No.204524

一刀の記憶喪失物語~袁家√PART23~

戯言使いさん

かなりお久しぶりです!!お待たせしました!!

大学のレポートに追われ、バイトも忙しく、そしてネタもなく・・・・ですが、ようやく完成しました。待ってくださった方々、ごめんなさいでした(´Д⊂グスン

さて、物語はクライマックス!もうしばらく、戯言使いの戯話にお付き合いください

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2011-03-02 15:46:37 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:4511   閲覧ユーザー数:3842

 

 

 

 

一刀の演説のお陰で、敗兵村の兵士たちは一刀に従うことを決意した。

 

元兵士と言うことで、訓練済みの即戦力。しかも、それなりに戦場を駆け抜けてきた兵だ。何か不足があるとすれば、それは武器と資金。

 

 

一刀は武将格の人物を集めて、砦の本殿でさっそく会議を開くことにした。

メンツは一刀、斗詩、猪々子、七乃、華雄の五人だ。華陀は前の戦で傷ついた人を治療しに行くと言って、出て行った。

 

 

「とりあえず、これからの行動についてだけど・・・・・七乃。お前、何かあるか?」

 

 

「はい。最初に間諜を三国に出します。と言っても、別に何かを盗み聞けと言うことではなく、いつ頃に戦が始まるかと言うことを知るためです。始まる時期と、軍の規模を見れば、どれぐらいの長さの戦になるかを知ることが出来ますからねー」

 

「なるほどな。次は?」

 

 

「次はこの周辺と五瑚との国境に斥候を放ちますー。それで、些細な情報でも見逃さないようにしましょう」

 

 

「??五瑚との国境は分かるが、どうしての周辺にまで斥候を放つんだ?」

 

 

「まず、いくら兵士が出来たからって、ここはただの街。兵糧とか、軍資金とか、そんなものありません。なので、しばらくは、近くの盗賊たちを退治、その備蓄米やお金を収拾し、また村に行って、有力者に助けを求めようと思います。また、村で義勇兵を募りましょうね。そうすれば、軍力も含め、戦に充分な蓄えが出来ると思いますよー」

 

 

「・・・・・凄いな、七乃は」

 

 

「ふーんだ。私は軍師ですよー。これくらい当然ですよー」

 

 

「やっぱり、七乃が居てくれて助かるよ」

 

 

にっこり、と微笑む一刀に、七乃は恥ずかしそうに、だが嬉しそうに頬を赤らめた。このままだと二人だけの世界になりそうなほどの良い雰囲気であったが、「ごほん!」と斗詩が大きく咳払いをしたため、それは霧散してしまった。

 

七乃は少しだけ恨めしそうに斗詩を見てから、話を続ける。

 

 

「では、仕事の割り振りをしたいと思いますよー。まず、華雄さん。華雄さんは街の兵士たちで、斥候や間諜の得意な人を何人か選出しておいてください。そしてその人たちが持ってきた情報を、私が集計して、そして重要な要件だけをこうして会議でみなさんに伝えることにします」

 

 

「ふむ。任された」

 

 

「次に斗詩ちゃんと猪々子ちゃんは、兵の鍛錬をお願いします。基礎は出来ていると思うので、それほど苦労ではないと思います。そしてお二人と華雄さんは、盗賊退治の時には頑張ってもらいますので、そのつもりでお願いしますねー」

 

 

「おう!」

 

 

「はい!」

 

 

「そして私は情報収集と軍資金、兵站の管理。あと、村々への義勇兵を募ったり、有力者にお願いしたりと、そちらの裏方の仕事をします。そして一刀さんは、私と一緒に行動しますよー。一刀さんは村々での呼びかけ、よろしくお願いしますね」

 

 

「分かった」

 

七乃の的確な指示のもと、これからの方針と役割が決まった。

その判断力の速さと行動力は、さすが軍師。

 

 

 

 

だが一刀にはまだ不安な個所が多々あった。それもそのはず。一刀はこっちの世界に来てから国に属したこともなく、国としての戦い方を知らなかったからだ。

 

 

「実際に五瑚と戦うことになったらよ、どうなるんだ?正直、五瑚の目的ってのを、はっきり知ってるわけじゃねーんだ。俺は」

 

 

「あ、そう言えばそうですね。 五瑚は以前、戦争が始まると同時に、それぞれの地方の村を襲って、国が動かなければならない状況を作り出しました。そして今回もおそらく同じだと思います」

 

 

「つまり、戦争が始まると同時に、五瑚が村を襲いだすってことか?」

 

 

「はい。ですが、前回のように大規模ではないと思います。前回は五瑚の兵力をほぼ壊滅においやりましたので、今回は少数精鋭で、村々を次々と襲うでしょう。だからこそ、私たちが立ち向かえるんです」

 

 

「なるほどな・・・俺たちは、そいつらを撃退すりゃあいいってことか」

 

うんうん、と頷く一刀。これで自分たちの最終的な役割も決まった。

 

七乃はそれを確認すると、今度は華雄に向き直った。

 

 

「華雄さん。ここの砦の見取り図と、周辺の村の場所を教えてもらえますか?私たち、ここら辺は始めてくる場所で、地理をあまり知らないんです」

 

 

「ふむ。それならば待っていろ。持ってくる」

と華雄は少し席を外し、部屋の棚を漁り始めた。

 

 

「おお。これだ」

華雄がそう言って、机の上に置いたのは二枚の地図だった。しかも、かなり詳細まで書かれている。

 

 

「元々、ここは国の官軍の砦だったからな。地図も詳しいのだ」

 

 

「へぇ・・・・ん?この砦、背中が絶壁になってんのか?」

 

 

「あ、そうですねー。攻めにくくて守りやすい。教科書のような砦ですね」

 

 

今一刀たちが居る砦、それは絶壁を背に半円状に造られていた。蛇足ではあるが、それはかつて黄巾党が根城にしたことのある砦であった。魏、呉、蜀、の三国はかつて見たことのある砦であるが、だが袁家の面々はその戦に参加しておらず、そのことは知らなかった。

 

 

「ふむ。だからこそ、五瑚の連中はここを攻めてくるのだ。ここを占領出来たら、ここを拠点に様々なことが出来るからな」

 

 

「そうだったんですか・・・・っと、七乃さん。こっちは周辺の地図ですよ」

 

 

斗詩がそう言って机の上に広げたのはここ一帯の地図だった。所々に点々とした形が書き込まれている。どうやら、それが村の位置らしい。

 

 

「へぇ・・・結構あるな」

 

 

「そうですねー、小さい村がいっぱいと、大きな村が少数・・・この辺は大陸の外れですから、主要な街はなさそうですね。資金の調達と義勇兵の募集は期待できそうですが、これは重労働になりそうですねー」

 

 

「まぁ、愚痴を言っててもしかたがねーだろ。やればいいんだろ」

 

 

一刀が大きく欠伸をしてそう言った。

 

そのマイペースな一刀の姿は、これからのことで不安を抱えていた斗詩たちにとっては頼もしく映った。再び戦争を促すと言う、あれほどのことを成し遂げてきた一刀だ。大抵の苦悩など物ともしない。

 

 

一刀は立ちあがると、椅子に座っている武将たちを眺めた。

 

 

「一応、けじめってことで言わせてくれ」

 

「??」

 

 

「俺は結果的に戦争を引き越してしまった。また戦乱の世にしちまった。・・・・多くの人が死ぬだろうな・・・・でもな、俺は今のような平和が怖いんだ。平和の中に地獄を抱え込んでいるような気がしてな。だからいっそうのこと、地獄に迷い込んでみよう。苦しみもがいて、そして地獄の末の平和ってやつを手に入れよう・・・・お前たち、最後に力を貸してくれ」

 

 

そう言って、一刀は頭を下げた。その姿は、先ほど兵士たちに見せたような神々しさは今はない。今いるのは、一人の無力な男だった。

 

だが、斗詩たちはそんなことは分かり切っていた。

斗詩たちにとっては、一刀とは天の使いでもなければ、武将のような強者でもない。

 

ただの、自分たちが好きになった男の子なのだ。それ以上でも、それ以下でもない。

 

 

「何を今更言っているんですかー?いちいち答えるのが面倒ですよー」

 

 

七乃は先ほどの一刀をマネをするように大きな欠伸をする。

一刀はそんな七乃に微笑みを返す。

 

 

「言ったろ。けじめだって」

 

 

「ふふ、なら私たちもけじめってことで言いますね」

 

 

斗詩は立ちあがって、

 

 

 

「一刀さん。貴方が行く道が私たちの進むべき道なんです。あなたはただ「ついてこい」って言うだけでいいんですよ」

 

 

にっこり、と微笑む斗詩に猪々子と七乃も同じように笑みを返す。

 

一刀はそんな3人を見て、ふぅとため息をつくと

 

 

 

 

「お前ら・・・・・黙ってついてこい」

 

 

と、一言だけ呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――それからの一刀たちの動きは素早かった。

 

七乃の指示のお陰か、特に問題もなく物事が進んでいた。斗詩や猪々子は元々七乃の手腕を知っていたので、逆に当然だとすら思っていたが、新参者である華雄やその他の兵士たちはただ舌を巻くばかり。それほどにも、七乃の知略は凄かった。

 

また、一刀の村での呼びかけも上手く事が進んでいた。

 

噂の天の使いとあって、村人たちの感心も強く、そして一刀の話術により村人たちの信頼を勝ち取ることにさほど時間はかからなかった。 

 

軍資金の調達、義勇兵の募集、その両方ともが上手くいっていた。

 

 

 

 

 

ただ一つ、不安があるとすれば、一刀に関して一つ、変な噂が流れていることだった。

 

 

 

 

 

 

 

―――そして、大陸の方でも動きが見えてきた。

 

それは、魏、呉、蜀の軍隊が動き出したと言う情報だ。規模を見るからに互いに全力であることが分かる。

 

 

 

 だが、この三国が動き始めたと言うことは、必然的にもう一つの勢力が動き出すことを意味している

 

 

 

 

 

 

 

 

某所 五瑚軍にて

 

 「将軍様。あの三国が動き始めたようです」

 

 「そうか・・・・ならば、私たちも動くとするか・・・・」

 

 「はっ!それで、是非お耳にして欲しい情報がございます」

 

 「何だ」

 

 「あの我々の軍が何度も攻めたあの敗兵村と呼ばれる砦ですが、そこに攻め入るのはどうでしょうか」

 

 「あそこか・・・・しかし、今は一刻を争う。あそこを落とすのには時間がかかる」

 

 「はい。ですが、面白い情報が手に入りまして・・・・その敗兵村周辺で、義勇兵の呼びかけをしている集団が居るのですが、どうやら、その人物は天の使いと呼ばれる男らしいのです」

 

 「ほぅ・・・しかし、その男が何の関係がある」

 

 「はっ!それが、村で一つのその男に関する噂を聞きまして・・・・どうやら、その男は、三国の王の夫候補であるだとか、とにかく三国共通の重要存在らしいのです。その男が居る敗兵村を襲えば、必然的に三国の注意をこちらに引き付けることが出来ますし、それにもしその男を捕えることが出来れば、交渉にも使えましょう。それに天の使いと言う肩書は、敵軍に対しても畏怖の念を与えることが出来るでしょう」

 

 「それは確かに・・・・しかし、あそこを落とせなければどうしようもないではないか」

 

 「それはご心配に及びません。先日、間諜があの砦の内部情報を手に入れてきました。こちらがあの砦の見取り図の写しと、そしてこちらはその周辺の地図です。さらに、こちらは現在の敗兵村の戦力、武将についてまとめたものです」

 

 「なんと・・・!そんな重要な情報をどうやって手に入れたのだ」

 

 「はぁ・・・・それがいとも簡単でして・・・・どうやら、その砦の軍師がとても馬鹿らしく、重要機密を何の警戒もなく机の上に放置しておりまして・・・罠かと思ったのですが、この情報の具体さから言って、本物かと」

 

 「ふむ・・・・・戦力は我々の五分の一か・・・・あの砦を落とすことも出来そうだな」

 

 「はい。更に、この周辺地図を見て分かるように、もし落とすのに時間が掛かれば、その周辺の村を襲えば、結果的に三国の注意をひきつけることが出来ますので、まさに一石二鳥。失敗する筈がありません」

 

 「そうだな・・・・よし!我々は敗兵村へと攻撃を仕掛ける!直ちに準備をしろ!」

  

 

 

 

 

 

次回に続く

 

 

 

 

 


 
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