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遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-第一章・二十話

月千一夜さん

早くも、二十話公開です
一気に一章の終わりに向け、突き進んでいきますww

目覚めた一刀
白き光

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2011-06-12 22:22:14 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:8246   閲覧ユーザー数:6721

“一人じゃなかった”

 

青年は、気付いたのだ

自分の中・・・僅かに残った、心の奥底

 

待っていた、一人の女性の存在に

ようやく、気付いたのだ

 

 

 

「行こう・・・秋蘭」

 

『ああ・・・行くぞ、北郷』

 

 

 

そして託された、“大切な想い”

残された、本当に小さな・・・だけど、何よりも大切な“欠片”

 

 

 

「『一矢一殺』」

 

 

その欠片を胸に

その想いを、構えた弓に

 

そして・・・“白き光”にのせて

 

 

 

 

「『我が弓の前に、屍を晒せ』っ!!」

 

 

 

彼は・・・“天の御遣い”は再び、舞台へとあがったのだ

 

 

 

 

 

≪遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-≫

第一章 二十話【望んでいた結末】

 

 

 

 

「有り得んっ!!!!」

 

 

叫び、男は睨み付けた

自身の目の前・・・弓を構え立つ、一人の青年の姿を

 

 

「貴様は、ただの“抜け殻”だったはずだ!?

貴様の“欠片”は、全て“我々”がこの身に宿していたはずだ!!

だというのに、何故・・・っ!!」

 

「抜け殻なんかじゃない」

 

 

男の言葉

一刀は、キッと表情を強張らせ言った

そして自身の胸に手を当て叫んだ

 

 

「俺は、“一人じゃなかった”

彼女は・・・ずっと俺のことを、待っていてくれた」

 

 

 

振り続ける雨も

目の前の脅威も

関係ない

彼は再び弓を構えると、声高々に言ったのだ

 

 

 

「そして、俺は“此処”にいる

空っぽなんかじゃない・・・俺は、確かに、此処にいるんだ

だからこそ・・・俺は、戦う」

 

 

 

 

 

 

≪皆を、大切な、家族を・・・全てを、守る為に!!≫

 

 

 

 

 

 

ふと聴こえたのは、“ヒュン”という風を切る音

同時に、男の腕に一本の矢が刺さる

 

 

「・・・なっ!?」

 

 

だがしかし、男がそのことに気づいたのは・・・刺さってから、数秒後のこと

そうして慌てて男が視線を向けた先、彼は既に男に向い“駆けだしていたのだ”

 

 

「っ!!?」

 

 

“速い”

そう思い、一瞬焦るものの・・・男も、歴戦の武人

すぐに冷静になり、握りしめた槍に再び“渦”を纏わせる

 

 

「喰らうがいいっ!!」

 

 

そして、放たれた渦

渦は凄まじい速度で一刀へと襲い掛かり・・・

 

 

 

「ふっ・・・!」

 

 

 

そして・・・“消えた”

 

 

 

「なっ・・・!!?」

 

 

代わりに飛んできたのは、一本の矢だった

その矢は、男の肩に刺さり・・・微かに、血を滲ませる

 

 

「馬鹿な・・・こんな、馬鹿な話があるか!!?」

 

 

矢を引き抜き、男は叫んだ

その表情からは、先ほどまでの冷静さは微塵も見えない

“驚愕”

そして・・・“焦り”

 

 

「何故だ!!?

何故、儂の“闇”が消されるのだ!!?

何故、貴様には届かないのだ!!?」

 

 

叫びながら、放った渦も

纏っていたはずの“闇”も

全て、掻き消されていく

 

“おかしい”

 

一刀が持っているのは、何の変哲もない・・・落ちていた“普通の弓”

それを使い放つのは、“落ちていた矢”だ

にもかかわらず、その矢は“男の放つ渦を掻き消し”

尚且つ、男の纏っていた闇をも掻き消すのだ

 

 

 

「いったい、何故・・・!!」

 

「これが、“俺”だからだ」

 

「っ!!?」

 

 

不意に、聞えた声

自身の懐辺りから聞こえた声

慌ててみた先、自身の胸元に向け弓を構える一刀の姿に・・・男は急ぎ、距離をとった

・・・瞬間、放たれる矢

それを、間一髪で躱し・・・男は、さらに表情を歪ませる

 

 

「そうか・・・そうだったな!

貴様は“天の御遣い”・・・何があっても、不思議ではないということか!!!?」

 

 

言って、男は再び渦を纏わせた

だがしかし・・・その渦の大きさは、今までとは違う

その禍々しい渦から発せられる風は、辺りに倒れている五胡の兵を吹き飛ばすほどだった

 

 

 

 

「ならば・・・儂は、その光りが勝てぬほどの闇を生み出そう!!!

全てを消し去る、深い闇をっ!!!!」

 

 

 

 

辺りを、男が生み出した闇が覆っていく

だがしかし、彼は表情を崩さない

その瞳に、“迷い”など一切見えない

 

あるのは・・・“強い決意”

 

 

 

「“アレ”は・・・」

 

『“闇”が深いな

流石に今の“光”では、あれは消せないぞ』

 

「でも・・・“関係ない”」

 

『はは、そうだな

そのようなこと、関係ないな』

 

 

“関係ない”

目の前の障害が、どれだけ大きくとも

どれだけ、恐ろしかったとしても

関係ない

 

 

「俺は、負けない・・・負けられない」

 

『負けるはずがない、だろ?』

 

「ん・・・そうとも、言う」

 

『だったら、頑張らないとな』

 

 

聴こえた秋蘭の声

彼はほんの僅かだが笑みを浮かべたまま・・・一気に駆け出した

 

 

 

「行く、ぞ・・・秋蘭」

 

『ああ・・・北郷』

 

 

その背に、その胸に

大切な想いをのせたまま・・・

 

 

 

 

 

「すごい・・・」

 

 

ポツリと、七乃はそう零していた

その隣、姜維と夕も驚愕に表情を染めている

 

 

「“アレ”が、一刀さん・・・?」

 

「そんな、馬鹿な・・・」

 

 

言葉が、上手く出てこない

それほどまでの衝撃

だが、そんな中・・・

 

 

 

「儂は・・・“知っている”」

 

 

祭は、三人とはまた別の意味で・・・その表情を歪めていた

 

 

「あの“姿”を、あの“技”を

儂は、知っている」

 

「祭・・・?」

 

 

祭の言葉

夕は、微かに首を傾げていた

そのような様子に気づくことなく、彼女はフッと微笑を浮かべたのだ

 

 

 

「“夏侯淵”・・・“妙才”、か」

 

「は?

祭、お前今なんて言ったんだ?」

 

「ふっ・・・何でもない」

 

 

言って、彼女は笑った

そんな二人の会話に、一人の少女の声が割って入った

 

 

 

「一刀ーーーーーーー!!!!」

 

 

 

美羽である

彼女はフラフラになりながらも、立ち上がり声をあげていたのだ

自分たちの為に戦う、一人の青年に向って

 

 

「ホレ、皆も応援するのじゃっ!!

一刀が、妾たちの為に頑張っておるのじゃぞ!?

寝ておる場合ではないのじゃ!!」

 

「美羽・・・くく、そうだな

ああ、寝てる場合じゃないよな」

 

「そうじゃな・・・その通りじゃ」

 

「そうですね、と・・・一刀さーーーん!!

頑張ってください!!」

 

「一刀っ!!

負けるなぁぁああ!!!」

 

「ブチかませ、一刀っ!!!!」

 

 

立ち上がり、ふらつきながら

それでも、精一杯に声をあげ

彼女達は、応援する

 

“黒き光”

それに抗う・・・“白き光”を

 

 

「いけ、一刀ーーーーーーー!!!!」

 

 

彼女達は、応援し続けたのだ

 

 

 

 

 

『ふふ・・・賑やかな者達だな』

 

「ん・・・でも、“温かい”」

 

『ああ、そうだな』

 

 

駆けながら、構えた弓

その手が、温かい

 

心の奥、響いていくのだ

彼女達の声が

その、想いが

深く・・・広がっていくのだ

 

 

「わかるよ

繋がっていく・・・“想い”が、“心”が

全部、繋がっていく」

 

『ああ・・・これが、“お前の持つ力”だ』

 

「ん・・・今なら、わかる

俺は、“知っていた”

この、温かい想いを・・・白き光を」

 

 

 

向かってくる、巨大な黒き渦

それすらも、もう怖くはない

 

 

 

「消せなくても、“届かせる”ことなら・・・できる

そう、だよね?」

 

『当たり前だ

お前の力を・・・この“私”の力を、見せつけてやれ』

 

「ん・・・」

 

 

迫りくる渦を避けようともせず

彼は、その渦を見つめたまま・・・フッと微笑む

その微笑みに、被るのは一人の“武人”の姿

 

 

『恐れるな・・・信じるんだ

お前が愛した、この“私”を

私が愛した、“お前自身”を』

 

「ん・・・」

 

 

見つめた先

渦は、もう目前まで迫っていた

それでも、彼は動かない

弓を構えたまま、じっと前を見据えている

 

 

『まだだ・・・!』

 

「ん・・・!」

 

 

風圧で、体が飛びそうになる

それでも、彼は弓を構え続ける

 

やがて渦は、彼の目と鼻の先にまで迫った・・・

 

 

 

 

「『今だっ!!!!』」

 

 

 

 

響いた、声

重なった、二人の声

その声が辺りに響くのと同時に・・・彼の体を、黒き渦が突き抜けていった

 

 

 

 

 

 

「くっ!!?」

 

 

その一撃は、凄まじかった

正面から受けた一刀は、その身に幾つもの傷をつくっていく

それでも、彼はその場に踏みとどまった

 

 

「おお、見事だ!!

流石は天の御遣いといったところか!!」

 

 

その姿に、男は嬉しそうに表情を歪めていた

構えていた槍もそのままに、唯々楽しそうに笑っていたのだ

 

 

「しかし、残念だったな!!

“この程度”の攻撃では、儂の纏う闇を消すので精一杯だったか!!?」

 

 

そう言って笑う男

彼の言うとおり、彼が纏っていたはずの“闇”は消えていた

その代わり、彼の腹部には一本の矢が刺さっている

男はその矢を見つめ、大声で嗤っていたのだ

 

 

「貴様の力は、確かに素晴らしい!!

だがしかし、やはり儂の闇には敵わんかったようだ!!!」

 

 

先ほどまでの焦りはない

それはまさに、“勝利を確信した顔”

自身の勝利が、揺るがぬと信じた者の顔

 

だがしかし・・・

 

 

 

「・・・じゃ、ない」

 

「む・・・?」

 

 

だからこそ、男には“見えたのだ”

傷だらけの青年

その顔に浮かんだ“笑み”が

 

そして・・・

 

 

 

 

 

「お前を、倒すのは・・・“俺じゃない”」

 

 

 

 

 

 

その、意味深な言葉が・・・

 

 

 

 

 

 

 

「ぁ・・・」

 

 

見えたのは・・・“白”

美しい、“白い肌”

それが一人の少女の姿だと気付いたのは、すでに彼女が自身の懐深くにまで迫った時だった

 

 

 

「馬遵っ!!!!!」

 

 

 

次いで、聴こえた・・・稟とした声

そして見えた・・・零れ落ちる涙

その涙が、どこか幻想的に見える

 

 

 

「あぁ、そうか・・・そうだったのだな」

 

 

 

そして、男は気づいたのだ

胸の奥深く

染まっていたはずの、真っ黒な心の中

“残っていた光”

 

“ああ、そうだ”

 

心の中、呟き・・・男は微笑んでいた

狂気など、背負っていた闇など

そのようなものを感じさせない

“優しげな笑顔”を

 

その笑顔に、のせた想い

気付いた・・・本当の想い

 

 

「そうだった、儂は・・・儂の、望みは・・・・・・」

 

 

迫りくる少女を、その一撃を

男は避けられない

 

“避けなくていい”

 

見つめる瞳に、もう“迷い”はない

 

何故なら、これが“彼の望みだったのだから”

だから、避ける必要なんてないのだ

 

受け止めればいい

正面から・・・この一撃を

 

そうだ

これが・・・

 

 

 

 

「あぁ・・・美しくなったな、“白蘭”」

 

 

 

 

 

これが・・・自分の“望んでいた結末”だったのだから

 

 

 

★あとがき★

 

二十話、更新ですw

 

長かった一章も、ようやく終わりが見えてきました

いや、ホント長かったですねww

 

 

目覚めた一刀

解き放たれた白き光りはやがて、黒き光りを融かしていく

そして戦いは、ついに決着へと・・・

 

 

『聞かせてくれ、白蘭・・・お前ならこの“虹”に、何を願う?』

 

 

~次回

≪遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-≫

第一章 二十一話【真夜中の虹】~

 

 

 

『私は・・・私の、願いは・・・・・・』

 

 

 

~そして・・・真夜中の虹に、少女は謳う~

 

 

 

 

 

 

 

それでは、またお会いしましょう♪


 
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