いくつかの闘いをかさねて私は客将から正式に武官として華琳に仕えることになった。
そして、警備隊隊長として街の治安維持・発展に天の知識を使うことになった。
みんなも協力してくれて、街はどんどん発展していった。
そんな中、とうとう奴らが動き出した、
そう、あの黄巾党が。
真・恋姫+無双一姫伝・魏
第五話「乱世に羽ばたけ!!朱雀と三羽の烏達」
「はあああーーーっ!」
ドガアッ
「ウギャアーー!」
『ひ、ひいい~~っ』『だ、駄目だ、逃げろ~~!』
「待て!逃がすかーー!」
私は秋蘭と共に活発になって来た盗賊達の討伐に陳留より南西にある街にやって来ていた。
逃げ出した盗賊達を兵達が追いかけようとするのを私は止めた。
「待って、無理に追わなくてもいいわ。今は街の人達の治療と救助を優先して」
『はっ了解しました!』
「一姫」
「秋蘭、そっちはどう?」
「たいした手ごたえはない、少し不利になっただけで蜘蛛の子を散らすように逃げ出していった」
「そう、こっちも同じよ」
「それにしても、何なんだ奴らは。強さはともかく今までの盗賊共とは何かが違う」
そういって秋蘭は奴らが残して行った黄色い布を握りしめた。
「……黄巾党………」
「!!…黄巾党、そうか、天の知識というやつか」
「ええ、秋蘭は帰って華琳にこの事を報告して。私はしばらく此処に残って街の復興を手伝うわ」
「分かった、気をつけろよ、いつ奴らが再び襲ってくるか分らんぞ。夏侯淵隊、これより帰還するぞ!」
「北郷隊はこのままこの街に留まり復興の支援をするわよ」
『了解です!』
秋蘭隊が引き揚げた後、街の長老達がやって来た。
「おお、御使い様、こんな我らの為にありがとうございます」
「いいのよ、私達は民のみんなを守るために闘っているんだから」
長老と話をしていると子供達が駆け寄って来た。
『御使いさま~~、遊んで~~!』
「これ、お前たち!」
「こらっ駄目でしょ、今街は大変なんだから」
『…ごめんなさい……』
遊んでくれと迫って来る子供達を少しだけ怒って、凹んだところを見計らい。
「遊ぶのはお家のお手伝いが終わってからよ♪」
『!!は~~いっ♪』
ウインクしながらそう言うと、子供達はたちまち笑顔になってそれぞれの家に帰って行った。
「さあ、私達もがんばらなきゃ!」
(御使い様、ありがとうございます)
そして、陳留へと帰還した秋蘭は華琳に報告する為に玉座の間へ来ていた。
「黄巾党?」
「はい、一姫は例の黄色い布を持つ盗賊達の事をそう呼んでました」
「そうか、北郷は歴史とやらを知っているのだったな。さっそく北郷を呼び戻して相談をして…」
「その必要はないわ、私達の歴史が一姫の知っている歴史通りに行くとはかぎらない。ならばそんな不確かなもの何の役にも立たないわ。だから一姫も何も言わなかったのよ」
「はい、私もそう思います。しかし敵の名称は必要です、黄巾党という名はそのまま使うことにしたいと思いますが?」
「ええ、そうして頂戴。それから各地の状況は?」
「盗賊共の動きが活発になっています。そしてやはりそのすべてが黄巾をつけているそうです」
「ここまで組織化されているとなるともうまちがいないようね」
「はい、太平要術を使っているのは間違いないかと」
タタタタタタタッ
そこに、秋蘭達と同様に盗賊の討伐に出ていた季衣が帰って来た。
「華琳様ー、ただいまーー!」
「お帰りなさい季衣。守備は?」
「はい、それほど強い奴らじゃなかったんですけど今までの野盗より何だか闘いにくかったです」
「やっぱりね」
「ねえ秋蘭様、姉ちゃんは?」
「一姫は復興支援の為に街に残っているぞ」
「ちぇっ、姉ちゃんのゴハン食べたかったのに」
「なら私が作ってあげるわよ」
「えっ、ホント華琳様?わーーい!」
「調子のいい奴だ」
「ふふふ、(無理をしちゃ駄目よ一姫)」
南西の街~
「北郷隊長、ご報告が…」
「…義勇軍?」
仕事の手伝いをしていると街の防衛を手伝いたいという義勇軍がいると報告があった。
「はっ、何でも黄巾の奴らに滅ぼされた街の生き残りが結集して義勇軍を作ったと」
「そう、なら話をしてみるわ。率いてる人を連れて来て」
「了解しました」
しばらくすると三人の女性を連れて戻って来た。
「貴女達が義勇軍を率いているの?」
「はっ!私は樂進と申します」
「ウチは李典といいます、よろしゅうたのんます」
「私は干禁なの、よろしくなの」
「こらお前達!少し馴れ馴れし過ぎるぞ!」
「いいのよそれくらい、私は北郷。詳しく話を聞かせて」
「はい、私達は村の皆が作った籠を売るためにほかの街に巡業に出てたんです。なんとか売り切ることができて村に帰ってみると……くぅっ!!」
彼女はそこまで言うと悔しそうに拳を握りしめていた。
「村はメチャクチャに荒らされていて何人かが辛うじて生きていたくらいなの」
「せっかくガキ達に旨いもん買って来たったてゆうのに……くそうっ!」
その光景を思い出しているのだろう、三人の瞳からは止めどなく涙が溢れていた。
「私達は復讐を誓いました、そして我々と同じように村を滅ぼされた人達を集め義勇軍を作ったのです。しかし所詮我々は素人、武器や食料の補給もままならず、そんな時にあなた方の噂を聞き、駆け付けたしだいです」
「カッコ悪いけど正直どうにもならんねん」
「だからお願いです、我々を戦列の端でもいいからお加え下さい!」
「できる限りのお役には立ちます」
「お願いなの」
「……わかったわ、じゃあ力を貸して」
「あ、ありがとうございます!!」
「隊長、よろしいので?」
「ええ、そのかわりとりあえずはこの街でだけになるわよ。私には正式に軍に加えるだけの権限はないから。それでいいかしら?」
「はいっ!今はそれだけでも十分です」
「隊長、一応曹操様にお伺いをたててからの方がよろしいのでは?」
「たぶんそんな時間はないわ。黄巾党はおそらくまだこの街を諦めていない、今は味方は多いいほどいいわ」
「わかりました。ではいつ戦闘になってもいいように食事をさせておきます」
「えろうすんません」
「その代りあまり多くは分けられんぞ、我らの糧食も十分とは言えんのだからな」
「大丈夫なの~、皆もその辺は理解してるから文句はいわないの~」
そう言いながら彼女達は兵士に連れられて行ったが、楽進と名のった女性だけは残り私に話しかけて来た。
「あの、御使い様…」
「その御使い様というのは止めてほしいんだけど。そうね、一応私の部下ということになるから隊長とでも呼んで」
「わかりました隊長。では私の真名をお預けしますので私の事は凪とお呼び下さい」
「ええ、よろしくね凪」
その頃一姫達のいる街へ迫る砂塵があった。
陳留~
「曹操様、ご報告いたします!」
「どうした!?」
「はっ!南西の街に例の黄色の布を纏った暴徒が襲いかかって来たとたった今連絡が」
「何!南西の街といえば一姫が残っている場所だぞ!」
「!!!」
「北郷は無事なのか?」
「はっ、報告によれば直前に義勇軍を一時的に部隊に組み込んでいた為になんとか援軍の到着までは持ちこたえられそうとの事です」
「桂花、すぐに動かせる兵力はどの位?」
「はい、北西に向かわせようとしていた部隊ならすぐに動かせます」
「ならすぐに出るわよ、季衣と春蘭は一緒に来て頂戴!」
「御意!」
「はいっ!姉ちゃんを傷つけようとする奴らなんかボクがギタギタにしてやります!」
士気を高める華琳達に桂花は申し訳なさそうに話かけて来る。
「華琳様……」
「気持ちはわかるけど連れてはいけないわよ桂花。貴方は残った兵力で北西に向かわせる部隊を再編成して頂戴。心配しなくても一姫は無事に連れ帰るわよ」
「はっ、こちらの事はお任せ下さい」
「華琳様、お気をつけて」
「出陣する!!」
南西の街~
ワアァァァァァァァッ
ガキイィィィンッ ザシュッ ドガアァァァッ
黄巾党が攻めて来る中、私達は街の住民を守りながら闘っていた。
「街の人達は無事?」
「はっ!街の中心部に集めて兵達が守っています」
「そう、なら此処は何としても守り切らなきゃね、まだあの子達とも遊んであげてないんだから」
凪と共に闘う中、下品な笑い声を上げながら黄巾党の兵士が近づいて来る。
「へへへ、殺せ殺せーー、お?いい女じゃねえか。俺様が可愛がってやるぜ」
「待てよ、髪の長い方は俺がいただくぜ!」
「くっ!とことん腐った連中ね」
「同感です、こんな奴らさっさと駆除してしまいましょう!」
「おいおい、駆除だってよ」
「冗談にしちゃ笑えねえぞゴルァッ!」
「冗談……フッ冗談なんか言った覚えはないぞ!」
ドガアッ
「グボハァッ」
凪の蹴り一発で男は遙か後方に吹き飛んだ。
「な、何だと…?」
それを黄巾の男達は唖然として見ていた。
「ちょっと聞きたいんだけど、貴方達だってもともと朝廷に不満を持っていた農民だったんでしょ、なのになんで同じ境遇の人達を襲ったりするの?」
「だからよ!どうせあくせく働いたって殆ど朝廷に持っていかれるんだ、だったら代わりに俺達が貰ってやって何が悪い?」
ギリリリ……
私は身勝手な奴らへの怒りに歯を噛み締めた。
キイィィィィィン
槍が私の怒りに反応して唸りを上げる。
「やっぱり凪の言うとおり駆除するしかないようね!」
そう言いながら凪と一緒に黄巾の兵士達に畳み掛ける。
「ウギャアアアッ」
「ううう、か、数ではこっちが勝ってるんだ、一気にかかれーー!」
襲い掛かって来る黄巾党を睨みつけながら凪に話しかける。
「凪、背中は預けたわよ。ついでに一姫の名も預けるわ」
「は、はいっ!光栄です。信頼に答えて見せます一姫様!」
「いくわよ、覚悟しなさい!」
「一人たりとも生かしては帰さん!」
『はああああーーーー!!』
「沙和、そっちはどうや?」
「うん、ケガ人の治療は終わったの~」
「よっしゃ、陸馬、此処はたのんだで。ウチらは凪と隊長の援護に向かうさかい」
「ああ、ここは任せろ!」
「行くで、沙和!」
「わかったの、真桜ちゃん」
黄巾の兵士達は次々と襲い掛かって来るが私と凪はそんな彼等をあしらって行く。
『ギャアアアーーッ』
「くそっ!相手はたったの二人なんだぞ、何で倒せない?」
「フン!簡単な事だ、お前たちの数十人より私と一姫様の方が強いというだけだ」
「言わせておけば、周りを囲め!一気にかたをつけるぞ」
そう言うと彼らは私と凪の周りを取り囲んできた。
「ちょっときつくなってきたかな?」
「大丈夫です、もうそろそろ来る頃です」
ドガアアアアアッ ザシュッザシュッ
「な、何だ?ギャアアアーーッ」
「凪ちゃ~ん、隊長~、助けに来たの~」
「おまっとうさん」
「遅いぞ二人とも」
「まあまあ、凪。助かるわ二人とも」
「なんや凪、何自分一人だけ真名を預けとんねん。隊長、ウチは真桜や」
「私は沙和なの」
「ありがとう、真桜・沙和、行くわよ」
「了解や」
「はいなの」
「く、くそおおっ!」
「貴様ら、何を手こずっておる!」
「張梁様」
「こんな小娘共相手にだらしないぞ!」
「張梁?そう、張三兄弟の一人ね」
「ほう?俺達の事に詳しそうだな。話してもらおうか、閨でな。グワハハハハハハッ」
(こんな、こんなクズ達のせいでみんなが、何の罪もない人達が……)
キイイイイイイイイイイイイイン
ピシィッ
朱雀偃月刀(すざくえんげつとう)が高く唸りを上げたかと思うと刃を封じている鉛の部分に一筋の亀裂が入った。
「な…一姫様、この気の高まりは一体」
「はははは、そんなナマクラ一撃でぶち壊してくれるわ。ドオリャアーーー!」
ガキイィィィンッ
張梁が振り下ろして来る大刀を私は片手で持った槍で受け止める、こんな魂のこもっていない斬撃なんか今の私には欠片も通用しない。
「…な…何だと……?片手で俺様の一撃を…そんなバカな………」
「あんた程度の力なんてこの程度という事よ」
そう言って私は槍を「軽く」振り上げた。
シュバァッ
「…えっ?……」
「なっ!!」
刃を封じているにも関わらず張梁の右腕は根元からきれいに「切断」され、腕からは血が噴き出して行く。
ブシュウーーーッ
「お、俺の、俺の腕が…ウギャアアアーーーッ」
キイイィィィィィィィ
「悪いけど一気に片付けさせてもらうわよ」
唸りを上げる槍を高速で回転させ真空状態を作り出す。
私の隣では凪もまた全身から気を噴き出し、高めている。
「私も力になります。はああああああーーーーっ!!」
高まった凪の気がその足に集約される。
『朱雀(すざく)・烈風刃波(れっぷうじんは)!!』
『猛虎蹴撃(もうこしゅうげき)!!』
シュバアアアアアアアアアッ
シュゴオオオオオオオオオッ
二つの攻撃はお互いに干渉しあい、そして引き合いながら一つになりその威力を数倍に引き上げた。
その姿はまるで白く輝く白虎の様で張梁を初めとする黄巾の兵士達は次々とその威力の中に飲み込まれて行った。
「ヒギャアア」「た、たすけ、ギャアア」「グアアアア」
「い、いやだ、死にたくな……いやヴァーーー」
煙が晴れると其処には削り取られた地面だけが残っていて彼等の死体は欠片さえも残ってはいなかった。
「な、なんやこの威力は……」
「信じられないの……」
その後当直した華琳達の援軍によって黄巾の残党は一掃された。
「…凄まじいわね……」
華琳が感想を述べたのはあの合体攻撃の跡。正直自分でも信じられない。
「こ、これを本当に北郷が…?」
「姉ちゃん凄ーーい」
「別に私だけの力ってわけじゃないわよ、凪」
私が凪達を呼ぶと凪、真桜、沙和、の三人は華琳の前に膝まつき、臣下の礼をとる。
「はっ、曹操様、私は樂進と申します。」
「ウチは李典といいます」
「私は干禁といいますの」
「彼女達が報告にあった義勇軍?」
「ええ、勝手に部隊に組み込んじゃったけど」
「安心なさい、別に責めたりしないから。貴女の判断は間違ってないわよ、それに武力も確かなようだしね。三人とも、正式に私に仕える気はあるかしら?」
「え…は、はいっ勿論あります!」
「嬉しいの~、誠心誠意お仕えするの~」
「あ~、でもウチらだけってゆうのも…」
「勿論、貴女達が率いていた義勇軍も軍に組み込むわよ。これから黄巾党との闘いは激しくなる、有能な兵士は多いい方がいいからね」
「みんな、よろしくね!ボクの事は季衣でいいよ、それから姉ちゃんを助けてくれてありがとう」
「心強い仲間が出来て何よりだ。私の事は春蘭と呼んでくれ」
「はい、私の事は凪と呼んで下さい」
「ウチは真桜です」
「私は沙和なの~」
「みんな真名の交換は済んだ様ね。では私の真名も預けます、これからは華林と呼びなさい」
「はっ!これより我ら三人、華琳様に永遠の忠誠を誓います」
「頼りにしてるわよ」
華琳達が真名の交換をしている時、街の陰から彼女達を見つめる眼があった。
「…噂だけでは信じられなかったけど……やっぱり貴女だったのね。……一姫…」
続く
あとがき
と言う訳で、今回はそれほど大した変更点はありませんでした。
あったと言えば最後のアレですね。
そう、旧版を読んでる方は解ると思いますが「彼女」です。
さあ、この勢いで最後まで……何とか頑張って書いて行きます。
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再構成版五話目です。
もっともそれほど大した変更点は無いですけどね。