィオちゃんが痛い目に会うかもしれないわ。どうする?」

 

ヴィヴィオは迷わず私の手を取った。

 

 

 

side out

 


 
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