No.227112

真・恋姫†無双 真公孫伝 ~雲と蓮と御遣いと~ 1―6

真・恋姫†無双 真公孫伝 ~雲と蓮と御遣いと~ 1―6
更新させていただきます。


今回から少し書き方を変えてみた次第です。

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2011-07-09 14:19:50 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:9387   閲覧ユーザー数:7333

 

 

 

 

この作品は恋姫無双の二次創作です。

 

三国志の二次創作である恋姫無双に、さらに作者が創作を加えたものであるため

 

人物設定の違いや時系列の違い。時代背景的な変更もありますので

 

その辺りは、なにとぞご容赦をお願いいたします。

 

上記をご理解の上、興味をお持ちの方は 次へ をクリックし、先にお進みください。

 

 

 

 

 

 

木が鬱蒼と生い茂る山の中。

 

そこで対峙する少年と女の子。

女の子の後ろには、山賊が二人倒れ伏しており。少年の近くにも同じく山賊が二人倒れ伏している。しかし両者の違いは一目瞭然。前者は明らかに息絶えており、後者は指の先がぴくぴくと痙攣しているところを察するに、気絶しているのだろう。

 

 

一般人が、この実に日常から逸脱した光景を見た時どう思うのだろう。

 

少年と女の子が協力して山賊を討伐した?

それとも、少年も山賊の一味であり、堰月刀を構えた女の子に狙われている?

逆に女の子が山賊の一味であり、少年にやられた仲間の敵討ち?

 

山賊が出るという山に人はあまり来たがらないと思うので、第三者が偶然通りかかり客観的な意見を言う。そんな機会は無きにしも非ずだが、それでも少年を山賊達の仲間と見るのには無理があっただろう。

 

少年の着ている服は、陽光に輝く白い服。

一方、女の子が着ているのは継ぎ接ぎだらけの、お世辞にも上等とは言えない服。

 

 

どちらを山賊と思うか――――10人中10人とまではいかないまでも、10人中8人ぐらいまでは白い服を着た少年――――つまり北郷一刀を支持するだろう。

それほどまでに両者の風貌の違いは明白だった。

 

 

その北郷一刀のツッコミによって、静けさをさらに増した森。

一刀としては、肯定か否定。または堰月刀の切っ先を下げてくれるのが好ましかったのだが、そのどれでもなく、女の子は顎に手を当てて唸り始めていた。

 

 

「むむむむ……」

 

 

「ど、どうした? 」

 

 

沈黙に耐えきれなくなった一刀がおそるおそるといった感じで女の子に話しかける。

 

 

「いや某、未だ未熟者ゆえ、なにが間違っていたのかが分からないのでござるよ」

 

 

確信した。間違いない、目の前にいる女の子は――――アホの子だ。

一刀はそう判断した。

 

 

「え~と……だからな? 力ずくで、譲ってもらう、っておかしくないか?」

 

「むぅ……では何と言うのが正しいと? 」

 

 

「ん~……正しい文法に直すなら、力ずくで、奪う、とかかな? 」

 

 

「おお! なるほど! 」

 

 

と、同時に堰月刀を構えなおす女の子。

 

 

「なにを――――」

 

 

してるんだ、と言おうとして一刀は自分の失言に気付いた。

なんで俺は正しい間違いを教えたんだ?と。

 

 

「力ずくで奪わせていただく!! 」

 

 

悔いる暇もなく、女の子は一刀の教えた正しい間違いを叫んで、突っ込んでくる。

それほど一刀と女の子の距離は空いていなかったため、女の子はすぐに距離を詰め、堰月刀を振りかぶった。

 

 

「馬鹿か俺えぇぇぇぇぇ!!!! 」

 

 

 

 

 

間一髪。自分の頭のお粗末さ加減を罵る言葉を吐きながら、一刀は堰月刀の一撃を転がって回避した。

 

 

「何故避けるのでござるか!! 」

 

 

「んな攻撃当たったら死ぬに決まってるからだろ!!! 」

 

 

キレ気味の女の子に、一刀も若干キレ気味で返す。

 

 

「峰打ちでござる!! 」

 

 

「嘘つけ!それのどこが峰打ちだぁ! 」

 

 

「む? 」

 

 

一刀の指差す先には、さきほどまで一刀が背にしていた木があった。

その木の表面に、生々しい斬撃の跡が残っている。さすがに木を切り倒すところまではいかなかったようだが、人間相手ならば殺傷能力は十分だろう。

というか一撃で大木を切り倒すようなやつがいたら、人類とは認めたくない。

そう思いながら、現代の凄く身近な所に一人、思い当たるのはいたが。

 

 

「……峰打ちでござる! 」

 

 

木に刻まれた斬撃の跡を見ながら断言する女の子。どうやら、意地でも峰打ちで押し通したいらしい。さすがはアホの子、何を言っても無駄なのかもしれない。

 

 

「……もういいよ、峰打ちで」

 

 

これ以上何を言っても無駄だと判断した一刀は、一旦腰に戻していた木刀を引き抜き、構える。

 

 

「やっとその気になったでござるか! いざ尋常に勝負でござる! 」

 

 

戦闘態勢を取った一刀に嬉々として声を張り上げる女の子。

喋り方からも察するに、根っからの武人なのだろうか?

一方で頭は残念なようだが。

 

 

「……絶対に勝たせてもらう。女の子に負けるっていうのは一回経験しただけで十分だ」

 

 

この世界に来てから初めて女の子と仕合し負けた自分。

その時の情景を思い出しながら、一刀は自嘲気味に笑った。

 

 

 

 

 

「はあっ!! 」

 

 

「ふっ! 」

 

 

気合い一閃。気合いを充分に乗せた一撃を繰り出す女の子。

それに対し一刀は、避けるだけ。防戦一方どころか避けているだけの行動。

生い茂る木々を巧みに使い、上手く距離を開け、避け続けている。

 

 

(……星よりか攻撃は遅いけど、一撃一撃の威力は並みじゃないな)

 

 

次々と周りの細い木を強引にへし折りながら、時に断ち切りながら、こちらを追尾してくる女の子を見て、一刀は思う。

猪突猛進―――猪武者。

 

 

 

「避けてばかりで某に勝てると御思いか!! 」

 

 

「勝つ」

 

 

一瞬たりとも間を空けずに応える。それが決定事項であるかのように。

間髪いれずに攻撃を繰り出す女の子と避け続けている一刀。

どちらに勝敗が上がると思うか。

 

 

常識的に考えれば間違いなく前者――――女の子が勝つと考えるのが自然。

しかし、自然な考えに疑問を持たせるものがこの場に一つある。

それは、避けるだけしかできない少年。その少年の口が、笑みを作っているということ。

 

 

「ふん! 避けることしかできないとは拍子抜けでござるな! 」

 

 

「避けるだけしか……ね。そうは言うけどさ、避けられるっていうのがどういう意味か考えたことある? 」

 

 

「避けられるからに決まっているでござろう! 」

 

 

噛み合わない会話。

この女の子に友達が居るのかどうかを本気で心配し始める一刀をよそに、斬撃は繰り出され続ける。

だんだんとその斬撃が髪を掠め始めるが、一刀はさほど気にした風もなく続けた。

 

 

「避けられるっていうのはさ……見えてるってことなんだよ」

 

 

「――――ッ!? 戯言をっ!! 」

 

 

一瞬だけ硬直した女の子だったが、すぐに頭を振って否定し、再び攻撃を開始した。

自分にしてみればただの戯言。そう考え、少し怒ったかのように目つきが鋭くなった女の子。

その影響によるものか、斬撃はさっきより鋭さを増していたが、精度はやや落ちているようにも見受けられた。

 

 

「……よし」

 

 

一刀はポツリと呟いたかと思うと、誰の目にも明らかな、あり得ない行動を取った。

 

 

そう、避けるのを止め――――

 

 

 

その場に立ち尽くした。

 

 

「なにを―――! 」

 

 

驚愕に染まる女の子の表情。だが、攻撃を止める気は無いのか、そのまま地を蹴って接近し無防備な一刀にむけて堰月刀を振りかぶった―――――

 

 

 

 

 

 

「なっ!? 」

 

 

普通であれば、肉を裂く音。血が飛び散る液体音。一刀の断末魔が響き渡るであろう状況。しかし、その場に流れた最初の音、それは驚愕の色濃い女の子の声だった。

それもそのはず。確実に当てたと思った彼女の攻撃は何も捉えなかった。

 

 

一刀は、ただ少し首を傾けるだけで彼女の攻撃を回避していた。

あまりにも驚きが大きかったのだろう。彼女は避けられたのと同時に、一刀の木刀が自分の首元に当てられているのにさえ未だ気付いていなかった。

 

 

「10尺強ってとこだな」

 

 

「な、なにが……」

 

 

「君の堰月刀の長さ。というか、自分の得物の長さぐらい心得とかないと負けるよ、絶対」

 

 

そう言いながら一刀は女の子の首に当てていた木刀を引いた。その時始めて自分の首元に相手の武器が当てられていたことに気付いたらしく、さらに驚きの色を濃くする女の子。それと同時に武器を引いた一刀をキッと睨みつけた。

 

 

「なぜ剣を引いたのでござるか! 」

 

 

挙句の果てにその木刀を腰に戻した一刀。その行動を彼女は理解できないでいた。

 

 

「理由は二つかな。一つは君の力量はあるていど計れた。もう一回やっても多分俺が勝つ。二つ目は・・・どんなかたちでも、助けられたのは事実だから――かな? 」

 

 

 

「なっ……!? 」

 

 

「だから俺は武器を引いた。最初に言ったろ? 勝負だって。殺し合いなんて一言も言ってないし。というか、これだと基本的に殺せないよ」

 

 

自分の腰に戻した木刀を見て、苦笑する一刀。

厳密に言えば木刀でも人は殺せる。ただ、自分が人を殺すという行為にまだ抵抗があるだけ。おそらく、お互いがお互いを殺さなければいけない状況だったなら、勝敗は分からなかっただろう。

 

 

「……っ」

 

 

 

(……ちょっとくさいセリフだったかな)

 

 

一刀が心の中で自身に制動を掛けていると、にわかに女の子が身体を震わせ始めた。臨界点一歩手前のような感じで。

 

 

(やっぱりこういう性格の娘に情けを掛けるってのはまずかったかな。プライド的なものも強そうだし。なんかめんどくさそうなことに―――――)

 

 

「貴殿!! 」

 

 

「うおう!? え、え~と……なんだ? 」

 

 

意識的にしろ、無意識的にしろ、ある意味で奇襲を成功させた女の子。

虚を突かれた一刀は、内心の驚きを隠し、対応する。

 

 

「名は!! 」

 

 

「ほ、北郷一刀」

 

 

「ほ、ほんごうかずと殿でござるか!! 」

 

 

「違う!北郷一刀! 」

 

 

どもった部分まで名前の一部にしようとした女の子に慌ててストップをかける。

さすがに自分の名前がほ、北郷一刀になったりしたら嫌だろう。

 

 

「それでは改めて……ほんごうかずと殿!! 」

 

 

「な、なんだ? 」

 

 

「貴殿を殿と呼ばせていただきたい!! 」

 

 

「は?」

 

 

土下座をしての唐突な懇願。今度こそ一刀の口から間の抜けた声が出た。

 

 

 

 

 

 

 

(今、この娘なんて言った? との? ……戸野? いやいやいや、多分違うな。……殿?殿さま!? )

 

 

脳内文字変換機能を駆使し、なんとか正解だと思われる解を導き出した一刀だったが、正直戸惑っていた。というか、これが普通の反応だろう。

数週間前まで一刀は普通の高校生だったのだから。殿なんて呼ばれることに慣れている筈が無い。

 

 

 

「え~と……君」

 

 

「なんでござるか殿! 」

 

 

一刀「なんで俺が殿なの? あと、なんで呼び方がすでに殿? 」

 

 

「某、未だ若輩者ゆえ、旅の途中、腕に覚えある御仁たちと勝負していたのでござるよ。負けたことは無かったでござる! 殿に会うまでは」

 

 

自分より弱い者と戦って勝ち続けていると、自分が強いと錯覚してしまう。

つまり慢心。鹿児島の祖父にも耳にタコができるほど聞かされた教え。

それを思い出しつつ、一刀は思う。

 

 

(……呼び方が殿の件に関してはスルーなんだな)

 

 

「しかし! 某は今、武に関しても! 人間的な器に関しても! 全ての点で負けたでござる! ならば某、殿を我が剣の主とするしか他に道はあらず!! 」

 

 

……いや、あるだろ。

喉元までせり上がってきたそのツッコミを無理やり飲み込む。

それを指摘したら指摘したで、また面倒なことになること間違いなしだ。

それに、武士的な精神観点から言えばあながち間違っていないのかもしれない。

だが、それをふまえたうえで、一刀には聞きたいことがあった。

 

 

 

「俺としては別に構わないんだけどさ」

 

 

「本当でござるか!? 」

 

 

「最後まで人の話はちゃんと聞きなさい。……一つだけ聞かせてくれ。なんで俺なんだ?この先同じように旅を続けていれば、俺以上に強い奴なんてたくさんいるだろ。人間的にも俺以上に出来が良い奴なんて腐るほどいるしな。……もう一回聞く。なんで、俺なんだ?」

 

 

 

「しいて言うなら勘でござる!! こう……ピンと来たでござる! 」

 

 

 

間髪いれない大真面目な解答。

 

 

 

空気が死んだ。

 

 

 

 

 

 

「ど、どうしたでござるか殿! 木に手など突いて! 」

 

 

女の子が状況を説明してくれた通り、一刀は近くにあった木に手を突いて、もう片方の手で自分の目頭を揉んでいた。

 

 

「……いや……俺が醸し出したシリアスな空気ってなんだったんだろうな~って自問してただけだよ。気にしないでくれ」

 

 

「はっ! 気にしないでござる! 」

 

 

「少しは気にしてくれ! 傷つくだろ」

 

 

「気にするなと言ったのは殿でござる! 」

 

 

「あーすいませんでした! 確かに俺そう言いました! 」

 

 

もうなんか半分やけくそだった。

そんな感じで言い争い、というかヤケクソvs天然大真面目の乱を繰り広げていると―――――

 

 

「おや? 痴話喧嘩ですかな? 」

 

 

近くの茂みがガサガサと揺れ、星が姿を現した。

 

 

「あ、星。そっちはどうだっ……た? 」

 

 

茂みから出てきた星を見て、掛けた言葉が最終的に疑問形に変わり、目が点になる。

正確に言うなら、星を見て――――ではない。

 

もっと正確に言うなら、星の後ろにいる女の子を見て、だ。

 

 

 

「賊を一人捕まえたのですよ」

 

 

 

星は自分の後ろにいる縄で縛った女の子を一瞥して、にやりと意地悪く笑った。

 

 

 

 

 

【あとがき】

 

 

 

真・恋姫†無双 真公孫伝 ~雲と蓮と御遣いと~ 1―6

一刀、山へ芝刈りへ (~芝刈りという名の山賊退治~) その2

更新させていただきました。

 

 

 

あまり切りが良いとは言えないのですが、次に繋げるため、切らせていただきました。

オリキャラ二人目が最後のページにちらっと姿を見せました。

ここまでくると、繋がりや雰囲気でオリキャラの正体が分かってしまった方もいるかもしれません。分かってしまった方は胸にしまって、次回の更新まで取っておいてください。

そして、この回で一人目の正体が分かる!と期待してくださった方々。(・・・・いますよね?)その方も申し訳ありませんが、次回更新までお待ちいただけたらと思います。

 

 

 

今回、読んでいて気付かれたと思いますが、(というか気付いていない方は、「お嬢様はアホでいらっしゃいますか」的な感じかと思われます←該当される方、すみません)書き方を変えてみました。読者様から、ショートメールが届き、こうしたほうがいいのではないか?というとても懇切丁寧なアドバイスを頂いた為です。

しかしながら、納得できないアドバイスであれば、アドバイスを頂いたお礼だけして、その後は今までどおりの路線で行こうと思っているのが作者です。

つまり、今回の書き方改訂は作者がそのアドバイスに対して、「確かに理にかなっている」と思った結果の、書き方改訂ということに他なりません。

今回のコメントや反響で、評価が悪くなければ、この書き方で続けて行こうと思います。

 

 

 

 

仕事の方も佳境に入り、ちまちまと小説を書いている時間さえ無くなりつつありますが、頑張りますので応援をよろしく、とお願い致しまして、あとがきとさせていただきます。

 

 


 
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