No.312734

真・恋姫†無双~猛商伝~第一章 第一話

砥石さん

第一話となります
どれほどの方が読んで下さるか分かりませんが、精一杯書きますので、楽しんでいただければ僥倖です。

因みに本作には
・作者の勝手な解釈

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2011-10-04 21:58:43 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:3405   閲覧ユーザー数:2785

 

子供のころ、俺には夢があった

飛行機のパイロットだの野球選手だのと同じ他愛無いもので

『空を飛んでみたい』というものだった。 

何者にも縛られずに自由に空を飛ぶ

人ならば誰しも一度は夢見るものだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その願いは現在進行形でかなっているんだが・・・・・・ただ、今の俺は流れ星だった。

 

 

<side一刀>

 

流れ星の速度が40km/sで地球の公転速度が30km/sだから

合計で流星の突入速度って72km/sだったはずだよな。

で、その後分子同士の衝突の末にプラズマ化が始まり発光する。

知ってるか?地表に辿り着ける隕石なんてほんの一握りなんだぜ。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・あれ、俺死ぬんじゃね?

 

 

 

瞬間、大地との距離は一瞬の何十分の一もの間にゼロになった。

 

<side??>

 

「あちゃー。かずピーやってくれやがった

 どないすんねんこれ。と言うか毎回こうなんか?」

 

男はそうつぶやく

実際一刀の周りはツングースカも斯くやというように周囲の木々が彼を中心として外側に倒れていた。

 

「ええ、こればっかりは仕方ないですねぇ

 それよりも早く運びましょう。洛陽の門を通るのにあなたがいたのでは

 かなり目立ちますから」

 

それに対しもう一人の青年が言う。

 

「お前さんの術でこうフワーって感じにはできへんのか」

 

「それができれば苦労しないんですよ。今の私たちはあくまで人の範疇の力しかないので。

 この前だっていいところまでいったのに、普段の癖で傀儡を使って彼の蹴りを防ごうとしたら、

出てこなくてまともに喰らってしまったんですよ」

 

「なんというか大変なんやな。主にアイツが」

 

「ええ、ツンデレとは大変なものですね」

 

「……もうええわ、早いとこはこぶで。

 あいつもなんやかんや言って会うのは楽しみにしとるんやし」

 

「そうですね。急ぎましょう」

 

そして二人は一刀をつれ、洛陽の街へと消えてゆく

 

 

 

<side一刀>

 

目を覚ますと今度は普通の部屋だった。

というよりも、何でこんなに短いスパンで気絶と覚醒を繰り返さねばならないのだろうか。

世の不条理をここに嘆きたい。

 

さて、普通の部屋と言うのは語弊があるかもしれない。

外史の狭間のような場所ではないが、ここは古代中国で言うところの"かなり高い身分の人物"が使う屋敷の一室だった。

 

体を起こして辺りを見回すと、成る程どこかちぐはぐな感じがする。

貂蝉の言った通り寸分の違いない二世紀ではないようだ。

 

それにしてもこの寝台は寝心地が悪い。もっと改良の仕様があるだろうに等ともはや職業病ともいえる思考を巡らしていると、

コンコンと、ノックの音が聞こえた。

ノックの風習はこのころからあったのか?という一刀の思考をよそに扉が開くと

そこにはよく見知った男が一人いた。

 

「久しぶり、かずピー。元気そうやなぁ

 とはゆうても、死んどるんやったな」

 

「佑?お前本当に佑か?」

 

及川佑。

彼の、彼にとっての悪友であり親友で自分の右腕だった男がいた。

 

「お前さんと同じで呼ばれたくちや。

 それに、だめだぜかずピー。貂蝉から聞いたやろ?

 この世界じゃそいつは俺の真名だ。俺じゃなかったら今頃三度目の臨死体験ツアーやで?」

 

そういって彼はカラカラと笑い出した。

たしかに貂蝉が真名とかいうシステムについて説明してたな。

使い方次第によってはかなり便利なものだったと記憶しているが、じゃあ俺はなんて呼べばいいんだよ。

 

「この世界で俺は王美人と呼ばれとるんや。

 ただ、俺とかずピーの仲や。真名を預けたるから、俺のことは佑と呼んでくれ」

 

「いいのか?」

 

「だから、俺とかずピーの仲やって言っとるやろ」

 

ただ、こいつは確かに王美人と言った。てっきり宦官にでもなってんじゃないのかと思ったら

よりにもよって王美人だと?霊帝の宮女じゃねえか。お前は男だろうに。

それに彼女は確か光和4年(181)に何皇后によって毒殺されるはずだ。ということはこいつは後十年もせずに死ぬ?

状況がいまいち掴めないでいる俺に佑は語りかけてきた。

 

「状況がイマイチ分からんゆう顔やな。

 今上帝、現代でゆうとこの霊帝は女なんや。

 で、俺はその旦那さん。の、一人にして一児のパパ」

 

「は?劉協はもう生まれてるのか?」

 

「おお、昨年の暮れに生まれたんだが本当に可愛くてなぁ。

 この前なんてほんと・・・・・」

 

なんだか佑が壊れ始めた。というか標準語に戻ってるぞ、似非関西弁はどうした。

語ること数刻、ようやくこちらの世界に帰って来たようだ。

 

「まあエエ。それでな、かずピー頼みがある。」

 

うって変わって真剣な口調と表情で

 

―――世界を救ってくれないか―――

 

・・・…はい?

 

 

<Side 及川>

 

俺たちは今俺が洛陽の郊外に持っている屋敷の廊下を歩いている。

いきなりあんなコトを言っちまったんで、今は二人の間を静寂が支配している。

そんな空気をなんとかしようとしてかかずピーが話しかけてきた。

 

「お前はいつからいるんだ、この外史に」

 

「俺が死んだときのことは覚えとるか?」

 

「ああ、俺らの中で一番長生きしそうだったお前が一番最初に死んじまったんだよな」

 

かずピーが懐かしむように言う。それには同意だった。

まさか一番最初に死ぬのが自分だなんて、他ならぬ自分が驚いていた。

 

<回想@及川>

俺が向こうで死んでから、その後の俺がたどった道のりは、小説にでもすれば売れるんじゃないかってぐらい数奇なモノだった。

その頃のことは詳しくは覚えていないんだが

とある赤ん坊がとある屋敷の門の前に捨てられていたらしい。それが俺だ。

所謂"転生"というやつだろう。

そこで俺は今の親父に拾われ、普通に新たな人生をスタートした。ちなみにこの頃の俺は前世、つまり現代の記憶を持っていなかった。

親父は役人だったんだが跡継ぎがいなかった。奥さんとは早くに死別して、その後再婚をしなかったかららしい。

そうして拾われた俺は大切に育てられ、十分な教育と環境を与えてもらった。

今でも俺は強く親父に感謝している。親父は厳しい人だったけれど、今こうして俺が生きていられるのも拾ってくれたのが親父だったからだ。

野垂れ死んでいた可能性もあったし、むしろそっちの方が確率的に高かっただろう。

そして時は流れ宏と出会い、結ばれ、後宮へと入った。

何の奴や張譲をはじめとする宦官なんかはうざったかったが、宮中での暮らしに不満はなかった。

今年の春先に協が生まれ、何のこっちを見る嫉妬の視線を除けば、まさに幸せの絶頂だった。

 

貂蝉に出会ったのは、協が生まれて一週間経った頃だった。

 

アイツに出会い、俺は記憶を取り戻した。

現代の知識を取り戻したた俺は目の前が真っ暗になったかのようだった。

 

思い出してしまったのだ、漢王朝の末路も、俺の愛する協や宏が辿る運命も。

俺は悔やんで悔やんで、朝が来るまで泣いた。

何故何もしなかったのか、今からでもできることはないのか俺は今までの自分を殺したいほどに悔やんだ。

 

「落ち着いたかしら?」

 

少ししてから貂蝉が話しかけてきた。

 

「落ち着けるわけ無いだろう!!宏が、宏が死んじまうんだぞ!?

 協も傀儡としての人生しかないじゃないかっっ」

 

今、漢王朝の治世は大いに乱れている。

中常侍の張譲を筆頭とした十常侍によって玉璽は押さえられ、宮中の宏の耳には外の話は一切入ってこない。

入ってきたとしても、嘘で塗り固められた虚言でしかない。

内政は最低限の事もできるかできないかの状態

賄賂が横行しその額は高まるばかりか、多額の賄賂を捻出するためにただでさえ貧しい農民から搾取し続けている。

正しい者が陥れられ、まじめな人が獄に繋がれる。

官位は金で売り買いされ、時の歩みと共に漢室は腐ってゆく

 

乱世の足音が聞こえる

 

黄巾の乱が起こり、諸侯が覇権を狙って争う乱世が始まるのは確実であり、もうすぐ其所まで迫っているだろう。

はっきり言って俺にできることは、もう何もない。

俺は親友のように運命にあらがえるほど強い男ではなかった。俺は自分の無力さを恨み、力なく項垂れた。

 

そんな俺の胸中を読んだかのように

 

―――その北郷一刀がこの世界に来るわ―――

 

「ご主人様も向こうで死んでしまったの。

 本来なら学園時代にこちらへ来るのが普通なのに、どうやらイレギュラーな外史のようね」

 

はっとし貂蝉を見上げる。

かずピーが死んだことにショックを受けると同時に、彼がこの世界に来てくれる。

それだけで俺の心に希望の灯がともる。

逆境を跳ね退け、己の望みに向かって運命をねじ曲げる男。

彼ならば何とかしてくれるかもしれない。

親友の死によってもたらせられる希望に喜ぶ自分に罪悪感を覚えるも、今はその希望と未来への可能性がただありがたかった。

彼がいれば、漢王朝を復興することも可能だろう。

 

「残念だけど乱世は起こるわ。

 それと宏ちゃんが死んでしまう運命は変えられない。変えてはいけないのよ」

 

「なっ……!?」

 

「この外史は三国志がベースとなって構成されているの。

 つまりもし宏ちゃんが死な無かった場合、乱世が起こらずにもしくは先延ばしになる可能性が高いのよ」

 

「じゃあ死ぬのが分かっていて宏を見殺しにしろって言うのかよアンタは!?」

 

「ええ。私だって本当はそんなことを心から願っている訳じゃないのよ。

 可能なら彼女にも生きて欲しいけど、それはこの世界の崩壊へと繋がってしまう」

 

「なら、今から乱世を止めるために動けば」

 

「それもダメよ。それに無理でしょうね、今までがひどすぎたもの。

 漢の威光は健在といえども、群雄割拠の時代は必ず来るでしょうね。

 宏ちゃんに悪意はなくても、それを支えるはずの柱が腐っているんですもの。

 そしてご主人様もその案は許可しないと思うわ」

 

たしかにかずピーならば乱世を回避するという可能性は低いだろう。

何故なら、今ここで乱世を回避してもそれは先延ばしにしたことにしかならない。

諸侯は雌伏の時を経て再び漢へと牙をむくだろう。

経た時間の分研ぎ澄まされた牙と爪でもって。

 

そしてかずピーに漢の再興を頼んでも

『築数百年。今にも崩れそうな建物に必死に補強工事をしたところで何になる?

 俺ならそんな無駄なことをせずにマンションを建てるね。できればでかいヤツ』

 

とか言いそうだ。

むしろ乱世を治めてくれ……るんだろうな。かずピーはなんだかんだで優しい奴なのだ。

 

「少しは落ち着いたらしいわね」

 

確かにさっきは冷静さを失っていた。

俺達にはまだ協も残っている。俺も宏も死んでしまう定めなのだとしても、彼女だけには幸せに生きて欲しい。

いや、何が何でもそうしてやる。それが父親として俺がしてやれることだろう。

 

「ああ。さっきはすまんな怒鳴ったりして。

 で、オッチャンは―――」

 

と言ったところで突如貂蝉はキレた。

 

「ぶるぅぅうぁあああっっ!!!

 誰が身の毛もよだつような見ただけで一ヶ月は眠れないようなばけものですってぇぇえ??」

 

「いや、誰もそこまでは言ってないやろ」

 

「どこからどう見ても花も恥じらうような可憐な漢女

 都一の美しき踊り子貂蝉ちゃんじゃないのよぅ」

 

……セツコそれ乙女や無い

 

なにやら聞こえた単語は『乙女』とは対極に聞こえた。

鍛えられた肉体も、引き締まった筋肉も、乙女とは逆ベクトルに向けて全力疾走していた。

ただそれを言うと無事では済まなそうなので、俺は何も言わずに話を進めることにした。

 

「それで貂蝉、かずピーはいつ来るんだ?」

 

「そうねえ、来年の今頃かしら。それまでに、あなたもご主人様の助けとなってあげられるように頑張ってねん

 少なくともそんな顔してたんじゃ、ご主人様に怒られちゃうわよ?」

 

「そうだな。じゃあまずは色々説明して欲しいんやけど、まずはお前さんは何者なんや」

 

そして俺は貂蝉から様々な話を聞いた。

外史のことや、俺がいなくなった後のかずピーのことも。

 

今はまだスタート地点すら見えない

だけど俺は絶対にあきらめない

この先にどれだけの困難が待ちかまえていようとも

宏を協を、俺の愛する彼女たちを絶対に悲しませたりはしない。

 

 

そう決意し俺はかずピーに会う日までできる限りのことをしようと、その日から俺は行動を開始した。

 

 

 

 

 

<Side 一刀>

 

―――世界を救ってくれないか?――――

 

佑の口から飛び出した言葉はあまりに突飛で、思わず聞き返してしまったほどだ

 

今俺は佑の所有物らしい屋敷の二階にいる。

この屋敷は洛陽の中でもかなり良い土地に建っているらしく、洛陽の町並みを見渡すことができた。

 

だが、それはあまりに非道い景色だった。

町に活気はなく、道行く人々は皆ぼろぼろの布きれを身にまとい痩せこけている。

知識として知っていても実際に見てみるとかなり凄惨な状況のようだ。

 

「お前がいるのに非道い状況だな。」

 

そう呟いた俺の言葉に、佑は悔しげに顔をしかめた。

どうやら訳ありらしい。

実際コイツは相当に頭の切れるヤツなのだ。こんな状況になるまで手をこまねいていたとは到底思えない。

 

事実、佑の口から告げられた現状は最悪としか言えないモノだった。

今上帝は実質軟禁状態にあり、実権は玉璽を手中に収め勅書を欲しいままにする十常侍が握っている。

また、何皇后や何大将軍とは対立しておりいつ命を狙われるか分からないとの事。

 

 

そんな中で目に見える変革を望む方が酷な話だ。

むしろある程度の行動を起こせたコイツを称えるべきだろう。

こんな状況では佑が俺を頼るのも無理はない。

 

ただ、話が話だ

ここで二つ返事で了解できるようなスケールではない。

一先ず一日待ってほしいと佑に告げると、それもそうだと言い佑は宮廷へ帰る支度を始めた。

 

「すまんな。本当は一も二もなく頷いてやるべきなんだろうが」 

 

俺がそう言うと

 

「気にせんでええよ、そこで二つ返事で返されたほうが困るってモンや。

 じっくり考えて、明日その答えを聞かしてくれればええで」

 

その答えに俺は頷き佑を屋敷の出口まで送り出す。

すると去り際に金属を磨いたこの時代の鏡を放ってよこした。

佑はそれまでの顔と打って変わっていたずらが成功したときのような顔で

 

「辛気臭い話はまた明日と言うことにして、かずピーその鏡見てみい。

 面白いモンが見れるで」

 

 

俺は何を言っているんだと思いながら鏡を見るとそこには若かりしころの俺が映っていた。

 

………・・・・・・…………ゑ?

 

何故だか若返っていた

 

Q:誰が?

 

A:俺が    Q,E,D,

 

そこには若返った俺が懐かしのフランチェスカ学園の白い制服を着て映っていた。

もう二十年も昔に着ていた服だ。どこから引っ張り出してきたんだこんな物。

と言うかなんで若返ってんだよ、しかも俺が実際に着ていた制服だし。

 

「あぁ、それは貂蝉と卑弥呼が『やっぱり御主人様はこうでなくっちゃ』とか言っとったで。

 卑弥呼ゆうんはまあ、貂蝉の仲間みたいな奴や。色々な意味でなんやけど」

 

何であいつが俺の制服を持っているんだ。背筋を嫌な汗が伝う

 

「まあそれだけじゃなく、いつかかずピーが天の御遣いを名乗る場合に必要になるとも言うとった」

 

思われとるなぁと佑が茶化してくる。

だがこの時代に化学繊維は存在しない。民衆の意思煽動に役に立つことは確かだろう。

どうあれ貂蝉とその卑弥呼やらには感謝しておくことにしよう。

 

「じゃあなかずピー、また明日」

 

「ああ。また明日」

 

笑顔を浮かべながら佑はそう言って帰っていった。

 

明日佑の願いに対して返答しなければならない。

今後のことを考えながら、俺はひとまず夕食をどうしようかという問題にぶつかった。

 

 

翌日、まだ日も昇らないうちから佑は尋ねて来た。

 

「随分と早いな」

 

「堪忍な。後宮を抜けだすんに、朝の人が少ないときの方が楽なんや。

 それにしてもかずピー大丈夫か、顔色悪いで?」

 

そういって佑はいすに座る。

結局昨日は何も食べずに過ごした。なぜなら今の俺は金を持っていない。

この屋敷は別荘のようなモノらしく、食材は置いて無く側仕えもいなかったためだ。

 

佑が持ってきた茶菓子をありがたくいただきながら、話題を切り出す。

この部屋はちょうど昨日佑が俺に頼みをした部屋と同じ部屋だ。

相変わらず外に広がる洛陽の町並みはひどい。

 

「なぁ佑、お前向こうで世界を飛び回っていた時の事覚えてるか?」

 

「もちろんや。昨日の事の様に覚えとるで」

 

「俺もだよ。

 でな、昨日考えてるときに思ったんだ。俺はこの景色を知ってるってな」

 

「どういうことや」

 

佑の疑問に俺は語り始める。

 

俺たちの会社がある程度大きくなって、海外へ進出して少したった頃だった。

発展途上国の国を訪れることが何度もあった。

そこで見た光景は当時の俺にとっては大きな衝撃だった。

その光景を俺は死ぬまで忘れないだろう。

 

餓えや人種差別に終わらない紛争

俺たちが平和な生活をしている国の遥か裏側には、明日を生きるのに必死な人々が居た。

 

そんな彼らを見て感じたのはつらい境遇に生まれた彼らへの同情や哀れみではなく

ただ、自分の幸運をかみ締めた。

人はそれを非難するかもしれない不謹慎と非道徳的であると。

しかし俺はそうは思わなかった。

 

俺は生まれ落ちずに死ぬことも、腹が減って死ぬこともなければ枯れ葉剤によって五体満足で生まれたわけでもない。

銃を抱えて戦場を走ることもなければ、爆弾を抱えて自爆させられることもなかった。

俺は実に平和で豊かな生活を送ってきた。

日本という国に生まれたことを始めて感謝した。

今俺がこうして生きていられるのは奇跡であると。決して手放すことをしないと誓った。

 

今再び俺の目の前に広がっているのはその時と同じ景色だった

 

彼らが何かをしたわけではない

上に立つ人間の勝手な行動のツケが彼らに回ってきているのだ

下の者を考えられないトップにいかほどの価値があるだろうか。

 

今の俺にチカラは無い

彼らを救うのにも、奴らを引きずり下ろすにも、世界を手に入れるにもだ。

 

だから俺は決めたんだ

 

「民も腐った官吏も漢にこの大陸も何もかもを引っくるめて俺はこの天下を手に入れてやる。

 世界が不条理で溢れているなら、俺が正しい理を敷いてやろう」

 

―――そう

 

全部手に入れる

今はゼロからのスタートだが、俺は頂点に立ってやる。

だったら途中にあるモノを全部拾って全部背負って、それでも立っていられなくて何が天下か

 

 

「俺は商人だからな。捨てるなんて事はしないし

 拾えるモンは全部拾って、手に入れたいモノは全部手に入れる

 だったらついでに世界平和くらい手に入れてやんよ。

 お前の娘さんの運命だって変えてやる。だからお前の頼みに俺はこう答えよう」

 

俺は手を広げ満面の笑みで叫ぶ

 

「北郷一刀は己が野望と友の頼みの元に天下を取ることをここに宣言しよう!!!!」

 

「かずピー……」

 

「お前の娘さんだってこの大陸の民だって全部背負ってやるから。

 だから、そんな顔すんなよ。――――親友」

 

ありがとなぁ。ありがとなぁ。と言い、佑は泣き始めた。

 

な、なんだ。そう素直に感謝されたり泣かれたりすると対応に困る。

今はとにかくこの泣きじゃくる親友を何とかしてからだ。

そして今後の計画は後でにしようと思い、俺は未だに泣き続ける目の前の男に向き直る。

 

「おいさっさと泣きやめ。って馬鹿野郎くっつくんじゃねえよ。

 お前鼻水付いてんじゃねえか」

 

問題は山積み。道程はまだ見えない。

ただ俺はこの日を忘れることはない。

この日誓った言葉も、俺達の上に広がるこの空も。

ここに俺の第二の人生と天下を目指す果てしない旅は始まった。

 

                              ……………to be continued

 

あとがき

 

俺「ようやく第一話をあげることができました。」

友「よ・う・や・くだな」(バシッ

俺「スンマセン」

 

はい、ようやく第一話をあげられました。

一刀君はここから天下を狙って動き始めます。

黄巾の乱が始まるまであと十二年も残っています(長っ

これは一刀君が商人という設定なのでこうなっています。

また、この作品には多大に作者の勝手な設定やこじつけが発生します。

なのでネーヨとか思われることがありましたら、生ぬるいジト目で見守ってください。

 

真名や世界については後々幕間に書きたいと思います。

それでは、今後ともこの拙作と作者をよろしくお願いします。

 

 

 

 


 
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