No.244888

鋼の錬金術師×テイルズオブザワールド 第26話

NDさん

テイルズのゲームって、本編よりフェイスチャットの方が楽しみだったりする。特にマイソロ。

2011-07-29 18:39:59 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1879   閲覧ユーザー数:1830

~バンエルティア号~

 

アンジュから依頼書を渡され、エドは不穏な顔でアンジュを睨みつける。

 

だが、それは無駄な事だといい加減気づき、エドはそれ以上何も言わなかった。

 

だが、一つだけ質問をしたいことがあった。

 

『………火山に向かう上に、少佐を同行させるってどういうつもりだ……』

 

あの下手をすれば死んでしまう場所に、ユーリはともかく、さらに暑苦しい少佐を連れて行くということは

 

冗談抜きで、ものすごく恐ろしい事だとエドは感じた。

 

必死な顔でアンジュに訴えたが、

 

『あら?別にやらなくても良いのよ。ただ、私じゃなくてアームストロングさんに言ってくれるかしら?』

 

アンジュのその言葉に、ものすごく黒い物を感じた。

 

エドはぎこちなく振り向くと、後ろではアームストロングが暑苦しいポーズを取っていた。

 

『エドワード・エルリック。これは依頼とは言え、火山の中に行方不明者が居るのだ。それで多くの者が困っているのなら、それを断ることができようか!?』

 

『分かった!!もう分かったから!!』

 

エドは涙目でアームストロングの肉体を見ないように目を逸らしながら叫んだ。

 

その様子を、部外者はただエールを送るしかなかった。

 

『がんばれよ。エドワードぉ――。ユーリィ。』

 

『死ぬなよ。がんばれエドワードぉ―――。ユーリィ。』

 

『師匠、ユーリ。がんばってください。多分死んじゃうかもしれませんが、なんとか生きて帰ってきてください。』

 

『機械鎧と筋肉男で地獄でしょうけど。まぁ、どうしようも無いわね。』

 

そのエールを送られたエドは、不愉快極まりなかった。

 

そのエールを送ってきた奴らを睨みつけた程だった。

 

『うるせぇえええ!!だったらお前ら一人、誰か来やがれ!!』

 

『『『『嫌です。僕たち私達まだ死にたくありません。』』』』

 

あの火山の中で、さらにあの肉体の野郎と一緒に行くという事に危機感を感じているのか、

 

ほとんどの人が、この同行を拒否した。

 

その様子に、エドは唾を地に吐くように舌打ちをした

 

『オルタータ火山か……。あそこは嫌いだ。嫌な奴も居るしな……。』

 

セルシウスは、皮肉るようにそう言った。

 

『だが、そこでお前がどう見るか、それは楽しみだな。』

 

『精霊てめぇ!!!お前俺達にギタギタに負けたくせによぉ!!ナマ言ってんじゃねぇええ!!!』

 

エドのその言葉に、セルシウスの顔も歪む

 

『その火山に存在する、悪魔に気をつけるんだな。』

 

セルシウスが、怒りにまかせて声を出した。

 

『悪魔ぁ!?んなもん火山に存在すんのかぁ!!』

 

『エドワード・エルリック、そしてユーリ・ローウェルよ。大丈夫だ。どんな危険な状況になろうとも、我輩が全力を上げて守ってみせる。』

 

エドは、心の中で思った。

 

―――たった今、ものすげぇ危機感を感じてんだよぉお!!!しかも原因お前!!!お前じゃぁああああ!!!!

 

気づいたら、この場にはエドと少佐以外誰も居なかった。

 

アンジュでさえ、その場から逃げ去っていた。

 

『さぁ、時間は待ってくれぬ。行くぞエドワード・エルリック。』

 

アームストロングは、エドの後ろ襟首を持って、微笑みながら入り口へと向かう

 

『嫌だぁあああああああ!!助けてぇぇええええええええ!!!殺されるぅぅぅううううううううう!!!!』

 

『……やれやれ。俺もヤキがまわったな。おい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~オルタータ火山~

 

『畜生ぉおおおおおおおおおお!!暑い!!いつになってもここは暑すぎんだろうがぁあああ!!!!』

 

エドは、入ってなり、すぐに文句を言った。

 

さすがに、この暑さにはユーリも参っていたが、

 

『情けないぞエドワード・エルリック。これしきの暑さで、音を上げるなど。精神が鍛えられておらぬのではないか?』

 

『うるせぇ!!俺は鋼の手足をぶらさげてんだぞ!!』

 

そう言って。湯気を発している機械鎧を露出させ、ユーリは少しゲンナリした顔で

 

『………やれやれ。本当に暑苦しいパーティに入れられたもんだ。』

 

そう言って、トボトボと歩いていく。

 

『ったく。行方不明者の特徴がまさか剣士だけとはな。舐められてんじゃねえのか俺ら』

 

『……確かになぁ。もうちょっと特徴を言ってもよかろうに』

 

歩けば歩くほど、体力が熱によって奪われていく。

 

その最中を歩いている時、アームストロングだけが涼しい顔で歩いていた。

 

だが。そのアームストロングに発せられる熱気が、さらに二人を苦しめる。

 

途中で幻覚が見えそうになる等、最悪な事態にまで達していた。

 

『……なぁ、これもう行方不明になった奴ってさぁ……死んでんじゃねえか?』

 

ユーリが、物騒な事を言い出した。

 

『そうだよなぁ……。そうだったら俺達、何しにここに来たんだっけ……』

 

『何を言うか二人!たとえその者が絶命をしていようが、遺体は届ける義務が我輩達にはある!!その為に、我輩達はここに居るのではないか!!』

 

そう言って、アームストロングは二人に接近する。

 

せっかく離れて歩いていたのに、これでは最悪だ

 

『だぁ――――!!分かった!分かったからもう!!!』

 

エドは、逃げるようにその場からダッシュした。

 

ユーリは、何も言わずに普通に歩いて、逃げていくエドを目で追った。

 

『……良く走れる元気があるな……。』

 

ユーリは、それを見て溜息を吐いた。息を吸うにも、熱い空気が肺に入り、苦しい

 

『うわぅ!』

 

『痛て!』

 

その時、エドは誰か人にぶつかり、その場で尻餅をついた。

 

その時、尻と地についた手に熱が走り、エドは悶絶した

 

『ぎゃぁぁああああああああああああああ!!』

 

『うわぁああああ!!!』

 

エドの叫びに驚いたそいつは、少しだけエドを警戒した

 

『あ~…畜生。何でこんな目に……』

 

エドは少し悲しい声でそう言うと、目の前に居る女に目を向けた

 

『あん……?あんた誰だ?』

 

エドはそいつに話すと、そいつはエドにあまり興味なさそうな顔で

 

『ふぅん……随分高そうな腕ねぇ……』

 

エドの機械鎧に興味を持つような顔で、見つめていた

 

『むんっ……。大丈夫か?エドワード・エルリック。』

 

アームストロングがエドを心配すると、エドは適当に返事をした。

 

女は、そのいきなり来た熱気に、不穏な顔で少しだけ後ろに退がった。

 

その返事の後、アームストロングはエドに目を向け

 

『エドワード・エルリック。ではこの方にちゃんと謝罪をしなければならぬぞ。』

 

と。節介を焼いた。

 

そのお節介に、エドは少しゲンナリした顔をして。

 

『えぇ~…。ぶつかって来たのは俺かもしれねえけど、こいつは動きもせずに突っ立ってたんだぜ?』

 

『ならぬぞ。軍となる者が、そのような態度をしては。ちゃんと謝らなければ。』

 

『軍……?』

 

アームストロングはそう言って、女の方に目を向ける

 

『先ほどは、この子が迷惑をかけて済みませんでした。』

 

『子ども扱いするなって!!!』

 

エドは怒りの状態で腕を上げると、裾の辺りから持っていた銀時計が露出した

 

『おっ?』

 

女は、その銀時計に興味を持ち、その銀時計を見つめた

 

『珍しい銀時計だね。なになに?』

 

その興味持ちに、エドは少しだけ気持ち悪がったが、

 

とりあえず、答えて置くことにした。

 

『ん?ああ。こいつは国家錬金術師の印の銀時計と言って…』

 

エドの説明途中に、女はその銀時計を横取りし、そしてすごい速さで逃げていった

 

その間、2秒もかからなかった

 

『あぁあ――――!!ちょっと待てコラ盗人女ぁあああああああああ!!!!』

 

エドが叫ぶと、女は一瞬だけ止まり、後ろに振り向き

 

『これは結構高そうなお宝だねぇ!ありがとね!おチビちゃ~ん!!!』

 

挑発するように、女は満面の笑みでそう言った。

 

エドは当然ぶち切れ、その挑発に乗った。

 

『ああぁぁああんんの小娘ぇぇぇぇええええええええええええええ!!!!ギィィィタァギタにしてやるぁぁあああああああああああああああああ!!!!!!』

 

エドは思いっきり地面を踏み、その女を追いかけた。

 

最初の一歩でかなり長い時間、地面から宙を浮いたが

 

その後、ものすごい速さで足を動かした

 

『へぇ、結構早いねぇ』

 

『オイコラ待て盗っ人がぁあああああ!!!!銀時計返せオラァァアアアアアァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!』

 

ものすごい形相で追いかけるエドに対し、女は楽しくなってきたという顔をした。

 

そして、女の逃げ足がさらに速くなる。

 

さっきまでの走りは本気では無かったのだろう。

 

それを察し、エドは練成をして女の目の前に大きな壁を作った

 

『ありゃりゃ!?』

 

女は、その唐突さに驚き、そこで足を止めた。

 

『もらったぁぁあああああああああああああ!!!!』

 

目を光らせながら拳を女に向けると、

 

女はその壁を登り、エドはただの壁を殴る結果となった。

 

女はいつの間にか、壁のてっぺんに居た

 

『へぇ、アンタもババアと同じ技使えるんだ。こりゃぁたまげたなぁ~』

 

そう言って、女は壁の向こう側へと移った。

 

完全におちょくられていると感じたエドは、さらに顔が引きつり、表情の怒りのメーターが爆発寸前だった。

 

『ッシャァラァアア!!!』

 

エドは目の前の作った壁を分解して、大きな穴を作り出した。

 

『うひゃぁ!』

 

女はその唐突さに、少し驚き、さらに足を速めた。

 

エドはその穴から、再び全速走を再開した

 

『待ちやがらやあぁあぁぁぁああああああああああああああああ!!!!』

 

その激しい鬼ごっこに、ユーリは溜息を吐きながら歩いて追いかけた。

 

『……本当に、どっからその元気が出てくんだかなぁ。』

 

 

 

 

 

女は、しばらくして距離を離しているのに、まだ諦めないあのチビに、いい加減に飽きてきた。

 

そろそろ本格的に逃げようか。そう思って今度こそ本気で足を本気に速めて、走り出した。

 

『へっへー。私の逃げ足は世界一ー!』

 

そう言うと、だんだんとチビから距離が離れていく。

 

これでようやく諦めるでしょ。そう思って道を曲がった。

 

『ノーマ、あんたは今、何をしてんだい?』

 

その道を曲がったところに、ノーマの苦手となる人が立っていた

 

私は、かなりの逃げ足で逃げてきたはずなのに、何故私より先回りに来ているのか、ノーマは疑問に思ったが、

 

そんな疑問より、ノーマは恐怖心の方が大きかった。

 

『げ………!!バ…ババア……』

 

『あぁん!?』

 

”ババア”という言葉に、大きく反応したそいつは、さらに怖い顔でノーマを見た。

 

『あ!!い……いやぁだな~~。姉御~。姉御はいつになっても綺麗ですよ~!!』

 

『その手に持っているのはなんだ?』

 

そいつは、ノーマの手に持っている銀時計に目を向ける

 

『いやいや!!これは道に落ちていた物を拾っただけですよ!!大丈夫大丈夫!!ちゃんと警察に届けますってば~』

 

―――俺から逃げられると思うなドロボーぉぉおお!!!銀時計返せぇぇええええええ!!

 

チビの声が、こちらにまで近づいてきた

 

『おい、今の声は何だ?』

 

後ろに居たロニが、追ってきた声に疑問を持つ

 

『ノーマ!お前また泥棒をしたな!!』

 

カイルも、同等に私に怒涛の声を出した。

 

だが、それ以上に怖いのは……

 

『ノーマ………』

 

そいつは、ものすごい怖い顔で、睨みつけるようにノーマを見ていた。

 

ノーマの顔が青ざめてく。さらに汗がだらだらと滝のように流れる

 

『成る程ぉ……。これはちょっとお仕置きが必要だねぇ……』

 

そいつは、腕をバキバキと骨を鳴らす。

 

表情が、怒りだと分かるのに、まともに見えない

 

『あの………すの……許して……ごめ……』

 

ノーマは声が枯れたように裏声になり、涙が滝のように流れる。

 

だが、それは最早全く通じなく、頭蓋骨を叩く音が、辺りに響く

 

『いぎゃぁぁああああああああああああああああああああ!!!!』

 

『!?』

 

その悲鳴を頼りに、エドはそちらの方に向かう

 

『そこに居たかぁああああああああああああああああああ………あ……ああ……』

 

曲がり角を曲がったとき、エドは驚愕した。

 

今、エドの状況は、

 

ものすごい熱い所に、ものすごい暑苦しい少佐

 

そして目の前には………

 

『おやエド。昨日ぶりじゃないか』

 

『せ……師匠……!!』

 

エドは後ろに退がり、逃げる体制をとった。

 

イズミの足元には、気絶している盗っ人の姿があった。

 

『この銀時計、お前のだろ?要らないのか?』

 

イズミの足元の盗っ人は、ピクリとも動かない。

 

イズミは、エドに向かって銀時計を投げつけた。

 

エドはその銀時計を、慌てるように掴んだ。

 

『大切な物なのだろう?だったらちゃんと持ってろ。バカが』

 

しばらくして、ユーリ達がこの場まで追いついた。

 

その時、ユーリはイズミを見た。

 

『あ、エドのお師匠さんじゃねえか』

 

ユーリのその言葉に、カイルとロニが驚いた表情を見せた

 

『ええ!?そのエドって人、イズミさんの弟子なのか!?』

 

カイルが、その事実に突っ込んできた。

 

それを聞いたイズミは、まるで興味が無さそうに

 

『昔の話だ。今はもう破門している。』

 

『いや……だとしても羨ましいぞ!!なぁ…どうやって弟子入りしたんだ!?エド!!』

 

カイルが興味しんしんでエドの方に駆け寄る。

 

だが、エドはその興味津々の顔から目を逸らす。

 

『………止めといた方が良いと思うぜ…。』

 

『辛いのは分かってる。でも俺はイズミさんのように強くなりたいんだ!』

 

カイルが、真剣な顔でそう言う。

 

その様子に、エドはカイルよりも、これまでやってきていた師匠に興味を持った。

 

『師匠…。あんた一体、リメインズで何しているんだ……?』

 

多分、大体予想はつく。

 

入隊試験を10秒足らずで終了させ、入隊条件である幹部を間単に倒した程の者だろう。

 

血の気が多いため、行動は怖いことが多いが、

 

その人柄から、少なからずとも親しまれる事はあると思っていたが。

 

だが、師匠の答えは

 

『いや別に。ただ下っ端でバリバリ働いているだけさ?』

 

とだけ答えた。

 

嘘だ。と叫びたかったが。

 

それ以上は何も言えなかった。怖くて

 

『お前も、こんな所で何をしている。』

 

エドは頭を掻いて、嘘をつかないように答えた

 

『俺も、ギルドで下っ端の仕事をさせられてんだよ。ここで行方不明の剣士を探せ。っとかな。』

 

『行方不明の剣士?』

 

イズミが疑問の声を出す。

 

どうやら、リメインズの人たちは、そんな仕事でこの場所まで来ていないようだ。

 

『私達は、火の精霊に会うように言われ、ここまで来ているが』

 

『火の精霊?』

 

エドは疑問の声を発し、エドはさらに質問をする

 

『火の精霊で何を聞くんですか?赤い煙の事なら……』

 

『それは部外者のギルドに教える義務は無い。』

 

イズミはそう言って、さっさと前へと歩いた。

 

『おい、誰かこの馬鹿娘を担いでやれ。』

 

イズミがそう言うと、ロニという男が進んでさっさとノーマを担いだ。

 

『はい!このロニがイズミさんの為に動きます!』

 

『ああ、じゃぁ頼んだよ。』

 

そのやり取りを見て、エドは少し疑問に思う

 

『あぁ~あ。』

 

カイルが呆れるようにイズミについて行くように進んでいった。

 

『なぁ、あの男は師匠になんであんなに忠実なんだ?』

 

『多分、狙ってるんだと思うけどな。』

 

カイルがそう言うと、エドは青ざめた顔になる

 

『止めとけ止めとけ止めとけ。絶対後悔する。絶対。それに師匠には列記とした夫が居るんだからよ。』

 

『そんな事は知ってるよ。でも今回は何故か、諦めが悪いんだよなぁ。ロニ』

 

ふぅん。とエドはもう興味が無さそうにその話題を止めた。

 

『それよりもさ!エドってイズミさんの弟子だったんだろ!?教えてくれよ!どんな事をやったのか!』

 

カイルにそう言われ、エドの頭の中には修行の日々のあの頃が移った。

 

どんどん流れるその光景に、エドは発狂しそうになった。

 

だんだん顔が青くなっていき、さらにはガタガタ震えている。

 

その様子で、相当ものすごい修行を受けたのだと理解した。

 

そしてユーリがエドの肩に手を置くと。エドの口から

 

『キャン!!』

 

という情けない悲鳴が響いた。

 

『なんだ、震えてるから寒いのかと思えば、汗びっしょりじゃねえか』

 

『じょっじょっじょ……冗談じゃねえ!!お前に…に…俺の……!!!』

 

その動揺さから、さらにそれが物凄い事なのか良く理解した。

 

だが、それでもカイルの目は諦めていなかった。

 

『……でもさ、イズミさんも変な話だよなぁ。』

 

『ん?何がだ?』

 

カイルは、イズミの後姿を見た後、エド達の方を見る。

 

『だって、入隊試験の事で幹部に完全に勝ったって話、もはや伝説化しつつあるんだぜ。リーガルさんから幹部への推薦を受けたんだけど、イズミさん、何故か断って、さらにずっと下っ端で居ることを約束する事を押し付けてきたんだ。俺には理解ができねえよ。』

 

カイルは、少しだけ疑問を持った顔をしていたが、エドはすぐに理解できた。

 

この世界で地位を大きくさせても、意味は全く無い。

 

それに、大きくなりすぎれば、元の世界に帰り難くなってしまうからだろう。

 

なにより、師匠は昇進の事なんてこれっぽっちも興味が無いに違いない。

 

命令されながらも、大きく行動が出来る下っ端の方が、俺達異世界人には都合が良い。

 

『へぇ~。そりゃまた凄い話だな。』

 

ユーリは、納得するようにその話を聞く

 

『ま、実力は確かだから幹部の奴も文句は言ってこないけどな!』

 

そう言った後、カイルはまた再びエドの顔を見て

 

『なぁ、教えてくれよ!イズミさんに何度も弟子入りしたい奴だって沢山居るのに、どうしてエドだけが弟子入りできたのか!!』

 

『……死人が出るぞ。』

 

エドは迫力のある顔で、カイルにそう言った。

 

カイルはその迫力に押され、少しだけエドに離れた。

 

『それに、俺達はもう破門されてんだ。弟子でもなんでもない。』

 

『でも、弟子だったんだろ?それだけでも俺は羨ましいよ!』

 

そう話している内に、イズミはそこで立ち止まる

 

『おいエド。お前が言ってた剣士って、あれの事じゃないのか?』

 

イズミが指を指した先には、剣があった。

 

その近くに、ミイラが存在した

 

『……!!』

 

そのミイラを見たとき、エドは驚愕した。

 

『………遅かったか。』

 

アームストロングは、哀れむように手を頭に押さえた。

 

火山の中は危険だ。誰もそう行きたがる物ではない。という事は………

 

『さらに剣士、こいつの可能性は高そうだ。』

 

ユーリが、そう言った時、エドは言葉を付け加える

 

『だが、違う可能性だってあるんだろ?』

 

『火山の中に居る剣士だぜ?そんな奴はこんな奴以外、今俺は知らねぇな。』

 

だが、エドはまだ諦めていないようだった。

 

『これでお前達の依頼は終わりならば、私達は先に行かせてもらう』

 

イズミはそう言って、その場から去ろうとした。だがエドは

 

『いや、もっと隅々まで探さねえと、せめて生きている剣士を探さねえとな。』

 

そう言って、おのミイラから離れ、イズミの方へと向かって歩いた

 

『エドワード・エルリック!』

 

『少佐も、帰るなら帰っていいぜ。俺はもうちょっと探す。』

 

エドがそう言うと、ユーリも立ち上がり

 

『じゃぁ俺も。』

 

と言って、エドの後をついて行った。

 

『…………』

 

アームストロングは考えた。

 

無論、この状況で帰ろうなんぞ、アームストロングは考えていない。

 

『大人になったな。エドワード・エルリック』

 

そう言って、エドの元へと歩み寄っていった。

 

そのミイラを、担ぎながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~オルタータ火山 精霊のふもと~

 

『さて、ここまでが私の管轄だ』

 

イズミは、エドに聞こえるようにそう言った。

 

『何だ、まだ帰っていなかったのか』

 

『そんな易々と帰る俺達じゃありませんよ。』

 

そう言って、エドは部屋の真ん中に存在する不自然な穴を覗き込んだ。

 

『本当にこんな所に、精霊が居るんですか?』

 

『ああ。確かそのはずだ。その後に呼び出せば良いはずなんだがな。』

 

その”呼び出す”という言葉に、エドは何か嫌な顔をした。

 

『………その方法というのは?』

 

イズミは、ふんと鼻を鳴らし、微笑んだ

 

『簡単だ。喧嘩を売れば良い』

 

やっぱりか。

 

『せめて、話し合ったりとか出来ないんですか?師匠。』

 

『聞いてくれると良いな。たかが人間如きの言葉を。』

 

そう言って、イズミは手を叩き、地面に手を置いた。

 

その時、溶岩全てに光を発し。そこから熱を帯びた岩が現れる。

 

その岩は全て、拳の形に練成され、その穴の中へと向かっていく

 

カイルとロニは、その技はただ尊敬の目で見ていた。

 

こんな事なら、とっとと帰ってしまえば良かった。

 

『ロニ、ノーマを下ろせ。』

 

『イエッサー!!』

 

イズミの命令に、ロニは素直に従った。

 

そして、入り口付近にノーマをゆっくりと置いた。

 

『少佐も、その剣士を置いていった方が良いんじゃねえの?』

 

エドはそう言って、少佐に遠まわしに命令のような物を言った

 

『む……それもそうだな。』

 

アームストロングは、剣士のミイラをノーマの隣に置いた。

 

安全だから。という事なのだろうが、

 

ユーリとエドは、その様子に苦笑いをした。

 

そして、穴の方から大きな揺れが発動した。

 

『来たか?』

 

イズミが声を発した瞬間、その穴が爆発するように、大きな衝動と音と爆風を発した。

 

『うわぁ!!!』

 

その大きな煙から、大きな角が見える。

 

そして大きな牙、さらにかなりの筋肉質の身体。さらに背中には大きな翼が生えていた。

 

『愚かなる人間どもよ……。我が眠りを妨げたこと、後悔するが良い。』

 

かなり低い声だったが、その声はまるで洞窟全てに響いているようだった。

 

言い終えた瞬間、精霊の周りからは火が噴出すように現れ、エド達を襲った。

 

『エド!!』

 

イズミは合図するようにエドに声をぶつけた。

 

エドとイズミはその場で壁を練成し、こちらから噴出された焔を壁で遮り、後ろの仲間を守った。

 

『……何だ?その地を動かす技は。』

 

精霊は、その技に興味を持つ

 

『言っても分からねぇだろうよ…。この世界しか知らない奴がよ!!』

 

そう言ってエドは、地中から大きな突起物を練成して、精霊に向かうように発射される

 

さらにイズミも、エドと同じように地中からかなり大きな突起物を作り出し、精霊に向かう。

 

『くらいやがれぇ!!!』

 

エドがそう叫んだが、それは儚い言葉だった。

 

精霊は、自分に近づいてきた突起物全てを腕で壊し、精霊にダメージは残らなかった。

 

『無駄な能力だ。』

 

精霊はそういい捨て、エドは笑う

 

『……こいつは伊達に精霊やってねぇな…。』

 

『随分、精霊を舐めた言い草だな』

 

精霊はそう言って、エドのすぐ下から溶岩を噴出そうとした

 

『エド!!』

 

ユーリが叫ぶと、エドに鋭い光が発せられる。

 

その光と共に、噴出してきた溶岩は一瞬で固まり、岩になった。

 

『無駄な能力かどうか、もうちょっと見てからの方が良いんじゃねぇの?』

 

エドが不適の笑みをすると、精霊は表情を少しだけ変える

 

『……ほぅ、なかなか興味をそそる物だ。』

 

『てめぇも、セルシウスと違って一筋縄では行かなそうだ。』

 

セルシウスという言葉を聞いて、イフリートの表情が若干変わった。

 

『……あの女と一緒にするな』

 

イフリートはそう言って、焔をエドに向かって発射した。

 

だが、直線に進む炎は、練成される壁によって遮られる。

 

『そうだな。あの精霊と違って、お前は格好良い容姿もしてやがる。』

 

『『格好……良い?』』

 

ユーリとロニが、疑問の声でエドに問いかけた。

 

その角と牙のある姿が、エドにとってはヒットな壷なのだろう。

 

エドのその顔は、楽しそうな顔をしていた。

 

『ふん。ふざけた言葉を……』

 

そう言って、イフリートは地面を殴りつける。

 

『うぉお!!』

 

殴りつけたときの地の破片は、デタラメに発射された。

 

エドは、その破片は壁の中に居れば、壁を何重にすれば良いのだが、

 

厄介な事に、その破片は入り口にも行こうとしていた。

 

『ノーマ!!』

 

カイルが叫ぶと、ノーマは目を開ける。

 

眠りから覚めたように、目をこすって隣を見る。

 

私の隣にミイラが居る

 

『きゃぁあああああああああああああああ!!!!』

 

ノーマは全速力でその場から逃げていった。

 

入り口にとんだ破片は、ミイラに激突してバラバラになった。

 

さらに破片がノーマの向かって飛んできたが、

 

どれも華麗に、そしてギリギリに避けていった。

 

『おっ……すげ』

 

その後、息が切れる寸前の状態でエドの壁の方へと逃げてきた。

 

『な……なんなのよあれ!!』

 

『どうやら、精霊さんのよーだい。』

 

ユーリが、皮肉にそう言うと、

 

『嘘!!出会う前に逃げようと思ったのに~~。』

 

ノーマは、悔しそうに拳を握る

 

『ノーマ、何か言ったか?』

 

『いえいえいえ!!別に別に~!!』

 

イズミのその言葉で、ノーマは激しく動揺しながら手の平を見せながら両手を振った。

 

瞬間、エドの目の前の壁が粉砕された。

 

そして粉砕された前には、精霊が威厳良く立っていた。

 

『良くぞここまで生き延びた。だが、これまでだ』

 

精霊はそう言って、腕に焔を纏わせエド達を見下ろす

 

『冥土の土産に名を教えよう。我が名は火の精霊イフリート。時には全てを破壊し、時には生命を作る手助けをする精霊だ。』

 

『ご紹介。どうも』

 

エドはそう言った後、イフリートは腕を振り下ろし、エドに向かって振り下ろす。

 

だがエドは、それでも壁を練成した。

 

『愚かな!そんな壁では我が腕は止められぬ!』

 

イフリートの腕はその壁を貫通し、勢いもほとんど死んでいない。

 

だが、その拳はもう一つの拳にぶつかる

 

『何っ!?』

 

それは、もう一人の筋肉のヒゲ、アームストロングの拳だった。

 

アームストロングの拳と、イフリートの拳がぶつかり、そこに巨大な衝撃波が響く

 

『これぞ、我がアームストロング家に代々伝わる、芸術的錬金術!!』

 

『ほう……我が精霊の拳を受け止めようとは。壁を作るのも、我が拳を避けるためで無く、死角を作るため……』

 

その後ろで、エドは床を練成する。

 

イズミも同時に、エドと同じ物を作った。

 

地中から、巨大なオブジェクトが現れる。

 

そのオブジェクトは、イフリートを押さえつけ、動けないようにした。

 

『こんな物、無駄だと申したはずだ。失望したよ。』

 

『こんなもんで、押さえつけられるとは思ってないね。』

 

エドがそう言うと、ユーリは瓦礫を拾い、アームストロングに投げつけた。

 

『おらよ。』

 

『ふんむ!!!!』

 

その瓦礫をアームストロングが殴りつけると。

 

衝撃と共にその瓦礫は光を発しながら変形し、大きな槍の刃が作られる。

 

『おらぁ!もういっちょう!!』

 

ユーリが次々と瓦礫を投げつける。

 

その瓦礫が、どんどんと変形し、イフリートの方へと飛んでいく

 

だが、そのどれも全てイフリートから避けて、後ろの天井にぶつかっていく。

 

『何をふざけたことをしている?』

 

『どうせ、こんな槍の刃なんか利かねぇんだろ。』

 

エドはそう言って、笑顔になる

 

『馬鹿が。』

 

イフリートを包んでいたオブジェクトは、だんだんと大きなヒビが現れる。

 

どうやら、そのオブジェクトが崩れるのも時間の問題だろう。

 

だが、

 

『もう遅えよ。』

 

イフリートの後ろの天井も、大きなヒビが生まれていった。

 

『なっ……!!!』

 

天井から大きな瓦礫が一つ一つと、イフリートの上へと落ちていく。

 

その瓦礫一つ一つが、イフリートに大きなダメージを与えただろう。

 

精霊といえど、そこまで強度が高いわけではない。

 

少佐でさえ、あんなものを喰らえばお陀仏になる可能性だってある。

 

セルシウスでさえも、剣で皮膚が切れる程度だったからだ。

 

これ以上崩れたら、今度はこっちの方が命の危険にさらされる為

 

『全く。お前も無茶をするな』

 

イズミがこの部屋全体を練成して、大きく再構築した。

 

部屋は人工物のように、まっ平らな壁と天井になり、瓦礫はイフリートの上に残ったままだ。

 

その間は、たった5秒だ。

 

さすがにエドも、その光景には驚愕した。

 

『師匠も、結構成長していますね。』

 

『年を取った。と言いたいのか?』

 

イズミの怒りの表情に、エドはすぐに後ろ退がった。

 

その表情に、カイルもロニも少し恐怖したくらいだ。

 

ノーマは、死んだふりをしていた。

 

『だけど、これじゃぁまだ起き上がってくるだろうな。』

 

『どうします?』

 

イズミは、大きな瓦礫の方へと近づき、その瓦礫の全てを一つの物質にした。

 

一つの、大きな重りに

 

『うわぁ……』

 

おそらく。その重さは一トンは超えるだろう。

 

その重りは、大きくイフリートの上に乗っかっていた。

 

『これで、私達の勝ちと言う事良いのか?』

 

イズミがそう言ったとき、ユーリが突っかかる

 

『でもよぉ、さすがに殺しちゃったらまずいんじゃねえのか?』

 

そう言った矢先、重りが急に揺れだす

 

『ん?』

 

ピシピシ!!と大きな音を立て、ついに全体にまでヒビが入る。

 

その時、重りが完全に粉砕した。そしてその中にイフリートが存在していた。

 

『げぇ!!』

 

エドは、しつこうというような声を出して、ゲンナリした声を出す。

 

『まだやるかい?』

 

イズミは、再び戦闘体制に入り、構えに入った。

 

だが、イフリートは抵抗しなかった。

 

『いや、私の負けだ。まさかここまでやる人間だとは思いもしなかった。』

 

イフリートはそう言って、その場で佇み、声をかけた

 

『話を聞こう。ここまで来たからには、何か用件があるはずだ。』

 

『さすが大精霊様。話が早いねえ。』

 

イズミがそう言うと、笑顔で対応した。

 

『それじゃぁ聞こう。この地で星晶が異常に減り始めている。これについて言葉は?』

 

『……それは、お前ら人間が星晶を狩っているからだろう。』

 

その質問に、ユーリは驚く。

 

だが、次の言葉でその質問の意味が分かった。

 

『それだけなら良いけどな……。だが、ここ最近、関係なしに星晶が減少しつつある事が判明した!これはどういう事だろうか!?』

 

『ま……待ってくれ師匠!!そんな事、俺達は知りませんよ!?』

 

ユーリもそんな事は聞いていない。アームストロングも驚いた顔をしている。

 

『星晶を狩っている奴ら関係なしに、星晶が消えてる……だと?』

 

イフリートは、何も感情が無いように、スラスラと答える

 

『それは……世界樹の異変なのかもしれぬ』

 

『かも……だと?』

 

『ああ。ここ最近の世界樹はおかしい。何か異変を感じる。私はそれを、人間が星晶を狩り、封じられていた世界が正体を現してきたからだと考えている』

 

イズミは、表情を変えてさらに声を出す

 

『……あの少女の事は、何か分からないか?』

 

『少女?』

 

『あのピンク色の髪をした少女が、笑いながら私の同僚を一人は殺して、もう一人は意識不明の状態だ。』

 

その話を聞いたエドは、目を見開いてイズミを見た

 

『あの……そいつはもしかして、カノンノと名乗ってませんでしたか?』

 

『カノンノ…だと?』

 

ユーリが、疑問の声を出す。

 

『いや…。名前までは分からない。だが、そいつが人を笑いながら殺しているのは確実だ。傷を負っても回復する。さらに追い詰めても消えていった。人間ではないのは確実だ。』

 

イズミがそう言うと、イフリートは目をつぶった。

 

やはり、何かを知っているのだろう。

 

口を開くのは、そう時間が掛からなかった。

 

『……、おそらくそいつは、ディセンダーという者だ。』

 

『ディセンダー…!!またその言葉か。』

 

エドは、拳を強く握り締めた。

 

『ちょっと待てよ。おとぎ話によれば、そのディセンダーは人を助けるために生まれたって言ってたじゃねえか。なんだかおかしくねえか?』

 

ロニがそう突っ込むと、イフリートは返した

 

『……人間の作るおとぎ話を信じるも自由だが、それが実在したとしても、それが人間にとって悪であれ、おかしくは無いだろう。』

 

『だとしても……ディセンダーは英雄だって言い伝えられていた!!』

 

『そうだ。言い伝えられていた。だけだ。』

 

イフリートではなく。エドがその質問に答えた。

 

『俺が知っているディセンダー。いや、精霊でさえ、本当か分からない奴だけど、そいつは村一つを滅ぼし、村の皆の命を飲んだ。』

 

その話で、イズミとその二人の表情が変わる。

 

カイルは、まだ信じられない顔をしていた。

 

『そんなの……。だったらどうして……ディセンダーは人を助けるために生まれてきた。なんて言われてきたんだ……』

 

ショックが大きいのか、カイルはただ、俯いたままになった。

 

『話は、それだけか?』

 

イフリートがそう言うと、イズミは

 

『ああ、それだけだ』

 

と答える。

 

『ああ、ちょっと待ってくれ』

 

今度は、エドが割って入る。

 

『この火山の中に、一人剣士が居るって聞いてるんだけどさ、そいつがどこに居るか、分かんねぇかな?』

 

エドがそう言うと、イフリートは顔を変えずに答えた

 

『……今、この火山口に生きている人間は、お前らしか居ない。』

 

『……………そうか。』

 

これで、確信はした。

 

この中に入ってきた行方不明者は、あのミイラだった。

 

そして、そいつはもう死んでいた。

 

『んじゃ、これで話は終わりだな。悪かったな。起こしちまって。』

 

エドがそう言うと、イフリートは初めて微笑んだ。

 

『いや、久しぶりに充実した時間を過ごした。それで十分だ。』

 

そう言って、イフリートは移動し、アームストロングの元へと歩んだ。

 

『貴方からは、どこか似ている雰囲気を感じる。何か相談事があれば、なんでも聞こう。』

 

『うむ。それではこれからは”友”と呼ばせてもらおう』

 

そう言って、アームストロングとイフリートは握手をした。

 

握手の部分から、湯気が立っているのが見えた。

 

正直、この二人が一緒に居て欲しくはないが

 

『そうだ。お前、セルシウスに会ったと言ったな。』

 

イフリートは、今度はエドの方の表情を見る

 

『ああ?それがどうした?』

 

『私とセルシウスは、お互い相容れぬ存在だ。特に奴は私を嫌っている。会った時、私の話題は出さない方が良いだろう。身の安全を求むならな。』

 

イフリートはそう言い残し、元の穴へと帰っていった。

 

その穴の上で、だんだん気化していくように、そして完全に消えていった。

 

消えていくイフリートを見て、エドは呟いた

 

『……あいつの方をアドリビドムに入れた方が良かったんじゃねーの?』

 

『ふざけろ。毎日蒸し風呂だ。』

 

そう言った矢先、イズミはエドに問いかける

 

『お前はこれからどうするんだ?その状態で帰れるのか?』

 

イズミは、弟子のこの状態を心配した。

 

依頼の目的の人は死んでしまっていて、さらにバラバラになっているのだ。

 

だがエドは、何の躊躇いも無く、ミイラの生首を持ち

 

『とりあえず、こいつを依頼された村へ送ってから、船に戻る。責任は全部、俺が持つ』

 

そう答えたエドに、ユーリは少し微笑む。

 

『そうかい。だったら俺も共犯だ。責任を半分、俺によこせよな。』

 

そう言ったユーリに、エドは微笑み返した。

 

『ふむ!ならば我が輩はさらに半分……いや、5分の4は受け取ろうではないか!!』

 

その暑苦しい半裸に、エドとユーリは苦笑いした。

 

そこで、ノーマがひょこりと飛び出し、エドに問いた。

 

『ねぇ、そういえば名前聞いてなかったわね。貴方誰?』

 

さっきの話を聞いていなかったのか。……いや、こいつはさっきまで気絶していた。

 

じゃぁしょうがない。盗っ人に名乗る名前なんか無いけど。

 

『俺の名前はエドワード・エルリック。鋼の錬金術師だ。』

 

エドは、またチビと言われないように、最後に保険をかけた。

 

『俺の名前はユーリ・ローウェル。アドリビドムの一員だ。』

 

『我が輩の名前はアレックス・ルイ・アームストロング。以後、お見知りおきを。』

 

全員の自己紹介が終わった後、ノーマは語る

 

『んー……。エドワード……にしては、なんとも…それに鋼の錬金術師?なんだか外見に似合わないしね~。』

 

『おい、何の話をしてんだ?』

 

すると、ノーマは顔を上げ、

 

『よし!決めた!今日からヒゲの筋肉は”ルイルイ”で、そこの長髪は”ユリユリ”。んで、その小さいのが、”マメマメ”!!よろしくね!!』

 

そのあだ名に、まず最初に突っかかったのはエドだった。

 

それは、かなり多くの怒りが噴出していた。

 

『てめぇぇえええああああああああああ!!!!!俺の事を豆ん子超ミジコンドリアドチビと言いてぇのかぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!』

 

エドは大きく地面を蹴って、ノーマを追いかけた。

 

『へっへーん!!こっちこっち!!マメマメー!!』

 

『ぶっ殺ぉす!!ぶっ殺ぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおす!!!!!!!!!!!!!!!』

 

その子供のようなやり取りに、イズミは溜息を吐いた。


 
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