No.196559

『舞い踊る季節の中で』 第106話

うたまるさん

『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

 鎮魂の儀で逝ってしまった魂を、傷付いた兵の心を鎮めた一刀を、彼女は癒やさんと一刀の天幕を訪れる。
 自分では翡翠のように一刀の苦しみを解放できないと分かっていても、一刀の力になりたいと思う心は止めれるはずもなく。 せめて一刀の歩む力になりたいと願う。
 ただ傍に居てくれるだけで。一刀にとっては掛け替えも無い力になっている事に気が付かず。

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2011-01-18 06:09:48 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:14499   閲覧ユーザー数:9954

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -群雄割拠編-

   第百〇六話 ~ 純粋なる命の明るさに包まれしは、闇に舞う一振りの刀 ~

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋(ただし曹魏との防衛戦で予備の糸を僅かに残して破損)

   習得技術:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)、食医、太鼓、

        神の手のマッサージ(若い女性は危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術、

        

  (今後順次公開)

 

 

【七乃の最近の悩み】(九十七話後日談)

 ……うぅぅぅっ、御主人様の鬼~…、人でなしの女っ誑し~…。

 美羽様を私が入れ知恵して誑かせたと思い込んでお説教をしようとしたから、 ちょ~と美羽様の舌の感触はどうでしたか~?とか。 翡翠さんを廊下で襲うなんて大胆ですねぇ~♪とか。 舌の音が響いてきましたよ。とか言って散々からかっただけだと言うのに、この仕打ちはあんまりです。

 ほんの少し、顔を真っ赤にして慌てる姿や、恥ずかしがる姿が可愛くて、気が付いたら四半刻程立っていただけじゃないですかぁ。

 うぅぅ……人にこんなに仕事と課題を押しつけて、此れでは美羽様を夜に、昼間の事でからかう気力がなくなってしまいます。 むろん何が在ってもからかいますが、全力でからかえなくなるのは悔しいです。

 

 もっとも、全部私達のための内容なので、文句など欠片もありませんが、愚痴の一つや二つ付きたくなると言うものです。

 それにしても、美羽様があんなに成長してくださっているとは嬉しい限りです♪

 あんなに夢中に無意識にご主人様を求めちゃって、その事に無自覚に恥ずかしがる美羽様は、もう手加減抜きで力いっぱい抱きしめたくなるほど可愛いかったです♪

 それに御主人様の心にも、少~しずつ入っていけているようですから、今は美羽様の行動には気を付けておかないといけませんね。 事を急いでは仕損じてしまいます。

 ゆっくりで良いんです。 警戒されないようにゆっくりと御主人様の心の中に入って行きましょう。

 

 さて、今度はどうやって、御主人様をからかいながら誘惑しましょうか。

        

明命(周泰)視点:

 

 月の光と星の輝きも、天井を覆う天幕が邪魔をし見る事は叶わない。

 僅かな光をと言うのも語弊があるほどの光が、僅かな隙間からもらすだけ……。

 でもそれは逆に、その下に居る私達を隠してくれると言う事。

 

「……眠れないの?」

 

 頭上から降り注ぐ愛しい人の優しい声を、私は小さく首を振ってそれを否定する。

 眠れない訳では無い。

 眠りたくないだけ。

 こうして、一緒に居たいだけ。

 今を、一刀さんを感じていたいだけ。

 その想いを伝えるように、私はより頭を一刀さんに押し付ける。

 繋いだ右手を確かめ直すように優しく握り直す。

 左手に掴んだ一刀さんの服の胸の部分を僅かに引き寄せる。

 そうして自然と僅かに横向きになる体を支えるように、左足を一刀さんに摺り寄せます。

 

 ……多分、今私は一刀さんを欲しています。

 それは一刀さんも同じだと思います。

 でも、それは出来ません。

 安全だとは言え今は行軍中。何が起きるか分かりません。

 むろん、その心配はない程、不眠番を立ててはいます。

 蓮華様と冥琳様が、必要以上に兵を警備に付かせた理由。その意味が分からない訳ではありません。

 分かるからこそ、私は一刀さんの天幕に来たのです。

 

 ……でも、一刀さんは理由を付けて拒みました。

 その代り一緒に居て欲しいと願いました。

 私の手を取り、抱きしめて来たのです。

 私の温もりを求めて、ただ抱きしめて来たのです。

 

 一刀さん……

 

 私は行軍中だと言うのに、全ての警戒を捨てて、一刀さんを優しく抱き返します。

 そっとお猫様を抱きしめるように優しく、そして私の温もりと少しでも届くように力強く。

 私の想いと勇気が少しでも一刀さんに分けれる様に。

 

 苦しいんですね。

 辛いんですね。

 悲しいんですね。

 罪の意識に潰されそうなんですね。

 でも立ち止まる事も、逃げ出したくないんですね。

 一刀さんが一刀さんであるために…。

 一刀さんが守りたいもののために…。

 背負ってしまった多くの想いのために…。

 

 いいですよ。

 幾らでも抱きしめてください。

 私に甘えてください。

 それで一刀さんの心が少しでも奮い立つのなら。

 私の勇気、一刀さんにあげます。

 

 

 

 

 そうして、ただ抱きしめるだけの時間。

 今は簡易の寝台に身体を横にして抱き合っているだけ。

 何もないけど、それでも確かに繋がりあっている私と一刀さんだけの時間。

 明日に備えて眠るまでの本当に僅かな時間。

 

 不思議です。

 一刀さんの辛さを受け止めるつもりでいたのに…。

 一刀さんを甘えさせるつもりでいたのに…。

 いつの間にか私が甘えています。

 鼻どころか、体中に染み込んで行くような一刀さんの匂い。 ちょっと汗臭いけど、逆にそれが私を安心させてくれる。

 触れ合う場所から聞こえる一刀さんの鼓動。 その音と共に、まるで子供に帰ったかのように、ますます一刀さんに甘えたくなっていってしまう。

 身体を伝わる一刀さんの温もりを、もっと感じたいと私の身体が求めてしまう。

 

 でも駄目です。

 今夜はそう言うのは無しと言われたんです。 だから我慢しなければいけません。

 勝手に高ぶって行く体の熱を吐き出すかのように、ゆっくりと深く息を吐きだし、それでも抜けきらない熱を誤魔化すかのように言葉を紡ぎます。

 

「本当に必要な事なんですか?」

「ああ。 確かに蓮華の言う通り、二人を巧く使えば曹操が攻めてくる前に益州を手にする事も可能だ。

 だけどそれでお終い。 地盤を盤石にする前に逸早く西京を治めた曹操が攻めてくる。 袁紹ならもっと早く攻め込んでくるだろうな。

 その時は幾ら数で近づこうとも、背中がガラ空きでは戦う以前の問題になってしまう。

 それに今の彼女達では、益州を治めてもきっと同じ事を繰り返してしまう。

 もう、そんな無駄な時間はないんだ」

 

 虚空を見詰める一刀さんの瞳には、きっとその時の様子が映っているのかもしれません。 それぐらい一刀さんの目は真剣で、強い意志が宿っていました。……そんな未来にはさせないと。

 きっと今一刀さんの脳裏には、何時か翡翠様が言われていたように、私達が凌辱され殺される姿が浮かんでいるのかもしれません。

 私が…。

 翡翠様が…。

 美羽が…。

 七乃が…。

 雪蓮様が…。

 そして皆が…。

 そう分かるくらい、一刀さんは怖い目をしていました。

 

ずきりっ

 

 その目に胸に鋭い痛みが走ります。

 鈍く絞め付ける様な苦しみが私を襲います。

 そんな目に私達がしてしまった事に、引き裂かれるほど悲しくなるのです。

 だと言うのに、其処まで想ってくれる事に、胸が熱くなるのです。

 ……だめです。今こんな顔を一刀さんに見せる訳には行けません。

 ぎゅっ、そんな音が聞こえそうなくらい、私は一刀さんの胸に顔を埋めます。

 涙を…、悲しみを隠すように…、一刀さんに甘えます。

 

 

 

 

「明命?」

 

 私の様子に心配した一刀さんが、声を掛けてきます。

 その声に私は、一度大きく息を吸い込みます。

 たくさんの想いと決意を、吸い込んだ息と共にお腹の奥に飲み込みます。

 

「一刀さん一つだけ忠告させてください。

 絶対に私達だけの時以外は気を抜かないでください。

 劉備の性格からして私達を消そうとする事はまず無いでしょう。 ですが周りの者すべてがそうとは限りません。 同盟国と言っても所詮は他国、劉備を思うあまり先走る者がいるかもしれません。 ですので敵国に居るつもりでいてください。

 また逆に一刀さんを味方に引き入れようと、惑わそうとする者もいるかもしれない事を覚えておいてください」

「大丈夫だよ。 俺には明命と翡翠がいる。 そんな手には掛からないよ」

「はぅぁっ!

 ……そ、その…一刀さんの言葉は嬉しいのですが…、そ、そう言う事を言っているのでは…はぁぅぅ」

 

 言葉の途中で、そんなとんでもない事を言ってくる一刀さんに、私は不意を突かれて顔が熱くなってしまいます。 きっと耳まで赤くなっていると思います。

 で、でも正直言って、一刀さんの言葉を信じたいのは山々なのですが、一刀さんは結構流されやすいので心配です。 むろん、一刀さんが本気で私や翡翠様を裏切るような事は無いと信じられはしても、それとこれは別問題です。 理屈ではなく、そう言う物なんです。

 

「と、とにかく私も目を光らせていますが、一刀さんも気を付けてください」

「ああ、分かってるよ」

「……う~…、笑顔で誤魔化すように返事をしないでください。

 それと冥琳様が言われたように、私が呉に戻るべき時だと判断した場合は、一刀さんがまだやるべき事があると言っても一緒に帰ってもらいます。 これは蓮華様、王命だと言う事を忘れては駄目ですよ」

 

 私はそう念を押して、一刀さんに何処までもついて行く事をもう一度心と魂に刻みます。

 きっと一刀さんは幾ら私が忠告しても、無茶をしてしまうんでしょう。

 自分が傷つく事も構わず。 多くの民の為に頑張ってしまうのだと思います。

 信じられない程の強さを持ちながら、その実とても危い所を持つ一刀さん。 だと言うのに新型の弓も、機密と耐久性の情報を取るために持って行けませんし、兵も千四百いると言っても所詮は護衛程度の僅かな数に過ぎず。これ以上は要らぬ緊張を劉備に与えてしまうだけになります。

 それに私の配下で本当に優秀な者の殆どは、数多くの任務があるため孫呉に残り連れて行けません。

 だとしても、それが何だと言うんです。

 私は何が在ろうと一刀さんを守って見せます。

 あらゆる思惑から一刀さんの心と身体を守って見せます。

 そう心の中で呟きながら、私は全てを委ねるように力を抜き一刀さんにしなだれます。

 

「明日から別の意味で忙しくなります。 もう寝ましょう」

「……ああ」

 

 私の言葉に一刀さんも目を瞑り、寝ようとするのが分かります。

 本当は寝れない程罪の意識に苛まされているのに、私の温もりを頼りに眠りに付こうとします。

 あんなに強くて、優しくて、たくさんの事が出来るのに、こうして私を拠り所にしてくれる。

 くすっ、一刀さん可愛いです。

 

 

 休んでください。

 

 無理でも心を休ませてください。

 

 一刀さんがそれで少しでも安らぐのならば…。

 

 幾らでもこうして手を繋いでいてあげます。

 

 罪業と言う名の泥濁の中を、真っ直ぐに歩む力が湧くのならば…。

 

 私は壊れても構いません。 幾らでも求めてください。

 

 誰よりも優しく、そして悲しいほど強い人。

 

 本当はそんな茨の道の似合わない人。

 

 そうさせてしまったのは私。

 

 私達の夢を叶えるために…。

 

 私達を守るために…。

 

 自ら地獄の業火に炙られる事を選んでしまった、誰よりも優しい人。

 

 だから捧げます。

 

 心も。

 

 身体も。

 

 髪の毛一本、血の一滴まで。

 

 全てを捧げます。

 

 だって…。

 

 誰よりも、愛しています。

 

 だけどその想いは口に出せず。

 

 代わりに出たのが。

 

「一刀さん、おやすみなさい。

 

  明日は、おはようを言ってあげます」

 

 そんな何でも無い言葉。

 

 だけど、こんな何でも無い言葉が大切なんだと、何となく思えてしまいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

あとがき みたいなもの

 

 

 こんにちは、うたまるです。

  第百〇六話 ~ 純粋なる命の明るさに包まれしは、闇に舞う一振りの刀 ~を此処にお送りしました。

 

 はぁぁぁ、久しぶりに明命ちゃん一本で話が書けました♪

 書いていて、本当に素直で真っ直ぐで可愛い娘だと、浸ってしまいました。

 そして、エロなしでのこういった絡みも何か久しぶりな気もします(w

 一刀君、そんなに溜め込んだら二人が壊れちゃう事になりますよ。とか心の中で突っ込みながら、ピュアに話しを持って行きましたが、それぞれ色々な思惑で動いていきます。

 それは朱里達にしろ、一刀や明命も含まれるのは当然の事ですが、冥琳も同じです。 その辺りを次回少し書けたらなぁと思っています。

 

 メインヒロインの一人なのに今回も出番が無かった翡翠。……まぁ良いか(汗

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。

おまけ(穏の場合):

 

作者「呉のおっぱい星人ごと、出番の殆ど無い穏さん。 一刀の事をどう思いますか?」

穏「うぅぅぅ、大きなお世話なのです。 私の出番が無いのは貴方の所為では無いですか~っ」

作者「まぁまぁまぁ、だって軍師だらけの呉でこれ以上軍師を出しても、船頭多くしてと言うじゃないですか、私としても、出したいのは山々なんですよ。 まぁそんなどうでも良い事は置いておいて質問に答えてください」

穏「今、どうでも良いと言いましたね。 後で覚えておいてくださいね。

  北郷さんですか……。一言で言えばとても可愛らしい人ですよ~」

作者「か・可愛いですか?」

穏「はい~。 本当は素敵と言う言葉の方が良いんでしょうが、何となくそっちの方が最初に浮かんだんですよね~。 すぐ顔を赤くして恥ずかしがったり。 人の胸を気にしないように一生懸命目を逸らして注意がいってしまわないように気を付けている姿が、とても可愛らしいんですよ~」

作者「……まぁ、その胸に視線が行くなと言うのは無理でしょうね。 顔より目立ちますから」

穏「うわぁ~。この人物凄い失礼な事を、サラッて言っちゃいましたよ」

作者「だって本当の事だし。 シャオや美羽が足元に行ったら、胸で顔が見えないんじゃないのかと思っちゃうぐらいです」

穏「………」

作者「……すいません。心の底からすいません」

穏「……う゛ぅ~~~……」

作者「そ、そうそう。 そう言えば読者の皆さんも気にしている質問を二つ程。 一つは、翡翠の学園時代の話と。 あと一つは、一刀の事を一女性としてどう想っているかを答えてください」

穏「誤魔化しましたね。

  私の出番を出してくれるのならば今回の事は許してあげちゃいます」

作者「はいはい、無事答えたら視点の一つや二つ書いてあげますから」

穏「そうですね。 本当は翡翠様に固く口止めされたのですが、翡翠様は学園時・」

 

ひゅっ

 

作者「あれ? 穏?

   一体何処に消えたんですか?

   それに今一瞬目の前を横切った黒い靄みたいなものは?」


 
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