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恋姫夢想 ~至高の鍛冶師?の物語~ 第八話

第八話投稿です。
相変わらず独自設定&ご都合主義です。
今回は反応が本気で怖い…。

それではどうぞ。

2011-11-23 17:47:36 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:5963   閲覧ユーザー数:4852

本来、俺の一日は朝起きてすぐの鍛錬から始まる。

陽が出る前に街の外に出て、自分が覚えて来た技の確認、体力・筋力維持の運動をする。

いくら鍛冶屋でもそればっかりしている訳ではない。ましてや俺の家は

かなり特殊だったからな。もはや習慣となっているのだ。

最近は楽進が俺の鍛錬に付き合うようになり、組み手もできるようになったのは

嬉しい誤算だった。相手が居ると居ないでは大違いだからな。

朝の鍛錬を終えたら街に戻り、朝食を食べて鍛冶師の仕事を始める。

それが通常の流れだ。

だが今は……

 

 

「……行き倒れか?」

「……行き倒れですね」

 

 

店の前に男が倒れてるせいで今日の朝の鍛錬は中止になるだろうと考えている。

いや、倒れてるだけなら俺も楽進も直ぐに行動してる。

では何故それをしないのか。それは……

 

 

「…こ、こんな所で……死ぬ…訳には…」

 

男が這ってでも動こうとしてるからだ………腹の音を響かせながら。

とりあえず飯か?

 

 

 

 

 

 

「いやあ、すまない。二人は命の恩人だ」

「いや」

「お気になさらず」

 

男を店に運んで飯を食わせた。行き倒れの演技の可能性も考えたが、すぐにやめた。

いくらなんでも腹の音は誤魔化せないだろうからな。おまけに少し頬もこけてたし。

ちなみに最初に作ったのは蜂蜜入りの生姜湯である。

生姜湯を飲んで身体も温まった為か、男は俺が作った料理を悉く平らげた。

いやもう、見てるこっちが圧倒される位に。

 

「しかし何だって俺の店の前で倒れてたんだ?」

「恥ずかしい話だが、空腹で…」

「いや、それは分かってるから」

 

あれだけ腹の音を響かせればな。

 

「何で空腹で倒れる事態になる。見た所旅人の様だが。それもかなり手慣れた」

 

正直空腹で倒れる様な経験の浅い人間には見えない。

 

「実は、ここに来る途中に賊に襲われたらしい家族に会ってな。なんとか荷物を

 捨てるようにして逃げられたらしいんだが、その時に食料も捨ててしまった

 らしいんだ。それで…」

「……持ってる食料を全部渡した、とか言うんじゃないだろうな」

「その通りだ」

「………それで自分が行き倒れになってどうする」

「いやまったく、面目ない」

 

まったくだ。隣で一緒に聞いてた楽進もかなり呆れてるぞ。

 

 

 

 

「そういえば自己紹介がまだだったな。俺の名前は華佗だ」

「鷹原だ」

「楽進です」

 

簡単な自己紹介をしたんだが…………駄目だ、一体誰か分からん。

正直、俺の三国志の知識は有名どころを除いてほとんど無い。

なんせ隣にいる楽進もどこの武将なのか俺には分からないからな。

いや、武将なのかどうかも分からんが。

その知識が役に立つかどうかは別にして。

 

「それで華佗、なんでこの街に来たんだ?」

 

ただ単に、空腹の中でこの街が目に入ったからって可能性もあるが。

 

「俺には目的があって旅をしている。この街に来たのもその為だ」

「目的…ですか?」

「ああ。俺は大陸を周りながら医療を行っているんだ」

「医療…って事は、お前は医者なのか?」

 

全くそうは見えん。まだ格闘家って方がしっくりくるぞ。

 

「ああ。俺は五斗米道(ゴッドヴェイドォー)の継承者なんだ」

 

……今、言い方がおかしくなかったか?

 

「五斗米道(ごとべいどう)…ですか」

「ちがあああああう!!!」

「ええ!?」

「ごとべいどう、ではない!ゴッドヴェイドォーだ!!!」

 

楽進の呼び方が気に入らなかったらしく、華佗は訂正しながら叫んだ。

爽やか系だと思ったが、熱い男だったんだな、華佗。

てか俺の聞き違いじゃなかったか……。

 

「ご…ごっとべいどー」

「ちがああああああう!!!」

「どう違うんですか~~~!?」

 

とりあえず楽進を助けるか。

 

「華佗、そのゴッドヴェイドォーって何だ」

 

そう言うと、華佗は俺の方を向き、手を掴んできた。

 

「初めてだ!ゴッドヴェイドォー関係者以外でしっかりと発音した人間は!!!」

「わかったから寄るな!近い!顔が近い!?」

 

熱い通り越して暑苦しいわ!!!

 

 

 

 

 

 

「改めて訊くぞ。ゴッドヴェイドォーって何だ」

 

医療器具らしき物は何も持ってない様に見えるんだが。

 

「五斗米道はこれらの鍼を使って病魔と闘い、治療を行う」

 

そう言って華佗は懐から何本かの鍼を取り出し、テーブルの上に並べた。

……何か不思議な感じがするんだが。

 

「鍼自体がわずかですが気を纏っています。かなり使い込まれているようですね」

「分かるのか?」

「はい」

 

この不思議な感じは気か。

……使えなくても感じる位はできるんだな。

 

「華佗、先程『病魔と闘い』って言ったが、どういう意味だ?病魔の方は

 予想がつくんだが」

「説明するより実践した方が早い。お前の身体に病魔がいる様だからな」

 

……何?

 

「ま、待ってください華佗さん!鷹原さんが病に蝕まれているって言うんですか!!?」

「ついでに訊くと、見ただけで分かるのか?」

「ああ。五斗米道は病魔が見える事が必須だからな。後蝕まれてるのとは少し違う。

 何か堰き止めているって感じだ。それもかなり前からいる病魔だ。心当たりはないか?」

「……幼少の頃、鍛錬中に大怪我した事は何度かあるが…」

 

今考えたら防具無しで武具の打ち合いとか、子供の時にする鍛錬じゃないよな。

いくら刃引きしてあるとはいえ。

 

「おそらくそれだな。そしてお前の何かを阻害している」

「何か……」

「……ひょっとして」

「楽進?」

「鷹原さん。私は前に『私ではあなたの気が起こせない』と言いました」

「ああ」

 

楽進と鍛錬する様になり、楽進は俺に気の使い方を教授してくれようとした事があった。

この世界、楽進の様に身体の外にまで気を出せる人間は稀だが、身体の内側、

つまり身体強化で使う人間は少なくないらしい。実際、董卓軍の武将は全員が

気を使っていると楽進は言っていた。恋は特に凄まじいとも……。

で、楽進が教授してくれたのだが……全く反応しなかった。呼吸法、鍛錬、

果ては自分の気を俺に流し込んで無理矢理起こそうとしたのだが……物の見事に撃沈。

そこでさっきの楽進の言葉になる。その時の楽進の落ち込みようは凄かった…。

俺に関する事だから俺が慰める訳にもいかなかったし。

「前と変わらないだけだから」とは言ったんだが……。

 

「もしかしたらその病魔という物が消えれば……」

「……気を起こせるかもしれない、か」

「はい」

 

楽進。目が「そうであれば今度こそやってみせます」って言ってるんだが…。

確かに、可能性があるならやってみたい。

 

 

 

 

「……頼めるか?華佗」

「まかせろ。それじゃあ、上の服を脱いで俺の前に座ってくれ」

「わかった」

「え?」

 

俺は自分が座ってた椅子を華佗に見える位置に移動させ、上半身の服をすべて脱ぎ、

椅子に座る。

 

「………………」

「楽進?」

「はい?……わあ!?す、すいません!!?」

 

楽進が顔を真っ赤にしながら回れ右をする。

いや、鍛錬終わった後の水浴びで身体拭いたりするし、前に気を流し込まれた時も

上半身裸だったし、見慣れてるよな?俺の身体。

 

「絞り込まれた良い筋肉だな」

 

こっちはこっちで微妙にズレた感想言ってるし。

 

「……早く頼む」

「よし。…はああああああっ!!!」

 

そう言って華佗は鍼の一本を手に取り、精神集中(?)をし始める。

 

「………すごい。膨大な量の気が練られてます」

「それ程か?」

「はい」

 

華佗から気が溢れるのを感じたのか、楽進が再びこちらを向いた。

まだ顔が赤いけどな。

そして

 

「…我が身、我が鍼と一つとなり!!一鍼同体!!全力全快!!

 必察必治癒(ひっさつひっちゅう)!!」

「え?…え?え?」

 

なんか叫び始めた。てか今「必殺」って言わなかったか!?

自分で言っておいて何だが本当に大丈夫なんだろうな!?

楽進なんか予想外すぎて混乱してるぞ!

 

「病魔覆滅!!」

 

ええい、なるようになれだ!!!

 

 

 

「元気になれえええええ!!!」

 

そして華佗はその手に持った鍼を俺に打ち込んだ。

 

 

 

 

 

 

「…病魔、退散」

 

……どうやら治療が完了したらしい。

身体を動かしてみたが、別段変った感じはしない。

 

「前との違いは感じないな」

「だが病魔は消えた。間違いなくな」

「となると…『私の出番ですね』お、おう。頼む」

 

いつの間にか楽進が復活して待機していた。

そして背中から俺の両肩に手を置く。

 

「………」

 

楽進が口を閉ざし、精神を集中させる。今俺の身体には楽進の気が

流れ込んでいる筈だ。

前回はそれが全く分からなかったが…

 

「……ん?」

 

今回は違った。僅かではあるが、俺の肩から身体の中心、臍の辺りに向かって

何かが流れているのが分かった。

 

「どうですか?」

「身体の中を何かが流れているのは分かる」

「それです!それが私の気です!」

「この後は?」

「以前お教えした方法で呼吸してみてください!」

 

…臍の奥辺りに火が灯っているように意識し、息を吸う時にはその火に口から取り入れた

風を送り込み、息を吐く時にはその火を身体全体に燃え広がせる、だったな。

それを何度か繰り返すと、自分の身体に先程とは別の何かが身体に広がるのを

感じた。

 

「鷹原さん、それがあなたの気です」

「これが……」

 

そう思ったのも束の間、俺の身体から気が消えていってしまった。

 

「あ…」

「気はすぐに使える様にはなりません。本来は身体の鍛錬と共に覚える物ですが、今回は

 無理矢理起こしましたから」

「…そうか」

「当分は先程の様に私の気を種火代わりにして鍛錬しましょう。繰り返せば自分だけで

 気が使えるようになります」

 

そう言われた時、俺は魂が震えるのを感じた。どうやら俺も気が使える事を

喜んでいたらしい。

 

 

 

 

「ありがとう、楽進」

 

俺は立ち上がって椅子を退かしながら楽進に向き直り、頭を下げた。

 

「あ、頭を上げてください。こんな事でしか、鷹原さんの信頼に報いることが…」

「真也だ」

「え?」

「俺の名と真名は真也。この名前、お前に預ける」

 

楽進は数瞬程硬直していたが、俺の言葉の意味に気付いたようだ。

 

「な、凪です、私の真名。この名、あなたに預けます」

「受け取った。改めてありがとう、凪」

 

俺はもう一度楽進…凪に対し頭を下げた。

 

「やっと…あなたに真名を預けられました」

「何か言ったか?」

「い、いえ!何も!」

 

小声で何か喋ってた筈なんだが…あまり追求する物じゃないよな。

 

「それとすまなかった。お前の真名を受け取ろうとしないで」

「私でも同じ状況になればそうした筈です。気にしないでください」

「そう言ってもらえると助かる。華佗もありがとう。おかげで俺も気が使えるようになる」

「これが俺のするべき事だ。気にするな」

「何か礼をさせてくれ。俺に出来る事なら何でもしよう」

「そんなのはいらないさ。あえて言うなら、一飯の恩だ」

「……本当にそれでいいのか?」

「命の恩人にこれ以上求めたら罰が当たる」

 

そう言われたらそれまでなんだが…。

 

「なら、俺の真名、真也をお前に預ける」

「では私も。私の真名、凪。あなたに預けます」

「ならば俺も預けよう。俺の真名は獅子(れお)だ」

 

俺達は互いの真名を交換した。けど獅子。五斗米道の呼び方といい、その真名といい、

本当にこの世界の人間か?いや、この世界がおかしいのは今更か…。

 

 

 

「獅子、この街にはしばらく滞在するのか?」

「その予定ではあるな」

「宿は?」

「無論、これから見つける」

「……凪、どう思う?」

「良いと思いますよ?」

「何の話だ?」

「いや、何ならこの店を使うか?獅子。部屋はあるぞ」

「……いいのか?」

「ああ」

「恩に着るぞ!真也!」

「だから顔を近づけるな!!」

 

 

 

また一人、俺の店に居候が増えた。

 

 

 

 

 

おまけ

 

「ほう、気が使えるようになったのか」

「まだ凪の協力が必要だが、いずれは自分だけで…な」

「面白い。また戦う理由ができたな」

「……何度も言うが、俺の本職は鍛冶師だ」

「楽進とは何度も手合わせしてるのだろう?ならば私ともやれ」

「いや、凪とのあれは鍛錬…」

「楽進ばかり戦ってずるいではないか」

「ずるいってお前……」

 

 

 

「……」

「あの二人がどうかしたのか?凪」

「あ、獅子さん。いえ、あの御二方を見てると胸が何かおかしくて…」

「おかしい?」

「暖かくなる様な……痛くなる様な………そんな感じです」

「……病魔は見えないが…」

「…そうですか…」

「?」

 

 

~後書き~

 

華佗改め、獅子も居候決定。

前回同様かなり無理矢理だ……。

 


 
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