No.207114

真・恋姫無双アナザーストーリー 蜀√ 桜咲く時季に 第02話

葉月さん

新章第二話になります。
今回は前半の山場になる『桃園の誓い』になります!
少しだけ一刀の強さを書いて見ました。
それでは、ご覧ください。

続きを表示

2011-03-19 23:56:26 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:14719   閲覧ユーザー数:10083

真・恋姫無双 ifストーリー

蜀√ 桜咲く時季に 第02話

 

 

 

 

【桃園の誓い】

 

「随分細いよね、ご主人様の武器って」

 

邑に向う道中、桃香は俺の腰に下げている二対の刀を珍しそうに眺めて云って来た。

 

「そのような細い物でお戦いになるのですか?」

 

「直ぐ折れちゃいそうなのだ」

 

「日本刀って言ってね。これは愛紗や鈴々の武器と違って叩き切る事はしないんだよ。この武器は斬るんだよ」

 

まあ、時代劇なんかだと刀同士で打ち合ったり突いたりしてるけど。実際、打ち合いなんかしたら刀は直ぐにボロボロになっちゃうんだよね。まああれは演出だから仕方が無いんだけどさ。

 

「?叩き切ると斬るってどう違うのご主人様?」

 

「そうだな……おっ!丁度いいところに岩があるな」

 

桃香にどう説明しようかと思案しているとタイミングよく少し大きめの岩が二つ目に入った。

 

「愛紗。悪いんだけどあの岩、二つに割って見せてくれるかな?」

 

「あの岩をですか?構いませんが、一体どうするのですか?」

 

「実際に見比べた方が早いと思ってね。それじゃお願いするよ」

 

「はっ。では、少しお下がりくださいご主人様。桃香さまも」

 

「愛紗ーっ!がんばるのだっ!」

 

「ふぅー……っ!はぁぁぁあああ、はぁっ!!」

 

一呼吸した後、愛紗は自分の武器である青龍堰月刀で岩を叩き切って見せてくれた。

 

凄いな。一体あの体の何処にこれだけの力があるんだ?

 

「愛紗ちゃん、すご~いっ!凄いよねご主人様っ!」

 

「鈴々もあれくらい出来るのだっ!」

 

「ああ、凄いな」

 

「これくらい出来て当然です」

 

いや、出来て当然でもないと思うぞ?普通の人間は背丈まである岩をしかも女の子が砕くなんてまず出来ないだろう。

 

「それでご主人様はその細い得物でどう割ると言うのですか?そんな代物では折れてしまうと思うのですが」

 

「まあ、見ててくれよ」

 

愛紗は本当に斬れるのか?と、胡散臭げに見詰め、桃香と鈴々はどう斬るのかと興味津々に俺の事を見ていた。

 

「ふぅーー……」

 

これくらいなら、あれを使わなくても斬れるかな。爺ちゃんなんかそこらの枝で岩を真っ二つにするくらいだったからな。

 

「~~っ!」

 

「ご主人様、どうしたの?」

 

「い、いや。なんでもないよ」

 

ああ、あの修行と言う名のマンハントを思い出して思わず身震いしちゃったよ。爺ちゃん笑いながら斬りかかってくるんだもんな。あれは怖いってもんじゃ済まされないよ。

 

とにかく、もう一度集中だ。

 

俺は精神統一する為に目を瞑り、岩の呼吸を探り始めた。

 

《愛紗視点》

 

「……」

 

「ど、どうしちゃったんだろうご主人様。全然動かないよ?」

 

「いいえ桃香さま。あれは、精神を集中させているのです。それにしてすごい集中力です」

 

ここまで人間は集中できるものなのだろうか?

 

私も鍛錬の前には己の心を静めるために精神統一などはするが、これはそれ以上だ。

 

それに……

 

「気のせいかな?お兄ちゃんの気配が薄くなってきてるみたいなのだ」

 

「いや鈴々。気のせいではないぞ。私もそう感じていたところだ」

 

「え?ご主人様なら目の前にいるよ?」

 

「桃香さまに判りやすく言うと息を潜めていると言えばお分かりになりますか?よく、私を背後から驚かせようと近づく感じです」

 

「なるほど~。でも愛紗ちゃんは直ぐに私が近づくのに気づくよ?」

 

「それは、気配を消しきれて居ないからです」

 

「む~。どうやれば消せるのかな」

 

「ある程度であれば鍛錬でそういった事は習得できますが、完全に気配を消すとなると生半可な鍛錬では習得できないでしょう。気配を完全に消せるような者は暗殺を生業としたものが殆どのはずです」

 

「そ、それじゃ、ご主人様って暗殺者なの?!」

 

「いえ。それは判りませんが、私から見れば少し腕の立つ男くらいにしか見えません」

 

そう。出会って直ぐにだがご主人様はある程度の武を持っていることは身のこなしでわかった。

 

だが、そこまで腕が立つか?っと言われれば私以上ではないといった所が正直なところだ。

 

しかし、この集中力を見ているとその考えも疑わしいものに見えてくる。

 

「そっか~。でも、ご主人様は悪い人には見えないからきっといい人だよ!」

 

「なんでそう思われるのですか?」

 

「だって。とっても笑顔が素敵なんだよ!そんな人が悪い人なわけがないよ!」

 

「は、はぁ」

 

桃香さまの返答に私は気の無い返事をしてしまった。

 

あの者は私の名乗っていない字を名乗ったのだ。そんな怪しい輩を主として慕う桃香さまに不安が募る。

 

まあ、桃香さまが真名を許し、主としてついていくというのなら私に拒否権はない。私は桃香様に着いて行くのみなのだから……

 

「あっ!ご主人様、柄に手をかけたよ!」

 

桃香さまの言葉にご主人様に目を向けると確かに得物の柄に手をかけていた。

 

「すぅ~~……はっ!」

 

――カチッ

 

「っ!」

 

な、何だ今の速さは!目で追えなかったぞ。いや、その前にあの鞘から出したのか?

 

――ズズズッゴロン

 

「凄い凄い!ご主人様凄いよ!」

 

「お兄ちゃん凄いのだ!」

 

「そ、そうかな?ちょっと手間取っちゃったけどね。それより見てご覧、桃香。何か違いが判るかい?」

 

笑顔で桃香さまに問いかけるご主人様は、ご自分がお斬りになった岩と私の叩き切った岩を交互に見た。

 

「うわ~っ!ご主人様が斬った方は切り口がつるつるだよ!」

 

「愛紗のはでこぼこしてるのだ」

 

確かに、私が叩き切った方は、力任せに振り下ろしたことにより切り口がボロボロになり割れた周りもひびが入っていた。しかし、ご主人様が割った方は切り口も綺麗でどこもひびなどは入っていなかった。

 

「これが叩き切ると斬るの違いさ。わかったか?」

 

「うん!でも、それ凄いね!斬ってるところ全然見えなかったよ!愛紗ちゃんは見えた?」

 

「い、いえ。私は腕が一瞬動いたかと思ったら既に鞘に収めているところでした。鈴々はどうだ?」

 

「ん~、なんだか一瞬だけ、キラッて見えたような気がしただけなのだ」

 

「そっか、鈴々は目がいいんだな」

 

「にゃはは、くすぐったいのだお兄ちゃん♪」

 

ご主人様に褒められ、頭を撫でてもっている鈴々は目を細めてくすぐったそうにしていた。

 

確かに鈴々の目は良い事は昔から知ってはいたが、あの剣速が一瞬でも見えていたことに正直驚いた。

 

「それに愛紗も凄いな。刀の抜くところが判るなんて。あれでも常人じゃ判らない程なのに。まあ、爺ちゃんから言わせたら『まだまだ』になるんだけどね」

 

「ま、まだ。早くなると言うのですか?!」

 

あれで、まだまだだと言うのか?!信じられん……

 

「ねえねえ、ご主人様。その刀身を見せて貰ってもいいかな?」

 

「鈴々もーっ!」

 

「私もよろしいでしょうか?」

 

正直なところあの巨大な岩を綺麗に斬った『かたな』と言うものに興味があった。

 

「ああ、いいよ。あ、でも刃に触ると危ないから気をつけてね」

 

ご主人様は鞘から『かたな』をお抜きになると同時に私は息を飲んだ。

 

「わー、綺麗……」

 

「ほわー、綺麗なのだ」

 

「なんと……」

 

こ、こんな綺麗なものがあの岩を斬ったと言うのか?信じられん。『かたな』には傷一つ無く、刃は青白く輝いていた。

 

一瞬、宝剣ではないのか?と、疑いたくなるほど綺麗なものだった。

 

「すごい、刀身が青いんですね」

 

「この刀の名前は青龍飛天、刀身が青く刃文が龍みたいに見えるからこの名がついているんだ」

 

「なるほど確かにそのように見えますね……ん?ご主人様、この窪みはなんですか?」

 

ふと刀身から柄に目を移すと何か窪み見ないなものがあったので聞いてみた。

 

「あ、これ?これは秘密だよ」

 

「え~、教えてよご主人様」

 

「そのうちね、まぁ、見ない方がきっといいと思うんだけどね」

 

ご主人様は苦笑いを浮かべて青龍飛天を鞘にお戻しになった。

 

「しかし、どうすればあのように綺麗に岩を割る事ができるのですか?」

 

「ん~。岩の呼吸を感じることが出来れば斬れる様になると思うよ」

 

「呼吸?ご主人様、岩は生きてないと思うのですが」

 

「えっとね。簡単に言えば岩に流れる氣を感じて、その氣に合わせて斬るって事なんだけど。どんなものにも氣は流れてるからね」

 

「それは私でも出来るようになるのでしょうか?」

 

「鈴々も割れるようになりたいのだ!」

 

「ん~。愛紗なら出来るようになると思うけど鈴々はちょっと無理かな?」

 

「なんで鈴々だと無理なのだ!」

 

鈴々は頬を膨らませて抗議していたが、ある程度私には理由がわかった。

 

「それじゃ、鈴々は最低でも1時間……えっと半刻?でいいのかな、それくらいじっとしてられる?」

 

「無理なのだっ!」

 

「偉そうに言うな鈴々。いつも言っているだろ、少しは内面の鍛錬もしろと」

 

「うにゃ~。鈴々、じっとしてるのは苦手なのだ。ばばばーーん!って動いていた方が楽しいのだ!」

 

まあ、その方が鈴々らしいのだが、これからの事を考えると少しはやってもらいたいのだがな。

 

「そんなことより。鈴々はお腹がすいたのだ。早く邑に戻るのだ!」

 

「そうだね。私もお腹空いちゃったよ」

 

「桃香さま……」

 

「うぅ~。そんな目で見ないでよ愛紗ちゃ~ん」

 

桃香さまを呆れながらジト目で見ると泣きつくようにすがり付いて来た。

 

「はぁ、わかりました。では、先を急ぎましょうご主人様。餓えた子供が二人もおりますので」

 

「鈴々は子供じゃないのだ!」

 

「私も子供扱いなの?!これでも愛紗ちゃんたちのお姉さんなのにぃ~」

 

「は、ははは。ほら、泣かないで桃香」

 

「うぅ~。ご主人様は優しいよ~~~!」

 

苦笑いを浮かべながらご主人様は桃香さまの頭を撫でて慰めておいでだが、あまり桃香さまを甘やかさないで欲しいのだが……

 

「ごほんっ!そこで桃香さまを慰めないでくださいご主人様。甘やかしは厳禁ですよ」

 

「まあまあ。いいじゃないか。それに俺も朝飯食べてなくてさ。お腹ペコペコなんだよね」

 

「まったく……では、先を急ぎましょう。餓えた子供三人が暴れないうちに」

 

「お、俺も子供扱いですか……」

 

「あははっ!ご主人様も子供だって♪」

 

「だから、鈴々は子供じゃないのだーーーーっ!!」

 

《一刀視点》

 

「しかし、あのように時間をかけていては実践には向きませんね」

 

「ん?なにが?」

 

邑へ向う道中。不意に愛紗は前を歩く桃香と鈴々に気づかれぬように話しかけてきた。

 

「あの剣技です。あれでは狙いの的です」

 

「ああ、確かにそうだね。元々は自分の技量を測るためのものであって実践向けじゃないんだよ」

 

「そうなのですか?」

 

「ああ。まあ、爺ちゃんはあんなに溜めなくても枝を振り回すみたいにボコボコ割ってたけどね」

 

ホント化け物だよなうちの爺ちゃんは、夏や冬の長期休みに入る度に鹿児島まで呼びつけて修行と言う名の地獄を見てきたからな。良く俺生きてたよな。自分で自分を褒めたいよ。

 

まあ、その修行のおかげで学園の不動先輩には勝てるようになったんだけどさ。でも、あれは邪道だよな。剣道と剣術は似てるようで全然違うからな……

 

「お爺様はお強かったのですか?」

 

「強いってもんじゃないよ。なんか若かった頃は『剣帝』って言われてるくらいだったらしいからね。負け知らずだったらしいよ」

 

「それほどとは……」

 

「うん。あ、でも、一人だけ負けたって言ってたな」

 

「一人だけ?誰だったのですか?」

 

「婆ちゃんだってさ。なんでも勝負する時に一目惚れしちゃって惚けてるうちに決められちゃったらしいよ」

 

その話を聞いた時。爺ちゃんは凄く恥ずかしそうにしてたな。

 

「では、ご主人様はそれなりの武をお持ちと言う事ですね」

 

「まあね。たぶん。さっきの三人組くらいなら余裕で倒せるよ」

 

「では、なぜ戦わなかったのですか。野放しにすれば奴等は他の民から略奪を繰り返すのですぞ」

 

目を細めその真意を探るような目で俺を睨みつけてきた。

 

「確かにそうかもしれないけど。別に俺は人を傷つけたくて覚えたわけじゃないし」

 

「それでも奴らを野放しにすればその分、いえ、それ以上の悲しみが増えるのですよ?それでもご主人様は」

 

「それでもだよ」

 

「っ!」

 

「それに愛紗は考えた事があるか?あの人たちにも家族や愛する人が居るかもしれないって」

 

「そ、それは……」

 

「愛紗の言う事も判るよ?そうしなければ守れない命もあるってこともね。それでも俺は無闇に人の命を奪いたくないんだ。憎しみからは何も生み出さないからね」

 

「ではご主人様は何の為に剣を振るっておいでなのですか?」

 

「俺は大切な人たちを守るために剣を振るいたいんだ」

 

「大切な人の為に振るう……」

 

「ああ。それが俺の剣技を覚えた理由さ」

 

「そうですか。理由は判りました」

 

愛紗の険しかった顔が穏やかになり微笑むようにして笑っていた。うん、やっぱり女の子は笑ってないとね。

 

「な、なんですかご主人様。ニヤニヤした顔をして」

 

「ん?なんでもないよ。ただ女の子は笑ってる方が可愛いなって思っただけさ」

 

「な、何を言うのですか。私は武人です、そのような言われは侮辱でしかありません!」

 

「わっ!ど、どうしたの愛紗ちゃん?急に大声出して」

 

前を歩いていた桃香と鈴々は愛紗の怒鳴り声に驚き振り向いてきた。

 

「なんでもありません。それとご主人様」

 

「え、なに?」

 

「いずれお手合わせをお願いします」

 

「えっと……」

 

「お願いします!」

 

「あ、ああ……」

 

愛紗の整った顔が俺の目の前に来て恥ずかしさから思わず承諾してしまった。

 

「あ、ずっこいのだ!鈴々もお兄ちゃんと勝負したいのだ!」

 

「ずるいとは何だ!それにこれはご主人様の力を見るだけだ」

 

「まあまあ……あ!邑が見えてきたよ!ご主人様、早く行こう!」

 

「と、桃香?!」

 

桃香は俺の腕を取り走り出した。

 

「あ!桃香さまっ!お待ちください!」

 

二人を追いかけるように愛紗と鈴々も走っていった。

 

「ふぅご馳走様でした」

 

俺はお腹を擦り食後のお茶を一口飲む。やっとお腹も落ち着いた。

 

「もうお腹いっぱいなのだ」

 

「ところでさ桃香」

 

「はい?」

 

「なんで俺が天の御遣いなのかな?その理由を教えてくれないか?」

 

出会った時に云われた『天の御遣い』という言葉が気になったので聞いてみた。

 

「では、私から話ましょう。あれは私達が三人で旅をしている時にある街で管輅と言う占い師に出合った事が始まりです」

 

「私は興味が無かったのですが、桃香さまはその占い師に興味を持ち話しかけたのです」

 

「すると管輅は桃香さまにこう伝えたのです」

 

『蒼天を切り裂く白き流星と共に現るは天の御遣いなり。 かの者、乱れし世を照らす一筋の光となるだろう。』

 

「そして、た「そ、それで旅をしていたら本当に昼間に流星が流れたんだよ!」と、桃香さま?」

 

桃香は行き成り愛紗の言葉を遮り身を乗り出してきた。

 

「そ、そっか。でも、なんだか信じられない話だよな」

 

「でも事実。そこにご主人様が居たんだから管輅さんの言った事は本当だったってことだよ!」

 

「た、確かにそうだな」

 

「うんうん!」

 

どもりながら同意する俺に、桃香は嬉しそうに頷いていた。

 

「さて、これからどうしよっか」

 

俺は次に何をするのかを訊ねると愛紗は息巻くように話し出した。

 

「勿論!賊を退治に行くに決まっているではありませんか!」

 

「そうだよね、困っている人たちを助けてあげなくっちゃね!」

 

「……」

 

意気込む桃香を俺はただただ見つめていた。

 

「ん?ご主人様、私の顔に何かついてる?」

 

「いや、なんで桃香はこんなに人の為にがんばろうって思ってるのかなってさ」

 

「それはね。今この大陸は病んでるの。漢王朝は腐敗して守るはずの民からたくさんの税金を取って、好き勝手してるの。そのせいで盗賊も増えてみんな怯えて生活してる。そんな力無い人達を守りたいって思ったの」

 

桃香は自分の想いを俺に語ってくれた。

 

「そうか、えらいんだな桃香は」

 

「そ、そうかな?」

 

「ああ。でも、これだけは覚えおくんだよ」

 

「?」

 

「みんなが幸せになれるわけじゃないって事にね」

 

「そ、それってどういうことですか?」

 

「教えてもいいけど。これは自分で気づかなくちゃいけないことだ。それともどうしても教えて欲しいか?」

 

「……ううん。自分で考えて見ます。答えがわかったら聞いてくれますか?」

 

桃香は首を振り自分で考えてみると云ってくれた。教えてもらった答えより、自分で考えて出した答えのほうが本人は納得するものだ。なにより考えるその過程が大事なんだ。

 

「ああ、もちろんだよ」

 

俺は微笑み、そして頷いた。

 

「では、取り合えず、ここを出ましょう」

 

「そうだね!……」

 

「……」

 

「……」

 

愛紗の声でここを出る事になったんだけど、誰一人立たないのはどうしてだ?

 

「あ、あの桃香さま、お勘定は?」

 

「え?ご主人様が払ってくれるんじゃないの?」

 

「いや、俺この時代のお金なんてあるわけないよ」

 

「それって……」

 

鈴々以外の俺を含めた三人の顔が見る見るうちに青くなっていっく、さらに俺の背後から近づく気配も感じていた……

 

「おやおや、その志は大きいのは結構だけどせめてお金を持ってきてからにしてくれないとね」

 

このお店の女将さんが腕を組んそこに立っていた。

 

「あ、あははは……」

 

俺の乾いた笑い声に女将さんはニッコリと笑い。

 

「皿洗いと、薪割りどっちがいいかい?」

 

こうして俺達四人は、しばらくここで働く事になった。

 

 

「ふぅ、取り合え一段落着いたな」

 

「お疲れ様ですご主人様。すいません、このような事をしていただいて」

 

愛紗はすまなそうに頭を下げてきた。

 

「いいよいいよ気にしてないから」

 

「ですが……」

 

「ほらほら、折角綺麗な顔なんだからそんな顔してると勿体無いよ」

 

「何度も仰いますが私は武人です。そのような言葉は桃香さまに言ってください」

 

「そんな事ないって、愛紗も十分に可愛い女の子だよ」

 

「はぁ。こんな無骨者にそのお言葉は勿体無いです」

 

「無骨者だなんて思ってないって。あ」

 

「おやおや、お熱いねお二人さん、でも、そういう口説きは誰も見てないところでおやりな」

 

「お、女将さん!」

 

周りを見回すと女将さんやお客さんがやり場のない顔をしていた。

 

「む~!愛紗ちゃんずるい」

 

そんな中、桃香だけは頬を膨らませて抗議しいた。

 

「まったく。賑やかな子達だね。ほら、今日食べた分はもういいよ、これからは気をつけるんだよ」

 

「はい。本当にすいませんでした」

 

女将さんに謝る桃香に習い俺達も頭を下げて謝罪をした。

 

「よしとくれよ。そういうのは苦手なんだよ。そうそう、あんたら行く宛てが無いなら公孫賛様の所に行ったらどうだい?なんでも義勇兵を集めてるって話だよ」

 

「白蓮ちゃんが?」

 

「桃香知ってるのか?」

 

「うん、昔同じ私塾に通ってたお友達だよ」

 

「そっか、それじゃ行ってみようか。女将さんありがとう」

 

「頑張りなさいよ。あとこれは餞別だよ」

 

女将さんは瓶を一つ俺に渡しくれた。匂いを嗅いで見るとどうやらお酒みたいだ。

 

「え、でも貰っちゃっていいんですか?結構高いんじゃ」

 

「いいのよ、貴方達が頑張って平和にしてくれれば安いってもんさ」

 

「女将さん……ありがとうございます、ありがたく頂きます」

 

「ありがとうございます。女将さん」

 

「ありがとうございます。女将」

 

「ありがとうなのだ!」

 

俺達は女将さんにお礼を言って店を出て公孫賛さんの所へ向う事にした。

 

 

「うわー!綺麗だね」

 

「確かに、見事に咲き誇っていますね」

 

「こんなに咲いてるのを見たのは初めてだな」

 

「綺麗なのだ!」

 

別れ際に店の女将さんからこの場所を教えてもらった。公孫賛さんのところへ向う途中にあると言われた俺たちは訪れてみる事にした。

 

「そうだ!ご主人様!こんな素敵な場所があるんだからここで誓いをたてようよ!」

 

「誓い?」

 

「うん!私たちとご主人様との契りの誓い」

 

「ああ」

 

なるほど。これが有名な桃園の誓いか、こんな場所に俺も立ち会えるなんて思っても見なかったな。

 

「それじゃいくよ!『私達四人!』」

 

「『姓は違えども、姉妹の契りを結びしからは!』」

 

「『心を同じくして助け合い、みんなで力無き人々を救うのだ!』」

 

桃香、愛紗、鈴々と言葉を紡いでいく。その行為は周りの景色と相まってとても幻想的だった。

 

「『同年、同月、同日に生まれることを得ずとも!』」

 

「『願わくば同年、同月、同日に死せんことを!』」

 

言い終わると桃香たちは俺を見て頷いた。

 

「……乾杯!」

 

「「「乾杯!」」」

 

一気にお酒を飲み干すと喉がカーッと熱くなって来た。初めて飲んだけど、お酒ってこんなにきつい物なのか?

 

お正月で日本酒を少しだけ飲んだことはあるけど、こんなに強くなかったよな。

 

「ご主人様。これからよろしくお願いしますね!」

 

「我が矛。ご主人様と供に」

 

「よろしくなのだ!」

 

「ああ、これからよろしく頼むよみんな!」

 

そうだよな。今はどう帰るかなんて考えても仕方ないよな。それに、どう来たかも判らないんだから。

 

今は、桃香たちの力になれるように頑張ろう。成り行きで桃香たちの主になっちゃったけど、だからと言っていい加減な気持ちでなったわけじゃない。

 

力になりたいと思ったから……

 

「ご主人様。これからの事なんだけどね」

 

「ああ。公孫賛さんの所に行くんだよね?」

 

「はい。それで「愛紗!あそこから煙が出てるのだ!」え?」

 

桃香が説明している時だった。鈴々が大きな声を上げて桃香の声を遮った。

 

「なに!?あそこはっ!先ほどまで居た邑の辺りではないか!」

 

「ええ!?ど、どうしよう愛紗ちゃん!」

 

「桃香さま落ち着いてください!私と鈴々で先に行き様子を見てきます。ご主人様と桃香さまは後から来てください!」

 

「うん、わかったよ、気をつけてね愛紗ちゃん、鈴々ちゃん!」

 

「鈴々は強いから大丈夫なのだ!」

 

「はい。ご安心ください」

 

「俺達も直ぐに向う!頼んだぞ!」

 

「御意っ!」

 

「なのだっ!」

 

愛紗と鈴々は邑の方へと走っていった。

 

「早いなあの二人、もう見えなくなったよ、桃香それじゃ俺らも急ごう」

 

「う、うん……え?」

 

俺は、一人暗い顔をして見詰めている桃香を励ますように頭を優しく撫でてあげた。

 

「大丈夫だよ、愛紗も鈴々も邑の人たちもね」

 

「うん、そうだよね……えへへ」

 

「ん?どうした?」

 

「ご主人様に頭撫でられるとなんだか安心するの」

 

「そうか?」

 

「うん。もう平気だよ」

 

「よし。それじゃ急いで愛紗たちに追いつこう」

 

「そうだね」

 

俺と桃香は愛紗たちに追いつくために走り出した。

 

《To be continued...》

葉月「第二話如何だったでしょうか!」

 

愛紗「やはり桃園の誓いは外せんな」

 

葉月「ですよね。前半の山場ですからね。それにここだけは言葉を弄ることは出来ませんでした。だって、名言でしょ!」

 

愛紗「ところで、私はまだデレないのか?」

 

葉月「デレません」

 

愛紗「なぜだ!」

 

葉月「まだやっと不信感が取れたところです。ちなみに好感度を十段階であらわすと桃香は『3』で愛紗はやっと『0』です。鈴々はどちらかと言うと兄弟感覚で『10』ですかね」

 

愛紗「ぐぬぬっ!」

 

葉月「だってゲームでも3・4話くらいにならないとデレないじゃないですか」

 

愛紗「そこはお主の力でどうとでもあるだろ!」

 

葉月「まあ、どうせ次回は私の苦手な戦闘シーンを書くので愛紗がデレるのはもう少し先ですね」

 

愛紗「くっ!それでは致し方ないな……所で、拠点はあるのか?」

 

葉月「一応有りますよ。もう数話先かもですが書きます。とりあえず最初は、桃香・愛紗・鈴々の三人を書こうと思います。ってこれだけしか居ないんですけどね」

 

愛紗「ふむ。増えてきたらどうするのだ?」

 

葉月「増えてきたら投票形式にしようと思います。その時は後書きでご連絡します。とりあえず上位4人の拠点を書くので一人一キャラクターですかね。」

 

愛紗「複数投票した者はどうするのだ?ほかにも同順位などは」

 

葉月「複数投票は今のところ無効票ですね。選挙でも指定が無い限り無効票ですから。同順位の場合は……頑張って書きます」

 

愛紗「そうか。がんばるのだぞ」

 

葉月「あ、ちなみに総合拠点掲載率が多いキャラクターは最終回で何かいいことがあるかも?です」

 

愛紗「それは、まるちえんでぃんぐ?というやつか?」

 

葉月「其処は秘密です。まあ、後半の登場キャラほど不利になってきますのでそこは調整しますけどね」

 

愛紗「確かにそうだな。最初から登場している私の方が有利ではあるな」

 

葉月「あれ?もしかして、もう総合拠点率一位狙ってるんですか?」

 

愛紗「なっ!ち、違うぞ!断じて違う!私は例えをだな!って何を笑っているのだ葉月!」

 

葉月「いいえ。そんなに顔を赤くして否定しなくてもいいのになと思って」

 

愛紗「~~~~っ!し、死ね~~~~~っ!!!」

 

葉月「のわっ!行き成り振り回さないでくださいよ。図星だからって」

 

愛紗「う、煩い煩い煩~~~いっ!お、お前はどうしてこう私を落としいれるのだ!」

 

葉月「自分ではまってるだけじゃないですか。ほらほら、そんな事より終わりますよ」

 

愛紗「くっ!後で覚えていろよ葉月っ!」

 

葉月「もう忘れました♪さて、では皆さん。次回のお話は煙が立っている邑に戻った愛紗たちのお話になります。お楽しみを!」

 

愛紗「お、おのれ葉月め……ごほんっ!次回は私が華麗に活躍する事だろう是非見てくれると嬉しい!」

 

葉月「あ、ちなみに次回のお相手は桃香さんです。では~~」

 

愛紗「なっ?!わ、私とお前との後書きではなかったのか!?待て、葉月っ!」


 
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