No.348227

寂しがり屋の女の子の為に…… 拾陸話

DOWANNGOさん

拾陸話目投稿です。

2011-12-16 21:29:46 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:3525   閲覧ユーザー数:3018

「師匠、本隊が到着したそうです」

 

俺達先遣隊が偵察を終わらせる頃、秋蘭がそう言って来た。

 

「各隊の報告はまとまったか?」

 

「丁度終わったで、連中かなりぐだぐだみたいやな」

 

やっぱりか……

 

「敵の数は二十万や」

 

「うはー、ものすごい大軍なのー……」

 

「本隊となれば数が多いのは当たり前だろうな。

だが、二十万という数はあそこに居る数の話だ」

 

夜月も気付いてたか。

だけど季衣と凪と真桜は気付いてないと……

しょうがない……説明してやるか。

 

「良いか?黄巾党の奴等には本拠地が無いんだ。

だから、連中は敗残兵を陣内に取り込むしかない。

更に連中の兵糧は俺達が焼いたから連中の兵糧が足りない。

結果、連中の数は多くなり兵糧が足りなくなった。

多分、装備も足りてないだろうな」

 

俺がそう言うと皆感心した様な表情で俺を見ている。

何だかそんな顔で見られるとくすぐったいな……

 

「真桜、連中の二十万の内、どれ位の戦力が戦えそうなんだ?」

 

「大体三万位やな」

 

「なら、当初の計画通りでも構わないだろう。

華琳に伝令を出してくれ、皆は予定通りの配置で各個混乱を開始してくれ。

攻撃の機は皆に任せるけど張三姉妹にだけは手を出すなよ。

以上、解散!」

美蓮side

 

「華琳様、劉郷さん達が行動を開始したようなのです。

敵陣の各所から火の手が上がったのです」

 

私がそう言い終えてから今度は春蘭さんがこう報告した。

 

「秋蘭から伝令が届きました。

敵の状態は完全に予想通り、当初の作戦にて奇襲をかけると。

こちらも作戦通り動いて欲しいそうです」

 

「分かったわ……美蓮、桂花、決めていた通りに動きなさい」

 

「「御意!」」

 

私達がそう返事をすると春蘭が敵の陣を見ながらこう言った。

 

「先日はあれ程苦戦したと言うのに……

何ですか、あれは」

 

春蘭がそう言うのもしょうがないだろう。

あれ程苦戦した相手が今は混乱して大した相手には見えないのだから。

 

「少数で、春蘭程度を扱える器は居てもあれだけの兵を規模をまとめ扱えるは居なかった。

ただ、それだけのことでしょう」

 

あ、酷いこと言った。

 

「成程、私程度を……って華琳様!それは酷うございます!」

 

それならもっと頭を強くするべきだと思うけど……

それを言ったら叩き斬られるのが目に見えていたらから言わなかった。

 

「ふふっ、冗談よ」

 

「華琳様、これ以上春蘭さんといちゃいちゃして時間を過ごしてると張三姉妹が身内に殺されちゃうのです。だから、早く号令をして欲しいのです」

 

「それは問題ね……分かったわ」

 

華琳様はそう言って号令を始めた。

 

「皆の者、聞け!

汲めない霧は葉の上に集い、ただの雫と成り果てた!

山を歩き、情報を求めて霧の中を彷徨う時期はもうお終い。

今度はこちらが呑み干してやる番!

ならず者共が寄り集まっただけの鳥合の集と、

我等との決定的な力の差……しっかりと私に見せなさい。

総員、攻撃を開始せよ!」

 

その号令と共に全軍の攻撃が始まった。

一刀side

 

 

「凪、華琳達の本隊が来た!」

 

大地を揺らして突っ込んでくるのは曹の旗を掲げた華琳の本隊だ。

流石華琳と言ったところか一番良いタイミングで仕掛けてきた。

 

「流石華琳様。予定通りですね……」

 

一糸乱れぬ大軍団の突撃は、混乱の極地にある黄巾党の大軍団とは雲泥の差だ。

 

「俺達も合流しよう。秋蘭と夜月と沙和の隊が右翼で俺と凪と季衣と真桜の隊が左翼だった筈だ。

まずは真桜と季衣と合流して……あ!季衣!真桜!こっちだ!」

 

右側からやってきた真桜と季衣に手を振って二人を呼ぶ。

 

「二人共、大丈夫だったか?」

 

「ぜーんぜん、なんや、こっちが一方的過ぎて悪い位だったわ」

 

「うん。で、華琳様も来たしそろそろかなって真桜ちゃんと……」

 

流石二人共有名な将だな。

良いタイミングで来てくれたよ。

 

「俺達も合流しようと思っていたんだ。丁度良かった」

 

魏の兵士ならこの程度の奇襲を受けてもこんなに混乱しないだろうな。

これが俺達と連中の決定的な差だ。

 

「隊長、指示を」

 

「俺そう言うの前に失敗した感じなんだけどな……

しょうがない……」

 

俺は少し深呼吸しこう号令した。

 

「これより俺達は本隊に合流、本隊左翼として攻撃を続行する!

ただし!張三姉妹は生け捕りにせよ!

総員、今までの借りを存分に返してやれ!

総員、突撃ぃぃぃぃぃっ!」

 

『『『うおぉぉぉぉぉっ!』』』

 

俺の号令と共に全員が突撃を開始した。

第三者視点

 

戦場から離れたあるところに三人の少女が居た。

その三人の少女こそ張三姉妹と言われる姉妹である。

 

「この辺りまで来れば……安心かな」

 

そう言ったのは張三姉妹の次女、張宝。

 

「もう大分、声も小さくなってきたしねー。

でも……皆には悪いことしちゃったかなぁ?」

 

後を見ながらそう言ったのは張三姉妹の長女、張角。

 

「難しいところだけど……正直ここまでのものになるとは思わなかったし……潮時でしょうね」

 

そう冷静に言ったのは張三姉妹の末の妹、張梁。

張梁の言った通り彼女達は黄巾党をそこまでのものにする気は無かった。

ただ単に彼女達は歌いたかっただけだ。

自分達の歌を民に聞いて欲しかっただけ。

なのに自分達の周りのファンが勝手に暴れて自由に歌えなくなったのだ。

 

「これで私達は自由の身よっ!ご飯もお風呂も入り放題よねっ!」

 

張宝は嬉しそうにそう言ったがその言葉に張梁は冷静にこう言った。

 

「……お金無いけどね」

 

「う……」

 

「そんなのまた稼げば良いんだよ。ね~♪」

 

張角が明るくそう言うと場の雰囲気が明るくなる。

 

「そうよ!三人で楽しく旅を、楽しく歌って過ごしましょうよ!」

 

「で、大陸一番の……」

 

「そうよ!今度こそ歌で大陸の一番に……っ!」

 

『大陸の一番になる!』そう言いかけた時三人の前に二つの影が現れた。

一つは一刀の部下で一刀に強い忠誠を誓っている『楽文謙』

もう一つは剣神と言われ彼の魏武の大剣すらも弟子にした『劉喬契』

 

「お前等張三姉妹だよな?」

 

「大人しく付いてくれば悪い様にはしない」

 

二人がそう言うと三人は三様の反応をする。

 

「く……っ、こんな所にまで……!」

 

「どうしよう……もう護衛の人も居ないよ~?」

 

「くぅぅ……まだ、あんなことやこんなこともしてないのに~!」

 

「だから大人しく付いてくれば何もしないって言ってるだろ……」

 

一刀は頭に手を当てて呆れる。

すると

 

「張角様!」

 

「「!」」

 

二人の黄巾党の男が剣で襲い掛って来た。

一刀は不殺を抜き、凪は閻王を構える。

そして

 

「「はぁっ!」」

 

「「ぐはっ!」」

 

一撃で気絶させた。

凪の方は気を使った為に敵が吹き飛んでしまった。

 

「ご愁傷様……」

 

流石の一刀も凪の相手に同情してしまった。

 

「何あれ!何か吹っ飛んだわよ!意味分かんない!」

 

「……諦めましょう、姉さん。

あんなのに当たったら無事では済まないわ。

……いきなり殺したりしないのよね?」

 

「我が主君はそう言っていた」

 

凪がそう言うと張梁は少し考え

 

「……分かったわ。投降しましょう」

 

投降を宣言した。

一刀と凪は構えを解いて三人の近付く。

すると

 

「凪!伏せろ!」

 

「え?……っ!」

 

どこからか矢が飛んで来た。

凪はそれを伏せてかわし矢の直線上に居た一刀は不殺で矢を叩き落す。

 

「な、何なのよ!今のは!」

 

「どうやら何か来たらしい」

 

一刀がそう言うと周りに白装束を纏った者達が現れた。

 

「お前等何者だ?何が目的だ?」

 

「………」

 

一刀がそう尋ねても白装束達は何も答えずに武器を構えている。

一刀は白装束達の方を向きながら凪にこう言った。

 

「凪、お前は三人を守りながら本陣に行け」

 

「隊長!?」

 

凪は一刀を驚いた顔を見る。

 

「三人を守りながら戦うのは流石にきつい。

早く行ってくれ」

 

「っ!」

 

凪は一刀の顔を見て一刀の意思が固いことを察して三人を連れて走った。

白装束達はそれを見ても何も反応しない。

 

「目的は俺ってか?面白い……かかってこいよ!」

 

一刀は不殺を鞘にしまい斬鬼を抜いて構え白装束達に襲い掛った。

時は進んで本陣

 

凪が張角達を華琳達に紹介して少し経った。

華琳達は一刀の帰りを待っている。

本陣の空気はとても重いものになっていた。

 

「劉郷……」

 

華琳が一刀を呼んだ。

一刀を拾ったあの日の前日。

華琳は夢を見ていた。

劉郷が自分達と楽しく過ごしている夢。

その時はただの夢だと思っていた。

一刀を拾った時は利用するだけ利用してやれば良いと思った。

でも、今は利用するだけではなく一刀と一緒に居たいと思った。

まだ、一刀には思いを告げていないがいつかは告げようと思った。

なのに……今回の様なことが起こってしまった。

自分に出来るのは……ただ……祈ることのみ。

すると、夜月がある方向を指して

 

「劉郷だ!」

 

そう叫んだ。

 

「「「!」」」

 

一刀は手を振って自分が無事であることを教えてきた。

すると、華琳はゆっくりと一刀に近付き

 

ギュッ……

 

力強く抱き付いた。

一刀は少し困惑していたが華琳の頭を撫でて一言。

 

「ただいま、華琳」

 

そう言った。

一刀side

 

俺が帰ったことに皆喜んでくれたのだが華琳は俺に抱き付い後、真っ赤になってしまい

 

「私が……王である私が……あんな……うう……」

 

と、頭を抱えながら俺を見ない様にしている。

照れてる華琳も可愛いな……

そんなことを思っていると

 

「隊長、あれからどうしたのですか?」

 

凪がそう尋ねてきた。

まぁ、話しても良いかなと思い俺は話始めた。

 

「あの後親切な人が来て助けてくれたんだよ。

別に俺一人でも何とか出来たけどな」

 

しかし……あの男は誰だっただろう?

貂蝉とか言う奴と同じで俺のこと知ってる風だったけど……

時は戻り……

 

 

「はぁっ!……これ数減ってるのか?」

 

さっきから斬っても斬っても数が減らない様な気がする……

まぁ、大して疲れてないから良いけどよ。

 

「めんどくさいな~本気になってさっさと片付けるか?」

 

俺はそう呟きながら不殺に手をかける。

その時

 

「待てよ、本気を出すのはもうちょっと後で良いだろ?」

 

そんな声が聞こえて声のした方を向くと一人の少年が立っていた。

その少年はフードで顔を隠していたが声からして少年だと言うことが分かる。

 

「誰だ?」

 

その少年を見て俺は察する。

この少年はこの白装束達よりもはるかに強い。

気を抜いていたら一瞬でやられる。

白装束を片づけながらも俺はその少年に注意を向ける。

少年はにっこりと微笑み剣を鞘から取り出した。

体中に緊張感が走る。

その瞬間に風が吹いた。

その風が吹いた瞬間少年は先程まで居た場所から居なくなったかと思うと白装束達の首から上が無くなった。

 

「行けよ、お前を待ってる人達が居る」

 

「お前、誰なんだ?」

 

「俺はお前の味方だよ」

 

少年は俺の肩に手を置いて歩きながらこう言った。

 

「早く行けよ、『北郷一刀』」

 

「!お前!」

 

俺がその手を振り払うとその少年は既に居なくなっていた。

 

「何なんだあいつは……」

 

俺は一人その場で一人そう呟くしかなかった。

「隊長?どうかしましたか?」

 

深く考え込み過ぎていたのか凪に心配をかけたらしい。

俺は凪の頭を撫でながら笑顔でこう言った。

 

「大丈夫だよ、何でも無いから」

 

考え込み過ぎるのは止そう。

俺の周りの人に心配をかけてしまうから……

俺はそう思った。

第三者視点

 

どこかの一室

 

「何でまた外史の世界に行ったの?」

 

ある部屋のソファに一人の少女が座っていた。

少女が話かけたのは目の前で正座している少年だ。

 

「ごめんなさい……様子が気になっちゃいまして……テヘ★」

 

ガシッ!

 

「ふべらっ!?」

 

「『テヘ★』じゃないわよ。外史のことはその外史の主人公に任せておけば良いの。

なのに執拗に干渉して……」

 

少女はそう言いながら顔に手を当てて呆れている。

少年は反論し始めた。

 

「その主人公の危機を救った訳だしね。

その……許してくれませんか?」

 

「……まぁ、良いわ。

今回だけは許してあげる。

でも、これ以上の干渉は許さないわよ?」

 

「ああ、分かってるよ。

これからは気を付ける」

 

少年がそう言うと少女はソファから降りて

 

「出かけましょう。

今日はデートだったのにどこかの誰かさんがどこかに行った所為で遅くなってしまったから」

 

「すいませんでした……」

 

二人はそんなやり取りをしながらその部屋から出た。


 
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