No.396405

異能者達の転生劇 Inネギま

コナミさん

第一部:人が死に、人ならざる者に出会い、異世界への生を与えられる。
自然の摂理に反した者が罰せられないのは間違っている。
第二部:紅き騎士は全てを消された上で異世界に放り出され、本来の主役は過酷な運命を課せられ、黒髪ツンツンは否応なしに巻き込まれる。
これは、狂いに狂った混沌とした物語

2012-03-22 21:34:52 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2090   閲覧ユーザー数:2060

めっさ短いです。

アンチをアンチ要素がありますのでご注意を

 

 

 信頼を得る為の時間の単位は『年』だが、信頼を失う時間の単位は『秒』だ。

 強固な信頼もほんのわずかな不審感の前では脆い。

 

「珍しいな。君達から話し掛けてくるとは」

「条約を結んではいるが、一応仲間だ。別におかしい事は無いだろう?」

 紅き翼(アラルブラ)の拠点でとても似通ってる二人が話し合っている。二人の周りにはまた個性的な面子が揃っていた。

 全員、不平等な条約を結んで入り浸ってる連中だ。

 普段、彼らは正規のメンバーとは全くと言っていいほど折り合わない。ナギの意見に反論し、さらに詠春達が反論する。そして中立として聞いている者達が互いを宥めるといった感じ。それが子供の喧嘩のようなものみたいで、古参のメンバーはほとほと呆れている。ジャック・ラカンはゲラゲラ笑っているが。

 

 そんなわけで正規メンバーである紅い外套の男に条約メンバーが話しかけてくる事なんて本当に珍しいのだ。

 

(ぶつかり合って深まる仲というのもあるか。少しは進展があったかな?)

 

 若干的違いな考えの紅い外套の男。頬が緩んだのを知る者はここには誰にも居なかった。

 

「それで? 用件は何だ?」

「そうだった。危うく忘れてしまう所だったな」

 

 もう一人の紅い外套の男がキザったらしく言う。因みに同じ顔をしてはいるが、いつも皮肉そうな顔を浮かべてる為、ある程度区別がつく。

 皮肉な笑顔を崩さないまま、彼はその言葉を発する。

 

「お前は『魔法使い』についてどう思う」

 

 少し何を言っているのか理解し辛かった。『魔法使い』という人種の事を指しているのか、魔法という異能を使う者全ての事を言っているのか、はたまた紅き翼のメンバーを指してるのか。

 

「どう、とは?」

「わかっているだろう? この戦争を引き起こした自称(・・)『正義の魔法使い』の事だ」

 

 どうやら1番目の事らしい。

 紅い外套の男はそう理解し、しばし思考を張り巡らせる。

 戦争も終盤に入り、明日謎の組織『完全なる世界』の本拠地に攻撃を仕掛ける予定だ。だからこそ何故、今このタイミングでその話題になったのかわからない。まるで『魔法使い』を馬鹿にしてる言い方だから、聞く人によって気を悪くするかもしれない。

 

「……質問の意図が見えないのだが」

「やはりというか、そうとう鈍いな貴様は。良いだろう。無知な頭にも叩き込めるよう、順序を立って話そうか」

 

 訂正。こいつは皮肉だけじゃなく何処かの金ぴかのような傲慢さがある。

 

「この世界の魔法使い共は『正義』というものを完全に穿き違えている。正義というものは決して一つだけでは無い。人の数ほどあるものなのだ。だが奴らは、己の正義を人に押し付け、束縛している。事実、旧世界の一部の地域では強力な結界を張り、その地域の一般人達は認識阻害により普通の異常がまともに認識できなくなっていると聞く」

「なるほどな。魔法使いの社会に不満があると。大方、今ここにいる連中全員がそういう思念だと言う所か?」

 

 確かによくナギの主張を真っ向から否定する顔が揃ってる。

 紅外套の皮肉な方はいつもどおり(とかわらない)の含みのある笑みで頷いた。

「それを踏まえて、正義の味方(キサマ)はどう思う」

 

 紅外套の皮肉な方は、恐らく紅い外套の男を自分達の仲間に引き入れたいのだろう。

 もう一度思考にふけり、

 

「悪いが、俺は賛同しかねる。別段彼らに恨みもなければ恩もないが」

 それだけ言って、(きょてん)の掃除でもしておくかと(きびす)を返して行く。が、

 

「……何のつもりだ?」

「それはこっちのセリフだぜ?」

 

 両目を覆う眼帯をする女がナイフを男の首に添える。振り返らずともどんな表情をしているかがわかるぐらい殺気を放ってるのが男の不快感を煽り立てた。

 だが、紅い外套の男は不快感の中でも顔を崩さず平然としていた。

 

「……っ!」

 

 その様子に怯んだのは眼帯の女の方。

 

「気に入らないものは即座に排除、か……。前々から思っていた事だが、君達と魔法使いは全く違うのだな。あり方が違うのなら君達の言い分も幾ばくか共感できる」

 

 しかし、と続ける。

 

「魔法使いは君達が思ってるほど悪いものじゃない」

「本気で言ってるのか? あんな奴ラはどうしようもない偽善者集団だぞ?」

「返して言うが、人を助けて何が悪い?」

「何?」

 

 今度ばかりはその場にいる紅い外套の男以外の全員が反応した。主に憤りや期待からの失望の類だ。

 だが、彼の言う事に反論できない。

 

「君達の言い分では彼らが人を助ける事が『悪』だと聞える。俺はそれが釈然としない」

「あ、あいつらは、自分の名誉の為に動く偽善者だからだ……!」

「偽善者が人助けしてはならない通りは無いだろう? そもそも、この戦争を止めたいと言う者達も何かしらの思惑があるもの。俺やナギ達、君達も言える事だ」

 

 とうとう誰も言い返せなくなった。

 紅い外套の男は首に添えられた、ナイフを持つ女の腕を退かして立ち去ろうとした。

 しかし治まりのつかない彼ら――あえて『(アンチ)魔法使い組』と名付けておこう――は各々自分の武具に手を伸ばし、いつでも始末できるように気を引き締める。

 

 紅い外套の男もその気配を感じ取り、漆塗りの和弓を投影し、頭の中で白と黒の中華剣の設計図を思い描き、さらにそれを矢の形に変形させる。

 

 一触即発。

 両者の間にそんな空気が漂った。

 

「―――何してるの?」

 

 しかし空気を打ち砕く者が居た。

 その人物は、槍のように尖った杖を背負った赤みがかった銀髪の少女、ミスティア・ボウ。紅き翼の一柱を担う一人。

 そんな堅苦しい肩書きを持つ彼女が杖に魔力を纏わせて立っていた。

 

「もう一度聞く。何してるの?」

「……何でもねぇ。こいつとちょっと話しつけてたとこだ」

 (アンチ)魔法使い組を代表して眼帯の女が言う。

 ミスティーは目を細め、杖を降ろす。

 

「こっちがアンタ達探してんのに何遊んでんのよ……」

「面目無いな……。謝罪する」

「ほぅ。私達に用とは、大方明日の決戦の事か?」

 

 シニカル赤外套が変わらず尊大な態度で問う。

 

「それなんだけどさ、大幅な変更をすることにしたのよ」

「変更だと? 随分と計画性の無いものだ」

 

 

「援軍の要請を増やしたから予定時刻がすこし遅れる事と、アンタ達は明日の決戦には出れない事。以上。行くわよアーチャー」

 

 それだけを告げるとミスティーは紅い外套の男改めアーチャーの手を引く。少しグラつきながらもアーチャーは投影していた和弓を消して手を引かれるままに着いて行った。

 

「……待て」

 

 二人を止める声が後ろから聞える。が、ミスティーは気に止めずにアーチャーを引いて行く。

 眼帯の女が両手にナイフを持って飛び掛った。が、ミスティーがあらかじめ杖に込めていた魔力の塊を眼帯の女にぶつけさせる。安直な攻撃に眼帯の女は魔力を殺した(・・・)が、杖で脚払いされ体勢を崩された所に白く光る雷が轟く。

 

 雷光と轟音が過ぎ去った後、眼帯の女は熔けかけたナイフのカケラと彼女の衣服の端であろう焦げた繊維だけを残して消えていた。

 

「もちろん協調性が無いから外すってのもあるんだけど」

 

 たった今ニンゲンを焼き消したというのに冷淡な声で告げる。

「アンタ達は紅き翼(アラルブラ)で一番弱い。戦場で人をたくさん殺したんだろうけど、あれは蹂躙と称したただの弱い者イジメ。イチオウ危険だから戦場から離すって建前はあるけど、ナギ達は優しいからね。はっきり言って、足手まといの方が役に立つわ」

 

 それじゃ、と言って歩の向きを元に戻して進む。 

 ミスティーの言った事は事実だ。明日戦う者達は今までの相手とは桁違いで、イタズラに人の死なんて見たくない。

 しかし、ミスティーはナギ達の伝言を誇張した。

 そこには理由や思惑は無い。彼女の、この世界を知ってる者(・・・・・・・・・・)の本能がそうした。

 ナギの伝言を素直に言った所で、(アンチ)魔法使い組は無理やり介入してくるだろう。

 そうなる事がミスティーはイヤだった。

 そして、力の差を見せ付ける為に見せしめとして眼帯の女を殺した。

 結局、彼女が語った事は正論であり自分の為の詭弁である。

 

 一方苦々しく顔を歪ませているシニカル赤外套は黙っていられない。

 

「―――……っ!」 

 

 だが言う言葉が見つからない。

 言い負かされた悔しさの一心で頭に浮かぶ単語を探して考えて見つけようとして検索して絞り出して、思いついた。

 

「これだけは覚えておけ! 貴様は我らとなんら変わらない存在だという事をっ!!」

 

 それは単なる捨て台詞。

 

「……?」

 

 しかし、それに反応する者が居た。アーチャーだ。

 聞こうにも聞ける雰囲気ではないので、この時は黙る事にした。

 取り残された(アンチ)魔法使い組は、以降紅き翼から姿を消し、その後の詳細はわからない。

 

 後日、どうしてもあの時の赤外套の言葉を忘れられず、彼はミスティーを問いただしてみるが、

 

「……忘れて。貴方が知るべきじゃない事よ」

 

 結局はぐらかされて終わった。

 ただ、その時の彼女の表情をアーチャーはどうしても忘れる事ができなかった。

 

 この時から、アーチャーはミスティーを心から信じれなくなった。

 この時のわだかまりが今後どう影響するのか、まだわからない。

 

 

 

 わたくし、上条当麻はどうすればいいか全くわかりません。

 男子寮のわたくしの根城に戻ってきたら、鍵が開いていて誰かが入っていた。

 そこまではまだ対応できる。隣人の土御門や青髪が勝手に入ってくることが多いから。たまに吹寄や姫神も。

 ……ですが、

 

「何で女の子ぉ――――――――――――ッ!?」

 

 何も無い所からマジックのように女の子が出てきたら、どう対応しますか……?

 

 

 

 頭がパンクしかけている上条は一度頭を切り替え、まじまじと虚空から現れた少女を見る。

 中華系の顔立ちで髪をお団子状に二つに分けて三つ編みのツインテールが特徴的な、見た所中学生ほどの少女。白衣のような服の上にローブを羽織っており、後ろに機械を背負っているが、さっき上条が突き飛ばした衝撃で機械が壊れたらしくぶすぶすと煙を噴いていた。

 

「……高そうだな」

 

 上条はそう呟くとサァーと顔が青ざめた。仕送りは来月の初め。今日は今月の初め。

 不幸だ……と顔を俯かせる。

 そんな時、

 

 バヂバヂっと少女の背負った機械が火花を噴く。

 マズっ!? と思った上条は機械を少女から引き剥がそうと手を伸ばす。

 リュックサックのように背負われてる機械は思いの他はずしにくく、仕方なく少女の身体を起き上がらせ慎重に機械を降ろして、ゆっくりと少女を引きづりながら機械から距離を取った。

 

「…………」

 

 機械は最後に軽く火花を上げると、ぷすぷすと煙を上げるだけ。

 

「……はぁぁぁぁぁぁ……人騒がせな……」

 

 大きくため息を吐いた。

 ここ最近の運勢が本当に底に着いたか? と自嘲しながら頭を垂れる上条。

 

「やれやれ。失敗作だったか」

 

 彼の膝にいる少女もそう呟いた。

 

 ん? と目を開く上条。目に飛び込んできたのは機械に余計なショックを与えないように用心して引きずってきた少女のくりくりとした瞳。いつの間にか目が覚めていたらしい。

 

 今の二人の体勢。

 上条。床に足を伸ばして座っている。

 謎の少女。さっき慎重に運ぶ為に座ったまま引き摺ったので上条の膝辺りに少女の頭が。

 プラス上条が少女に顔を向けて、さらに少女も、ん? と思って上を見た為、目が合い、しかもかなり近い。

 イコール。

 

「へ、変態ネ! アイヤァァァ―――――――――ッ!!」

 

 無防備な顎を打ち抜かれてノックダウンした上条が起きたのは、それから2分ちょっと後。

 

 

 

 

 上条が起きてさらに3分後、

 

「―――で、貴方様はどちらさんでせう?」

 

 謎の少女と卓袱台を挟んで向かい合っていた。

 しかしその問いに謎の少女はあっけらかんと答えた。

 

「火星人ネ」

「今時そんなジョーク通じたら奇跡だな」

 

 全く持ってこの少女を掴めない。

 軽くため息を吐き、ごそごそとポケットからケータイを取り出す上条。

 卓袱台を乗り出し素早くケータイを奪う少女。

 

「……」

 

 少女の勝ち誇った顔を見つめる上条は仕方なく部屋に設置されている電話に手を伸ばす。

 受話器を取り、耳に当てたが、ピー、という発信音が聞えず何故だと思っていると、電話線と電源が引き抜かれていた。犯人は恐らく明後日の方向を向いて下手な口笛を吹いている少女。

 

「……」

 

 しばらく考え、電話ボックスにかけようか、と思い部屋から出る上条。

 しかしすぐに帰ってきた。よくよく考えれば、外は雨が降ってるし、電話ボックスへ行って帰ってくる間に少女が逃げ出すかもしれないから。

 スタスタと少女の元へ来て、無言で手を差し出す。

 少女はしばらく手の平を見た後(のち)、

 

「に、2000円で何とか……!」

「カツアゲじゃねぇし! つか、返せよ俺のケータイ!」

「イヤネ。ケータイ返したらケーサツ呼ばれるヨ」

「いや、学園広域指導員の高畑に―――」

「もっとイヤネ!」

「じゃあデスメガネに―――」

「変わらないヨ!」

「……一つ聞いていいか?」

「うわっ、いきなり神妙な顔つきになったネ」

「制服に白衣って……苛められないか?」

「この場面でとてつもなくどうでもいい事を聞いた!? というか、キャラが崩壊してないか……?」

 

 実を言うと、おちょくられた事をかなり根に持っていた。

 思いの他、少女の息が切れるぐらい仕返しできて満足できた上条は本題を切り出す。

 

「お前が火星人って事は後でじっくり聞くとして、俺の部屋に何の用だったんだ?」

「……」

 

 だんまりを決め込む少女。

 

「せめて理由が聞けなきゃ何にもならないんだけど」

 

 万引きを厳しく問い詰める万引きGメンのようなこの言い方は、昔、万引きに間違われてじっくりと聞かされたのを自分なりにアレンジしてみたのだ。

 しばらく沈黙が続いたが、ついに少女の口が開く。

 

「実は……」

「実は?」

 

 少女の眼は水槽に入った魚のように泳ぎ、

 

「実は……、2年ぐらい前に一人の高校生と小学生がいた。その二人は血の繋がってない兄妹で、それでも二人は幸せだった。しかし幸せだった二人に悲劇がっ! 親の勤めている会社が経営破綻し、リストラの嵐に巻き込まれ教育費が払えなくなったから、二人は魔帆良から一度身を引かなければならなかった。さらに二人は様々な経緯で別れないといけない事になってしまった。それでも、兄妹はまた会おうと約束した。互いの想いを信じて。しかし、それは叶わなかった。兄は持病の肺炎で呼吸困難になり、兄は呆気なくぽっくりと亡くなった。最愛の妹を残して。こうして悲劇のヒロインになってしまった妹は家を飛び出し、名前や戸籍、それら全てを偽装し、自立できるように生計を立て、小さな露店を開くぐらいの力をつけた。それがほんの1年前。それでもなお妹は死んだ兄を忘れられず、せめて兄がいた事を証明できるものを探した。探し物が見つかる可能性がある場所は簡単に見つかったが、探すのは容易じゃなかった。何故なら、そこはもう他人(よそ)のものになってしまっていたから。いくら妹が『探させて欲しい』と言っても無駄。妹は『彼の妹』であるという事を証明するものを全て捨ててしまったから。後から後悔する妹は最終手段をとる事にした。……言わなくてもわかるだろう? その為に己の手が汚れるのを厭わず技術をつけ、間取りをしっかりと調べ倒し、万全の体制で挑んだのだ。しかし、結果はこの通り。これから私は拘置所に身を置く事になるだろう。だが私は貴方を恨んではいない。私の独善的が招いた結果なのだから、後悔はしない。『何であの時罪を犯したのだろう』と唇を噛んでいつ拘置所から出れるのかわからないが、いつまでもそうやって待ってるヨ」

 

 半分以上棒読みの文を読み終えた少女。

 それに対し上条は、どう答えてやれば良いのかわからなくなった。

 こうも堂々とデマカセをツラツラ喋られれば、混乱するのも無理はない。例え目が泳ぎ、棒読みでも、妙なリアルさがあるから本当の事かもしれないし、さらに逆に全部嘘かもしれない。

 よって、

 

「お、オマエも辛かったんだなー。調べたいんならどうぞご勝手に」

(ちょろいネ)

 

 上条の反応に少女は内心ほくそ笑んだ。

 では早速、というように少女は素早く部屋の隅々を調べるフリをする。

 一方、上条は、

 

「……不幸、なのか……?」

 

 未だに混乱しながらそう呟いて、キッチンへ向かった。

 

 

 

 少女の作業が一段落した所で、何をされてるのか全くわかってない上条は少女に呼びかける。

 

「メシ作ったけど、食うか?」

「え」

 

 意外そうな表情をする少女。

 当然といえば当然の反応といえる。誰が好き好んで見知らぬ怪しい者に差し入れする奴がいるだろうか。

 

「嫌いなものが入ってたらごめんだけど」

「……特に嫌いなものは無いネ」

 

 出された料理は簡素なインスタントラーメン。

 少女は訝しげに席に着き、行儀良く手を合わせてラーメンを啜った。

 店で出されるものと引けを取らないほど工夫がこしらえている。

 

「まぁ、路面の出店ほどじゃないけど、一応食えるもんだと思うぞ?」

「ムムムっ。もしや超包子(チャオバオズ)の客かナ?」

「ああ。仕送り貰った時によく行ってる」

 

 すると少女の顔が輝いた。

 少し濃い目のスープまで飲み干し、上条が器を片付けていた時に少女が唐突に言う。

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした」

「じゃ、帰るヨ」

「いきなりだな!?」

 

 そう言いながらいそいそと機械の残骸を片付ける少女。ほどなくして片付け終え、玄関まで見送る上条。

 

「雨降ってるから傘持ってけ」

「そこまでもらったらバチが当たるヨ」

「良いって。風邪ひいたらこっちも困るし」

 

 結局傘を押し付けられ困り顔だった。

 

「俺の方で何か見つかったら連絡するからな」

「……お人好しって言われないか?」

「10人中10人がそう言うよ」

 

 上条がそう返すと少女はクスリと笑う。

 少女はまたネ、と言って部屋から出た瞬間、いきなり踵を返して、

「言い忘れてた。私は超鈴音(チャオリンシェン)。それと、またのご来客、お待ちしてるネ」

 

 と言ってまたくるりと前を向いて帰って行った。

 

「……あそこの店員さんか?」

 

 詳しくはわからないので考えることを止めた上条は、この後、何故他人に用事を押し付けてまでここにいるのかをイヤでも思い出すことになる。

 


 
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