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恋姫夢想 ~至高の鍛冶師?の物語~ 第七話

第七話です。
今回は真也視点ではありません。
話が無理矢理ではありますが、
よければどうぞ。

2011-11-19 07:23:34 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:5978   閲覧ユーザー数:4930

私、楽進こと凪は今、鍛冶屋「鋼鷹」で働いている。

働いていると言っても私は鍛冶が出来ないから接客と配達が主だ。

何故この店で働くようになったのか、それは私の友人が切欠だった。

 

 

 

 

 

 

「ただいまや、凪。いや~~、疲れたわ」

「お腹ぺこぺこなのぉ~」

「行儀が悪いぞ、二人とも」

 

私は故郷の街で二人の友人、真桜と沙和の三人で暮らしていた。小さい頃からの

友人で、それぞれの親も少し前に流行り病で亡くなった事もあり、一緒に生活する様に

なったのだ。

 

「いやいや結構体力使うんやで、鍛冶仕事は。熱気も凄いから汗がだらだらや」

「だからって常日頃から上半身水着はどうかと思う」

「それは同意なのぉ~」

「いやいや、うちの豊満な肉体を街の皆に見せつけてるんや」

「確かに沙和も可愛い服があったら皆に見せたいのぉ~」

「……もういい」

 

この二人の会話には時々付いていけなくなる時があるが、なんだかんだでやっていた。

 

「あれ?凪ちゃんが使ってる包丁、新しくなってるのぉ~」

「あ、本当や。どうしたんや、それ」

「街に来てた商人が『羽丸印』の物を売っていたんだ。ちょっと高かったけど、

 値段以上の価値は十分あると思う」

「『羽丸印』ってすごいのぉ~。お菓子もちょっと変わってるけどおいしいのぉ~」

「料理の方はともかく、鍛冶関係の物はなかなか手に入らないで。

 ちょっと見せてもらってええ?」

「いいけど…ほら」

「あんがと。へ~~、これが『羽丸印』の包丁か……ん?何か見た事あるような?」

「え?けど私が手に入れたのはそれが最初だぞ?」

「沙和も持ってないのぉ~」

「うちもやけど……何でかな」

「分からないなら考えてもしょうがないのぉ~。それよりご飯にするのぉ~」

「そうだな。真桜返してくれ」

「ん~~~」

 

 

 

 

 

 

晩御飯を食べ、私が洗い物を終えてもまだ真桜は考え込んでいた。

 

「ん~~~~、何やったかな~~~」

「真桜ちゃん、かなり悩んでるのぉ~」

「けど私達には分からないからどうしようも『思い出した!!!』真桜!?」

「真桜ちゃん!?」

 

いきなり叫び声を上げたと思ったら自分の部屋に駆け込んだ。すぐに戻ってきたが、

その手に一振りの剣を持っていた。

 

「その剣って真桜ちゃんがかなり前に買った物なのぉ~」

「その剣がどうしたんだ?真桜」

「凪。もう一回、あの包丁見せてくれへん?」

「え?あ、ああ…」

 

私は「羽丸印」の包丁を再び真桜に渡した。すると真桜は包丁と剣を交互に

見比べていたのだが…

 

「やっぱり。この二つ、同じ人間が作った物や」

 

そう真桜は断言した。

 

「?どういう事だ、真桜」

「そうなのぉ~。全然似てないのぉ~」

「そう思うのも無理無いわ。せやけど鍛冶に携わってる人間ならまず分かる。

 こういうのは意図しなくても本人の特徴が出てしまうんや。

 そして、この二つには同じ特徴がある」

 

私からはそんなの見えなかったが、真桜が言うのであればそうだったのだろう。

 

「成程な。この剣を作った人間の作品か。それなら納得や」

「え?」

「あの剣な、うちも再現してやろうと思っていろいろ試したんや。

 せやけど全然できなかった。熱処理の仕方なのか、叩き方なのか、何が原因なのかさっぱりや」

「それほどなのか」

「正直、これ以上の剣はそうは無いと思ったで」

「すごいのぉ~」

 

それほどの腕前の人間に、私の武具を作ってもらえたら…私はそう考えた。

 

 

 

 

「…決めた」

「「凪(ちゃん)?」」

「これを作った鍛冶師に会いに行く。そして私の武具を作ってもらう」

「「……は?」」

 

居場所はこれを売っていた商人に訊けばよかった。まだ街にいる筈だったから。

 

「いやいやいや、凪いきなりすぎるで。それに武具ならうちが作るで?」

「真桜は何か余計な装飾品付けそうで嫌だ」

「ひど!?そんな事する訳ないやんか」

「あれ?真桜ちゃん前に『凪ちゃんが武具頼んできたら何付けよう』って言ってた筈なのぉ~」

「今それ言うか!!?」

 

この時、絶対に真桜には頼まないと決めた。

 

「沙和、真桜をこの街に引き止めておいてくれるか?」

「凪!?」

「え~、沙和も一緒に行きたい『お土産買ってくるから』気をつけていってらっしゃいなのぉ~」

 

無いとは思うが、真桜の影響を受けられでもしたら困ると思ったから、一人で

訪ねようと思った。

 

次の日の朝、商人にあの包丁を作った鍛冶師の居場所を聞き出し、せがむ真桜と

それを引き止める沙和を置いて私は街を出立した。

けど商人の顔がやたら引き攣ってたのは何故だったのだろうか……。

 

 

 

街へ向かう商人の荷台に乗せてもらったりしながら、私は鍛冶師がいるという

この街に辿り着いた。

だが、街の人に

 

「『羽丸印』の鍛冶師について何か知りませんか?」

 

と尋ね、教えてくれた場所に行くと

 

「へいらっしゃい!」

 

 

何故か飯屋だった。

 

 

 

 

 

「初めて見る顔だな、お嬢ちゃん。注文は?」

「え?ああ、いえ。私は客じゃありません」

「ん?」

「あの、『羽丸印』の鍛冶師について何か知りませんか?」

「…なんでここでそんな事を訊くんでい、お嬢ちゃん」

「私の武具を作って欲しいんです」

「武具?」

「はい」

「ふむ……」

 

店主はわたしをじっと見ていたが

 

「ここから南に少し歩いて、最初の分かれ道を右に曲がり、そのままずっと歩いて行くと

 左側に「鋼鷹」って店があるからそこで訊いてみな」

 

そう教えてくれた。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

                              ・・・ 

先程の店主が教えてくれた通りに道を行くと確かに「鋼鷹」という鍛冶屋があった。

もしかしてと思い、店の扉を開け

 

 

「ん?いらっしゃい」

 

 

私は鷹原さんと出会った。

 

 

 

 

 

「断る。お引き取り願おう」

 

自分が「羽丸印」の鍛冶師である事は簡単に認めた鷹原さんだったが、

私の武具を作って欲しいという願いは一刀両断に切り捨てられた。

鷹原さん曰く、軍以外に武具を作る事は余程でないかぎり無い、と言われた。

それでも諦めきれず、私は何度も店を訪れた。その度に

 

「断る」

 

と言われ続けたが。

そんな中、私にとって転機となる事件が起きた……いや、事件を起こした。

 

 

その日、鷹原さんは以前私に「鋼鷹」の場所を教えてくれたあの飯屋に

注文を受けていたらしい鍋を持ってきていた。

私はそこから少し離れた場所で待っていたのだが

 

「盗人だあ!!!」

 

背後から叫び声が上がり、振り向いた。

すると一人の男が大慌てで走って行くのが見えた。それを認識した私は

 

「猛虎蹴撃!!!」

 

すぐさま自身の必殺技を男に向けて放った。男の真後ろの地面に着弾させ、

それによって起こる爆炎で男を吹き飛ばした。なおも男が逃げようとする素振りを

見せたので、すぐに近寄ってその腹に拳を叩きこみ、意識を刈り取った。

これで一安心、と立ち上がった私に

 

 

 

 

誰かからの拳骨がお見舞いされた。

 

「痛っ!?だ、誰…店主!?」

 

振り返るとそこにいたのは鷹原さんだった。

 

「『鋼鷹の』店主だ。この街で『店主』単独呼びは特定人物の事になるぞ」

「は、はあ……じゃなくて一体何を」

「まずは周りを見てみろ。話はそれからだ」

「周り?…あ」

 

 

そう言われて周りを見渡した私の目に入ってきたのは

 

 

 

私の猛虎蹴撃で発生した爆炎で被害を受けた民家や店だった。

 

 

 

 

 

あの後騒ぎを聞いて駆けつけてきた兵士達に、私は盗みを働いた男と共に

城に連行された。

店や民家の人たちは気にするな、と言ってくれたが、それに甘える訳にはいかない。

私は聴取を受けた後、眼鏡を掛けた少女、詠様の前に連れてこられた。そこには

見た事のない武器を持った将軍、華雄様もいた。

 

「さて、楽進と言ったわね」

「はい」

「まずは、盗人の捕縛の協力に感謝するわ。ありがとう」

「いえ、咄嗟に動いただけです」

「そう。でもね、発生させた被害を見逃す訳にはいかないの。分かるわね?」

「はい…」

「まあ、被害を受けた民達から、あなたを処罰しないでほしいって声が出てるから

 咎め無しでも良かったんだけど…」

「え?」

「あなたが他の街から来た人間というのが問題なのよ」

「問題…ですか?」

「この街の人間ならどこに誰がいるか分かるから釈放してもそれとなく

 見張れるんだけど、あなたはそうじゃないわ。また同じ事をする可能性がある以上、

 簡単に釈放できない」

 

私にその気はないが、それを証明できない以上その考えは当然だった。

 

「だから短くはあるけど拘留『お、いたいた』霞?」

 

詠様が私に処分を告げようとした時、偃月刀を持った女性、霞様が現れた。

 

「どうしたの?緊急?」

「ん~~、緊急って言えば緊急や。ちょいと耳貸してえや」

 

すると霞様は詠様に近づき、耳打ちをした。

 

「……それ、本当?」

「本人から伝言頼まれたんや。嘘や無いやろ」

「そう、なら問題なさそうね……楽進」

「は、はい」

「いまからこの張遼があなたを案内するから付いて行って。

 事情は説明させるから」

「は、はあ…」

「ほな行くで、楽進っての」

「あ、待ってください」

 

私は部屋を出て行く霞様に付いて行った。

 

 

 

 

部屋を出て、当然の様に城を出て行く霞様に、私は事情を訊いた。

 

「あの、牢屋に行くのでは…」

「ちゃうちゃう。今向かってるんは、あんたの身元引受人の所や」

「身元…引受人?」

「せや。あんたは街の人間や無いから普通は簡単に出られへんのやけど、身元を

 保障してくれる人間がおるなら話は別や」

「けど、この街にそんな人いる訳が…」

「どういう事情かはうちも知らんけど、あんたを信頼しとるっちゅうのは確かやな。

 ……ついでに言っとくで」

「はい?」

「…もしあいつの信頼裏切ったりしたら許さへん。うちだけやない。

 この街の人間ほぼ全てを敵に回す思うとき」

 

そう告げた時の霞様は、背中越しでも背筋が凍る程の威圧感を持っていた。

 

「…はい。そこまで私を信頼してくれたんです。それを裏切る様な真似は決して」

 

私は本心から、霞様に答えた。

 

「そか。ならええんや。っと、着いたで」

「え?…本当に……ここなんですか?」

「せや。ここがあんたの身元引受人のおる店

 

 

 

 

 『鋼鷹』や」

 

 

 

 

「来たか。すまないな、霞。伝言なんか頼んだりして」

「ええてええて。代わりに真也お手製の料理食わせてもらうんやから」

「そう言ってもらえると助かる。時間が空いたらまた来てくれ」

「了解や♪ほなな、楽進。さっき言った事、忘れるんやないで」

 

そう言って霞さんは城のある方向に歩いて行った。

 

「…いつまでも突っ立ってないで、中に入りな」

「あ、あの…!」

「ん?」

「どうして…私の身元を引き受けてくれたんですか?」

 

鷹原さんが私の身元を引き受ける理由が、私には全く分からなかった。

 

「……お前の事だからこれからあの辺りの店や民家に謝りに行くだろう?」

「はい」

「おまけに持ち金全部その弁償に回そうとする」

「う……はい」

「そうなると宿も追い出されて野宿だ。この辺りも夜はかなり寒い。

 風邪をひいてそのまま……なんて事もあり得る」

「……」

「俺を訪ねて来たのにそんな死に方されたら俺も良い気分じゃない。

 だから寝床を提供する為にも身元引受人になった。

 それだけだ」

「……それ、かなり無理矢理では『やめとけやめとけ』…は?」

「……店主」

 

声がした方を見ると、そこには店主がいた。

 

 

 

「よう、さっきぶり。やめとけ嬢ちゃん。大将はそう簡単に考えは変えねえよ」

「え?けど…」

「大将はな、嬢ちゃんがどういう行動を起こすか考えてこんな事してんだ。

 大将が弁償費を立て替えりゃあ早えけど、それだと嬢ちゃんの気が済まねえだろう?」

「はい」

「だったら寝床位はって思ってんだよ。それに早く謝りてえだろうから身元引受人になって

 さっさと釈放させたのさ」

「けど、それだけだと私にここまでしてくれる理由には…」

「なんだかんだで、大将も嬢ちゃんを好ましく思ってんだよ。それに意外と甘いしな。

 客として来たんだから放っておけないってのもあんだろ」

「人の心を勝手に推測して代弁するな…」

「けど事実だろ?」

「……」

 

鷹原さんは店主の問いに黙ってしまった。けど…

 

「それなら、なおさらお世話になる訳には……」

「頑固だねえ、嬢ちゃんも。ならここで働けばいい」

「は?」

「え?」

「嬢ちゃんがここで働く。大将が代価として寝床を提供する。

 それでいいんじゃねえか?」

「何を勝手に『どうだ、嬢ちゃん』聞けよ」

「……」

 

それならば一方的にお世話になる訳じゃない。私の結論は早かった。

 

「よろしくお願いします。店主」

「決まりだな」

「……鷹原だ」

「え?」

「一度言ったが、『店主』だけだとこの街では特定人物を指す。それがこの人だ。

 かと言って自分の店で【『鋼鷹』の店主】なんて呼び方は面倒だ。

 これからは俺の事は『鷹原』と呼べ」

「……はい!分かりました、鷹原さん!」

 

そして私はこの『鋼鷹』で働き始めた。

 

 

 

 

あの後すぐに謝罪に行き、私が持っていたお金をすべて弁償費用に充ててもらった。

皆さんは要らないと言ったが、それでは私の気が済まないと半ば強引に押し切った。

鷹原さんは寝床だけでなく、食事も世話してくれた。

鷹原さん曰く、住み込み同然なんだから飯ぐらい作る、との事だ。

……正直、自分より美味しくて落ち込んだのは秘密だ。

あと鷹原さんも無手の格闘術を使うというので、時々組み手をしている。

自分以外で無手で戦う人がいるというのはかなり新鮮だ。

ただ、それを見た華雄様が鷹原さんを今まで以上に模擬戦に誘うようになった。

口ではいろいろ言っているが、小まめに相手をしている。

 

 

最初の内はあまり上手くなかった接客も大分こなせるようになった。

けど男性のお客ばかり増えた様な気がするのは何故だろう?

ここで働いてる間に、霞様や詠様、恋様やねね様と真名を交換した。最近では

月様とも。華雄様とはまだだけど、他の方達もしていないらしい…ちょっと残念だ。

 

「ちょっと店を空けるから、留守番よろしくな、楽進」

「はい、鷹原さん」

 

鷹原さんは名前が真名になるらしく、未だに姓しか教えてもらっていない。

私の真名は預けようとしたのだが

 

「恩を売る為にした訳じゃない」

 

と言われてしまった。

まだ私は真名を許される程ではないのだろうか…。でも必ず真名を交換してみせる。

そう決意を新たに、私はこの街で日常を過ごす。

 

 

……自分で言うのも何だが、真桜と沙和は大丈夫だろうか…。

 

 

 

 

 

おまけ

 

「そういや嬢ちゃん」

「なんです?店主」

「いや、大将に武具を頼みに来たって話だが、相場を知ってるのかって思ってな」

「え?……これ位じゃないんですか?」

「…………嬢ちゃん」

「はい?」

「大将の武具の今の相場なんだがな、特注だと最低でもこれ位する」

「…………………え?」

「……良かったな、大将が武具作ってなくて」

「…はい」

 

 

 

 

~後書き~

凪、居候決定!

付け加えると、凪のような人間だったからこそ

身元引受人になったのです。

仮にここにいたのが春蘭や雪蓮のような普段から

騒動を起こす様な人間だった場合、

ならなかった可能性が大です。

むしろ牢屋に入れて思いっきり頭を冷やさせます。

 


 
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