No.398223

真・恋姫†釣行 -開幕編-

黒山羊さん

TINAMIユーザーと恋姫が釣りに行く話を書いた黒山羊です。
漁業大好き黒山羊が皆さんに魚について知ってもらおうと企画しました。
最近の日本人は昔より魚を食べなくなり、魚の事を知らない人が増えています。
これを読んで、魚について詳しくなったら、黒山羊的には嬉しいです。
各アバターはできるだけ御本人の要望を反映させてはいますが、基本的に私の勝手な妄想の産物となっていますので、ご容赦ください。

2012-03-26 11:57:47 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:3138   閲覧ユーザー数:2808

                          真・恋姫†釣行

 

 

 

 

此処はTINAMIというシステムを利用した外史管理者が交友を深める場所TINAMIラウンジ。

中でも此処は『真・恋姫†無双』に関する外史の管理者が集まるラウンジ通称、『恋姫ラウンジ』だ。

そんな『恋姫ラウンジ』に一人の男が黒のソファーに座って雑誌を読んでいた。

金縁眼鏡で紺の上下のスーツを華麗に着こなし、左腕には狼を象った手甲を嵌めている。

 

そんな渋い男の名前は狭乃 狼。

 

渋い外見からはあまり想像できないが、とても気さくな人物だ。

よく、この『恋姫ラウンジ』に来て仲間たちと日頃から皆を楽しませてくれるムードメーカー。

彼のおかげで『恋姫ラウンジ』の一見さんも楽しく恋姫談義で盛り上がっている。

そんなムードメーカーの彼が珍しく静かだ。かなり雑誌に集中しているようだ。

一言もしゃべっていない。

異常事態だと周りの外史管理者は彼を心配し、『誰か声かけろよ』と、もめている。

そして、ジャンケンで負けた一人の外史管理者が声をかけることとなった。

 

聖槍雛里騎士団黒円卓第Ⅰ位首領という薄っぺらい肩書を持っている黒山羊という男だ。

黒のトレンチコートに黒の山羊の角の生えたシルクハットを被っている。

騎士団の首領という肩書から一人称を『私』、二人称を『卿』と言っているが、正直似合っていない。

 

彼は主君である雛里の『敵を知り己を知らば百戦危うからず』という教えに従い、狭乃狼の読んでいる雑誌の調査にする。ダンボールを被り、音を立てずに、狭乃狼の真正面に行く。

騎士団の首領でありながら、ここまで慎重に行動しているのは、理由がある。彼は3月3日以外の日もしくは、傍に君主が居ない限り、TINAMI外史管理者の中では最弱に分類されるからである。

彼がTINAMI外史管理者の中で秀でているとしたらそれは魚に関する知識だろう。騎士団の首領でありながら、頭でっかちで、弱いのはどうなのだろう?と幾多の人に言われているのを彼は結構気にしていたりする。

そして、ダンボールの中から双眼鏡で狭乃狼が読んでいる雑誌の表紙を見た。

 

「レジャ●・フィッシング?」

 

黒山羊は段ボールの中で『我が君(雛里)はまだ私を見捨てていないようだ。』と歓喜に打ち震えた。

こんな所でも雛里雛里と言っているのは彼が狂信者だからであろう。

『Sieg Heil HINARIN( ゚∀゚)o彡°(以下略)』と叫んでいる様は傍から見ていたら、結構…とても気持ち悪い。

ところで、「レ○ャー・フィッシング」と雑誌だが、この雑誌は、初心者でも分かりやすい釣り雑誌だ。

釣りという分野はある程度の釣りなら網羅している彼にとって、最高の分野だった。

彼はダンボールから出て、狭乃狼に近づいた。

 

「狼兄様が、釣り雑誌とは珍しいですな。」

「!!……黒山羊って釣りとか魚に詳しいんだよな?」

「人並みには知っているだけです。」

「頼む!一生のお願いだ!聞いてくれ!」

 

黒山羊が狼兄様と呼んでいる狭乃狼は目を輝かせていた。

狼兄様と敬意を払って呼んでいる黒山羊は正直、狭乃狼の頼みごとに驚いた。

 

「分かりました。話は聞く故、スピリタスでも飲んで、少し落ち着いて頂きたい。」

「「「何で、スピリタス!!」」」

 

とその場にいたTINAMI外史管理者全員がツッコミを入れてしまう。

普通は『紅茶でも飲んで落ち着いて下さい』なのだが、1カ月で度数25のサトウキビ焼酎を一人で6L飲む彼からすれば、『お酒でも飲んで落ち着いて下さい』は通常運転なのだ。

結局、皆で愛媛のポンジュ●スを飲みながら、話を聞くこととなった。

 

「それで、どうしたんですか?」

「いや、実はな。華雄がな。先日テレビでやっていたトローリングの番組を見てな、釣りに行きたいって言いだしたんだ。

 俺としても連れて行ってやりたいんだけど、釣り方分からないし、雑誌とか見て色々調べようとしてみたんだけど、この本にはト

 ローリングについて載っていなくてな。どうしたら、良いのか困っていた所だ。」

 

狭乃狼は華雄に甘過ぎるというのは恋姫ラウンジでは周知の事実。

その為、外史管理者は皆『貴方、本当に華雄好きですね』と内心思うが、口に出したら最後、正座させられて惚気話が半日続いてしまうため、誰も言ってはならないという紳士協定がある。

 

「更には、桂花からこんな手紙が来たんだ。」

 

そう言って狭乃狼は黒山羊に手紙を渡した。

黒山羊はそれを受け取り、手紙を広げて、読み始めた。

 

「『狼へ、華琳様が『良いフカヒレが無いかしら?』と呟いたから、貴方が何とかしなさい。 桂花より』」

「それで、良いフカヒレを手に入れようと思っても、そこらへんの百貨店で売っているようなモノで良いのか悩んでな。最終的に俺が

 そのフカヒレの原料になるサメを手に入れようという結論に至ったわけだ。これで、サメとトローリングが同時に行えたら、最高だ

 ろう?」

「なるほど。であるならば、その本はあまり良くない。それは子供連れのファミリーから近場で本格的な釣りをしたいという人向けの

 雑誌だ。マニアックな釣りは載っていない。」

「やっぱりか。」

「何とかならないっすかね?黒山羊さん?」

 

そう言って狼を慰めようとしているのは骸骨。

今の見た目は灰色の短髪で、パーカーとジーンズを穿いているが、それは彼の真の姿ではない。

本当は全身人骨でできているため、様々な人に奇異な目で見られてしまう為、普段は『偽体』という肉体を纏っている。今の姿がまさに偽体そのものだ。

だが、たまに油断して偽体を脱いでしまうことがある。

先日電車の中で寝ぼけて偽体を脱いでしまった為、『ニコニ□動画』に『リアル、ブルック降臨』という名前で動画をうpされ、3日で再生回数が百万を超えた。

 

「私としても、日頃からお世話になっている狼兄様に恩返しがしたいのだが、すみません。」

「ちょっと良いかい?」

 

そう言って手を上げたひっとーに周りの注目が集まる。

おむすび頭というだけでも特徴的なのだが、迷彩柄の着流しを着ている所為で街中では特に目立つ。

そんな少々派手な着流しを着崩している姿は歌舞伎役者を連想させられる。

彼にとってこの着方は、気を許した人の前でしか着ない着方である。

彼にとって恋姫ラウンジは心休まる空間なのだろう。

 

「ないなら、そんな都合の良い外史を作ればいーんじゃねーの?。」

「「「それだ!」」」

 

ひっとー以外の外史管理者は一斉に立ち上がる。

そう、『恋姫ラウンジ』に集まっている人は外史という誰かが思い描いた世界を管理する外史管理者だ。

正史で無理なら、都合のよい外史を作り、そこに恋姫達を招待すれば良いだけのこと。

 

「なら、善は急げだな。黒山羊」

「都合の良い外史の設定と釣り道具の準備は私に任せて頂きたい。何でも釣れるように道具は一式そろえておこう。釣り場でのサポートに抜かりはない。たも網、三脚、集魚灯、船も用意しておくとするか。

卿らは、好きな娘を誘っておいていただきたい。」

「楽し過ぎて狂っちまいそうな刺激的な世界にしてくれよ。」

 

スプーンを咥えながら言ったのはberufegoalだ。

白髪のサラサラヘアーで、革のブーツを履き、真紅の赤いコートを羽織り、机の上に足を置いている。

近くには漆黒のギターケースがあるが、中身は骸骨の装飾が印象的な白銀の大剣リベリオンである。

そんな彼の肩書は便利屋で、収入が少ないくせに仕事を選ぶと結構厄介な荒事が大好きな便利屋だ。

厳つい容姿や肩書からは想像できない様なものを彼は食べている。

彼の主食の一つのストロベリーサンデーだ。暇さえあれば、何処かの喫茶店で食べている。

彼曰く『Freddie』のストロベリーサンデーは逸品だそうだ。

もう一つの主食はピザで、毎食Lサイズを三枚食べている。

 

「当然、私としてもそのような外史の方が良い。」

「飯の用意は俺に任せておけ。」

「ピザは絶対作ってくれ。もちろんオリーブ抜きだ。」

「了解だ。その代わりに、黒山羊よ。素潜りで使える道具も頼みたい。」

 

飯作りをかって出て、グラサンを中指でクイッと上げるのはアロハシャツを着た峠崎丈二。

筋肉ムキムキでターミネ●ターを連想させる体格だ。

肩書は一部の食通では有名な店『瑚裏拉麺』の店長だ。

ラーメン屋であるにもかかわらず、そのメニューの多彩さには毎度毎度驚かされている。

驚かされるのは料理の腕だけでは無い。それは戦闘力だ。

彼はピュペリオン体質で、その筋繊維はとても細かいうえに、その一本一本が驚くほどの強度だ。

『ネイチャ●』という科学雑誌に載った『特殊体質の社会的貢献に関する考察』という論文に『とある男の1本の筋繊維は重機で引っ張っても千切ることは出来なかった』という1節があったのは記憶に新しい。

頑丈過ぎる筋繊維を持った男が鍛え上げているのだ。アルマゲドンも岩山両斬波で真っ二つだろう。

そんな丈二が素潜りするというのだ。乱獲が起こらないかどうか心配だ。

 

「料理なら、私も手伝いますよ。」

 

丈二の手伝いをしたいと申し出たのはうたまる。

名前を丸岡 歌穂、外史管理者では珍しく女性。温厚でのんびり屋な癒し系で、恋姫ラウンジの紅一点だ。

人見知りな性格だが、顔見知りにはそれなりに時折毒を吐く。

美人ということもあり、此処までのプロフィールなら、モテて仕方がないだろうが、彼女の趣味が腐(彼女曰く極々普通の腐)なので、周りの男に若干引かれてしまう。

酔った時の彼女の話を聞いてしまったがためにトラウマを持ってしまった人は無数にいる。

 

「あぁ、うたまるの味付け、俺には出せないからな。頼む。」

「時に丈二よ。普通の銛と電気銛の二つがあるが、卿はどちらが良い?」

「どう違うんだ?」

「普通の銛は文字通り普通の銛だ。電気銛は銛の先端に電極がついている。刺さった獲物が銛から逃げようとすると電気が流れショッ

 ク死すると言うわけだ。魚はストレスを感じると体内のATPを分解し、(以下略)だから、鮮度保持をしたいのならば、普通は電気

 銛を使う。」

「なるほど。理論は良く分からんが、今回は鮮度より、釣りや素潜りで楽しむことが目的だ。テレビでよくあるフィッシングファイト

 というのを堪能する為にも普通の銛で頼む。」

「分かった。卿が乱暴な扱いをしても壊れない様な物を用意しよう。銛の大きさだが、卿は大きければ大きいほど良いと言うだろう。

 出来るだけ大きいものを用意しよう。………どうかしたか?龍々?」

「自分とか他にも釣り初心者がいるようだが、大丈夫か?」

 

そんな心配をしてきたのは永原 龍巳、通称:龍々だ。

黒髪黒目の長髪で、首の後ろで1つに纏めている。

あまり喋らないうえに、素っ気ない無愛想な印象を感じてしまう所為で、初見の人には敬遠されてしまうが、接してみれば、なんだかんだいって気の回る優しい奴ということが皆分かって来る。

 

「今から初めて作る外史だから、魚の知能を低めに設定して初心者でも簡単に釣りが楽しめるようにしておく故、安心されよ。誰も坊

 主にはさせぬ。基本は教えておくが、魚という生き物は地域食が強い。最初は釣れぬかもしれぬ故、卿ら自身で試行錯誤してもらい

 たい。」

「その方が自分で釣った感じがするし、俺はそれで良いぞ。」

「自分も」

「結構無茶な注文しますが、大丈夫でしょうか?」

 

黒山羊に質問するのは劉邦柾棟。

外史管理者は親しみをこめて、劉邦さんや柾棟さんと呼んでいる。

劉邦の姿は聖フランチェスカ学園の制服を着ているキラ・ヤ▽トそのものだ。

最近の悩み、街を歩くたびに逆ナンパされるので、相手を傷つけずに断る方法が無いだろうかと悩んでいる。

一部の男達から『爆死して爆発しろ』と嫉妬の目で見られている。

 

「外史なんてご都合主義の塊故、安心めされよ。では、卿らが何を釣りたいか教えていただきたい。」

 

そう言って、黒山羊はホワイトボードを持って来た。

一人ずつ、誰が何を釣りたいのか聞き、書きこんで行く。

 

龍  々:ハゼ

berufegoal:青物(大きい魚でも可)

峠崎丈二:なんかでかい奴

狭乃 狼:青物(トローリング)

ひっとー:戻り鰹

劉邦柾棟:青物

うたまる:石鯛(+蟹籠)

骸  骨:青物

 

「……青物が多いな。」

「黒山羊さん、青物って何っすか?」

「あぁ、青物ってのは背中が青い魚の総称だ。マグロ、ブリやカツオ、カジキにシイラと言ったところか。」

「なるほど。」

「此処まで青物とかが多いと、SS的にネタ被ったりしませんかね?」

「卿らが心配する必要は無い。作者が何とかしてくれるはずだ。では、コイツらをターゲットにして釣るとして、基本的な事を教えて

 行く。心して聞いていただきたい。」

 

それから、黒山羊による釣りの講義が始まった。

竿の持ち方、キャストの方法、仕掛けの仕組み、餌の付け方と種類等色々だった。

黒山羊のそれなりの説明のおかげで此処に居た外史管理者たちの釣り知識が中級者レベルまで上がった。

たも網の使い方や、銛の使い方、魚籠や、釣り場での注意等の講義もあった。

おかげで、魚を釣った時の対処法まで理解出来た。

 

「まあ、こんな感じと思うが、卿らから質問は無いか?……龍々。」

「自分達の釣りは理解したとして、恋姫達の釣りについても教えてくれないか?

 俺は良いけど、他の所は同じ釣りするの難しそうだろう?」

「確かにそうだな。お嬢ちゃん達をエスコートするのが、男なら当然だろう?」

「俺の家内の場合、後ろでお茶でも飲んで楽しんではいると思うが、簡単な釣りを教えられるぐらいにはなっておきたい。」

「華雄は大丈夫だと思うが、桂花が『暇すぎ!アンタ!何とかしなさいよ!』とキレた時の対処法として何か頼むわ。」

「あぁ、カツオ釣る体力桃香にはなさそうだし、俺も賛成。」

「流琉はともかく白蓮に青物は向きそうにないしな。」

「璃々ちゃんように釣り場で釣り以外の事出来ない?」

「風も俺と同じ釣りをすると思うが、万が一坊主だったら気の毒だしな。一応教えてくれないっすか?」

「了解。では、また講義を再開する。」

 

 

 

 

明けの瑠璃色と東雲の茜色に人は魅せられる。

それは人間社会で固められた都会において見ることが出来るような色ではないからこそ、海岸から見える自然が作り出す色に自然の雄大さを魅せられるという人がいる。

正論だ。人は希少価値という物に憧れる。だからこそ、この景色に魅せられるのだ。

だが、一方で、一部のロマンチストは『ヒトの祖先が海底に住んでいた頃に風景が明けの瑠璃色と被り、力を得て深海から浮上した時に初めて風景が東雲の茜色と被る。瑠璃色から茜色に変わる瞬間に、人のDNAに刻まれた遠い昔の、遊泳能力を得た頃の記憶を思い出し、力が漲って来るから、魅せられるのだ。』と言う。

前者と後者の感じるものは、自然の雄大さと己の活力、全く意見が異なる。

だが、そんな矛盾することを此処に居る者はどちらも同時に感じているようだ。

そして、聞こえるのは寄せては返すさざ波の音。

 

「絶景だな。」

「はい。」

「沙和もそう思うの。」

「写真撮っとかな、この風景の写真高く売れるやろうな。」

「たまには、こんな静かなのも良いもんだ。」

「ロックばっかり聞いているお前には丁度いいぐらいだろう。」

「ただただ、綺麗の一言しか出ない。」

「そういう時は、お前の方が綺麗だよと言ってほしいですわ。」

「朝早く起きて来て良かったな。」

「あぁ、洛陽ではこのような景色見れんからな。悪くない。」

「へえ、頭まで筋肉でできてそうなアンタでも、そう感性あるのね。」

「この景色も刹那であるが故の美しさかもしれぬな。」

「そうかもしれませんね。ひっとーさん。」

「母なる海から一日が始まるか。」

「詩人だな。劉邦。」

「劉邦兄様が言っても、ちゃんと絵になりますよね。羨ましいです。」

「これは確かに、早起きした甲斐があったわね。」

「地平線で朝日を見たことあるけど、水平線ってのも良いな。」

「うたまるお姉ちゃん、翠お姉ちゃん、璃々眠い。」

「風、寝るなよ。寝たら、勿体ないぞ。こんな景色そう見れるもんじゃないからな。」

「お兄さんは風を過小評価し過ぎです。こんな風景を前に風が寝るわけないです。」

 

防波堤で外史管理者と恋姫達が朝食を取りながら、談笑している。

この朝食を作ったのは料理が得意な峠崎丈二とうたまるの二人だ。

船の中にキッチンと冷蔵庫があったので、二人で簡単な朝食を作ったのだ。

簡単な朝食といっても、彼らのクウォリティーはとてつもなく高い。

粕汁、十六種雑穀米、ほうれん草のお浸し、湯豆腐と手の凝った和食だと思わせるようなモノばかりだ。

朝食は一日の始まりである為、しっかり食べておく必要があるというのが、峠崎丈二の持論だ。

その為、手の凝ったものを作ってでも、外史管理者や恋姫達にしっかり朝食を取らせたかったのだ。

だが、これから船に乗ると言うこともあり、そこまで胃に来る物は作っていない。

粕汁があるのは、うたまるの提案で、少々寒いからである。

正史は現在春先の3月末なのだが、この外史の季節は晩秋の11月だ。

この外史の時間がこの季節なのは外史管理者の求めている魚が釣れそうな時期だからである。

幾ら服を着ても、体の芯は寒くて仕方がない。だから、うたまるの作った粕汁のおかげで体の芯が温まる。

 

「……zzz」

「「「寝るなよ!」」」

「おぉ!!」

 

この場の全員にツッコミを入れられて、風は目を覚ました。

風がこんな簡単に目を覚ましたのは、ウケ狙いの狸寝入りだったからだろう。

雛里は風の思惑に気づいているのか、横でクスっと笑っている。

 

「雛里がようやく笑いましたね。」

「雛里ちゃんは笑っている方が良いの。」

「せやな。」

「さっきまで、何か落ち込んでいたみたいだしな。」

「黒山羊がまだ来ていないからだろう?」

「皆の為に用意に勤しんでいるとはいえ、雛里をほったらかしにするなんて、男の風上にも置けませんわね。」

「雛里、あの男、鈍砕骨に繋げて少し沈めて来てやろうか?」

「止めときなさいよ。沈める前に挽き肉になるってしまうと、後片付け誰がするのよ。」

「って、その前に、誰か、華陽に『お前、男じゃないだろ!』ってツッコメよ!」

「風は文官なので、ツッコミもマグロ拾いはパスするのですよ。」

「「「文官関係ないから!」」」

 

本当なら既に全員揃っていて、船の上で朝日を拝むつもりだった。

だが、唯一船舶免許を持っている黒山羊が来ていないのだ。

その為、予定と少し違い、防波堤の上で朝食となったのだ。

 

一台の原付きの黒○ョグが彼らの立っている防波堤に来た。

誰が運転しているか分からないほど荷物が積載されている。警察に見つかれば、即道路交通法違反で止められそうだ。そんな○ョグを運転しているのは、この外史を作った黒山羊だ。

理由は簡単。○ョグに綺麗にカッティングされ貼られたステッカーが特徴的だからだ。

前と左右に雛里のステッカーが貼られている。だが、それだけなら、世界中を探せば何処かに雛里の痛原付きはあるかもしれないが、『聖槍雛里騎士団 黒円卓』のステッカーは彼以外あり得ない。

そんな○ョグが朝日を見ていた彼らの前に止まる。

 

「待たせた。正史の釣具屋で生餌の値段交渉をしていたんだが、店長が意外に手強かってな。」

「お金持ってるんだから、普通に買えば良いじゃないっすか。」

「骸骨よ。関西人は大きな買い物するときに値段交渉するのは当たり前だ。言った所で変わらない。」

「黒山羊、俺らの為に準備してくれてるとはいえ、雛里ちゃんに寂しい思いをさせるのはどうかと思うぞ。」

 

狭乃狼の言葉で皆の視線が涙目の雛里に集まる。雛里は涙目だ。

『あぁ、雛里泣かせちゃった。』と思った一同はジト目で黒山羊を見た。

黒山羊は懐から鉈の様に大きなサバイバルナイフを持ち出し、切腹しようとしていた。

外史管理者は黒山羊に一斉に飛びかかり、なんとか取り押さえる。

 

「落ち着け!黒山羊!」

「そうですよ!アンタが切腹したら、アンタが管理している外史誰が管理するんですか!雛里ちゃん余計に泣きますよ!」

「ってか、そんなすぐ切腹するって言うな!」

「うぉぉぉぉ!!頼む!雛里に嫌われてはもう生きていけない!!」

 

血涙を流しながら、叫んでいる。毎度のこととはいえ、あまりにも不気味すぎる。

そんな泣き喚き叫んでいる黒山羊に一人の少女が近づく。

この少女こそ、暴走状態の黒山羊を唯一止めることができる世界にただ一人の少女だ。

そう、その少女の名前は龐士元、黒山羊が敬愛している君主、雛里だ。

 

「黒山羊さん。」

 

雛里のその一言で、喚いていた黒山羊が静かになる。

黒山羊を押さえつけていた外史管理者達は『やっと落ち着いたか』と安心し、彼から離れる。

雛里は服の袖で涙をぬぐい、正座している黒山羊に来ると、手を取る。

 

「グシュ、事故にあってなくて、良かったでしゅ。」

「Sieg Heil HINA……RI…N………ゴブフ!………ガクッ」

「脈がない!心臓マッサージだ!」

「黒山羊さんに馬乗りになっているberufegoalさん。テラ萌ゲヘェ!!……バタッ」

「患者が一人増えた!こちらも心の臓が動いておらぬ!」

「ひっとーさん、うたまるさんの方をお願いします。俺は船にAEDが積まれていたはずなので、それを取って来る。」

「お願いします。劉邦さん。」

 

その後、恋姫と外史管理者の介護の甲斐あって、黒山羊とうたまるは復活。

防波堤に停泊していた船に外史管理者と恋姫は乗り込み、沖の防波堤へと移動した。

 

沖防波堤。とは高潮を沖で防ごうとする為に建てられた物で、釣り人にとっては最高の釣りポイントだ。

なぜなら、川から流れて来るミネラル豊富な水がぶつかる為、植物プランクトンや海藻類の成長を促す。

そして、これらを餌にする動物プランクトンや、防波堤のコンクリートに張り付いている貝類や砂浜の砂の中に生息しているアオイソメ等の多毛類が繁殖しやすい。それらを餌としたり、海藻を隠れ家として利用する多種の小魚が生息し、それらを捕食する大型の魚が居るわけだ。海流の近くということもあり、回遊魚も回って来る。

その為、テトラポットの隙間には多種の根魚が隠れており、他にも外側に遠投すれば、青物が掛かり、内側に向かって投げれば、キスが掛かる。エギングをするのにも最適の場所で、この時期なら、アオリイカを狙える。また、蟹籠を沈めれば、ガザミ類も取れるだろう。

まさに、魚天国だ。

 

しかも釣り場としての設備も整っている。

宿泊施設はもちろん、台所、トイレ、宴会場、露天風呂まである。

宴会場は泳いでいる魚が見えるように海中にある。超が付くほどの豪華な設備だ。

だが、この沖防波堤とは違う所で釣りをする組が一組いた。

 

「華雄と桂花、開会後に俺と船に乗り込んでくれ。」

「もしや、あのテレビでやっていたトローリングという奴か?」

「アンタ、船の免許持っていないんでしょ?大丈夫なの?」

「なんでも、この船はかなり金を掛けているらしくてな。自立志向型らしくて、狙っている魚種を入れると、魚群を見つけて、ポイントまで連れて行ってくれるっていう特別性らしい。」

「ご都合主義も良いところね。」

 

そう、この釣行の発案者である狭乃狼と華雄、桂花の三人組だ。

トローリングしたいという華雄の願いを実現する為の釣行だ。故、彼ら3人は別行動となる。

何かあっても、困らない様に、船に積んであるPCでスカイプが出来るので、黒山羊が直接サポートする必要がない。

 

「狼兄様!この釣行の開会の挨拶をお願いします!」

「おう、………えぇ、ゴホン。本日はお日柄もよく……って、俺の柄じゃないし、小学校の校長先生のような長い挨拶は好きじゃない

 から適当な言葉になってしまうが聞いてくれ。恋姫無双に萌えて集まった者や恋姫達と俺は釣りが出来て感激だ。だから、今日は恋

 姫や同じ外史管理者の達と交流を深める為に、楽しく釣りをしよう!これで俺の開会の言葉は終わりだ。」

 

こうして、TINAMI外史管理者と恋姫達による釣行が始まった。

 

 

 

 

という訳で始まりました。TINAMI恋姫釣行!

 

今回の参加のTINAMIユーザーと恋姫は

龍  々:魏の三羽烏こと凪、沙和、真桜

berufegoal:焔耶

峠崎丈二:華陽(オリキャラ)

狭乃 狼:華雄・桂花

ひっとー:桃香

劉邦柾棟:白蓮・流琉

うたまる:翠・璃々ちゃん

骸  骨:風

黒山羊:雛里

となっております。

 

いやあ、マジでリクエストの恋姫が被らなくて助かった。

『マグロとかそういう系が釣りたい』というリクエストがあまりにも多かったので、ちょっと魚種を変えて書いて行こうと思いますが、参加者のご期待にこたえられるように頑張ります。

魚のトリビアとか混ぜながら、TINAMIユーザー達が釣りを通して、イチャイチャします。

黒山羊的にはこの話で漁業に興味を持ってくれると嬉しいです。

 

それと、今回この話ではいつもと違い視点無しの書き方でいきます。

黒山羊の国語力アップの為、ご協力お願いしますww

それでは、またお会いしましょう。

 

 


 
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