No.376451

真・恋姫†無双~恋と共に~ #69

一郎太さん

拠点ではなく、本編です。
今回は本当に苦しんだ。
どちらの道を選ぶのが、いまの一刀らしいのかについて、本当に迷いました。
それでもこの道を選んだことを、後悔はしていない。
この流れをお気に召さない方も、当然いらっしゃると思いますが、その点については、否定的なコメントはご遠慮ください。

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2012-02-11 23:36:00 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:8810   閲覧ユーザー数:6162

 

 

 

#69

 

 

対袁紹戦の事後処理もとうに終え、助っ人として参陣していた星も、桃香のもとへと旅立った。その時にひと悶着があったのだが、それはまた別の機会にお話しするとして――――――。

今日も今日とて政務政務―――を終えた一刀は、中庭にいた。

この場所に来る途中、声が聞こえて覗き込んだ練兵場では季衣と流琉が親衛隊の訓練を行なっていた。また本を読もうと書庫に向かえば、風と稟がいたのだが、荀彧も居た為に会話もそこそこにその場を離れた。凪たちはいつものように街の警邏に向かい、春蘭と秋蘭は街の外で兵の調練を行なっている。霞は騎馬隊の訓練がてら遠乗りに出かけるという話を本人から聞いている。

 

 

「みんな忙しいな………って、俺もさっきまで仕事だったんだけどな」

 

誰にともなしに呟く声は、虚空へと消えていく。見上げれば、上空に鳶が円を描いていた。

しばらくその様を眺め、視線を下げたところで彼は気づく。

 

「あれは………」

 

中庭の隅、陽が当たるとも当たらないとも言えない絶妙な位置に建てられた四阿に、ひとつの影。彼は歩を進め、その影のもとまで辿り着いた。

 

「よっ。休憩中か?」

 

声を掛けられて顔を上げたのは、城の主であり、一刀の主でもある曹孟徳その人であった。彼がやって来るまで読んでいた本から目を離し、口を開く。

 

「いえ、今日はもうおしまいよ。大きな仕事がいくつかひと段落したの。よって午後は休み、というわけ」

「なるほどな」

 

ふむふむと頷きながら、一刀は華琳の向かいに腰を下ろした。彼女もそれを受け、パタンと本を閉じる。

 

「貴方こそ休憩中かしら?」

「いや、俺も今日の分はおしまいだ。何かあったら言いに来るようには伝えてあるけどな」

「ふぅん」

 

特に感想を漏らすことなく、華琳は頬杖をつく。その瞳はじっと一刀に注がれ、彼もなんとなしに見つめ返した。

 

「………」

「………」

 

しばしの無言の時間。どれほど経過しただろうか―――と形容するほどもない短い空白の後、再度華琳は口を開く。

 

「つまらないわね」

「何が?」

「貴方よ」

 

いきなり大層な事を仰られる。苦笑しながら返す一刀に、華琳は言葉を続ける。

 

「この私がじっと見つめているというのに、何の反応も示さないんだから」

「なんだそりゃ」

 

困ったように溜息を吐く。

 

「春蘭や桂花みたいに赤くなったら面白いのに」

「そういうのは、俺に似合わないだろう?」

「確かにね」

 

一刀の応えに、華琳は微笑む。ここでようやく、一刀は今の華琳がどちらのモードなのかを理解した。いまは少女としての華琳のようだ。いったいどんな事を言い出すのか。そんな事を、一刀は考える。

 

「いいわ。一刀、貴方も暇なのでしょう?」

 

そんな彼の内心にも気付かず、彼女は話題を変えた。

 

 

 

 

 

 

「まぁな」

「だったら、これから街に行くわよ」

「いいけど、なんでまた?」

「秋蘭と逢引をしたのでしょう?聞いたわよ。秋蘭が貴方に想いを打ち明けたって」

「え……」

 

華琳の言葉に、一刀は呆ける。何を話してるんだと悪態を叫びたくなる心を抑え、彼は頭を抱えた。

 

「前々から貴方に惹かれてる事は分かっていたけど、まさかあの娘がね」

「からかってやるなよ?」

「当り前じゃない。あの娘はちゃんと言っていたわ。私を愛していると同時に、貴方の事を愛している、って」

 

他人から聞くのは、本人から聞くのとはまた受け取り方が異なる。少しだけ頬が熱を帯びた。

 

「で、貴方も受け入れてくれた、って。恋から鞍替えしたのかしら?」

「冗談でも怒るぞ、華琳。………まぁ、ちょっとした心境の変化かな」

「へぇ?」

「さっき華琳が言ったことを、そのまま秋蘭に言われたよ。その時に思ったんだ。こんなに俺の事を想ってくれている娘を、俺は拒絶するのか、ってね。風にも散々言われていたんだけどな。2人同時に受け入れるくらいの気概を見せろって。でも、俺はそれを冗談と―――あえて冗談と受け止めて、風の事も先延ばしにしていた」

 

華琳は言葉を挟まない。滔々と述べられる彼の言葉に、じっと聞き入っている。

 

「それで、この間秋蘭に告白されて、覚悟を決めた。共に過ごした時間はそれほど長くはない。それでも、俺は彼女を愛するに足る理由を築けるくらいには、過ごしてきたんだ。黄巾党の戦、反董卓連合の戦い、そして今………………俺を愛してくれるというのなら、俺も精一杯の愛を返そうと、俺は決めたんだよ」

「とんだ女たらしね」

「そんな言葉も気にならないくらいには開き直ったさ。俺を愛してくれるなら、俺も心からの愛を返す。それだけだ」

「あら、格好いい」

「茶化すな」

「はいはい」

 

溜息を吐きながらも、華琳の微笑は崩れない。彼女がいったい何を考えているのかは、一刀には分からない。それでも、その感情は自分に対して否定的なものではない事だけは、彼にも理解できた。

 

「では、秋蘭が求めたら、貴方は秋蘭を抱くのね?」

「ぶっ!?」

 

いや、華琳の考えは分かった。悪戯的な思考が、いまの彼女には浮かんでいる。

 

「どうなの?」

 

ニヤニヤと一刀を見つめる笑顔。どう返したものかと散々悩み、

 

「………………………………それはまた、追々かな」

 

彼は答えを先延ばしにした。

 

「ヘタレ」

「うるさい」

 

眼を逸らして負け惜しみを呟く彼に、華琳は心底楽しそうに笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

中庭での会話を経て、一刀は華琳と連れ立って街へ繰り出す。よく春蘭や秋蘭と出かけている事は知っていたが、こうして一緒に歩くのは初めてだった。

 

「どこに行く?」

「あら、こういう時は男が先導するのでしょう?えすこぉと、だったかしら?」

「特に思いつかないんだが………」

 

華琳の要求に応えられる経験を、彼は持たない。理由は明白だ。恋たちと旅をしていた時は基本的に食べ物屋がメインだった。秋蘭や沙和と出かけた時は彼女達に引っ張られ、風と出かける時も、大抵は食事休憩か街の人間との会合に向かうかで、デートらしい事はしていない。

 

「なによ、武や智に関しては一流でも女の扱いは、からっきしみたいね」

「面目ない」

「いいわ。ならば、私が行きたい場所に行くわよ」

「それでお願いします」

 

結局、これまでと同じようになった。

 

 

最初にやって来たのは、高級そうな服屋だった。沙和が好みそうなものはなかったが、それでも十二分にお洒落なものが揃っている事が、ひと目で分かる。

 

「これなんかどう?」

 

鏡の前に立って服の上から衣類をあてる華琳は、一刀に問いかける。

 

「………」

「答えなさいよ」

「恥ずかしい……帰ってもいいか?」

「ダメよ。ちゃんと貴方の好みを言うまでは帰さないわ」

 

鏡の傍の台に置かれているのは、色とりどりの女性用下着。一刀は羞恥心を堪えながら、返答をする。

 

「………これとか」

「あら、あまり華美でない(シンプル)なものが好きなのね」

「派手なのは、あまり好きじゃない……」

「そう、だったらこういう系統のものにするわ」

 

一刀の答えに、華琳は店員を呼び、台の上からいくつか戻させる。残っているのは、彼が言ったようにシンプルなデザインのものばかりだ。

 

「じゃぁ、次。どの色がいいと思う?」

「………………勘弁してください」

 

それから1時間ほど、華琳の下着選びに付き合わされた一刀は、精神的にボロボロだった。

 

 

 

 

 

 

ホクホク顔の華琳の横で、服屋の袋を持つのは一刀。男としての尊厳を踏みにじられたような心境だ。次はどこに連れて行かれるのだろうかと内心ハラハラしていると、横合いから声を掛けらえる。

 

「おや、北さんじゃないか」

 

見れば、いつも点心を買う屋台の女店主だった。気づけば、よく通る通りに来ていたらしい。

 

「あぁ、おばちゃんか」

「あらあら、今日も別の女の子かい?北さんもモテモテだねぇ」

「ちょ!?」

 

どうやら彼女は、街を治めている人物の名前は知っていても、その顔は知らないらしい。首を刎ねたりしないよな。そんな思考が首をもたげるが、それも杞憂に終わる。というより、さらなる爆弾が投下される。

 

「えぇ。彼がモテ過ぎて困るの。ま、私が本妻なのだけれどね」

 

言いながら、華琳が一刀の腕に抱き着いてきたのだ。

 

「あらあら、程さんに夏侯淵将軍に、あと于禁将軍もだったかい。あの御方たちを差し置いて本妻だなんて、いい心意気じゃないか」

「でしょう?でも私は気にしないわ。何人妾を作ろうと、みな平等に愛してくれるならね」

「言うじゃない。よかったね、北さん。こんな心の広い女の子なんて、そういないよ?」

「あは、あははは………」

 

彼はただ、乾いた笑みを零す。

 

 

屋台の女店主と別れ、再び街を散策する。依然、一刀の腕は華琳にとられたままだ。

 

「よく怒らなかったな」

「何が?」

「さっきのおばちゃんだよ。華琳が曹操だって知らなかったみたいだし」

「知らないのならば仕方がないわ。なによ。私が首を刎ねるとでも思ったのかしら?」

「いや、そこまでは……」

 

考えてました、すみません。心の中で謝罪をしながら、一刀は話題を変える。

 

「それじゃ、次はどこに行く?」

「あら、貴方は妻の尻に敷かれるのが好きなの?少しは甲斐性を見せなさい」

「………わかったよ」

「しっかりえすこぉとしてね。旦那様」

 

語尾に音符でもつきそうな口調の華琳の言葉に少しだけドキリとしながら、一刀は街の店の知識を総動員させるのだった。

 

 

 

 

 

 

その後もいくつかの店を回り、一刀と華琳は茶屋に訪れていた。風とよく行くような大衆茶屋ではなく、その門構えからひと目で高級茶屋とわかるようなそれだ。

 

「貴方もこういった店を知っていたのね」

 

運ばれてきたお茶を口に運びながら、華琳は言う。どうやら、グルメの彼女の舌に合う味だったらしい事に、一刀は胸を撫で下ろした。

 

「まぁな。来たことはないけど」

「あら、そうなの?」

「俺がこんな高級そうな店に来るような人間に見えるか?」

「見えるわよ。その服装ならなおさらね」

「………」

 

言われて思い出す。そういえば、自分はいまスーツを着ているのだったと。

 

「それにしても」

 

しばらく茶と会話を楽しんだ後、華琳が呟く。

 

「こんな風に遊んだのは本当に久しぶりだわ」

 

そこに何かを感じ取ったのだろう。一刀はその言葉に対して、すぐに言葉を返さない。華琳も返事を要求する事はせず、言葉を続ける。

 

「春蘭と秋蘭と共に起つと決めてからは、こういった風に過ごす事はほとんどなかったわ」

「そうか……」

「えぇ。官に属し、領地を与えられ、屑みたいな城の者の排除に明け暮れ、賊を討ち………こうして本拠を移動するまでは、そういった事にかけられる時間がなかったの」

「………」

 

なんでもない事のように言うが、一刀は考える。果たして、それはどれほどの労力を要するものだったのだろうかと。少女である『華琳』を捨て、覇王として生きると決めた年端もいかない少女。彼女を想い、そして、彼女がいまここに再び現れている事を、ただただ嬉しく思う。

 

「だからかしらね……貴方という存在に、甘えている自分がいるのは」

 

自嘲にも似た呟きに、それ以外の感情を感じ取る。だからこそ、次の言葉が自然と流れ出た。

 

「男として光栄だな、それは」

「えぇ。光栄に思いなさい」

「あぁ」

 

短い言葉。だが、華琳にとってはそれだけで十分だったようだ。いまの『華琳』を受け入れてくれる、一刀。覇王でもなく、主でもなく、ただひとりの少女としての自分を受け止めてくれる彼に、彼女は微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

華琳との逢引も終わりを迎える時間が来たようだ。気がつけば、2人は城門まで戻ってきていた。門番の会釈に目礼で返し、門をくぐる。特に言葉もないまま、彼らは城内を進む。

建物に入ろうかという頃、一刀は切り出した。

 

「今日は楽しかったよ。誘ってくれてありがとうな」

 

だが、華琳は言葉を返さない。茶屋を出てからは絡み合わせる事のなかった手が、そっと彼の袖を引く。

 

「……」

 

そこに込められた感情を無視できるほど、一刀の人間は出来ていない。彼は右手を掲げ、華琳の頭にかざした。

 

「………一刀?」

「――――――と、言おうと思ったんだが、どうやら俺は、自分が思っているよりも寂しがりのようだ。華琳ともう少し一緒にいたいと主張する自分がいるわけだが………」

 

その言葉の意味を理解し、そっぽを向き、僅かに頬を赤らめる男の横顔に笑いかけながら、華琳は返す。

 

「あら、武や智に関しては一流の貴方でも、人並みなところがあったみたいね」

「恥ずかしいんだから、言わないでくれ」

「いやよ。でも、そうね………今日は誰も閨に誘っていないし、貴方がどうしてもと言うのなら、今晩は貴方と過ごしてあげてもいいわよ?」

 

不敵な笑みを浮かべ、まったくの上から目線。いつもと同じ微笑みが、僅かに異なる。ただ愛らしく、愛おしい。城壁の向こうから射す夕陽の光に輝く髪を撫でながら、一刀は口を開いた。

 

「今日はどうしても華琳と過ごしたいんだ」

「仕方がないわね。特別に許可するわ」

 

彼女もまた、彼の心遣いを理解する。その笑みは趣を変え、それは、彼が浮かべるものと同じになった。

 

「感謝するよ」

「えぇ、存分に頭を垂れなさい」

 

言って、華琳は城内へと歩み入る。右手で彼の手を―――袖から握り替えた大きな手を握りながら。

 

「仰せのままに、姫」

 

小さく柔らかい手に引かれ、彼もまた歩を進める。

 

 

 

 

 

 

珍しい事に、華琳の私室までの道すがら、城の誰かと―――もちろん文官や侍女を除いて―――すれ違う事もなく、目的の部屋へと到着した。

 

「さ、入って」

「あぁ」

 

部屋の主の許可を受け、その一室に踏み入る。初めて入るその部屋は、思っていたよりも物が少ない。一刀の部屋にもあるような机に、茶を飲む為の、少し大きめの円卓。そんななかでただ、ひと際大きな寝台だけは存在感を十分に放っていた。

 

「(春蘭と秋蘭をまとめて相手にする時もあるって聞いたな、そういえば………)」

 

弟子との会話を思い出し、一刀は苦笑する。身振りで促された一刀が卓に着くと、華琳は棚から茶器を取り出した。

 

「待ってなさい。茶を入れるわ」

 

湯を沸かしに向かうのだろう。一言だけ残し、華琳は部屋を去る。

 

「………なんだかな」

 

誰ともなしに呟く。

 

 

華琳が戻ってきたのは、15分ほど経ってからだった。茶器と茶葉をセットし、茶を用意する。言葉はないが、聴覚の代わりに嗅覚が働き始めた。部屋に茶の香りが漂う。華琳の事だ。

きっと、最適のタイミングで茶を淹れるのだろう。そんな事を考えながら、準備を進める華琳の手元をじっと見る。その綺麗な手に違わず、その所作のひとつひとつが美しい。

思わず見とれる一刀だったが、華琳の言葉で我を取り戻す。

 

「さぁ、出来たわよ。どうぞ召し上がれ」

「頂くよ」

 

差し出される器を手に取り、一刀はゆっくりと口に運ぶ。茶器が口元に触れると同時に茶葉の香りが鼻孔をすり抜け、得も言えぬ感慨を思い起こさせる。唇の隙間から舌の上を流れ、喉を通る時にも、その香りは嗅覚を優しく撫でた。

 

「………美味しいな。こんなに美味しい茶を飲んだのは初めてかもしれない」

「当然よ。私が淹れたのだもの」

 

言葉尻とは違い、その声音に傲慢な響きはない。

違いないと一刀は返し、再び茶を口に運ぶ。そして浮かぶ、静かな時間。会話はない。それでも、2人の間に気まずい雰囲気はない。そのようなものが、あるはずもない。次第に部屋に射す赤い陽の光が翳っていく。互いの顔もあまり見えないような空間で、彼は1度だけ、茶を重ねる。

 

 

 

 

 

 

陽は完全に落ちた。会話もないまま、ただ時間だけが過ぎる。窓から空を見上げれば、きっと星は見えない。何故なら、茫漠とした月の光が部屋にうっすらと射し込んでいるのだから。

 

「………」

 

組んでいた脚を解き、言葉もなく、華琳は立ち上がる。

 

「………」

 

ついていた頬杖を放し、言葉もなく、一刀は立ち上がる。

対面に座っていた2人は円卓をまわり、丁度その中間で足を止めた。華琳の右手が、一刀の左手へと伸び、そっと握ったかと思えば、指を絡ませる。それに抗うことなく、されど解けてしまわないように一刀は左手を持ち上げ、床に向かっていた指を互いの胸の前で上向かせた。

 

一歩。

 

どちらが歩を進めたのか分からないほどの小さな距離。2人はその距離を詰め、視線を交える。その瞳に何を読み取ったのかは、本人たち以外に知る由はない。だが、そのような事など、彼らには些事に過ぎない。

一刀は空いている右手を上げ、華琳の左頬にそっと添える。大切な宝物を扱うかのようにゆっくりと撫ぜるその感触に、華琳は眼を細め、もう一歩だけ踏み出した。もはや、2人の間に距離はない。一刀の手を逃れるように身体を傾け、体重を一刀に預ける。右手は彼の左手と繋いだまま、己の左手を彼の胸にあて、頬をその横に触れさせた。ネクタイとシャツを留めているピンが頬に冷たい感触を与えるが、その程度で冷めるような熱は持っていない。

 

「鼓動が聞こえるわ」

 

感じたままを口にする。

 

「どんな風に?」

 

思ったままを、問いかける。

 

「すごく……高鳴ってる」

「そうかもな……」

 

一刀の応えに、華琳は否と返す。

 

「いいえ。高鳴っているのは、私の鼓動……自分の心臓の音が邪魔で、貴方の鼓動が聞こえないの」

 

そんな筈はない。何故なら、いまの言葉に彼の胸はひと際大きく波立ったのだから。

 

「中庭での会話、覚えてる?」

 

そして問いかけ。だが、答えは求めずに言葉を紡ぐ。

 

「愛してくれるのなら、心からの愛を返す………貴方はそう言った」

 

誰が、とは言わない。

誰に、とも言わない。

それでも彼女は続ける。

 

「私の言葉は――――――」

 

そして彼女は顔を上げ、

 

「――――――必要かしら?」

 

その言葉を口にした。

 

 

 

 

 

 

言葉など必要ない。返答を口にせず、一刀は行動で返した。真っ直ぐに瞳を見つめる華琳の顎に右手を添えると、軽く持ち上げる。

 

「とうの昔に理解してるさ」

 

そして、少女の薄桃色の唇に、自身のそれを重ねた。

 

「んっ―――」

 

ほんの少し、華琳の喉元から声が漏れる。だが彼はそれを気にすることなく、さらに唇を押し付けた。弾力を持ちながら、それでいてしっとりと濡れている唇を舌で押し開き、華琳の口内に侵入させる。華琳もそれを受け入れ、自ら舌を絡ませる。

薄暗い部屋の中に、水音とかすかに濡れた声が響く。

いつの間にか絡められていた指は解かれていた。華琳は一刀の腕の下から背中に腕を回して抱き締め、一刀もまた、左手で華琳の腰を引き寄せ、右手で頭を引き寄せる。互いの口で互いの口を愛撫しながら、いつ果てるとも知れない欲望に身を任せ―――いや、欲望などという下賤なものに例えられようか。

それは、2人にとってはある種の儀式。必要な行為。ただただ、互いに足りないものを互いに求めるように、彼らは互いを愛撫する。

気付けば、彼らは互いを引き寄せる腕を解いていた。男は少女の胸元の紫リボンを解き、襟元を肌蹴させる。次いで、鎖骨に当てた腕を、肩を滑らせて下げ、細い二の腕と手首の布を、手から抜き取った。

華琳もまた、されるがままになっている訳ではない。スーツのジャケットを脱がし、バサリと床に落とす。そしてネクタイに手を掛けた。自分が手ずから縫ったものだ。その構造も結び方も知っている。ならば、解く事など造作もない。唇は離さないまま、舌は絡めたまま、彼女は手を動かし、シャツの襟からネクタイをスッと抜き取り、床に落ちたジャケットの上に落とす。そのまま白いシャツの小さなボタンに手を掛け、ひとつずつそれを外していった。

薄暗い部屋に、次第に熱が籠っていく錯覚―――錯覚などではない。暗がりで見えないだけで、2人の肌は、戦でも経験し得ない程に上気している。男は上半身を剥き出しにし、対する少女も、肝心な部分は見えていないものの、露出は多くなっている。

 

「一刀……続きは―――んっ」

 

華琳の言葉を遮るように口を塞ぎ、一刀は彼女を両腕に抱え上げる。卓から寝台に移動する間も彼は少女の顔に口づけの雨を降らし、少女もまた、彼の唇が触れる度に小さな声を洩らす。

数歩進めば、すぐに目的の場所に辿り着く。

彼は膝を曲げ、少女を寝台に座らせ、そして床に膝をつく。止まらないキスをしながら、彼は少女の衣服に手を掛けた。それを腰まで肌蹴させ、下着を腕から抜き取る。そして、彼は息を呑む。

少女の均整のとれた肢体に眼を奪われた。雪蓮や霞のような、男の視線を惹きつけるような身体ではない。華雄や凪のような、鍛え抜かれた身体でもない。それでも、その姿に彼は見惚れる。

一刀は、華琳を少女と認識している。

少女―――それはつまり、成熟しきっていない存在。されど、未成熟の状態でもない。世のすべての女が持ち得る、少女から女に変わりゆく瞬間にのみ見せるその美しさ。完成していないからこその美を感じるのは、あえて不均整のなかに美を見出す日本人の血を、一刀がひいているからだろうか。

否。出自など関係ない。男であれば―――ともすれば女ですらも―――見惚れるその芸術性を、彼はそこに見出した。

しばし、その姿に見惚れ、動きが止まる。

少女もまた、暗がりの中で彼を見つめる。その瞳に焦燥はなく、そのたおやかな笑みに淫靡さはない。ただ、時が止まる。

そして、我を取り戻した一刀は、身を乗り出して、再び華琳に口づけた。

右手は頬に、左手は暗闇に晒された背中にあてがい、ただその柔らかさを堪能する。胸板にあたる少女の双丘は上述の肌より一層の柔らかさを湛え、同時に、どれだけ押し付けようとも難なく撥ね返すような弾力を有していた。

そうして少女の柔肌と熱を堪能していれば、腹のあたりに触れる熱く小さな両の手。華琳が手を伸ばし、一刀のベルトに手をかけていた。ネクタイとは違って器用さと少し強い力を要するために、ほんのわずかに手間取っていたが、すぐに留め具を革の穴から外し、スルスルと腰から抜き去る。

それを受けた一刀も手の動きを再開した。少女の鎖骨から右手を滑らせ、両手を腰に回す。そのまま彼女のくびれにまとまりついていたワンピース型の服をさげようとする。少女の方も彼の動きの意図を理解し、彼の首に手を回し、そこを支えに腰を上げた。

下着ごと服を脱がされた少女は、もはや白い長ブーツのみの格好となっていた。男はそれをひとつずつ、ゆっくりときめ細やかな脚から抜き去ると、右の踵に両手を沿え、恭しく持ち上げる。そのまま頭を垂れ、小さな脚の―――爪の先まで美しい足―――の甲にそっと口づけた。

その瞬間、背筋が総毛立つのを、華琳は感じた。被虐嗜好のある荀彧には、よくこのような事を命じている。嗜虐的な彼女はそこに、愛する双子の姉妹を虐める時とはまた違った快感を覚えていた。

だが、これはいったいどういう事だろうか。

初めて出会った時は、男でありながら不遜な態度を取る彼に、内心呆気に取られた。客将として召し抱えた時は、心の内を読むような発言に焦りを隠し、別れる時は、心の奥底に眠る本音を吐露した。再会した時は、思わず見とれてしまうような圧倒的な武で二〇万という大軍を翻弄し、ついに部下として迎えた時は、小躍りしそうなくらいの喜びを隠すのが辛かった。

そんな彼が、床に跪き、自分の足に口付けているのだ。それを感覚ではなく思考で理解した少女は、女としての性の、明確な疼きを感じ取る。『そこ』は一気に熱を帯び、すぐにでも彼を受け入れようと、瞬く間に準備を進めている。

しかし、その思考も続いて襲い来る感覚によって遮られる。

 

「ふっ―――はっ…ぁっ………」

 

右足がそっと下げられ、重力に従うその動きに逆行するように、彼の唇が、今度は膝へと落とされた。いや、落とされたのではない。彼は唇を彼女の肌から離さぬまま―――その触れるか触れないかの絶妙な距離を保ちながら―――膝へと唇を滑らせたのだ。

漏れ出る声を、彼女は抑えられない。つい先ほど抱いた征服感など、すでに霧散していた。そして彼女は理解する。

彼を征服したなど、とんでもない。今の自分は、彼のものにされているのだ。それこそ足の先から髪の一本一本まで蹂躙するように、細かな口づけが続けられる。

自分はいま、彼に喰われている。

それを意識した途端、先ほどとは真逆の快感が彼女を包み込む。男にすべてを奪われるという、尊厳を無視するような行為。そこに、彼女は期待を抱く。早く喰らって欲しい。貴方のものにして欲しい。本能がそう願いながらも、膝から腿に流れる微細な接触を享受する。果たして自分のどこに、このような我欲が眠っていたのだろうか。

そんな彼女の期待が、ついに届く、

 

「………ぇ?」

 

事はなかった。膝から腿、腿から脚の付け根まで滑るその唇は、少女がもっとも求めている場所にまったく目もくれず、そのまま下腹部まで移動した。そこで、二度目の巨大な刺激が彼女を襲う。彼が腹の中央にある窪みよりも少し下に口づけた時だった。

何故このような場所で感じてしまうのだろうか。そう自問するよりも早く、その理由に思い至る。彼が口づけたその内側には、男を受け入れる為の場所があるのだ。壁一枚を隔てた口づけは、容易にその壁を越えて刺激を与える。

声無き悲鳴を上げながら小刻みに震える身体に、彼は気づく。そして、何をすべきなのかを。

何度もその場所に唇を落とし、音を立てて吸い上げる。その度に小さく跳ねる身体を寝台に抑えつけながら、彼はその振動を楽しんだ。

 

「はぁ……はぁ………」

 

達してはいない。だが、それに準ずるような度合いくらいには高まってきた。息は荒く、濡れている。

一刀はようやくその場所から離れる兆しを見せた。少し自分の身体を上方に移動させ、柔らかな腹の中央に位置する窪みにひとつキスを落とすと―――それにもビクンと小さな身体が跳ねる―――そのまま腹に唇を滑らせて上っていく。

いよいよ来るのか。

呆とする頭で意識が向かう。そこは最も感じる部位のひとつだ。前述の通り、部下を愛する時に、自分もよくそこを攻めるのだ。その反応は大きい。同じようにされたら、自分はいったいどうなってしまうのだろうか。

大きな期待と、ほんの少しの恐怖を感じる彼女の思考は、再三裏切られる。

大き過ぎず小さ過ぎない膨らみの輪郭に沿うように動く彼は、そのまま欲しかった場所を迂回し、その上の堅い起伏へと辿り着く。うっすらと浮き出た鎖骨に唇を落とし、舌を這わせる。

何度も声が漏れた。一刀の熱と水気を持った柔らかい舌に舐られ、華琳は彼の頭を抱き寄せる。もっと強くとせがむように。彼もそれを理解した。左手で腰を持ち上げて背中を反らさせ、口と舌を押し付け、愛撫を続ける。

そうして十分にその起伏を堪能した後、一刀は横に身体を移動させる。鎖骨に沿って唇を這わせ、肩、腕、肘、手首へと滑り、そして手の甲へと移動する。そのまま両手で華琳の手を持って甲にキスを落とした。ともすれば、騎士が忠誠を誓った姫君にするようなそれも、いまの華琳にとっては快感を与える刺激以外の何ものでもない。ぞわりと背筋が粟立つ。

その様子に気づいているのかいないのか、彼はそのまま指の一本一本にキスをし、舐め上げる。音のない喘ぎが零れた。

華琳の反応を愉しみながら、今度は舌を這わせながら、再び肩へと戻っていく。そのまま鎖骨を舐め、そして首に口づけを与える。今日何度目かになる快楽の大きな波。声と共に蜜が溢れ、女の匂いを濃くしていく。彼が口を落とせば肩が強張り、跡をつけるように吸い上げれば声が漏れ出た。明るいところで見れば、きっと真っ赤になっているであろう首に舌先だけで触れ、続けて少女の顎に舌を届ける。次いで綺麗な曲線を描いた輪郭に沿って唾液の跡を残し、小さな耳へと到達する。

わけがわからない。ただ彼の唇と舌だけしか認識できない。

快感の渦に翻弄される少女は、もう限界だった。耳たぶを啄ばみ、硬い部分を食まれ、そして舌先がぬるりと耳の孔に入り込んだ瞬間、華琳はついに達する。

 

「――――――ッ!―――、―――――――――ッ!!」

 

ビクンと背を反らした身体がさらに跳ね、声にならない悲鳴が上がる。頤を上げ、眼を見開き、パクパクと口が動いて、涙と共に唾液が顔の側面に零れ落ちる。

 

「あ……ぁ…………」

 

その姿を、一刀はじっと見つめる。通常ならば、このようなはしたない顔を見て欲しくなどないに違いない。だが、いまの華琳は、ただただ淫靡で美しい表情を浮かべている。恍惚という表現がよく似合っていた。

少女がまた一歩、女へと近づいた。自分の愛撫によってそれが為された事を理解し、一刀は知らず、笑みを浮かべる。それは愛情故の微笑みと正反対の、背徳感からくるものだ。ゾクゾクと背筋が震えるのを実感しながらも、一刀はほんの少しだけ理性を取り戻し、腕の中で脱力する華琳の頭を撫でる。

 

「かず……かず、と………?」

 

いまだ焦点の合わない瞼に優しく唇を触れさせ、そのまま耳元へと移動し、囁く。

 

「綺麗だったぞ、華琳」

「ぁ―――」

 

その言葉が届き、焦点が合わさってくる。そして意味を理解した途端、華琳の身体が再び跳ねた。

 

「もっとだ……もっと――――――」

 

愛させてくれ。

 

そう口にする前に、華琳が唇を合わせる。言葉など必要ないと言うかのように。身体で示してくれと、言わんばかりに。

その口づけの意図を察し、一刀は再び愛撫を始める。だが、今度は華琳もまた動いていた。彼が耳に舌を差し込めば、くぐもった声を漏らしながらもその首に吸い付き、胸を撫でられれば彼女もまた、彼の逞しい胸板に指を這わせ、双丘の突起に唇が落とされれば、彼の頭をかき抱いた。

二人の荒い声が暗闇に響く。先ほどは熱にこもったように思えた部屋は、今ではすっかり『思えた』といえるような状態を逸脱していた。二人の熱が溢れ、湿度は増し、そして行為特有の匂いが部屋に充満する。まったくの第三者が嗅げば顔をしかめるようなそれも、いまの彼らにとっては、互いを高める為の媚薬に過ぎない。

華琳に愛撫を加えるうちに、一刀もその衣服をすべて脱ぎ去っていた。口づけを交わし、舌と唇で唾液を交換し、抱き合う事で互いの熱を混ぜ合わせる。華琳に至っては、最早何度達したかわからないほどだ。五度目を超えたところで、数えるのを止めた。止めざるを得なくなった。絶え間なく襲い掛かる快感の奔流は少女を翻弄し、高め続ける。一度達すれば二度目はさらなる高みに、二度達すれば三度目は――――――。一度目は耳で、二度目は首筋で、三度目は足の指で、四度目は胸で、五度目は再び胸で。

既に、自分がどんな言葉を発しているのかも分からない。それでも、ひとつだけ理解できた言葉があった。彼の名前。ただそれだけは、自分の意志で口にしていた。そして耳に入る言葉も、理解できるのはひとつ。愛しい男が呼ぶ自分の真名。ただそれだけで、彼女は高みへと昇り続ける。

何度も互いを感じる。手で、口で。それでも最後の『そこ』だけはまだ触れていなかった。互いがどれほど昂ぶっているのかは、互いに分かる。華琳は腹に押し付けられる剛直によって。一刀は腿に感じる湿り気によって。

しかし、その時間も終わりを迎える。互いに荒い息を吐きながら、体勢を入れ替える。そして、最後の砦であった『それ』に手をかけ、同時に口にする。味などわからない。だが、何故だかそれは甘味を湛えているような気がした。

匂い以上の媚薬に酔いしれ、二人はそれを求める。唇で舐め、舌で飲み込み、喉で互いの体液を味わう。息苦しくなり、窒息しそうになりながらもそれを止めることはせず、二人は深く、深く堕ちてゆく。

女性の感度は、男性のそれのおよそ七倍だと言われている。ならば、男が一度達する間に、女は七度達すると置き換えられる。だが、華琳にそれは当てはまらない。心の動きが作用しているのは当然として、とうの昔に七度を超えている。そして何度目になるのかわからない、数え切れないほど達した後にくる、再びの頂。少女は男のそれを唇で、舌で、喉奥で感じながら、達する。

 

「あぁ……ぁ……………」

「はぁ…はぁ……」

 

少女は呆然と虚空を見つめ、男は荒いながらも規則的な息を吐いている。ゆっくりと青年は身体を起こし、再び少女と向き合うように寝転んだ。

 

「華琳……」

「ん……」

 

いまだ呆とする少女の真名を呼び、優しい口づけを繰り返す。次第に意識を取り戻した少女は、腕を彼の首に回しながら、もっととせがむ。

 

「一刀…」

「あぁ」

 

少女の、無言の要請。青年はそれを受け、彼女の顔の両脇に手をついて、覆い被さった。

無言のまま、じっと見つめ合う。ここまで来て尻込みするのか。そのような問いは意味をなさない。青年は笑みを浮かべ、少女は笑みを浮かべ、互いを慈しむように見つめ合う。

そして。

 

「華琳……君を愛している」

「一刀……貴方を愛してる」

 

二人がひとつになるその瞬間。二人は異口同音に、まったくの同時に、初めての愛の言葉を紡いだ。

 

それからは、何度果てたのかも分からない。ただひたすらに互いを求め、口で、手で、そして自身で互いを撫でる。

気が狂いそうになるような快楽の波に流され、さらなる快楽により引き戻される。月は天中に昇り、その仄かな光が部屋をぼんやりと浮かび上がらせる頃に、ようやく彼らは動きを止めた。

本能と愛による争いが終われば、相手を慈しむ時間だ。

繋がったままの2人は体勢を入れ替え、一刀が下に、華琳が上になる。右手を腰にあてがい、左手で月明かりに、銀白色に浮かび上がる小さな頭を撫でながら、一刀はそっとその頭を引き寄せる。

華琳もまた、彼の欲するものを察し、ゆっくりと唇を重ね合わせた。つい先ほどまで行なっていたような熱く、激しいものではない。そっと触れさせ、次いで頬に、瞼に、額にと口づけの優しい雨を降らせながら、彼女は微笑みかける。

頭に乗る、ゴツゴツとしながらも暖かい手を外させ、右手を絡ませながら、今度は彼女が彼の頭を撫でた。汗を吸い、しっとりと濡れたその髪もまた、彼女の髪のように月明かりに照らし出されている。

しばらくそうして、少女は彼の瞼が少しだけ下がっている事に気がつく。仕方がないなと思うと同時に、精根の限界まで愛してくれた彼を、愛おしく思う。

溢れ出しそうな気持ちを隠しながら、彼女は肘で上体を支え、両手で彼の顔をそっと挟んだ。そのまま瞳を閉じ、コト、と額を触れ合わせる。そうすれば、彼の気持ちが分かるような気がして。

ゆっくりと瞳を開けば、同時に瞼を開いた彼と目が合った。それがなんだか無性に可笑しくなり、笑いを零す。喉からは楽しそうな声が小刻みに震え、瞳からはうっすらと涙が零れる。

その笑みと涙も止まる頃、一刀は再度、華琳の頭を引き寄せた。口づけをする事ない唇は少女の耳元で、そっと動く。

 

「――――――」

 

その音を意味として理解し、少女はほんの少しだけ頬を赤らめる。自分の顔が彼に見えない事に感謝しながら、少女もまた、彼の耳元で言葉を返す。

 

「――――――」

 

その応えへの反応は、少女の視界に入らない。それでも、彼が笑顔を浮かべている事だけは、容易に想像できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

はい、という訳で#69でした。

色々と思う方もいらっしゃると思いますが、前書きにあるように、否定的なコメントはご遠慮ください。

 

さて、作品に関してですが、同じく前書きにあるように、本当に迷いました。

ただ華琳とデートをして1日を楽しく過ごすのか、それとも、今回のように結ばれてしまうのか。

 

ずっと考えていた結果、いまの一刀なら、彼女の愛を受け入れると感じ、今回のような流れになりました。

 

次にアレのシーンですが、今回は前回の稟の妄想のような、お笑い要素はまったく考えておりません。

(この外史で)華琳が一刀に愛を告白をするならば、また彼が華琳の愛を受け入れるならば、互いの愛情表現は、どのようになるのだろうかと考えました。

ただ、それを言葉で表現するのか、行動で表現するのか、あるいは秋蘭の時のように、両方で表現するのか―――それを考えた結果、二つ目の選択肢へと相成りました。

人間のソレはもはや快楽目的のものが大多数を占め、本来の目的が副産物的なものになっている事は、皆様もお感じになっている事と思います。

ですが、それ以外にも、愛情を表現する為にソレをする事だって、当然あると思います。

よって、この二人が互いに与える愛ならば、それを表現する為に、こういった展開へと踏み切りました。

二人の愛の強さが表現できていればと思います。

 

 

想うところはあるでしょうが、何卒、ご容赦願いますよう、よろしくお願い致します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※注意※※※

 

ここから先を見ても、↑↑↑までの雰囲気を壊されてもいいという方だけ、先に進んでください。

読まないけどコメント見たい(書きたい)という方は、一気にページ最下部までスクロールする事を、強くお勧めいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやー、真面目にあとがき書いてみたけど、やっぱ一郎太にこんなシリアスなのは似合わんね。

というわけで、蛇足も蛇足の、駄文を垂れ流したいと思います。

 

さて、今日は従姉の結婚式がありました。

母方の従姉なのですが、母は新潟出身で、従姉も新潟在住です。

親族紹介があるとの事なので、11時に式場入り。

よって、朝5時半に家を出るハメにorz

寝坊する訳にはいかんと昨日は徹夜をし、そのまま東京駅まで言って、Maxときで一路新潟へ。

スノーボーダー多過ぎワロタ

新幹線の中でカタカタこの話を作成し、新潟到着。

挨拶をして、式→披露宴となったのですが、やっぱダメだね。

泣いたわ。

従姉の父(母の兄)が急遽スピーチを求められたんだが、

おじちゃんの震える声が涙腺を刺激しやがる。

昔結婚式もやるレストランでバイトしていた時も、仕事しながら泣きそうになってたけど、

やっぱ自分の親しい人の式だと、感動も倍どころじゃないですね。

最後の花嫁から両親に宛てた手紙でも号泣し、従兄(新婦の兄)の潤んだ目を見て、また号泣。

最後に一緒に写真を撮ってもらったけど、やっぱ花嫁ってのは綺麗だね。

ドキドキとかそんなん通り越して、感動したぜ。

 

と、こんな事をしつつ、新潟駅で新幹線に乗ったのは午後6時半。

神奈川在住の姉と一緒に帰ったんだが、なぜか機能不全家族の話題に。

 

そんなこんなで、酔っぱらった頭で東京駅→中央線→新宿と来れば、

KO線が運転見合わせ中。

別の線で帰ってきて、こうして打ち込んでます。

 

で、何が言いたいかというと、一郎太も結婚したい。

そして仕事から帰ったら、金曜の夜は奥さんと晩酌したい。

簡単なものでいいから作ってくれて、一緒に飲めるような人がいいぜ。

あと(自主規制)もしたい。

華琳様とハァハァ言いながらあんな事やこんな事がしたいぜ。

というか俺もあんな熱いせっくすがしたいです。

 

酔っぱらってるので、本音がだだ漏れなのは勘弁な。

 

という訳で、今日はこの辺りで失礼します。

ではまた次回。

 

バイバイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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