No.183184

黙々・恋姫無双 捌黙

TAPEtさん

半端は要らない。
形だけの愛も要らない。
形のない愛も要らない。

両道を歩くなんて、できるはずもない

2010-11-07 17:48:05 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:3527   閲覧ユーザー数:2911

「……♪」

 

一刀ちゃん、今日はいつになく笑顔満開ですね。

 

【だって嬉しいんだもん】

 

まあ、気持ちは分かりますね。

そんなに待ちに待っていた、華琳さんとのお出かけですし。

口だけで言うのだと思ったのですけど、本当にの華琳さんが休暇を使うとは思いませんでしたよ。

 

「~♪」

 

まあ、一刀ちゃんが華琳さんと一緒に出掛けるのを楽しみにしているのも無理はないですね。

最近は華琳さんと一緒に寝るどころか、話し合うこともできないぐらい華琳さんが忙しかったのですから。

最近は黄巾党の動きが結構減ったのですけど、それでも忙しいことには変わりません。

そんな中で、華琳さんが休んで一緒に遠足に行くというのはとても破格な提案なんですよ。

 

「……」【よっし】

 

またサンドイッチも用意しちゃいましたしね。きっと華琳さんからも何か作ってくるとは思うのですが、こっちにはこっちなりに準備をしていたというわけです。

ちなみに僕が外からあれをとってくるのにどれだけ苦労をしたのかと言いますと…

 

【さっちゃん、早く行こ?】

 

ああ、一刀ちゃん一人で行かないでください。

…とほほ、華琳さんだけじゃなくて、僕のことももうちょっとやさしくしてくださいよぅ~。

 

 

コンコン

 

しーん

 

「……」

 

部屋にいないのでしょうか。

 

【そうかも……】

 

特に付き合い場所は決めていませんよね。

 

【準備できたら部屋に来なさいって言ってた】

 

じゃあ、一応ここで待ちましょう。

……あ、もしかしたら

 

【何?】

 

いや、……ううん、待っていたら分かりますよ。

 

「……??」

 

・・・

 

・・

 

 

暫く華琳さんの部屋の前に座って待っていたら、あそこから華琳さんが来る様子を見かけました。

 

「あら、待っていたの?」

「(こくっこくっ)」

 

大きく頭を上下に振る一刀ちゃん。本当に楽しみにしてたのですね。

華琳さんは片手にカゴを一つ持っていました。

 

「……」『それは何?』

「後で行けば分かるわ…あなたこそ、その大きい荷物は何かしら」

「……」『ボクも行ったらわかる、かな?』

「そう。じゃあ行きましょうか」

「…ぅ」

 

出ない声でも口で答えてみるのは、一刀ちゃんの嬉しさの表現です。

 

 

 

 

「華琳さまーー!!!」

 

城から出ようとする時でした。

あそこから桂花さんが走ってきています。何だか嫌な予感がします。

 

「どうしたの、桂花?そんなに慌てて」

「せー…せー…」

 

ほら、そんな丈夫でもない体で走るからでうしょ。虫息じゃないですか。

 

『桂花お姉ちゃん大丈夫?』

「か、華琳さま、今すぐ報告することが…」

「私は今日休むつもりだったんだけど…あなたがここまでするのを見ると、よほど大変なことのようね」

「はぁ…はぁ…」

 

一度息を正してから桂花さんは話を続けました。

 

「黄巾党の本拠地が判明されました」

「…!!」

 

その話を聞いた華琳さんの顔は真剣になりました。

 

「それは本当でしょうね」

「はい、凪が黄巾党討伐から戻ってくる途中で黄巾党の連絡兵を捕まえたらしく、そいつが持っていた書簡に、黄巾党の集合地点が書かれてありました」

「そう、それが本当なら……」

 

華琳さんはふと一刀ちゃんを見ました。

 

「……はぁ」

 

一刀ちゃんは苦笑しながら華琳さんを見上げました。

 

「…ごめんね、一刀」

「……(ふるふる)」

 

一刀ちゃんは頭を左右に振りましたが、それでも残念なのは事実です。

 

「桂花、直ぐに皆に集まるように伝えなさい。秋蘭と真桜には例の場所に偵察に向かえて頂戴」

「御意」

 

桂花はそう言ってまた走っていきました。大丈夫かな。

 

「…ごめんね、一刀」

 

華琳さんはまた同じことを言いました。

 

「……」

 

一刀ちゃんは何も言わずに、一度城の外を見てから内側に足を運びました。

 

 

大丈夫ですか、一刀ちゃん?

 

【何が?】

 

一刀ちゃんは自分のベットに横たわって天頂を見ながら問い返しました。

 

せっかくのピクニックお出かけだったのに、無駄になってしあったじゃないですか。

 

【華琳お姉ちゃんはこれから王になる人。ボクはただの居候の、天の御使いって名前だけの子供。どっちの方が優先されるかは決まってることじゃない】

 

それは…否定する術もありませんが…

 

「……」

 

はぁ…なんでよりにもよって今日そんな大手柄をしてくれたのですか、凪さん……。

 

【別に凪お姉ちゃんがわざとやったわけでもないでしょ?】

 

でも……

 

【大体ボクのために華琳お姉ちゃんが仕事をサボって出掛けるとしたらその方がもっと問題だよ】

 

……僕が心配するのが何か分かりますか?

 

「……」

 

僕が一番一刀ちゃんに心配しているのはですね。あなたがこんなことを重ねた挙句に、自分のことが皆に邪魔でしかならない、とか考え込んでしまっちゃうことが一番心配なのですよ。

その他に、華琳さんが黄巾党をやっつけられなかったり、他の民たちが苦労したりとか、しったこっちゃありません。

 

【さっちゃん、そんなこと言ったら……!】

 

一刀ちゃんはこんな仕打ちになってもいい立場じゃないんです。だって天の御使いですよ?もっと丁寧に扱われるべきですよ?何ですか、適当にテンションだけ合わせてくれたらいいってものですか?一刀ちゃんはそれでいいんですか?

 

「……」

 

……もういいです。一刀ちゃんに言っても無駄です。

僕が僕のやり方でやってみせます。

 

「…」【さっちゃん?】

 

華琳さん何かの手など貸さなくてもいいようにするのです。

最初から、最初からそんなことにしたら一刀ちゃんは空回りするのを心配しなくても済んだのに……!

 

 

 

【さっちゃん?さっちゃんどこ行ったの?ねえ?】

【さっちゃん?】

 

 

 

 

「秋蘭、どうだったかしら?」

「はっ、情報通り、周りの盗賊や黄巾党の連中が次々と集まっていました。これで、華琳さまが予想なさっていた状態になれたかと」

「そう…、霧のように掴めなかった奴らももはや露の一滴になったってわけね」

 

玉座な間では、華琳さんと皆が集まって会議中です。

 

「む?どういう意味ですか?」

 

春蘭さんが華琳さんの言葉の意味が分からないように聞きました。

 

「春蘭には言ってもわからないと思うけどね」

「なんだと?!」

 

桂花さんのもっともが言葉にむっとする春蘭さん。

 

「とにかく、これは千載一遇の機会と言えるでしょう。全員、出撃の準備になさい。今から黄巾党の本拠地に総攻撃に移るわ」

「「「御意!!」」」

 

華琳さんの命令に、全武将は各々の出撃の準備のため散りました。

 

「華琳さま、大丈夫ですか?」

 

華琳さんと桂花さんだけが残った玉座の間で、桂花さんが華琳さんの陰が見える顔を見て言いました。

 

「…大丈夫よ。あなたも出撃準備にかかりなさい」

「…申し訳ございません、華琳さま。だけど、今回は北郷のことで遅れを取るわけにはいかな……」

 

けど桂花さんは言葉を全部終わらせることができませんでした。

一刀ちゃんの名前が出た瞬間、華琳さんの「絶」が桂花さんの首筋を狙っていたからです。

 

「……桂花、あなたがとった行動に間違いはないわ。けれど、あまりくだくだしていると、私がほんの一瞬だけ、理不尽な行動をするかも…知れないのよ」

「……」

「…昼には出立できるように準備なさい」

「は、…はい」

 

華琳さんが絶を控えて、桂花さんは冷や汗をかきながら玉座の間を去りました。

 

「……ふぅ…」

 

桂花さんが視界から消えるのを見て、華琳さんは玉座に座って天頂を見ながら手を頭につけてため息をつくのでした。

 

……

……

 

 

 

どんなに仲が良くても、どんだけ可愛らしくて愛されたって、所詮は他人。私を公より優先することが難しいこの時代、華琳さんに一刀ちゃんを任せることにはやはり無理があったのです。

このままでは、結局現代にいた頃と同じ過ちの繰り返しにしかなりません。ほどほどな優しさは、結局一刀ちゃんの傷を抉るだけ。

そうなるからには僕が出て……

 

 

「少しでしゃばり過ぎねーん」

 

!!

あなた……いつからそこに。

 

「つい先よ…それより、これ以上の無茶な行動は許さないわーよ」

 

ちっ、

……あなたたちも所詮はあれです。

権力を握った瞬間に昔のその心を忘れてまた自分たちが戦ってきた奴らがやったことと同じことを繰り返す。

「外史の意義」など、結局あなたたちにはどうでもいいことではなかったので?

 

「失礼なこと言っちゃうわ。私たちはただ、この外史が滅びることなく続くのを願っているだけよ」

 

ふん……大のために小を犠牲にするか。

もやはあなたたちにとって、「北郷一刀」という存在は囲碁の石一つと変わらないのでしょう。

けど、僕には違う。僕に北郷一刀という存在は、あの子しかいない。

だから、守ってみせる。幸せにして見せる。

たとえこの身が滅びようとも……たとえこの外史が滅ぶとしても!

 

キ―――ン

 

「腕をあげたねーん。けど、まだまだよ」

 

ちっ、人の会心の一撃を簡単に……

……何の用でここまで来たのですか?

 

「警告よ」

 

警告?ふん。いつから管理者が管理者のことに警告などを与えることができたので?この外史の管理は僕に負かされたはずです。

 

「管路ちゃんからのお告げよ」

 

ふん…あの女の命令なんて聞くものですか。

 

「まあ、どちらにせよ、このままあなたが外史に衝撃を与え続けるというのなら、私たちとしても他に方法はーない」

 

僕を排除するとでも?

 

「そうならなければいいんだけどねーん」

 

ふん……あなたは、最初に北郷一刀を救った時を覚えていますか?

 

「忘れるわけがないでしょ。私とご主人さまの初めてのあの運命的出会いを……」

 

で、知ってます?あなたが守ってあげた北郷一刀が、あなたのことを愛してくれないということを……

 

「………」

 

僕は今、その感覚を骨に痺れるほど感じているんですけどね。

 

「……あなた、一体どうするつもり?」

 

あなたならどうしますか?

管理者がやることなんて一つしかないでしょう。

……外史が赴くまま見守ってあげるだけです。

 

 

 

 

 

一刀ちゃん、まだ部屋にいるんですか?

 

【さっちゃん、どこ行ってきたんだよ!】

 

ええ、まぁ、ちょっと……

…あえ?一刀ちゃん、

 

「……(じー)」

 

あれ?もしかして、怒ってます?

 

【当たり前じゃない!何だよ、何で急に居なくなるんだよ!】

 

あ、ちょっ、そんなに怒ることないじゃないですか。僕が急にいなくなるのはいつものことですし。

 

【そういう問題じゃない!】

 

え?

 

【さっちゃんはいなくなる時はいつもボクにいつも声掛けてから行くじゃない。なのに今回は急に熱くなって一人で言っちゃうし、ボクそんな急にさっちゃんいなくなったりしたら不安なの!】

 

一刀ちゃん?

 

「………(うるうる)」

 

……あの変態が言ったことも間違ってはいないかも知れませんね。

少しでしゃばりすぎたようです。

 

ごめんなさい、一刀ちゃん。これからは急に消えたりしませんから。

 

「……」【ほんと?】

 

はい、もちろんですよ。

それより、華琳さんたちがそろそろ出陣する準備をしています。僕たちも行きましょう。

 

【でも、今回はこっそり行くこともできないし、華琳お姉ちゃんが許してくれそうもないし】

 

うーん、正直前からぶつかっても今回は許してくれそうですけどね。華琳さん、一刀ちゃんに申し分ないと思ってますから。

でも、流石にそれだとちょっと面白みがないですから……

ちょっとびっくりさせる作戦で行きましょう。

 

「??」

 

まあ、僕に全部任せて一刀ちゃんは御輿に乗った気分にしていたらいいのですよ。

 

・・・

 

・・

 

 


 
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