No.348077

〝ただいま・・・おかえりなさい〟魏 end after  first episode

kanadeさん

どうもお久しぶりです。
kanadeです。
今回は、予告通り〝ただいま・・・おかえりなさい〟魏 end after の第一話をお届けさせていただきます。前回の序章投稿から丸一年が経過しております。待っていた方にはお待たせしました。“孫呉伝”を待っていた方には次を楽しみにして、この作品も楽しんでください。初めての方はよかったらこのシリーズの第一話も読んでみていただけたらと思います。
それでは、kanadeがお届けするもう一つの魏エンドアフターどうぞお楽しみください

2011-12-16 13:48:27 投稿 / 全17ページ    総閲覧数:17690   閲覧ユーザー数:12093

〝ただいま・・・おかえりなさい〟魏 end after ~第一話~

 

 

 大量の荷物背負った青年、北郷一刀は小休憩をはさみながら、かつて過ごした街である陳留に辿り着いた。

 「ふい~・・・重かったぁ。この事に限ったことじゃないけど、管路には本当に感謝しないと。持ってきたお金を、こっちのお金と変えてくれたわけだし・・・おかげでこうして宿をとれる」

 五年振りに来た街、気付かれなかったのは単に恰好がかつての制服ではなかったからか、忘れられてるのか・・・多少複雑な気持ちを抱えたまま、一刀は寝台に仰向けになって寝転がった。

 「・・・帰ってきたんだな・・・この世界に」

 居場所がある保障なんてない。

 どれだけ言い訳しようとも、五年なのだ。五年もたてば状況などいくらでも変化する。そこに自分の居場所が残されていない可能性だって大いにある。

 だが、例えそうだったとしても彼は構わないと思っていた。

 

 彼はただ――彼女に、彼女達に会いたいだけなのだ。

 

 「・・・取り敢えず今日はもう休んで明日には出発しよう」

 そのまま一刀は疲れた体を休めるために深い眠りにつくのだった。

 翌日、そんな彼の決意は物凄く記憶に残る形でぶっちぎられるとも知らずに。

 

 五年前、彼女達の下を去った一刀は気がつけば寮の自室にいた。

 なんの番組も流れていないテレビが、高い音を鳴らしてそこにあった。

 部屋にあるデジタルのスタンドクロックを見て驚いたのは、今でも忘れる事が出来ない。

 一日すら過ぎてはいなかったのだ。日付こそ変わってはいたがそれでも変わった直後、時間にして数時間しかすぎておらず、酷く混乱した。

 あの出来事は夢だったのかと本気で思ったくらいだ。

 だが、今自分が来ている制服を見て夢でない事を改めて思い知った。

 次に涙が出てきた。声を殺して、ただひたすらに泣き続けた。

 「華琳・・・春蘭・・・秋蘭・・・桂花・・・季衣、流琉・・・凪、真桜、沙和・・・霞・・・風、稟・・・天和、地和、人和」

 その名前を延々と繰り返しながら一刀は泣き続けた。夜が明けても涙は枯れてくれず、気分は沈んだまま。

 だからその日は学校に顔は出さなかった。一刀の悪友である及川、妹の刀亜、剣道部主将の不動先輩は心配してくれたが、彼の声など全くと言っていいほど耳に入らず、布団にうずくまったまま一日を過ごした。

 

 それが、三日ほど続き、四日目が過ぎようとした日の事。

 誰も入れなかった部屋に全く見覚えのない女性が顔を見せた。

 

 ――「随分と酷い顔ですね。これが〝天の御使い〟として彼女達と共に駆け抜けた男の姿とは」

 

 

 その言葉に失われていた力が息を吹き返す。

 どうやってこの部屋に入ったのか、それ以前に何者なのかなんていう疑問はどこかえと吹き飛んでしまった。

 

 「帰りたいですか?曹孟徳たちが生きるあの世界へ」

 

 それは、戻ってからずっと願っていた事だ。

 だから、力強く頷く。だが、目の前の女性は不可能ではないが、現状では不可能であると言った。

 「あの世界が独立しなければ貴方を送り返す事は出来ないのです。いえ、あの世界に送る事は出来るのですが、送ったところで、役目を果たした貴方は弾き返されるのがオチです・・・ではどうすればいいのかとお思いになるでしょう。ですが、貴方にできることは限られてます。・・・というよりは一つしかありません」

 「一つ・・・」

 一刀の復唱に女は頷く。

 

 「彼女達への思いを決して忘れずにいなさい」

 

 脳裏にこの言葉が確かに刻まれた。

 「貴方に出来る事はそれだけです」

 そう言い残し、女は去った霞のように。

 

 「・・・」

 思いを忘れるな。

 出来る事はそれだけ

 「違う」

 一刀は二言目を否定した。

 出来る事がそれだけなんて事はない。先の女性が言った通り帰れる保証なんてない。

 だけど、もし帰れるなら今より少しでも成長して帰りたい。

 ならどうすればいいかなんて考えるまでもない。

 立ち上がるだけだ。

 「強くなろう」

 その一言に、数多の意味を籠めて、一刀は立ちあがった。

 

 翌日も学校をサボった。

 サボって家の方に戻った。

 「もう一度、俺に剣を教えてください!」

 北郷の家は、実家も浅草にある家もそこそこ広く、浅草の方も小さいながら道場がある。

 戻って速攻で土下座をして懇願した。

 懇願された方は目を点にして言葉を出せずにいる。

 「一君・・・学校は?」

 開口一番で御尤もな台詞。一刀は苦笑してしまった。

 「ごめん、だけど・・・お願いします、母さん」

 「・・・」

 母――北郷 刀子はそれ以上何も聞かなかった。

 真剣に頭を下げる息子を静かに見つめ、優しく微笑む。

 「今日は見逃してあげますけど、明日はちゃんと学校にいくこと」

 がばっと頭を挙げた。見上げた母は、一刀の目の前まで歩み寄りコツンとかるく拳骨をした。

 「道着に着替えてらっしゃいな。稽古はそれからです」

 矢継ぎ早に一刀は着替えに行くのだった。

 

 

 それから数分後、道着に着替えた一刀が道場に顔を出す。

 「・・・一君、貴方が立ち直ってくれた事は、母としてとても嬉しく思います。ですけど・・・何かありました?昔以上に体が出来上がってるのに驚いているんですけど。剣道部の基礎練習だけじゃそこまで鍛えあげるのは無理です。ましてや今までの一君じゃ不可能と言ってもいいでしょう」

 そう問われて返答に困った。

 

 まさか美少女だらけの三国志の世界に言ってました、などと言って果たして信じてもらえるものであろうか。

 その世界で〝天の御使い〟として戦場を、覇王として名を馳せた少女と、彼女の下に集まった多くの将たちと共に駆け抜けたなどといって誰が信じる。

 ましてや、直接であれ間接であれ、人の命を奪ったなど。

 

 「まぁいいでしょう。一君、今日はもうその事は聞きません。ですが、いつかは必ず話す事」

 唇に人差し指を充ててそう言い、それ以上の追及をしなかった。

 一刀は母に必ず話すことを約束し、鍛錬を開始した。

 

 ――言い替えよう。アレは鍛錬ではなくただのイジメであったと。

 

 一刀がいじめにあっている最中、自宅へと至る道を一人の少女が歩いている。

 「兄さん、学校サボって家に戻って何してるんだろ?」

 少女もまた、フランチェスカの制服を着ていた。

 北郷 刀亞(ほんごう とあ)――それが一刀の妹である彼女の名である。

 

 ここ数日、兄の様子はおかしかった。ずっと寮に引きこもったままだったこともそうだが、休日でもないのに家に帰った事も。

 

 実家が近い北郷兄妹は実家から通う事も当然出来た訳だが、母・刀子が「親離れさせるいい機会ですから」という事で兄妹そろってフランチェスカが運営する寮に入っていた。

 

 とはいえ、週末の土日は必ず家で過ごしている。だが、平日は基本的に寮で。家に帰った事はないのだ。にも拘らず、兄は急に家に戻った。

 兄の親友でもある及川にそれを聞いた時、その事がどうしても気になった。今家にいるのは母一人。父は長期出張で家を開けている。

 「お母さんに用事ってこと・・・だよね。それ以外の用事で家に戻る筈がないし」

もしサボるために家に帰ったのなら、それはただの自殺行為だ。

 あれはまだ兄がまだ中学生だった頃の日曜の事だ。進級し、学年を一つ踏んだ五月の事、兄は五月病にかかり、あろうことか最強の母・刀子の前で「サボりたい」と言ってしまった。その結果、母はニコニコと笑いながら「根性を叩き直してあげます!」とその日の一日をずっと道場で兄の性根を叩き直した。

 翌日、全身の至るところを打撲や擦り傷で大量の湿布や包帯で武装した兄の姿を今も鮮明に覚えてるし、思い出す度に全身が震え上がる。

 

 つまり何が言いたいのかというと、サボるという行為は、単なる自殺行為以外の何物でもないという事だ。

 

 

 そして、その事を兄が忘れるはずがない。

 

 (・・・不動先輩も心配してるって言うのに)

 と、家の玄関前に辿り着いた時、庭の方から自分を呼ぶ声を聞いた。

 「刀亞?お前何でここにいるんだ?」

 何でここにいるんだと聞き返されても、それを聞きたいのはコッチだというのに。

 そんな人の気持ちに全く気付く素振りさえない兄は、私服でも制服でもない道着を着ていた。

 「兄さん、その格好・・・何してたの?」

 「稽古。道着でやることなんてそうないと思うけど」

 何を不思議がっているんだという副音声が含まれた眼で見られ、少し小馬鹿にされた気がしてカチンと来たのだが。更に道場の方から聞こえてきた母の声に遮られた。

 「一君?誰かお客さんでも・・・って、刀亞ちゃん?どうしたんです?」

 兄も兄なら母も母かと、どっと疲れた。

 「兄さんがここ最近学校に顔だしてないから心配してたの!及川先輩に聞いたら家に帰ってるって言うから・・・さすがに、私まで学校サボるわけにはいかないから、こんな時間になっちゃったけど」

 「馬鹿!それ・・・」

 背中に感じた殺気にブリキ人形のように首を動かす。

 そこにいたのは、満面の笑みを浮かべる母親・刀子だ。

 重ねて言うが、満面の笑みである。

 なのに感じるのは恐怖と戦慄。頭の中で警鐘がけたたましく鳴っている。

 「かーずーくーん・・・ここ数日ってどういう事ですか・・・と本来なら問答無用で問い詰めるところですが、〝今回のみ〟見逃してあげます。今朝方、貴方が私に見せたあの眼・・・全ての理由はそこに繋がっているのでしょうから」

 「ごめん・・・いつか必ず話すから」

 そう言って兄は道場に引っ込んだ。

 

 兄は道場で絶賛鍛錬中。一方私はというと母とお茶をしていた。

 「刀亞ちゃん、どうしますか?この時間なら夕飯一緒に食べませんか?一君は絶賛特訓中なので、今日は寮に帰る事はないでしょうし、幸いなことに今日は土曜日ですし、ね?」

 リビングで母とお茶を飲みながら、小一時間ほどまったりしていると、母がそんなことを訪ねてきた。

 断る理由が特にあるわけではないので、即座に頷くと、母は何書かれたメモを私に差し出した。

 「これは?」

 「夕飯の材料。悪いとは思うんだけど・・・刀亞ちゃん、お使いよろしく頼めないかしら?」

 なるほど、頷いた時に母が笑顔を見せたのはコレだったのか。夕飯の買い出しに行こうとしたところに丁度いいタイミングだと言わんばかりに顔を出した娘。自分が同じ立場でも同じことをしただろう。

 ――ラクが出来るに越した事はないのだから。

 「りょーかい・・・っと」

 差し出された財布を受け取った刀亞は、そそくさと庭に置いてある自転車に跨り近所のスーパーへと繰り出すのだった。

 それを手を振って見送った刀子は、息子が鍛錬をしている道場に足を向けた。

 

 

 「・・・きつそうですね?」

 目の前にいる息子は、答える余裕もない様で、黙って歯を食いしばっている。

 ちなみに、一刀が課せられているメニューは、中腰(空中椅子)状態で腕を水平に突き出し、その手には水で満タンになっている2ℓのペットボトルを掴んでいる。

 「ふむ、一時間、耐えましたか・・・結構頑張りますね。コレ、精神的にもかなり〝くる〟はずですけど」

 息子の成長に思わず笑みが出てしまう。

 

 ――しかし、同時に考えてしまう。

 

 (一体、何があったんでしょうか・・・一君のあの瞳・・・とても強い意志を感じました)

 稽古を付けてくれと頭を下げた息子の瞳は、自分がこれまで知る息子のソレと全く違っていた。

 それはもう別人といってもいい。

 一瞬とはいえ、本当に我が子なのかと疑ってしまったくらいだ。

 好奇心が働く。

 

 「――一君」

 語気を強めて一刀の鍛錬を中断させる。

 水入りペットボトルを床に下ろし、此方を向くと壁に掛けてあった竹刀を二振りとり、その内の一つを渡した。

 当然、状況が良く分かっていない一刀は受け取ったはいいものの、首を傾げたままだ。

 「手合わせしましょう。今度は剣道でも剣術でもなく、とにかく剣を交えてみましょう・・・」

 「え?は?」

 「お返事は?」

 頷く以外の行為が行える奴がいるのならば、そいつはただの自殺志願者だと断言してやろう。

 笑顔の裏には、有無を言わせぬ気迫が宿っていたのだから、これはもう即頷くしかない。

 

 そして、刀子と対峙した一刀は、最初に手合わせした時とまるで気迫が別人だった。

 その気迫の凄まじさに、〝魏の大剣〟と呼ばれた隻眼の少女を重ねてしまう。

 「では――参ります!!」

 疾い――何という踏み込みの速度だ。反応も間に合わず、発せられる殺気に固まり。

 「母さん、ちょ、ま・・・ぎゃぁああああああ――!!」

 それから三十分の間、手合わせという名の拷問は続くのだった。

 

 手合わせを終えた後の道場は静かだった。

 燃え尽きた一刀が仰向けになって死んでいる。

 (・・・まさか三十分も粘られるとは思いませんでしたね。しかし・・・なんというか〝戦い慣れてる〟感じかしら・・・それも、かなりの腕の人と)

 今までの息子であったなら、十分どころか五分も保たないはずだったのに。それを遥に上回る三十分。

 これは、驚愕せざるを得ない事実だった。

 

 

 (私は・・・手加減なんてしなかった・・・それこそ、病院送りにするぐらいのつもりで剣を振るったのに)

 結果はご覧の有様。

 あちこちに打撲はあるものの、それ以外の大きな怪我はなく、今現在、気を失っているのも疲労から来るものだ。

 「・・・か、りん」

 「?」

 

 ――かりん

 

 察するに女の子の名前ではあろうが、記憶を探ってもその名前を持つ知り合いはいない。

 おまけに、その名を口にした息子の目尻には涙の雫が見える。

 「・・・それが、貴方が頑張る理由なの?」

 気を失っている息子が目を覚ますこともない。だから、今の問いかけに答えが返ってくることはない。

 

 ――違う。これは勘でしかないのだが、その名前の持ち主だけではないだろう。

 

 「・・・そろそろ起こすとしましょう」

 ペットボトルのキャップを捻り、中の水を顔に注ぐ。ちなみに、この水は鍛錬に使っているものとは別の台所の冷蔵庫から持ってきたよく冷えた一品である。

 そのため、非常に冷たい。

 なので、条件反射で息子は飛び起きた。

 「いつまで寝ているつもりですか?さ、二回戦といきましょう。今日はあなたの底を見極めるまでとことんやりますよ♪」

 にっこりと笑う刀子だったが、一刀からすればそれは笑えない話だ。ぶっちゃけた話、死刑宣告だと言っていいものだった。

 

 この瞬間から、鍛練という名の死刑執行は連日続いた。朝は学校に行き、終われば自宅に帰り基礎鍛練と手合わせをひたすら続ける。

 それまで何度も、一刀は気を失い、何度もたたき起こされを繰り返すのだった。

 ただひたすらにのめり込んだ。

 ちなみにこの間は部活のほうは休部届を出しておいた。色々と言われるかとも思ったのだが、不動主将は「あいわかった」と一言だけ言ってそれを受け取ってくれた。

 夏までには必ず戻るという旨を告げると、「うむ、楽しみにしておくでござる」と優しく微笑んでくれた。

 

 ある日の深夜。刀子は、彼女には珍しく目を覚ました。

 夫は出張中で今は家におらず、二人の子供は自室。寝室には自分だけがいる。そんな部屋に差し込む月光に気付き、寝台から身を起こし、窓から夜空を見上げる。

 そして、ほんの小さな気まぐれで視線を月から逸らし庭を見下ろして、気が付く。道場の縁側に腰を下ろし、先ほどまでの自分と同じように夜空を見上げる息子の姿があった。

 

 

 見下ろす息子の横顔は遠目から見ても寂しげだ。

 「一君・・・どうしてそんなに寂しそうな顔をするんですか?」

 その理由を知りたい。

 そうすれば何とか慰めてやることができるかもしれない。

 大切な家族があんな顔をしているのを見ているのは、親として辛い。しかし、心配だからとなんでも踏み込めばいいというわけではないのだ。

 「かりん・・・顔さえ知らない貴女が、一君にあんな顔をさせるのですか?」

 だというのならば、正直な話、許せない。大切な我が子にあのような顔をさせるなど、許容できるはずがない。

 疑問として声にしたその先は心でつぶやく。

 「あの雰囲気、あの眼差し・・・あの覚悟」

 それは一日二日で得られるようなものなんかでは決してない。

 それこそ長い月日なくしてはとても不可能だ。

 「話してくれるまで待つ・・・そう言いましたが」

 鍛練を始めたあの日にそう約束はしたものの、あんな顔を見てしまった以上、この疑問を氷解させない限り、先々の鍛錬で色々支障をきたすようになってしまう気がした。それでは駄目だ。

 「やはり聞き出すのが一番ですね。そうと決まれば・・・」

 季節的にはそろそろ麦茶がいいのかもしれないが、何となくそれは、これから聞こうとしている話題を考えると違う気がした。となれば選択肢は一つしかないわけで、そうと決まれば温かい飲み物でも準備するとしよう。

 そう自分に言い聞かせ、寝室を後にした。

 「嫌われちゃうかもしれませんね・・・」

 少しだけ寂しそうな顔をして、刀子は呟く。

 その声に応える者はなく、呟きは寝室に静かに溶けて消えた。

 

 道場の縁側に座って一刀はぼんやりと月を眺める。

 あの時もそういえばこんな月夜だった気がする。たかだか数日だというのに、はっきりと思い出せないのは情けない話だ。

 「もしここに華琳がいたなら、『いつまで過去に縋り付いているつもり』なんて怒られるんだろうなぁ」

 「ふむ、その意見にはおおむね同意ね。過去ばかり見ている男の子は見ていて格好が悪いですから」

 呼吸停止。

 次に冷や汗がどっと出た。

 顔からはきっと血の気が引いて青褪めていることだろう。

 「ココアを持ってきましたよ。少し温まりなさいな」

 差し出されたマグカップを、この時季にと思いつつそれを受け取ると、ココアの優しい香りが鼻孔をくすぐった。

 

 

 声の主である母は、受け取ったことを確認すると隣に腰を下ろし、先ほどまでの自分のように月を見上げた。

 「回りくどいのはあまり好ましくありませんから、単刀直入に聞きましょうか。一君、一体貴方になにがあったのですか?」

 時間が止まったような感覚が全身を包んだ。

 「なん、で」

 

 ――いつか話すこと。

 

 確か母はそう言った筈だ。そのことに胸を撫でおろした。

 もちろん、その約束を反故にするつもりなんて一切なく、必ず話すつもりだった。

 どうして、このタイミングで聞いてくるのだろう。

 母は待つと言ったら待つ人だ。余程先延ばしにしない限り、追及の類は一切したりしない人なのだ。

 だが、そんな母が今追及をしてきた。そして、その理由を口にした。

 「言いたいことが顔に出る子ですね。えぇ、確かに貴方が考えている通り、私はあなたから話してくれる日を待つつもりでした。ですが、先ほど寝室から見た貴方の横顔は、寂しさと後悔の色がありました。気が変わった理由はそんなところです」

 「・・・」

 そんな顔をしていたのか。

 「それに、やはり貴方の変わりようは納得がいくものではありません。貴方のあの強い意志を感じさせた表情と瞳は、一日二日で得られるようなものではありませんから。正直言うと、貴方が鍛錬を願い出たあの日、私は、貴方が一君であるかさえ疑ったほどです。なにせ、なにをやるにしても言い訳ばかり並べていた子ですから」

 耳が痛すぎて逃げ出してしまいたくなる。だが、母の真剣な眼差しは、それを決して許してくれそうにはなかった。

 そんなことを考えていると母はすぅっと息を吸って瞳を閉じ、改めて自分を見据える。

 

 ――「もう一度聞きます。・・・一君、貴方にいったい何があったのですか」

 

 これは答えないわけにはいかないだろう。そもそも、勝手なことばかり言っている身だいうのに、ああしてほしいこうしてほしいと言うばかり、なんと不誠実極まりないことか。

 「話すのは構わないけど・・・かなり突拍子もない話だよ?」

 「むしろそうでないと、貴方の変わりように納得なんていきませんよ?まぁ、“かりん”という子が関わっていることは知っていますが」

 「――」

 はい?

 「貴方が気を失っているとき口にしていましたよ?察するに女の子のようですが」

 「女の子だよ・・・俺を変えてくれた大切な人だ」

 もう、話してしまおう。

 話さないで、このままもやもやした気持ちを抱えたままでいるより、今話してしまったほうがずっといい。

 そうだ、これはいい機会なんだ。

 「それじゃあ話すよ。・・・おとぎ話のような・・・俺にとっては現実にあった話を」

 ちょっとクサい演技だったかもしれない。

 なんてちょっと恥ずかしさを覚えつつ、あの世界で体験した物語を、俺は隣に座る母に語って聞かせた。

 

 

 ――「と。・・・こんな話になるんだけど」

 全部話した。

 こちらでは一瞬と言ってもいい、だけどとても長く過ごしたあの世界のことを。

 母は一度も話の腰を折ることなく、目を伏せ、俺の話を黙って聞いてくれた。

 話を終えた後に待っていたのは沈黙。

 だけど、無理もないと思う。誰が信じるこんな話。誰が信じる、自分の子供が人の生き死に、にかかわっていたなど。誰が信じる、己が子が歴史の行く末を左右したなど。

 「・・・なんというか、信じる信じない以前に呆れます。そんなにたくさんの女の子に手を出していたなんて」

 痛い。

 目を伏せ、やれやれとため息をついてそんなことを母は言った。いや、無理もないか。こっちじゃ何股かけてるんだって話になるんだから。

 「とはいえ、遊びでもなく真剣にその子たちの気持ちに応えてという点には、まぁよしという評価をしましょうか。遊びだったなんて口にすれば私の手で死体に変えているところです」

 背筋すら凍る母の視線と覇気、そして言葉だった。それは彼女を思い出させるには十分で思わず笑顔が浮かんでしまった。

 「何故そんな笑顔ができるのか甚だ疑問ではありますが。しかし、手練れとの経験があるだろうと読んではいたけど、曹操、夏候惇、夏候淵、許褚、典韋、張遼、楽進、李典、于禁ですか・・・何とも有名どころばかりですね。おまけに荀彧に郭嘉、程昱と名のある軍師とも肩を並べていたなんて・・・止めにそれがすべて女の子で、しかも関係を持った・・・軽く頭痛モノです。」

やっぱりそうなりますよね。

 口にせずに引き攣った表情のままそんなことを思う。なんか余裕あるな、俺。

 「・・・一君、“命”は重かったですか?」

 少しの間を開けて、呆れ顔を引き締めた母は真剣さをそのまま声に乗せて、そんなことを聞いてきた。

 「重かった。重すぎて最初は盛大に吐いた。吐かないようになっても苦さは・・・消えてくれなかった」

 「それでいいんです。私には想像しかできませんが、その苦さを忘れてしまったらそれは人として終わりではないかと思いますから」

 お父さんやお母さんならわかるんでしょうけど。母はそんなことを言った。

 ああ、確かに爺ちゃんや祖母ちゃんなら確かにわかるだろう。何せ戦争の経験者だ。それは父方の祖父母にも同じことが言えるだろうけど。

 「一君、それはお父さんにも話してあげてください。きっとあなたが抱えていた苦しみを分かってくれるはずです」

 「盆の時にでもそうするよ」

 「ええ、そうしなさい。・・・さて次の質問。この問いの答え如何によっては、今後一切鍛えてあげなくなると思ってくださいね」

 優しかった表情は一瞬で真剣なものへと変わり、声には重さが感じられた。

 殺気さえ感じさせる瞳で俺を見つめる母は、表情を変えることなく、短く、こういった

 

 ――「何故、強くなりたいのですか」

 

 ――「みんなのことが好きだから」

 

 その真剣な問いに、躊躇うことなくそう答えた。付け加えるなら、今の自分のまま帰りたくない、みんなを守れるようになりたいと後から言う。

 

 

 「・・・・・・ぷ、あははははははは――あはははっははは♪」

 突然の大爆笑。正直、どう反応していいのかわからない。

 「なるほど、いい答えです。ふふ、ほんの少し前までは雛鳥だった子が・・・いつのまにか立派な翼を得たものです」

 なんというか恥ずかしくなって、思わず視線をそらしてしまった。そんな俺の仕草に、可愛いですねと母は頭を撫でた。

 すいません、それもなんか照れくさいです。

 「しかし、名だたる武人を“守りたい”とはまた無茶な目標を持ったものです。が、その目標に到達してもらいたいと思うのもまた事実。ちょうどいい機会です・・・今の鍛錬にはだいぶ慣れてきたみたいですし、今後は十倍の鍛錬を課してあげましょう♪」

 にっこりと笑顔で笑えない宣言ををされた俺は、ただ引き攣った表情のまま笑うことしかできなかった。

 

 そして宣言通り、鍛練の量は十倍に跳ね上がった。

 問答無用で母に処刑される毎日が続く。父や刀亜が母を止めることもあった。それでも一刀はそんな二人の心配をはねのけ、鍛錬をやめるず、湿布やら絆創膏やら包帯やらと毎日のように痛々しい姿になりながらも、毎日を全力で走り続けた。

 精根尽き果てた一刀は、いつも最後にただ一言。

 「一思いに殺してくれ」

 何もかも諦めたような口調でそう呟くのだった。

 そんな我が子に対して、刀子はにっこりと満面の笑顔で。

 「頑張りなさい、バカ息子」

 一切手加減なんてしてやらないぞとその笑顔は雄弁に語っていた。

 

 

 ――あれから五年。

 鍛練以外にも、手を出せるものには何でも手を出した、身につけることができることは貪欲に吸収した。

 人生の中で、あまりにも密度の濃い時間だったと断言していいだろう。

 ただひたすらに打ち込んだ、のめり込んだ。

 そのおかげで、フランチェスカでもトップクラスの成績を身に着け、部活では全国一にさえ上り詰めた。

 ことこれに関して言うならば、不動先輩が卒業していなかったことが大きい。

 あの人がいたら、それはあり得なかった。

 卒業した先輩とは家の道場で何度も手合わせをした。ちなみに対戦成績は大幅の負け越し。勝ったことはあるけど、白星の数ははっきり言って少ない。

 この場合の手合わせは、言うまでもなく剣道ではなく剣術。

 負けるたびに思った。

 

 あっちでもこっちでも女の子は強いなあ――と。

 

 寝台で寝転がって思い出に浸っていると、ふとおもむろに荷物の一つである、刀を掲げる。

 そっと鞘から刀身をのぞかせると、そこから顔を見せたのは鋼色の刀身ではなく、漆黒の刀身だった。

 

 ――黒刀・罪姫

 

 北郷の家に伝わる刀の一振りで、自分が手にするまで、あの母・刀子はおろか、祖父ですらその刀身を見たことがないという代物だ。

 母から聞いた話では、この刀は持ち主を選ぶ刀で、俺が抜くまで、何世代もの間、門下生を含む誰一人として抜くことができなかったそうだ。

 そんな刀が俺を選んだ。

 刀身を抜いたとき、驚いた祖父と母は、ほんのわずかの間だけ唖然としたものの、どこか納得したような面持ちで。

 「この子はきっと・・・あなたの覚悟を認めたのでしょう。命の重さを知り、その業から目を背けずに受け止めた貴方のことを」

 母からそう告げ、祖父は見事と言って豪快に笑い、俺はただ何も言わずにその漆黒の刀身を見つめ続けた。

 納得いくまで刀を見た後、その日はそのまま眠りについた。

 

 

 一刀が大陸に帰ってきた翌日、所は変わって洛陽。

 三国の大戦終結、平和記念祭の準備が着々と進むこの地にて、その祭りに向けての打ち合わせをする三国の将たちの姿があった。

 「――祭りに向けての準備に特段、問題は発生しておらず、至って順調とのこと。武闘大会の会場設備の用意も同様です。大会専用の武器の制作に若干の遅れがありますが、誤差の範囲内。祭りの前日には間に合います」

 「ご苦労様、桂花。そのほかの準備はどうなっているのかしら」

 会議の場をまとめるのは、三国を統一した魏を統べる、正真正銘の覇王・曹操。

 真名を華琳という。

 彼女の言葉に促され、一人の少女が挙手し発現する。

 「将棋大会および、論文大会に関しても特段問題はありませんね~。術における投影も同じく、ですねえ」

 程昱――風が眠たそうに、のんびりとした口調で報告を終えると、ぐぅ・・・と眠ってしまおうとするのだが、そこに素早い突っ込みが入る。

 「寝るな!!」

 「おおっ!?」

 この五年で、魏だけでなく呉も蜀も見慣れてしまったこの光景に、笑いが生まれる。

 「まったく・・・華琳様、数え役満☆姉妹の舞台のほうも特に問題は報告されておりません。当人たちも間もなくこちらに到着するとのことです」

 こうして祭りの準備が着々と進む光景を視界に収めながら、私はいつものように思ってしまう。

 (一刀がこの場にいたならどういう感じになっていたでしょうね)

 

 ここにいない彼を思って、少し自嘲気味に笑う。

 そんな彼女は知らない。その思い人が再びこの地に戻ってきていることを。

 

 そうして会議が終わろうとしたその時、洛陽の警邏を務める部隊――通称・北郷隊の隊長代理――楽進こと凪が、誰も予想しなかった人物をこの場に連れてきた。

 「魏と呉の皆様にはお初にお目にかかります。私の名は管路・・・此度は魏の皆様にお伝えせねばならぬことがあり、馳せ参じた次第にございます」

 

 管路を名乗る女性が現れ真っ先に反応したのは蜀王の劉備――桃香だった。

 「管路ちゃん!久しぶりだね♪今日はどうしたの?」

 「話を聞いていましたか、桃香・・・魏の皆様にお話があってきたんですよ」

 「結構よ。似非占い師の妄言を聞く気はないわ」

 華琳は、バッサリと切って捨てた。

 しかし、管路からすれば、その反応は予想通りであり、これからあのことを告げたらどういう反応するか楽しみになってつい笑ってしまった。

 すると、魏の大剣・夏候惇――春蘭が真っ先に反応するが、管路はそれをきっぱりと無視し、聞く耳を持たないといった華琳さえも無視して。

 告げるべき事を告げた。

 

 ――「天に帰りし流星、再び大陸に舞い降りん」

 

 

 「「「「!!!!」」」

 管路の告げた言葉に三国の将たちはもちろん反応したが、その中で最も強く反応したのはやはり魏の面々だった。

 流星が誰のことを指しているのかを、彼女たちは誰よりも知っているからだ。

 「くすっ。期待通りの反応ですね。ええ、彼は既にこの大陸におりますよ。五年の歳月を経て・・・彼はこの地に帰ってきました・・・というよりは、私が連れ帰ったんですけどね」

 あっけらかんと言う管路に、魏の面々は誰一人として言葉を紡げずにいた。

 そんな中で真っ先に我に返り、管路に向けて言葉を向けたのはやはりというか、華琳だった。

 「一刀が・・・帰ってきたですって・・・・」

 「そうですよ。曹孟徳・・・もっとも、信じるかどうかはあなた方の自由ですがね。今頃は陳留からこちらに向かっていると思いますよ」

 その街の名が意味することも華琳にはよくわかっていた。

 だが、その事実の大きさに呆然とするしかなかったのだ。

 そんな彼女――彼女たちに向けてさらに管路は言葉を紡ぐ。

 「知り合い――あれを知合いというのは甚だ不本意ですが――に連れてくるように依頼しておきましたので、もうしばらくしたらこちらに到着すると思いますよ。少々、彼の意向を無視する形にはなりましたが・・・まぁ私は意外と天邪鬼ですので」

 魏の面々の反応を楽しむ管路をよそに呆然とする一同だった。

 

 その頃の一刀はというと。

 「ぎゃああああーー!!俺をどうしようっていうんだあああ!!」

 「心配しなくてもいいわよんご主人様♪すぐにつくわ」

 「急ぐぞ貂蝉。めったにないあ奴からの頼みじゃからの」

 一刀を抱える三つ編みの筋肉ダルマと一刀の荷物を抱える白髪の筋肉ダルマ。

 二人の巨漢は洛陽に向けて爆走していた。

 

 彼を――彼女たちの元へと再び、巡り合せるために。

 

 ただ――、問題が一つ。

 早いのだ。尋常ならざる早さな上、何にも対応策なしなので、加速における重力が思いっきりのしかかる。

 何が言いたいのかといえば、一刀の意識がブラックアウト寸前なのだということに他ならない。

 (意識が・・・視界が霞、む)

 その直後、一刀の意識は完全に闇の中へと落ちてしまうのだった。

 

 

 夢――そう、これは夢だ。

 あの時の夢、大切なあの子を――華琳を俺は泣かせてしまった。

 一度も――そう、少なくともおれ自身は彼女の涙を見たことがなかった、その涙を見てしまった。

 それがもし、うれし涙だったならこんなにも苦しい思いはしなかっただろう。笑ってほしかった子を俺は最後の最後で泣かせてしまった。

 俺の姿は消えてしまったけど、俺はまだ、“そこにいた”

 だから、それを見てしまった。

 大粒の涙をボロボロとこぼす彼女に手を差し伸べようとして、何もできずにただ痛みだけが残った。

 

 その時の夢を見ながら、俺は泣いている彼女に声を送る。

 それは届かない声だけど、俺はこの胸の内にある思いを声にする・

 

 ――もう、どこにもいかないから・・・いなくなったりしないから。

 ――だから、泣かないでくれ・・・華琳。

 

 辺りが白く染まっていく。

 ああ、次は何を見るんだろう。

 漠然とそんなことを思っているうちに、視界のすべてが白く染まって何も見えなくなった。

 

 

 場所は再び洛陽。

 管路は、軽いもてなしを受けていた。

 客人として出された茶に舌鼓を打ちながら、ただ何も言わずに時間をつぶした。

 途中、何度も質問を投げかけられた彼女だが、そのすべての問いに対して茶を濁し続けた。

 「やれやれ・・・ようやくですか」

ようやく言葉を発した管路。そのセリフに魏の一同も強く反応する。

 

 ――「お待たせしたわねえ!ごぉ主人さまを、連れてきたわよう!!」

 ――「実によい運動であったわ!!」

 

 怒涛の勢いでやってきた二人の巨漢に管路は蟀谷を軽く抑え、三国の皆様はその容姿に完全に凍り付いてしまうのだった。

 そんな中、管路だけは特に気にすることもなく歩み寄り、深々と呆れを込めた溜息を吐く。

 「卑弥呼、貂蝉・・・ご苦労様です。と、言いたいところではありますが・・・彼のその有様は何ですか?」

 管路が指をさした先には貂蝉に抱えられた一刀が意識を失ってぐったりとしていた。

 

 ――「一刀!!」

 

 誰よりも早く彼の名を呼んだのは、華琳だ。

 ぐったりとした一刀の姿に、いろんな思いがあふれてくる。

 「心配無用です。単に気を失っているだけ・・・あなた方で介抱してあげてください」

肩にそっと手を置き優しく声をかける管路。その言葉にしっかりと頷き、すぐに表情を引き締めると、的確に指示を出した。

 「春蘭、秋蘭は一刀を部屋に。凪は今すぐ華佗を連れてきて頂戴。心配はないでしょうけど、念のためよ」

 

 「「御意!!」」

 

 命ぜられた三人は信じられないほど迅速に行動に移った。

 「なんや華琳・・・急に元気でよったやんか」

 凛とする華琳をからかうように霞がにんまりとした顔で声をかける。だが、そういう霞もどこか嬉しそうだ。

 いや、彼女ら二人だけではない。

 

 桂花も、風も、稟も、流琉も、季衣も、真桜も、沙和も――魏の皆が皆、どこか嬉しそうな表情をしていた。

 そんな彼女達をみながら管路は微笑み、ささやかな言の葉を贈った。

 

 ――「流星は、流星が愛す者たちと共に生きるために、この地に再び来たり。死が別つその時まで、その身がこの地より去ることはあらず」

 

 そう、言の葉を少女たちに贈るのだった。

 

 その言葉を聞いていたかは定かではない。だが、華琳は一刀が出ていた出入口を見つめたまま、小さくつぶやく。

 

 

 「おかえりなさい」

 

 

~あとがき~

 

 

 

実はこの作品、序章を投稿したのが吃驚なことにちょうど一年前でした。

こんな面白いこともあるんですね。流石に次は一年も開けるつもりはありませんが

さて、、話は変わってこのシリーズにおける一刀の補足をしておこうと思います。

 

北郷一刀

 

故郷に帰り、五年の歳月を経て再び大陸に戻ってきた“天の御使い”

かなり強化しております。

古流剣術の“北郷流”を使う。(※技に関しては、一部違いがあるものの、おおむね孫呉伝と同じです)

使用する刀は黒刀の“罪姫”(つみひめ)で銘の名前の元ネタはディエスイレの“罪姫・正義の柱”より。

長さは概ね、刀の長さとされている二尺三寸(約70㎝)よりも長い三尺(約90㎝)※このシリーズにおける一尺は約30㎝としております。

 

北郷刀子

 

一刀と刀亜の母。

北郷流の師範代で桁外れに強い人。一刀と刀亜のことを愛している厳しくもやさしい母。

怒ると洒落にならないほど怖い

彼女の愛刀は和泉守兼定。

 

北郷刀亜

 

才色兼備の一刀の妹。

フランチェスカの一年生で剣道部期待の新入生。

三国世界から帰ってきてひどく落ち込んでいる兄のことを心配している。

 

管路

 

一刀を外史に連れ戻した張本人で星詠み。

外史の肯定者で、気に入った外史に巡り合うとちょこちょことちょっかいを出して外史がきえないようにしたりしている。

許子将のことを快く思っていない

 

次に巨漢二人に関しましては・・・特に説明は不要ではないかと。

 

概ねこんな感じでしょうか。

このシリーズも楽しんでいただけることを願って、今日はこの辺で。

次回の作品でまた――

Kanadeでした。

 


 
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