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鋼の錬金術師×テイルズオブザワールド 第二十八話

NDさん

アル登場。長かった。

2011-08-02 21:27:51 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1965   閲覧ユーザー数:1902

~医務室~

 

『ええと……。この世界はルミナシアという世界なんですよね?』

 

『ええ。貴方の世界とは違う世界みたい。』

 

アンジュは、空から落ちてきたイアハートに少しだけ疑問の様な気持ちがありながら色々問いた。

 

カノンノ・グラスバレーに似ていたその女の子は、笑顔で何の疑問も持たないまま、アンジュと話をしていた。

 

エドは、そのイアハートがこの世界に来た原因のハロルド作品の機械を考えていた。

 

もしかしたら、その機械を調べれば、俺も元の世界に………

 

いや、その前にアルを見つけることが最善点だろう。

 

だが、今はまだその事に関しては何も情報が無い。

 

『エドワード…さんでしたよね?』

 

『ん?』

 

エドは、イアハートに名前を呼ばれ、振り向いた。

 

振り向いたら、イアハートは笑顔になって握手を求めてきた。

 

『貴方も、別の世界から来た人間なんだよね?それじゃぁ同じ同士、仲良くしてこう!』

 

イアハートはそう言って手を差し伸べてきた。

 

『……ああ。んじゃ、よろしくな』

 

エドは右手を差し出して握手をした。

 

その時、カノンノはエドの右手に何か違和感を覚えた。

 

『ん……?エドの右手。なんだか硬いね。』

 

そう言われた時、エドは少しだけ戸惑ってしまう。

 

説明をすれば面倒くさい事になりそうだし、今は頭が元の世界に戻れる可能性のあるあの機械である事が詰まっている。

 

『あ――――……』

 

エドは、ただ声を出すしか出来なかった。

 

話す順番を言うべきか、どう言い訳をしようか考えていた。

 

『?』

 

イアハートは首を傾げる。

 

その様子に、カノンノはただ苦笑いを出すしか無かった。

 

『そうだ。イアハートちゃんも、行くあてが無いんだよね?』

 

アンジュが、話題を変えるようにイアハートに話を出した。

 

『え?……ああ、はい。そうなりますね』

 

『それじゃぁ、このギルドで働かない?勿論、宿泊制で食事もついてるよ。』

 

アンジュのその言葉に、少しだけ戸惑った。

 

イアハートは唸りながら考えている。

 

『………えー…と……私の世界でも、私はギルドに入っていますので……。』

 

イアハートは、表情を笑顔に変えてアンジュに返事をした。

 

『元の世界に帰れるまで、このギルドに身を置いてもらってもよろしいでしょうか?』

 

『ええ。それは勿論。』

 

これで、アンジュとの交渉は成立した。

 

もうこれで俺達の出番は無い。そう思って、エドは疲れた身体を休憩させるため、部屋に戻ろうとした。

 

『で、どうしてエドの右手はそんなに硬いの?』

 

エドの動きが止まった。

 

その時エドは、空気を読んで欲しいと思った。

 

すると、エドは溜息を吐いて振り向いた。

 

『はぁー……しゃぁねぇか。この腕はなぁ……』

 

瞬間、医務室の扉が大きく開いた。

 

その大きな音に、そこに居たアニーは驚いて小さな悲鳴を上げた

 

『エド!!こんな所に居たか!!』

 

ロイドが、興奮気味にエドの方に駆け寄った。

 

その唐突さに、エドは少しだけ引いた表情をした。

 

『な……なんだよお前……何かあったのか?』

 

『ああ。それもとんでもない事が分かった。』

 

その言葉に、エドは息を飲んだ

 

何か、恐ろしい事があったのだろうか。

 

賢者の石が関係していなければ良いが、さらに錬金術が関係して、仲間達がリバウンドに会ったのだろうか。

 

考えれば考えるほど、嫌な事ばかりが頭に思い浮かんだ。

 

だが、ロイドの言葉はエドに取っては神が舞い降りたような言葉だった。

 

『エド、お前の弟の居場所が分かった!』

 

その言葉で、辺りの空気が硬直する。

 

その場で沈黙が起こり、全員が驚いた表情をする。

 

状況が分からないイアハートだけが、よく分からぬままエドに賛美の顔をしている。

 

そして、エドの顔もだんだんと興奮気味の表情に変わる

 

『ほ……本当か!!ロイド!!』

 

『ああ!絶対とは言えないが、大きな鎧の目撃談がある場所が見つかった!』

 

エドは真剣な目と期待の表情でロイドの表情を見つめる。

 

『ええ!?良かったね!エド!!』

 

イアハートが、嬉しそうな顔でエドに言葉を送る

 

『………』

 

カノンノは、複雑な気持ちが膨らんでいて、何も言えなかった。

 

そして、ロイドは興奮気味の表情を変えないまま、情報をエドに出した。

 

『エドの弟は、ウリズン帝国の領地、レイサー森林に居る!』

 

その言葉で、エドは固まった。

 

ウリズン帝国、サレが居る国だ。

 

正直言うと、もうあんな奴には会いたくない。それに、まだユーリやエステル達はまだ、計画の材料を揃えていない。

 

だが、その場にアルが居るのならば上等だ。

 

何でも掛かってきやがれという気持ちが、エドの中に増した。

 

『……そうか。上等だぜぇ!!!』

 

エドの気持ちが高まり、居ても立っても居られなくなったのか、医務室から飛び出した。

 

『エド!!』

 

その様子を見たカノンノが、エドを追いかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

~バンエルティア号~

 

エドは早速支度をし、書類を部屋に置いてきて、この場所へと戻ってきた。

 

人数の募集なんて物は、やってられない。

 

そんな暇は無いのだ。

 

今から居る場所に、アルが居る可能性が居るからだ。

 

『待ってろよ!!アル!!』

 

エドは意気込んでその場所から去ろうとした。

 

『エド』

 

後ろから声がした。振り向くと、そこにはカノンノが居た。

 

さらにその後ろには、イアハートが居た。

 

二人並ぶと、さらにそっくりだとエドは感じた。だが、思ったのはただそれだけだった。

 

アルが居る可能性がある期待が大きすぎて、カノンノの表情に気がつかない。

 

『おお!やっと兄弟対面が出来るぜぇ!!これでこそ、エルリック兄弟復活ってもんだ!!』

 

『………』

 

返事の無い様子にようやく落ち着きを取り戻したのか、

 

落ち着くと、カノンノは少しだけ寂しそうな顔をしていた。

 

その顔を見た瞬間、エドの興奮が冷めていった。

 

イアハートは、カノンノのその表情があまり理解できなかった。

 

『えっと……。エド、兄弟と離れ離れになってたんだよね?』

 

イアハートが、エドに質問をする。

 

『ああ。』

 

エドは、何の表情も変えずに平然と返事をする。

 

その時、ようやくカノンノの口が開いた。

 

『………エド。』

 

その声は、自分を押し殺しているかのようだった。

 

寂しいと同時に、がんばって欲しいという声のようだった。

 

エドは、カノンノのその表情があまり理解が出来なかった。

 

だが、今のカノンノの感情は理解が出来た。

 

『…エドが弟を見つけたら、…本当にこのギルドから出て行くの?』

 

カノンノの言葉を聴いたイアハートは、少しだけ驚いて、そして黙った。

 

まさか、そんな約束をしていたなんて事は、知る由も無かったからだ。

 

エドも勿論、その約束は忘れていない。

 

エドは、考える仕草をして唸ったが、その時間は長くなかった。

 

仕草を終えると、カノンノに背を向けて、出入り口へと向かった。

 

『まぁ、そういう契約だしな。』

 

そう言って、エドは入り口の扉を開けて、そして船から出て行った。

 

その場所には、また沈黙が流れる。

 

ロイドは、これが自分のせいだと感じると、黙って足音を立てずに部屋へと戻った。

 

エドが去った船内は、静寂に満ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~レイサー森林 ???~

 

大きな鎧は、その場に野宿をしてもう3日が経つ。

 

この大きな容態である為、村に行けば魔物扱いされ、追い出され、

 

森に迷い込んだ少年を助けては、魔物だと騒がれ、石を投げつけられる。

 

ある時、剣士が依頼だと言って鎧を討伐しに来た事もあった。

 

だが、感覚の無いアルは、その剣士を一掃して、退治した。

 

気絶させては場所を移動し、人目につかない場所にまで移動をした。

 

人間扱いされない、この場所をアルは嫌った。

 

『………兄さん。』

 

そうボソリと呟くと、隣で寝ていた少年が、飛び上がる

 

『え!?どうした!?魔物!?』

 

『あ……いやいや。そんな物は居ないよ…。今のところ』

 

鎧はそう言うと、安心した顔で少年はその場で膝を地につける

 

『はぁ~~。びっくりした~~』

 

そう溜息を吐いた矢先、近くに居た赤毛の少年が笑い出す。

 

『はっ!そんな弱腰で、ギルドに入ろうとする腰になれるかよ!』

 

『う……うるさいぞ!僕の友達を倒そうとして来たくせに!そうはさせないからな!!』

 

少年がそう言うと、赤毛の少年は表情を失くし、寝転がって胡坐をかいたまま天井を見上げた

 

『ただ討伐すりゃぁそれで済むんだけどなぁ……。どうもその鎧は悪い奴には見えねえ。どうやって言い訳するか、考えてるところなんだよ。』

 

『嘘だ!!そうやって僕達の国も侵入するつもりなんだろ!ライマ国の騎士は……だまし討ちが上手いって聞いたぞ!!』

 

その少年の言い草に、赤い髪の少年は怒りの声を出す

 

『うるせっつの!!ウリズン帝国の野郎はどいつもこいつも馬鹿ばかりじゃねえのか!?』

 

『馬鹿って言うな!!』

 

『ちょ……ちょっとカロル君……』

 

アルは、憤怒するカロルをなだめる様に手を出す。

 

『喧嘩する暇があるなら、鎧君を助ける方法を一つでも多く考えたらどうなの?』

 

赤毛の少年の近くに居た少女は、冷たい態度で三人に静かに喝を入れる。

 

その言われざまに、カロルも黙りだす。

 

『………すみません。』

 

『鎧君が謝ることじゃないわ。貴方には敵意が感じられないもの。』

 

少女がそう言った矢先、どこからか小動物の鳴き声がした

 

『ニー』

 

『あ』

 

その瞬間、アルは慌てて腹を押さえる。

 

その様子に気がつかない三人は、辺りを見渡す

 

『なんだ?また鳴き声が聞こえたぞ?』

 

その様子に、カロルはまたブルブル震えだす

 

『や……やっぱり、近くに魔物が居るんだよ……。そして僕達を食べようとしてるんだ……』

 

その臆病者の言い草に、赤い髪の少年はイライラする

 

『あ――!!ったく!!たかが猫の鳴き声じゃねえか!!』

 

『だって……まさか山猫かもしれないんだよ……!?』

 

山猫という言葉を聴いて、少女はピクリと眉を動かす。

 

『確かに少し心配ね、見回ってみましょう。』

 

その言い草に、カロルと赤い髪の少年は文句を言った。

 

『え?……ねぇ、冗談だよね?ねぇ?』

 

『おいティア!冗談じゃねぇぞ!!めんどくせぇ!俺は行かねえからな!!』

 

一瞬、ティアは怖い顔をする。それでほとんどの者が引いた表情をしてティアから少しだけ離れた。

 

だが、その圧倒的な反対率には、さすがにティアも困ったらしく、

 

助けを求めるように、鎧に視線を落としたが、鎧はどことなく別の方向を向いて、視線を見ないようにしている。

 

ちょっとした溜息を吐いたティアは、一人でその場所から離れて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~レイサー森~

 

『エド、弟君、見つかると良いね。』

 

今回のエドの依頼には、エドが単体で行こうと考えていたが、

 

イアハートが自主推薦して、エドの依頼に同行した。

 

アンジュも、単体で行くことを許してくれたのにも関わらず。

 

その事については、少しだけエドは溜息を吐いた。

 

『この世界の事って。私もあまり良く知らないんだ。エドは……何か知ってることがあるなら、教えてくれるかな?』

 

イアハートがエドにそう質問すると、エドは頭を掻いて歩き続ける。

 

『……っつってもなぁ、俺もあまりこの世界の事は知らねぇし。言えるのは、精霊が居る事ともう一つの世界が次第に露出しつつある事だな。』

 

『もう一つの世界?』

 

イアハートが、エドのその言葉に質問する

 

『ああ。今やってるのは、そのもう一つの世界が出す赤い煙というのを解決させようと動いてるわけだ。ドクメントって分かるか?』

 

ドクメントという単語を聞かれ、イアハートは首を横に振る

 

『人間の設計図みたいなもんだとさ。俺も良くは分かんねぇんだけどよ。赤い煙がそのドクメントを変えて居る。とかが今、判明しているこった。』

 

その淡々とした説明を聞きながら、頭で整理していく。

 

そして、イアハートは次の質問に移った。

 

『じゃ……じゃぁ、次はエドの世界の事について聞かせてくれるかな?』

 

『必要ないんじゃねえの?』

 

すぐに却下された。

 

その唐突さに、イアハートは固まった。

 

やはり、このギルドから去ろうと考えているのだろうか。

 

少しだけ、悲しくなる。

 

もう少し、エドとは仲良くなりたいと考えていたイアハートは、

 

同時に会ってからほとんど時間が経っていない現状に対して、こんなものなのかなと考えた。

 

だが、この世界に居るもう一人のカノンノが、悲しそうな顔をしたのは、どこか同情の心があったのだろう。

 

どうしても、エドをギルドから脱退して欲しくなかった。

 

『う……ううん!!是非聞かせて!!』

 

イアハートは、めげずにエドに質問をする。

 

だが、エドは鬱陶しそうな仕草をし、早歩きで前へと進んだ。

 

『あ!ねぇちょっとエド!!』

 

エドが早歩きしたその後、エドは急に止まる。

 

どうしたのかと前を見ると、そこには一人の少女が居た。

 

イアハートは、この人を同じくらいの年齢なのだと思うが、胸がちょっと異常に大きくてたじろってしまった。

 

つい、自分の胸と比べてしまう。だが、イアハートはその人に出会ったことがある

 

『ああ…?』

 

エドは、どこか思い出すように考える。

 

『知り合いなの?』

 

イアハートがエドに問うと、思い出したように顔を上げた。

 

『ああ!あの王都の時の。』

 

あの赤髪の奴と一緒に居た奴だ。

 

『何しにここへ?』

 

少女は、エドにそう問いかけると、エドは何の敵意を示さずに少女に問いかけた。

 

『いや、この森に居ると聞いた大きな鎧を探しに来たんだけどよ……』

 

大きな鎧という言葉を聞いて、少女は少しだけ反応した

 

そして、表情も少しだけ変わった。

 

『………貴方達、ギルドの人?』

 

その問いに、エドはあっさりに答えた

 

『ん?そうだけど。何で分かったんだ?』

 

瞬間、少女の腕が振られる。

 

その時、エドのに向かってナイフが投げられた。

 

『!!』

 

エドは咄嗟に右腕を頭の前に出し、ナイフから身を守った。

 

弾かれたナイフは、方向を変えて木に刺さる

 

『なんのつもりだ…!!』

 

ここに来て、エドは初めて敵意を表す。

 

少女も同じく、エドに敵意を表した。

 

『悪いけれど、鎧の場所には行かせないわ』

 

そう言った後、ティアはナイフを取りだし、エドに見せ付けるように多数のナイフを一つの手に持った、

 

それを見たエドは、機械鎧を露出させ、少女に見せる

 

『!!』

 

『エド……腕が…』

 

ティアはその腕に脱帽し、イアハートは絶句した。

 

だが、エドはもう慣れているかのように、平然とした態度で、戦闘体制に入る

 

『俺と闘う気かよ姉ちゃん。怪我するぜ。』

 

少女は、落ち着きを取り戻し、平然とした表情でエドを見つめる。

 

そして、ナイフをエドに向かって投げつけた。

 

『甘えよ!!』

 

エドは手をパンと叩き、地を練成して壁を作った。

 

『!!!』

 

ノーモーションの魔法と感じたティアは、少し驚きを隠せなかった。

 

ナイフは全て壁に刺さり、刃が埋まってしまっていた。

 

壁はそんなに硬い物質ではないようだ。

 

瞬間、ナイフが刺さる前にエドは壁を乗り越え、少女へと駆けて行った。

 

『その程度の攻撃なら、錬金術を使うまでも無え!!』

 

錬金術

 

その言葉を、少女達は理解はできなかったが、

 

それはさほど心配ではなかった。

 

『もらったぁ!!』

 

エドが拳を少女に向けた瞬間、少女は手を動かした。

 

『!』

 

その仕草で、イアハートは理解した。

 

これは、”私の世界の人と同じだ”と

 

瞬間、謎の衝撃波がエドを襲う

 

『!?』

 

何か分からず、エドはその衝撃波に吹っ飛ばされてしまう。

 

『っく!!』

 

『エド!!』

 

尻餅をついたエドに、カノンノは心配の声をかける。

 

『……耳鳴りが鳴りやがる……。』

 

エドは、敵意の増した目を少女に向ける。

 

少女の口元が、少しだけ緩む

 

『そう。大体は正解よ。』

 

少女は、大きな杖を取り出し、エドに見せ付けた。

 

その杖を、イアハートは見たことがある。

 

『貴方はノーモーションで魔法が使えるようだけど、私は音を使って攻撃が出来る。貴方の技と、音速とどちらが速いかしらね』

 

その卑怯くさい杖に、エドは舌打ちをする。

 

『このっ……舐めるなぁ!!』

 

エドは、迷わず少女に突っ込む。

 

だが、少女は杖をエドに向け、そしてまた衝撃がエドを襲う。

 

『っ!!』

 

エドはまた吹っ飛ばされ、その場でうずくまる。

 

『ティアさん!止めてください!!』

 

イアハートが少女に向かって叫ぶ。

 

すると、少女は今度はイアハートに睨みつける

 

『……どうして私の名前が分かったのかしら?』

 

『!?』

 

エドは驚きの表情をし、イアハートを見る。

 

だが、イアハートはエドの方は見なかった。

 

ティアは、今度は杖をイアハートに向け、攻撃体制に出た

 

『させっ……かよぉ!!!』

 

エドは錬金術を発動し、イアハートの前に壁を作り出す。

 

『エド!耳を塞いで!!』

 

瞬間、また衝撃波がイアハートを襲おうとしていた。

 

『無駄よ。』

 

壁が、だんだんと崩れていっている。

 

『音を感じるのは耳だけじゃない。身体のほとんどが音に反応して、動くのだから。』

 

そう言いながら、ティアは杖の衝撃波を強めた。

 

壁の崩れる速さがだんだんと増していった。

 

もうすぐで、カノンノがその衝撃波を食らう。

 

その時に、衝撃波がだんだんと弱くなっていった。

 

『………』

 

『燃料切れか。』

 

そう言ってエドは、錬金術で突起物をティアに向かって発動した。

 

だが、ティアは服装から想像が出来ない身軽な動きで、ほとんど交わされた。

 

『ちぃ!!ちょこまかちょこまかと!!』

 

至る場所に突起物を作り出したが、どれもこれも避けられる。

 

だが、エドはめげずに突起物を練成し、ティアに攻撃しようとする。

 

『………その術は、使っても使っても切れないみたいね』

 

ティア流れを読んで、その魔法を相手にしていればキリが無いと感じたのか、避けるのを止めた。

 

『もらったぁ!!』

 

エドはその一瞬を見逃さなかったが、

 

手を合わせた瞬間に、ティアはエドに杖を向けた。

 

『今、貴方がその術を使えばこの杖からは溜まっていたエネルギーが放出されるわ。』

 

『さっきからあまり時間が経ってねぇんじゃねぇの?』

 

ティアは、手から今度はオレンジグミを見せつけ、そして微笑んだ

 

『エネルギー材。満タンよ』

 

その様子を見て、エドは一瞬怯んだ表情を見せたが、

 

すぐに、それは黒い笑顔へと変わった。

 

『そうかい。それはめでてぇな。』

 

そう言って、エドは叩いた手を地へとおろした。

 

瞬間、ティアは杖から衝撃波を出そうとする

 

『言ったはずよ。私が使う業は”音”だと』

 

『それが仇になったな!!!』

 

エドは、ティアの真後ろに半円形の壁を作り、そこからティア包みこんだ。

 

『!!』

 

かなり大きな衝撃が、半円球体の壁の中で起こった。

 

ティアを包んだ半球体の壁が、大きな衝撃に耐えられず、一部の壁が崩壊した。

 

その一部の壁から、大きな音を発したが、エド達にはそれくらいの音は聞かなかった。

 

そして、壁がボロボロに崩れると、真っ当に受けたティアはフラフラになっていた。

 

耳鳴りが恐ろしく響き、身体が言うことを利かない。

 

頭がガンガンする。足がおぼついていた

 

『今だ!!』

 

エドは再び手を叩き、木を練成し、縄にした。

 

その縄でティアを縛りつけ、動けなくした。

 

杖はイアハートに投げ渡し、エドはティアを縛った縄を手に掴んだ。

 

『さぁて、これで俺達の勝ちだ。とっとと鎧の居る場所へと案内しな』

 

まるで悪役のような言い方に、イアハートは少し引いてしまった。

 

ティアはまだフラフラの様子で、クラクラした表情で頭を回している

 

『ちょっと待って……まだ…まだ耳鳴りが…』

 

『ああん?てめぇの耳鳴りなんか知らねぇ!早く鎧が居る所まで案内しろぉい!』

 

それは最早、悪役にやられたヒーローが尋問を受けているようにしか見えなかった。

 

『エ…エド……。そんな言い方……。』

 

ティアは、表情を変え、真剣な顔つきと化した。

 

それは、まるで守るものを守ろうとしていた顔のようだった。

 

『……それで』

 

ティアの口が、ゆっくりと開く

 

『…………それで、鎧を見つけたらどうするつもりなの?』

 

『はぁ?』

 

予想外の質問に、エドは呆れた声をする。

 

こんな時になっても、強気なのは尊敬したいくらいだ。

 

恐らく、尊敬しなくてもエドはそれ以上に強気になるだろうが。

 

『どうするも何も、その鎧は俺の弟だ。何も変な事はしないだろうよ。』

 

『嘘よ!!』

 

ティアは真剣な顔でエドを問い詰める

 

『本当だ!!!』

 

『絶対嘘!!大体、弟にしては貴方はあまりにも身長が合わなすぎるじゃない!』

 

『てんめぇぇえええ!!!俺を豆粒と言いたいのかぁぁあああああああああああああああ!!!!!!!!』

 

エドは怒りの表情でティアを睨みつける。

 

その様子を見て、イアハートは少しだけ恐怖心があると共に、

 

少しだけ疲れたような表情を見せた。

 

ティアはようやく観念した様子を見せ、

 

渋々と縄に縛られながら前へと歩き、エドを案内するように前に進んだ。

 

『それが本当だと信じて、案内はしてあげるけど。もし、攻撃に加わるような事をするならば、その時は貴方達の命を狙うわ』

 

その言われように、エドは不機嫌になりながらも、一応はティアの事は信頼する。

 

『………どうしてそんなにも、俺の弟の事を肩入れする?』

 

エドがそう質問をすると、ティアは少しだけ黙った後、その質問に答えた

 

『……初めてだから。』

 

『?』

 

ティアは、少しだけ大人しい声で再び答えた

 

『…魔物を討伐以来されて、その魔物が人語を使えて、その上あんな優しい性格の場合は、初めてだから』

 

そう言って、ティアは表情も変えずに歩いた。

 

エドは、その言葉で確信をした。

 

この森には、確かにアルが居るという事が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~レイサー森 ???~

 

『ふ……ふふふ』

 

サレは、この森の散策に出たところ、意外な幸運が訪れた。

 

最初は、鎧が見かけるから討伐してくれという面白そうな依頼だったため、自らその依頼を受けたが、

 

それがビンゴ。この森には、サレが気に入っていた奴らが居た。

 

さらに、そこにはそいつの弟までもが居ると聞いた。

 

その二人が居れば。また可能性が広がる。

 

星晶の可能性が

 

 

 

 

 

 

 

~レイサー森 遺跡~

 

『……本当に、この場所に鎧が居るってのか?』

 

エドは、ティアにそう質問すると、ティアは頷く

 

『ええ。確かに居るわ』

 

『罠とか、そういうのは無いだろうな?』

 

エドはそう質問すると、ティアは冷たく返してきた。

 

『私が前に行動するのに、そんな自殺行為をするわけが無いでしょ?』

 

そう返事されると、エドは頭を掻いて

 

とりあえず、もう少しこいつを信用してみることにした。

 

『遺跡の中か』

 

『ええ』

 

エドはティアを前にして遺跡の中へと入っていった。

 

 

 

 

そしてしばらく歩いたが、まだアルの所には辿り着かない。

 

その膨大な歩く時間に、エドはイライラし始めていた。

 

『………おい。一体どこまで歩かされている』

 

『鎧君のところでしょ?』

 

エドは、その素っ気無い態度がだんだん信用できなくなってきていた。

 

『……なんでこんな奥の所まで歩かされる必要があるんだよ!!本当はどこか牢屋とかに閉じ込めようとしてんじゃないだろうなぁ!!』

 

エドがそう怒鳴ると、ティアは少し黙りだした。

 

その黙る時間が異常に長かったのか、エドはまた怒鳴りの声を上げた

 

『ほらぁ!!言い返せないってのか!!罠か!!やっぱり罠に繋がってんだな!!ふざけんなこの野郎ぉおおお!!』

 

さすがに、これにはイアハートも疑問を持たざるを得なかった。

 

だが、その疑問はティアの解答によって、一変した。

 

『……鎧君は、多くの人たちから迫害を受けたわ』

 

その唐突の発言に、エドは少し驚きの声を出す。

 

『沢山の人から魔物扱いされて、ギルドの人たちから討伐依頼が出たりして、殺されかけたことがある。だから、鎧君はこの遺跡の奥深くで住んでいるのよ。』

 

そう返されたエドは、その場で黙ってしまった。

 

俺が、もっと早くアルを見つけなかったから、こんな事になってしまったのだろうか。

 

エドは、後悔するのが遅かったのだろうか。

 

もっと全力で依頼外の時間でもアルを探し出さなければならなかったのだろうか。

 

『……そうか。悪かった』

 

『謝罪なら、その鎧君にしてあげなさい』

 

エドは、ついに黙り込んでしまった。

 

やはり、後悔が大きいのだろう。その後は沈黙のまま前へと進んでいった。

 

『着いたわ』

 

そこは、ただの壁しかなかった

 

『え?ここって行き止まり……』

 

イアハートが声を出したと同時に、ティアは壁の端に手をかける。

 

すると壁はズレ、奥の部屋へと繋がる道が現れる

 

『すごい……。忍者みたい』

 

イアハートが感心したと同時に、エドからは悲しみが表れる

 

『アル………』

 

そこまでして、人目に触れたくなかったのか。

 

悲しみがエドを襲ったが、エドにはそんな暇は無かった

 

『この先よ』

 

そう言って、ティアはズレた壁の中へと入っていく。

 

その奥へと進んでいくと共に、その場所に光が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋を通り過ぎると、そこは一つの部屋があった。

 

その部屋は、おそらく人が100人は入れるだろう。大きな広場だった。

 

そんな大きな部屋にも関わらず、エドにはある人物が大きく映った

 

『ティア!!そいつ……鎧を狙う奴か!!』

 

赤髪の剣士が、戦闘体性に入る。

 

『お……お……お前ら!ここ……この鎧を倒す前に、僕を倒してみろ!!』

 

もう一人の少年が、闘う気でエド達に立ちふさがった。

 

だが、エドには一人の大きな少年しか目に映っていなかった。

 

『……アル………』

 

そうだ、ようやく会えたのだ。

 

この世界に入ってから、初めて会う。

 

たった一人の。最もエドに近い弟に

 

『……兄さん…?』

 

アルがそう言うと、二人の少年が疑問の声を出した。

 

『え?兄さん?』

 

赤髪の少年が疑問の声を出し、エドを見る。

 

そしてアルを見て、さらにエドを二度見する

 

『え?え?兄さん?兄……さん……?』

 

カロルが、エドを四度見する。

 

どうしても信じられなかったのか、顔には混乱の二文字が見える表情になっていた。

 

だが、エドはそんな事を気にせず、すぐに笑顔になる

 

アルは、表情は変わらずとも、心の中では、大きな喜びが生まれていた。

 

『兄さん!!』

 

『アル!!』

 

二人が喜びの声を出して、前へと走った。

 

二人の距離が近づこうとしたとき、鎧の中で物音がした

 

―――ニー

 

『ん?』

 

その鳴き声に、エドは足を止めた。

 

『あ』

 

同時に、アルも動きを止めた

 

エドが、アルの腹に耳を当てる

 

―――ニー……ニー……

 

明らかに、動物の鳴き声がする

 

アルが、とても戸惑った様子を見せている

 

その間に、赤髪の少年はティアの縄を解いていた。そしてティアは自由になる

 

エドは、みるみる怒りの形相になり、アルを見つめる

 

『………アァァァァルゥゥゥウウウウ』

 

エドのどす黒い声に、アルはさらに動揺する

 

『ちちち違うよ!!これは猫じゃなくて……その……!!』

 

『猫だろうが犬だろうがリスだろうが牛だろうがどうでも良い!!!アル!!まぁたぁああ鎧の中で動物入れて飼ってるなぁぁあ!!』

 

エドのその怒鳴り声に、カロルとイアハートはちょっとした恐怖で後ろ退がる

 

ティアは、アルの中で飼っている動物に興味を持っていた

 

『だ……だって!!見てよ兄さん!!』

 

アルが腹を開き、その中で小さな小動物を見せた。

 

その動物は、まだ子供で小さいミアキスだった。

 

耳は垂れていて、目はウルウルと泣いているように見える。

 

臆病者の性格なのか、ブルブルと震えている。それに、ちょっとだけ震えていた。

 

その愛らしいミアキスの容姿に、ティアは一瞬で心を奪われてしまった。

 

ティアは、少し震えながら息が荒くなっている。

 

撫で撫でしたい。抱きつきたい衝動に駆られていた

 

『群れの中で仲間はずれにされていて……ついには群れに捨てられて、苛められて、悲しそうな顔でブルブル震えながら僕の所まで歩いてきたんだよ!?すぐに懐いてくれるし、飼っても良いでしょ!?』

 

『駄目!!元の場所に捨てて来い!!!』

 

アルのその言葉に、ほとんどの者が同情していたが、エドの心は鬼になっていた。

 

『『こんの人でなしぃいいいいいいいいいい!!!!!』』

 

アルとティアの怒りの声が重なった。

 

その迫力ある声に、エドはさすがに逆らえないような表情をした。

 

だが、エドもさすがに折れていなかった。

 

『あのなぁアル!!俺達が飼っても仕方が無いんだよ!それに元の世界に戻ったとき、そいつを持って帰るのか!?環境が違うのに、そんなに簡単に育てられるわけ無いだろ!!』

 

『出来るもん!人でなし兄さん!』

 

『人でなしを前に付けるなぁ!!!』

 

そのエドの言葉に、イアハートも少し反抗の意思を見せた

 

『エド……飼ってあげようよ。ミアキスの一匹くらい。どうする事も出来るよ。』

 

『ふざけんな!それだとアルは調子に乗って、また猫とか動物を拾ってくるに決まってる!!だったらここは心を鬼にして意地でも捨てて来させてやる!!』

 

エドのその言い分に、一番腹を立てていたのはティアだった。

 

アルの言ったミアキスの話を一番に信じ、更にその子ミアキスに更に愛情を持ってしまったティアに取っては、

 

”捨てて来い”という言葉は敵意外何者でもなかった。

 

『兄さん!この子一匹だけで我慢する!!我慢するからぁあああ!!!』

 

『駄目だって言ってるだろうがぁああああああああああああああ!!!!!!』

 

その瞬間、エドは後ろから拳銃を突きつけられる。

 

その時、赤髪の少年の表情が変わった。

 

『だったら、ウリズン帝国の騎士団へどうぞ。私の国の政府機関が、そのミアキスを優遇に育成させていただかせますよ?』

 

その耳に障る声は、誰かが大体予想がついた。

 

『……ここまでご苦労なこったな。サレ、という無能がよぉ。』

 

エドは平然と返事をしたが、赤髪の少年の表情は、怒りに任せていた。

 

『………サレ!!』

 

『ん?お前はいつぞのルーク君。あの時はよくも邪魔をしてくれたなぁ。』

 

その平然とした、冷たい言葉が、ルークの耳に障った

 

『サ……サレ様…?』

 

少年が、怯えた表情でサレの方を見つめている

 

『んん?……ああ。君は確かカロル…と言ったな。ウリズン帝国の血を持つ者。もっと誇って行動を取ったらどうだ?』

 

この状況では、ただアルだけが理解できずにその場で座っていた

 

『え……?兄さん、この人の知り合いなの?』

 

アルのその質問に、エドは即答に答える

 

『知り合いなんかじゃねーよ。』

 

『そうですよ。これから、エドワード君は俺の国の物になるんだからねぇ……』

 

サレが発言を終わらせいない間に、ルークはサレに突っ込んだ。

 

『うらぁああああああああああああああ!!』

 

だが、サレはルークの剣を受け止めた後、ルークの剣を弾いた。

 

『ルーク、お前は後で相手をしてやる。借りはじっくりと返すのが好きなのでね』

 

サレのその冷たい態度に、カロルはガタガタと震えている

 

『サ……サレ様。僕達を……どうするん……ですか?』

 

そのカロルの言葉に、サレは微笑む

 

『それは難しい質問だ。まず、ルークには制裁を。その女は収容所行き、そしてエドワード君とその鎧君はウリズン城へと連れて行く。そしてカロル君には、何もしない。』

 

そう笑顔で答え、エドは溜息を吐く

 

『……お前のその素直な悪意には尊敬するよ』

 

『ありがとう。最高の褒め言葉だ。』

 

エドは、アルの方を見つめる。

 

『アル』

 

すると、アルは地に手を置き、そして発光させた。

 

『ぐふぉう!!』

 

サレの真横の壁から突起物が現れ、サレは一瞬よろける。

 

『ふん……。相変わらず唐突な攻撃だ。』

 

『お前に言われたく……無いね!!』

 

エドは、手の甲を刃に変え、裏拳をするように腕を振る。

 

だが、サレはエドの上を飛び、剣を引き抜く。

 

『ウラウラァアァアアアアア!!!』

 

サレは狂ったようにエドに剣を振り回す。

 

だが、エドはそれらを全て鋼の右腕で受け止める。

 

『こっちにも気づけぇ!!!』

 

ルークは、サレに向かって剣を振り下ろす。

 

だが、サレはルークの方へ向かないかのように剣を後ろに振る。

 

その瞬間に、ルークの剣が弾かれ、再びサレはエドの方に刃を向ける

 

『くそっ!!速え!!』

 

『はっはっはは!!大丈夫だ。殺しはしねぇ!!その腕をぶった切るまでだぁ!!!』

 

エドは、サレの剣を受け止めず、右手を逸らし、

 

地へと向かう剣の太刀を掴んだ。

 

『ざけんな……んな事されたら……機械鎧技師に殺されんだろうがぁあああああ!!!』

 

そう言って、剣を手の平の真ん中に持って行き、左手と右手を合わせ、剣を練成した。

 

練成された剣は、ただの棒きれになり、何の用途も無くなった。

 

『!!』

 

『もらったぁああああああ!!!』

 

ルークは、後ろからまたサレに向かって太刀を振り下ろした。

 

だが、サレは腰からまた剣を取り出し、ルークに向かって斬りつける

 

『っ!!!!』

 

ルークは腕の二の腕を負傷し、血がその場で飛び散った

 

『ルーク!』

 

ティアがルークに声を掛けるが、ルークはそれを気にしていないかのように、

 

『舐めんな……オラァ!!』

 

また、剣を握っていた。

 

『おっと』

 

サレは、華麗に避けるように上へとジャンプして、エドとルークとは別方向の先へと飛んだ。

 

部屋が広く、そのジャンプで太刀を避けるのは容易だった。

 

場所から離れたためか、サレは余裕の笑みを浮かべる。

 

『…………大量の人を殺しておいて、良くそんな笑いが出るよな…!!』

 

ルークが恨みのある表情に変わり、発言をした。

 

そのルークの発言を、カロルは聞き逃さなかった

 

『え……?大量の人を……殺す…?』

 

カロルの顔は、まるで信じられない物を聞いたような顔だった。

 

だが、サレはそんな事を気にしていないかのような顔をしている。

 

『ふん………今更そんな事言って、何になる?』

 

笑顔を止めずに、サレは言葉を出す。

 

ルークは、まだ怒りの表情を露にしている

 

『……師匠に深手の傷を侵した事、忘れたとは言わせねえぞ!!』

 

そのルークの言葉に、サレは鬱陶しそうな様子になった。

 

『いちいちいちいち……そんな事気にしてられねえんだよ……チビ共がぁああああああ!!!!』

 

サレのその迫力ある発言に、ほとんどの者はたじろったが、

 

ルークとエドだけが、怒りの表情でサレを見つめていた。

 

『『だぁれがチビだコラァァァアアアアアアアアアアアアアア!!!!』』

 

怒りに任せて二人は突っ込んだ。

 

かなり殺る気満々でサレの元へと駆け寄ったが、サレも同じように二人の方向へと駆けていった。

 

だが、

 

『よっ』

 

『!!!』

 

サレは二人を飛び越え、ある方向へと向かった。

 

『カノンノ!!逃げろ!!』

 

エドの言葉は間に合わず、イアハートはサレの剣で血を噴出す。

 

『…………!!』

 

イアハートは、肩の皮を負傷し、血が流れる。

 

『ふん……ギリギリで避けたか。』

 

サレは、剣を振って血を払い取り、そしてまた振り上げる

 

『………!!』

 

イアハートは、敵意の目でサレを見つめる。

 

『まずは……戦闘に邪魔な奴の掃除だ!!』

 

瞬間、サレの床が盛り上がり、サレは宙へと浮く

 

『なっ……!!』

 

サレの近くでは、アルが練成をして床を盛り上がらせていた

 

『兄さん!!』

 

アルがそう叫んだ瞬間、エドはもうサレの近くまで近づいていた。

 

そして、エドはサレが持っていた剣を握り、そして捨てた。

 

そして落ちてきたサレをぶん殴り、サレは吹っ飛んでいった。

 

倒れてしまって、気絶しているのを確認したエドは、サレの前に立った。

 

『俺の仲間に手ぇ出したら、今度はこうは行かねぇ。今度こそぶっ飛ばしてやるぞ!!!分かったなクサレ!!』

 

そう叫んだ後も、サレはまだ動かない事が分かる。

 

そして皆の元へと歩み寄っていく

 

『気が済まねぇだろうが、今日はこの位にしてやろうぜ』

 

『はぁ!?知るか!俺はこいつを師匠と同じ目に合わせるまでだ!これでは気が済まねえぞ!!』

 

『今殺したらライマ国とウリズン王国とも関係が悪くなるんじゃねぇのか?ここはほっとくのが利口だ。』

 

エドがそう言うと、ルークの顔は怒りで震えながらも、押さえつけているようだった。

 

そして、次第に落ち着くと、ルークは普通の表情を取り戻した。

 

そして二人は、手の甲をぶつけ合った。

 

おそらくこれは、エドの言葉を理解した事と、

 

多分、先ほどの”チビ”発言に同感して、仲間だと感じたのだろう。

 

この同じ”チビ”仲間というのは、アルは少しだけ悲しい気持ちが湧いた。

 

『さて、これからはどうするかねぇ』

 

そう言って、エドはアルの方を見る

 

『とりあえず、俺はアドリビドムの皆にアルの事を報告しないとな。』

 

『アドリビドムって?』

 

アルがエドに聞き返す。

 

『俺の所属しているギルド。そこに大佐や少佐も居る』

 

『ええ!?マスタング大佐も少佐もこの世界に居るの!?』

 

アルのその言葉に、エドは嫌な顔をしながら答えた

 

『ああ……嫌な事にな。』

 

そう言って、エドはイアハートの元へと歩み寄る

 

『おい、大丈夫か?』

 

エドがイアハートに手を差すと、イアハートは少しだけ照れて恥ずかしそうに手を伸ばす

 

『あ……う…うん……』

 

その様子を、アルは見逃さなかった。

 

目を光らせ、アルはエドに問いかける

 

『兄さん、その娘は一体誰なの?』

 

アルが興味深そうに質問すると、エドは平然とした態度で答える?

 

『ん?ギルドの新人だよ。俺達アドリビドムのな。』

 

エドがそう答えると、アルは少しだけつまんなそうに答えた。

 

『へぇ、そうなんだ。』

 

その様子を見ていたルークは、じっとエドを見つめていた。

 

『んじゃ、お前らも達者でな。またどこかで会おうぜ』

 

そう言ってエドはそこから去ろうとした時、ルークは呼び止めた

 

『待てよ』

 

エドはその言葉に反応し、ルークの方へと向く

 

『なぁエド。お前、そのギルドで本当に満足してんのか?』

 

ルークが、エドに真剣な顔で問いている

 

『………そんなには、満足はしていないかな…』

 

『だったら、ライマ国の騎士団に入らねえか?』

 

ルークのその唐突の言葉に、カノンノは驚きの声を出す。

 

『……どういうつもりだ?』

 

『いや、そのまんまのつもりだ。大体、お前のような奴がアドリビドムとか言う小さなギルドに居るのは不思議なくらいだ。その錬金術というのは、見た限りではかなり使えそうだ。その力が、俺の国にも欲しい』

 

ルークのその言葉に、一番ムッと来たのがイアハートだった。

 

『………ジェイドという奴にも、同じような事言われたよ』

 

『ああ。あいつの言うことは結構胡散臭いけどな。だが、俺はお前を買いたい。ただ、それだけだ。』

 

ルークのその言葉に、エドはしばし考え、そして一つの言葉を送った。

 

『今は考えとくよ』

 

先を伸ばした。

 

その時、ルークは真剣な顔を止め、次にミアキスに目を向けた

 

『で、結局そのミアキスはどうするんだ?』

 

エドは、今度はアルの持っているミアキスに目を向ける

 

アルは、ミアキスを隠すように持っていたが、鳴き声でバレバレになっていた。

 

エドは溜息を吐いて、渋々と答えた

 

『まぁ、……とりあえずギルドに持ち帰って検討するよ』

 

エドのその言葉を聴いて、一番喜んだのはアルだった。

 

『え……?それって本当なの?兄さん』

 

『ああ。ただし!!これ以上は拾ってくんなよ!!』

 

エドがそう言った矢先、アルは歓喜の声を上げ、エドを抱きしめる

 

『やったぁああああ!!兄さん!!ありがとう!!』

 

『痛ででででで!!!!角がゴリゴリって……ぎゃぁあああああああああああああああ!!!!』

 

エドの悲鳴が部屋に響き渡る。

 

その明るい光景に、ただ一人だけがスネていた。

 

『ん?どうしてそんな寂しそうな顔してんだ?』

 

『……別になんでも無いわよ……』

 

正直、ティアは物凄く心残りがあるに違いない。

 

その時、一切アル達の方を見ていなかった。むくれていた。

 

その事なんか知る由も無く、アルは喜んでいた。

 

そしてその後、次にカロルの方に目を向けた

 

『………君は、どうするの?』

 

カロルは、少しだけ迷いのある顔をしている。

 

その場所でまだ震え、俯いていた

 

『………僕は、サレ様……サレは目指すべき人だと思っていたんだ……』

 

その言葉を聴いて、ウリズン帝国の現状が思い浮かぶようだった。

 

ルークは、可愛そうな物を見る目と同時に、嫌な物を見る顔をしていた。

 

『今、たった今どうするかと言われても……そんなの分からないよ……。』

 

『それじゃぁ、僕と一緒に来る?』

 

アルがそう言うと、エドは何も言えない顔をしていた。

 

『え?』

 

『ねぇ、良いでしょ?兄さん』

 

エドは頭を掻いて、考える仕草をする

 

『………それを決めるのは、俺じゃない。アドリビドムのリーダーが決めることだ。』

 

エドは、カロルに目を向けて、真剣な顔で見つめる

 

『お前、ギルドに入る覚悟というのはあるか?』

 

エドがそう言うと、カロルはキョトンとした顔になる

 

『え……?ぼ…僕がギルドに……?』

 

『今、何すれば良いか分からねぇなら、ギルドに入るほうが利口じゃねえのか?』

 

カロルは、少しだけ自身の無い表情をして、エドをチラリと見る。

 

やはり、まだ迷いがあるようだ。どうしても面に向かって言えていない。

 

『……で…でも……僕は…ウリズン帝国の人間だよ……?ウリズン帝国は、独立国なんだよ……?他の国は、ウリズン帝国の人間を敵だって……考えてないの?』

 

エドは溜息を吐き、呆れる表情をする

 

『知るか。少なくとも、俺はウリズン帝国ではサレの悪口しか聞いてない。』

 

そう言って、エドはその場から去ろうとした。

 

『ついて来るのは、お前の勝手だ。行くぞ』

 

エドがそう言うと、カノンノとアルは着いていくように少しだけ慌てて歩き出す。

 

その様子を見ていたカロルは、まだその場で俯いている。

 

そして遠くで伸びている、サレを見つめていた。

 

『行けよ』

 

近くに居たルークが、カロルに声をかける

 

『え?』

 

『ギルドに入りたいって言ってたくせして、いざとなったら行きたくないってのか?それじゃぁお前はただのクズだよクズ!』

 

ルークのその言われように、カロルは反抗の声を出す

 

『ク……クズって言うな!』

 

『だったら行けよ!!ギルドに入って、クズじゃねえ証明くらいしやがれってんだ!!このクズ!!』

 

ルークのその言葉に、カロルはやる気が出てくる。

 

そのやる気の中で、やりたい事が見つかった事に、気がついた気になったのかもしれない。

 

だが、その曖昧な答えに、カロルは素直にしがみついた。

 

『待ってよー!!エド!!アルフォンス!!』

 

カロルは、アドリビドムの皆へと、走り寄る。

 

その様子を見たルークは、ふんと鼻を鳴らす

 

『俺達も帰るぞ。鎧は居ませんでしたで、やっと帰れる』

 

ルークはそう言って、この遺跡から脱出しようとした。

 

その様子を見たティアは、少しだけ口元が緩んだ。

 

『そうね』

 

そう言って、ルークとティアはこの遺跡から去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~レイサー森 遺跡~

 

『は……はは………』

 

サレは、鼻から垂れた血を腕でふき取り、不気味な笑顔をまた出す

 

『俺は……あきらめねえぞ………絶対俺の物にしてやる……!!』

 

そう言ってサレは起き上がり、ふらふらになりながらも出口へと向かう

 

『錬金術……!!それさえ……それさえあればぁ……!!!!』

 

サレが壁に手をついた瞬間、後ろから声が聞こえた

 

『ちょっとは自分で努力しようとか考えたら?』

 

その声に反応したサレは、すぐさまに振り向き、

 

一人ではない、そいつらに声を駆けた

 

『………なんだ、てめぇら…』

 

『ねぇねぇ、こいつ、食って良い?』

 

子供か大人か分からない容姿のデブのそいつは、サレに向かって指を差す。

 

それを見た女か男か分からない容姿のそいつは、笑い出す

 

『はっはっは!!駄目駄目。これから、こいつに良い事を教えるんだから。』

 

その言葉に、サレは疑問の声を抱く

 

『…………てめぇら、何がしたい……』

 

『まぁまぁ、俺達はあのおチビちゃんの知り合いでね。面白いことを知っている人達……って言えば良いかな』

 

その言葉を聴いて、サレの目は見開かれる

 

『錬金術を知ってるのか!?』

 

サレの言葉に、そいつは笑顔になる

 

『ああ。知っているさ……。その証拠に、ゲーデ』

 

隣に居たゲーデが手を床に置くと、

 

この石だらけの部屋に、大量の蔓が壁沿いに生えてきて、

 

最終的には、部屋は完全に緑色と化した。

 

さらに、蔓の至る所には色とりどりの花が咲き、それは花畑に覆われているようだった

 

『!!』

 

そして、その花は最終的には枯れ、腐った蔓が天井からだんだんと落ちてきて、最終的にはまた元の遺跡の部屋に戻っていた。

 

女か男か分からないそいつが、笑った

 

『どうだい?ちょっとは話を聞いてみないか?』

 

サレは、不気味な微笑を見せ、興奮気味のその顔で、エンヴィーにすがるように聞いた

 

『ああ……教えろぉ!!その錬金術というのをなぁ!!!』

 

そのサレを見たエンヴィーは、さらに不気味に微笑み、赤い石をサレに見せ付ける

 

『良いよ。取って置きの良い方法を、教えてやるよ……』

 

エンヴィーの微笑みの目は、不気味に、そして黒く輝いていた。


 
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