No.209042

『舞い踊る季節の中で』 第112話

うたまるさん

『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

 睨み合う将兵達がいるのは当然のごとく戦場。
 其処は一体何処なのか?
 益州なのか……それとも…。

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2011-03-31 06:01:34 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:14441   閲覧ユーザー数:9602

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -群雄割拠編-

   第百十二話 ~ 華麗に舞う踊り手は、何を想い何を願う ~

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋(ただし曹魏との防衛戦で予備の糸を僅かに残して破損)

   習得技術:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)、食医、太鼓、

        神の手のマッサージ(若い女性は危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術、

        

  (今後順次公開)

 

 

 

華琳視点:

 

 

 強風とまでは言わないまでも強い風が私の頬を打ち、髪を後ろへと靡かせる。

 向かい風とはついていないわねと思いつつも、条件が不利なのは今に始まった事ではない。

 私の眼前を、見渡す限りの大地に金色の鎧が地を埋め尽くさんばかりに広がっている。

 人の息遣い。鎧や武器がかすかに打ち合う音。そして地を踏む足音も、それだけの大勢と言うのも馬鹿らしいぐらいの数の人間が出す音となれば、たとえ誰一人声を出していなくとも騒音と言えるかもしれない。

 もっとも…。

 

「ほ~~っほっほっほっほっ」

 

 この頭の芯にまで響くような高笑いの前には、静かな湖面の細波と言えるかもしれないわね。

 まったく、これだけの大勢の人間が居るのに隅々まで響き渡るだなんて、いったいどういう高笑いなのよ。

 と悪態を思い浮かべつつも、総大将が兵達に自身気に振る舞って見せれるのは、決して悪い事ではないわ。

 それどころか人間の集団の心理操作としては正当な手段と言える。

 たとえそれが馬鹿馬鹿しい程の過剰な演だとしてもね。

 なにせ総大将たる者が余裕である内は大丈夫。と言う単純にして聡明な心理を兵士達に刷り込めるもの。

 そして麗羽は例え自軍が不利であろうとも、最後までそれを貫き通せるだけの図太さがあるわ。

 

「何とかと煙は高い所が好きと言うけど、貴女もその口のようね」

「そうですわね。 人々の上に立つ者である以上。人々を見渡せる場所に居るのは当然と言えますわ」

 

 文字通り高い位置から見下ろしながら言ってくる麗羽に、皮肉を言うだけ無駄ね。

 我ながら麗羽相手にバカな事を言ったものと反省しつつも、異様に高いやぐらの上に立つ麗羽を見上げ…。

 

「待つのは性に合わないから、河北を貰い受けに来たわ」

「人の準備が揃う前に戦を嗾けようなんて浅ましい考え、育ちが出でいますわね。

 そう言う所が所詮は宦官の孫と言われる所以ですわよ」

「公孫賛や劉備を不意打ちで倒した貴女にだけは言われたくない台詞ね」

「あら、私は手間を省いただけの事ですわ。

 無益な血を流さずに済んだ、私の高尚な考えが分からないなんて、華琳さんもまだまだですわね」

「………」

 

 よくも、そんな事を自信満々に言える。開いた口が塞がらないと言うのはこういう事を言うのよ。

 ……でも、麗羽ならそれも在りでしょうね。そのためのに馬鹿と捉えられない言動を絶えずしているのですもの。

 

「まったく、貴女の我儘で身勝手な行動に付き合わされる将兵や民が可哀相ね。

 でも安心しなさい。私が責任もって面倒を見てあげるわ」

「相変わらず華琳さんは小生意気で、高慢ちきで壮大な勘違いをしているんですわね。

 でも、此処から聞いていると所詮は負け犬の遠吠えにしか聞こえませんわ。 せいぜい張るほどもないまっ平らな胸を………。って待ちなさい! いつの間にそんなに成長したんですのっ!」

「あらっ、私は貴女みたいな年増と違ってまだ成長期なのよ。成長して当然でしょ」

「なっ!」

 

 私の胸に驚く麗羽に、今までのお返しとばかりに、彼女には遥かに遠いでしょうけど、それなりにあるように見える胸を張って見せてやる。

 

「だ、誰が年増ですかっ! 私はまだ○○ですわっ!」

 

 そんな事は同じ私塾に通っていたんだから知っているわよ。

 でも貴女が私より年上なのは嘘偽りのない事実でしょ。

 ただ、其処にほんの少しの誇張と演出を含めてやれば……。

 

「でも、もう○○でしょ。 後は年を経て垂れるばかりじゃないの。 兵達もおばさんより、年若く聡明な王に仕えたいと思っているんじゃないの」

「私は十分に若いですから、そんな事は永遠にありませんわっ。

 だいたいまっ平から小さな丘になったくらいで、良い気にならないでほしいものですわ。

 斗詩さん。この若いだけしか取り柄が無い可哀相な小娘に痛い目を見せてあげなさい」

 

 私の言葉に一瞬袁紹の兵が騒ぎ出したのを、麗羽の甲高い声が黙らせながら何やら合図を送ると。幾つもある櫓が一斉に近づいてくる。

 

「あ、あれ動くの!?」

 

 櫓が動くと言う、見た事も聞いた事もない事態に私は驚きながらも、此方も腕を上げて指示を送ると。

 

「ウチの発明品の出番や。いっくでーっ」

 

 真桜の合図とともに、後ろから大きな岩が風に唸り声をあげさせながら、敵陣に立つ移動式の櫓に狙い違わずに命中し。櫓を破壊しながら薙ぎ倒してゆく。

 破片を撒き散らしながら倒れ行く櫓は、高台に居た兵を地面に叩き落し、更に地面に居る兵士を巻き込んで地面で四散する麗羽御自慢の新兵器の姿に、隣の櫓に居た麗羽は一瞬だけ仮面を外して此方を睨みつけ。

 

「何ですか今のはっ! そんなものを神聖な戦場に持ち込むなど、卑怯ですわよっ」

「あら、うちの子が貴女の所の子より優秀だってだけよ。 妙な言いがかりは止めてもらいたいわ」

 

 麗羽の罵声を余裕で払いながら私は自陣へと後退し、真桜に櫓を一つでも多く倒すよう指示を出すように命令する。

 真桜の発明があったから不意をつけて助かったけど、アレは厄介だわ。

 あんな櫓で近寄られながら高い所から矢を射かけられたら、被害甚大になる事は避けられなかった。

 しかも御丁寧に木の表面に泥や濡れた蓆を掛けてあるから、火矢も効きにくいでしょうね。

 

「秋蘭。春蘭の舵取りは任せたわ。 喰い散らかすだけ喰い散らしたら、敵に気が付かれないように後退しなさい。 稟の合図と共が在ったら白馬城まで下がるわよ。 こんな所で力を使い果たす訳にはいかないって事くれぐれも忘れないようにね」

「はっ」

 

 秋蘭が私の下から離れると同時に、真桜の作った投石機が第二射をし、敵の櫓をまた一つ破壊するのが目に映るけど、まだ十の櫓が目に映っている。 ………良い所あと八つと言った所ね。

 

「稟。貴女が呉から持ち帰ったお土産が、こんな所で役に立つとは思わなかったわ」

 

 私の言葉に苦笑を浮かべながらも、それでも役に立てた事にその瞳に喜びの色を僅かに浮かべる稟をよそ眼に。駆けつけてきた何人かの女性兵士の手に持つ布に囲まれながら、私は素早く服の下から『羽都兎』とそれに合わせた胸当てを取り出し。本来の寸法の下着を取り付ける。

 こう言う自分を誤魔化すようなものはあまり好きではないけど、別にそれそのものを否定する気はない。

 実際、稟の言うとおり装飾品の一つと考えれば、十分にその役を果たしているし、それで可愛い娘達が少しでも自信を持つのならば、それで構わないと思うもの。 私としては『羽都兎』より『寄上胸当』の方が、素の自分を美しく見せると言う意味では一番理想的な下着と思っているけど。 その辺りは個人の嗜好の問題でしかないわ。

 とりあえず麗羽の虚を突けただけではなく、長年事あるごとに麗羽に背と胸の事でからかわれてきた鬱憤を少しだけ晴らせた事に満足しながら、意識の全てを戦へと完全に切り替える。

 

 予想通り麗羽達の後先考えない徴兵のおかげで、彼我戦力は八倍から十倍と開いてしまったようね。

 幸い孫呉の時の反省を含めて、より高い調練を布いたおかげで、新兵達が兵数差に腰引くような事態にはならなかったけど、それに甘んじていられない事態なのも確か。

 だけど、苦しい戦になるのは将兵も最初から分かっていた事。 ……戦が長引く事もね。

 いいえ、長引かせる事が出来なければ、此方に勝ち目はないと言った方が正しい。

 時間と将兵の士気がこの戦の鍵を握る。そう自分にもう一度言い聞かせながら、此処の戦ではなく全体の戦の展開を見直す。

 

「私は夏侯淵隊の動きを助けながら、動き出した敵右翼に横撃を掛ける。

 稟。本陣の運営と撤退する時期は貴女に任せる。この局面で袁紹軍に最大の効果を上げつつも、此方の被害が最少で抑えれる時期を見極めれる事を私に見せてみなさい」

「御意っ」

 

 

 

斗詩視点:

 

 

 櫓から降りられた麗羽様の後ろについて、無事に本陣まで下がると安堵の息を吐き出してしまう。

 劉備を追いかけて孫呉と一戦交えた時の反省を行かして、移動式の櫓を作らせたのは良いけど、あんな巨大な岩を飛ばしてくるなんてとんでもない兵器が出てきた以上、櫓は格好の的以外の何物でもない。

 だからとい言って、そこで総大将である麗羽様が慌てふためけば、兵士達に動揺が走り不安が伝播してしまう。 そうなれば、ろくに調練もしていないばかりか、大多数と言う事と生活のために兵になった兵達など、恐怖に駆られ逃げ出す者が出てきます。

 そのため何でもないかのように振る舞いながら櫓からゆったりと降りてくる麗羽様を、何時岩が飛んで来て麗羽様を櫓ごと押し潰しやしないかと、冷や冷やしながら見守っていたけど。此処まで来たら一安心です。

 

「文醜さん。あの小生意気な小娘の先兵を打ち崩してあげなさい」

「うっしゃー。全力で暴れまわれるってものだぜ。 斗詩~、あたいの活躍見ててくれよ」

 

 麗羽様の言葉に、文ちゃんらしい威勢のいい声を上げながら、高覧ちゃんと張コウちゃんと一緒に幾つもの隊を引きつれて行く文ちゃんを、調子に乗りすぎなければと心配しながら見送りながら麗羽様に視線で確認する。

 文ちゃんが麗羽様の命令で無理やり巻き込むように引きつれた隊の大半は、古くから私達について来てくれている兵ではなく最古参の兵達。

 言わば、この戦に連れてきている兵士の中で本体とも言える人達で、調練を行っている数少ない部隊の人達です。

 無駄な出費を少しでも抑えるために、最低限の調練以外は行わない袁紹軍の中でも特殊と言える人達。

 その本質は袁家の老人達の私兵と言ってもいいでしょう。

 中原で勢力を伸ばしつつある曹操さんを脅威に思ったあの人達が、麗羽様に恩を売りつけて言う事を聞かせるために送り込んできた人達です。

 もっとも此処にいるのは、あの人達の息の掛かった兵の三分の二で、残りは北からの侵略に睨みを利かせる為と言う名目で、自分達の護衛につかせています。 本当に生き汚い上に、腹の立つほど用心深い人達です。

 

「きっと華琳さんの事ですから、力の無さを誤魔化すために派手に動くでしょうね」

「私もそう思います。 曹操さんの所の夏侯惇将軍相手だと、さすがに文ちゃんでもきついと思いますが、きっと巧くやってくれます」

 

 文ちゃん。負けない戦いはしない主義だもの。

 だからきっと、文ちゃん達は派手に負けない場所に突っ込んでゆくと思う。

 危ない所はあの人達に全部押し付けて。

 ……でも、その割には負ける博打には手を出す所あるから、文ちゃんが変な欲を出さない事を天の祈る。

 

 

「この戦が終わればいよいよですね」

「そうですわね。 その時はこの身に付いた埃りや垢を綺麗さっぱりと流させてもらいますわ」

 

 もうすぐです。

 麗羽様の言った埃りや垢とは袁家の老人達の事です。

 そのためには、一人でも多くのあの人達から力を奪わなければいけません。

 曹操さん。たしかに曹操さんは強くて頭も切れて誇り高いです。

 そして付き従う将兵も大陸屈指と言えるでしょう。

 曹操さんと私達は狼と羊と言い返れるくらいに、その強さの差ははっきりしています。

 ですから、どうぞ派手に喰いついてください。

 本当に餓えた狼のように、誇り高く猛々しくと。

 年老いた羊と病にかかった羊を喰らい付いている間に、私達は少しづつ貴女達を取り囲みます。

 

 

 柔らかな羊毛で、狼である貴女達を押し潰してあげます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

あとがき みたいなもの

 

 

 こんにちは、うたまるです。

 第百十二話 ~ 華麗に舞う踊り手は、何を想い何を願う ~ を此処にお送りしました。

 

 更新遅れまくってしまい申し訳ありません。

 色々と現在進行形でドタバタしているのもありますが、今年は花粉症が酷くて辛いです。

 薬で大分押さえているのですがやはり副作用なのか、頭がボ~~とするのと眠気が来るのでまいっています。 一応暇を見つけては書いていたのですが、いまいち書いたものが納得がいかず何度も書き直していたのですが。 とうとうプロットを飛ばして『官渡の戦い』に突入させる事を決意しました~。(二日前の出来事)

 原作とはだいぶ違うところが多々含まれることになりますが、その辺りは温かい目で見守ってもらえると嬉しいかなぁと思います。

 次回は一応この続きを書く予定です。

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。


 
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