No.183161

真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 第五十四話

狭乃 狼さん

刀香譚の五十四話です。

対五神将戦の第三戦目。一刀対貂蝉編です。

一刀がついに切り札を出します。

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2010-11-07 16:04:19 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:9957   閲覧ユーザー数:8647

 「な~に、劉翔ちゃんてば。私を一人で相手にするっての?」

 

 「そう言ったんだけど。聞こえなかったかい?貂蝉さん」

 

 怒号と剣戟音が周囲にこだまする中、靖王伝家を構えた一刀が、戟を構えたその女-五神将の二の席である貂蝉と対峙していた。

 

 豫州は汝南郡の北。許まで五里ほどの場所で、一刀率いる三国同盟軍の一角荊州軍が、貂蝉率いる晋軍と遭遇したのがこの日の午前。戦端はすぐに開かれた。

 

 荊州軍は中央に一刀と呂布率いる本軍。左翼を趙雲・黄忠・劉封が率い、右翼を袁術ら荊南軍が担当という布陣。

 

 一方、晋軍の方は虎豹騎五万を本隊に、それ以外の晋正規軍三万づつが、両翼に展開していた。

 

 数だけで見れば、わずかに晋軍の方が上である。だが、両翼の正規軍は、明らかにその戦意の低さが見てとれた。

 

 「どうやら、両翼の兵たちは元魏軍、及び河北の者たちのようなのです。なので、こちらにあの旗があるのを見て、戦意をかなり喪失したようですぞ」

 

 「華琳から旗を借りてきて正解だったな。あと、麗羽がここに居たのもね」

 

 と、陳宮の口上を聞きつつ、左翼と、右翼に翻る二つの旗を見る一刀。その視線の先に、『曹』と『袁』の旗が、揚々とはためいていた。

 

 「星、紫苑さん。美羽、麗羽。……出来るだけ、両翼の兵たちは」

 

 「みなまで言わずとも、分っておりますよ、主」

 

 「ええ。完全に無傷、というわけにはいかないでしょうが、被害は確実に抑えますわ。両軍ともに、ね」

 

 趙雲と黄忠が、一刀の台詞の先を読んで言う。

 

 「そのとおりじゃ、一刀兄。妾たちにどーんと任せておくのじゃ」

 

 「おーっほっほっほっほ!一刀さんはなーんの心配もしなくてよろしくてよ?晋軍如き、私がけちょんけちょんにして差し上げますわ!」

 

 「だから麗羽さま~。しちゃいけないんですってば~」

 

 趙雲たちに同意する袁術と、対象的に、今ひとつ理解していなさそうな袁紹。

 

 「……のう、一刀おじ。やはり、本初のほうには妾が着こうかのう?」

 

 「あ、ははは……。大丈夫だよ、……多分」

 

 「あちらには私が着きますから、ご安心ください、命さま」

 

 そう言って、不安げな劉封に諸葛亮が微笑む。

 

 「頼んだよ、朱里。恋、君も予定通りにな」

 

 「ん。……一刀の邪魔、誰にもさせない」

 

 「頼んだよ。その間に、俺は向こうの貂蝉を倒す。……それでいいんだろ?貂蝉」

 

 呂布の頭をなでつつ、一刀は自分の後ろに立つ筋肉ダルマこと、漢女の貂蝉に問いかける。

 

 「ええ、そうよん。彼らは多分、あの娘たちの持っている―――正確には、あの娘たちの体に埋め込まれた、コントロールデバイスで命令されて動いているはずよ」

 

 「……つまり、あっちの貂蝉を倒せば、虎豹騎の兵たちは動かなくなる、と」

 

 「そういうことだな。……ただ、向こうには確かもう一人、五神将がいたはずだけど」

 

 「旗を見る限りでは、あちらには一人しか出てきてはいないように見えますが」

 

 一刀と諸葛亮が、敵陣に翻る『貂』の旗を見やる。そのとき、

 

 「あ!むこうが動きだしたのです!」

 

 「ちっ。考えてる暇はないか。みんな、それぞれ配置について!……ここが正念場だ!気を引き締めていくぞ!」

 

 『応!』

 

 

  

 「……両翼についちゃ、もともとあてにしていなかったけど、まさか中軍に呂布を配して、ドロイドどもの相手をさせるとはね。……少しだけ、意表をつかれたよ」

 

 「どろいど、か。……な、あんたには罪の意識ってのが無いのかい?彼らだって、あんたと同じ存在。いわば、兄弟みたいなもんだろう?」

 

 周囲で呂布に次々となぎ倒されていく、虎豹騎の兵たちを一瞥しながら、まったく表情を崩さない貂蝉に対し、一刀が少々怒気のこもった声で問いかける。

 

 「罪の意識?それに、やつらが兄弟だって?……ク、クク」

 

 「?」

 

 「アッハッハッハッハ!」

 

 「……何がおかしい」

 

 一刀の質問を聞いて、なぜか大笑いを始めた貂蝉に、一刀がその顔をしかめてその意を問う。

 

 「ハッ!可笑しいに決まってるさね!あいつらは所詮、大量生産の消耗品なんだよ?仲達さまの兵器、いや、『商品』さ。そんな”物”があたしらの兄弟だ?……面白すぎて涙が出らあね!」

 

 ケラケラと。

 

 本気で涙を流しながら、哂う貂蝉。

 

 「……聞いた俺が、馬鹿だったってことか。…………昇化」

 

 ゴウッ!!

 

 「ぐっ!?」

 

 合気昇化法により、自身の気を一気に増幅し、それを解き放つ一刀。巻き起こるその激しい気の奔流に、思わず飛ばされそうになるのを、貂蝉はどうにかこらえた。

 

 「……彼らは、生まれながらにして頭の中身を入れ替えられ、ただ命令どおりに動く、文字通りの人形になってるんだったよな。……仲達の手で」

 

 「くっ……。そ、それがどうかしたってのかい」

 

 「……そんな彼らには、むしろ哀れみこそを感じるよ。しかも、ああやって楽にしてやるしか、助ける手段は無いんだから。なのにあんたは、その彼らを”物”扱いか。………っざけんじゃねえぞ!このクサレ外道がああああああっっっっ!!」

 

 一刀の放つ気が、さらにその激しさを増しつつ、今度は一刀を中心にして、巨大な”柱”状へと変化する。

 

 「てめえみたいな下衆相手にはもったいないけどなあ!見せてやるよ!この靖王伝家の真の姿を!!」

 

 その手の靖王伝家を、自身の頭上に掲げる一刀。

 

 「長きに渡る封印を今こそ解く!星をも断ち切る大いなる剣よ!目覚めよ!わが『戦式・斬関刀!!』」

 

 

 「ざ、『ざんかんとう』、だって!?それじゃまるで」

 

 一刀のその声に応えるかのように、靖王伝家の柄の部分が、ジャカッ、と。倍の長さへと伸びる。次に、つばの部分が左右に開き、それと同時に刀身が二つに割れて広がる。

 

 そこに、柱状になっていた一刀の気が、一気に収束して巨大な刃を形成した。

 

 「はあああああああっっっっっ!!!!!」

 

 それを構え、さらに気を高めていく一刀。

 

 「くっ!……ふざけんじゃないよ!たかだか剣の姿が変わったくらいで、このあた」

 

 「黙れ!!」

 

 「ヒッ!?」

 

 「そして聞けっ!」

 

 自身の背丈の倍にはなった靖王伝家を―――否、戦式斬関刀を高々と、一刀は片手で掲げあげる。

 

 「わが名は劉翔!字を北辰!……我こそは、悪を断ち切る刃なり!!」

 

 そして、もう片方の手をも添え、両手でしっかりと握り締める。

 

 「単我流・極奥義!『星薙』!!チェストオオオオオオッッッッッ!!」

 

 超高速で振り下ろされる一刀の斬関刀。

 

 だが、貂蝉はそれを、紙一重でかわした。

 

 「ハッ!外したねぇ!どんな馬鹿でかい剣だろうが、当たらなきゃ」

 

 「ぬああああっっっ!薙ぎ払えええっっっ!!星ごと奴をおおおおおおっっっ!!」

 

 「!!」

 

 斬関刀が地に付く瞬間、一刀はそれを、一気に切り返した。その先には、完全に無防備になった、貂蝉の体が。

 

 ザシュウウゥゥゥッッッッ!!

 

 貂蝉は、文字通り真っ二つに、胴を両断された。

 

 「こんな、こんなのが、あたしの最期……?……うそだ、うそだ、うそだ、う」

 

 ドゴオオオンンン!!

 

 自身の最期を信じられぬまま、貂蝉は大爆発とともに、粉みじんになって吹き飛んだ。

 

 「……我が斬関刀に、刈れぬモノ無し」

 

 

 

 その爆発音が響いたとき、両翼の戦場では。

 

 「……どうやら、叔父上が勝ったようじゃな」

 

 「そのようですね。……しかし、凄まじい気だったわね」

 

 「まったくだな。……われらも、とんでもない方を主君に持ったものだ」

 

 「そうね。……そうそう、夜の方も、かなり化け物だそうよ?」

 

 「ほほう。それは是非とも試してみたいものだ」

 

 「その時は一緒にね?星ちゃん」

 

 「……おぬしらな」

 

 という会話を、趙雲と黄忠が左翼で交わすのを聞いて、劉封が呆れており。

 

 

 「おお!今のは一刀兄じゃな」

 

 「その様ですね~。やっぱり一刀さんてば凄いですよ~」

 

 「わたしたち、一時はあんな人と敵対していたんだね、文ちゃん」

 

 「そうだな~。あー、直接相手にしなくてよかったー」

 

 「情けないですわよ、猪々子さん!せめて相手に出来なくて残念ぐらい、お言いなさい!」

 

 「……あ、はは、は」

 

 右翼では、両袁家の面々がする会話に、諸葛亮が顔を引きつかせ。

 

 

 そして中軍では。

 

 「恋どの~!虎豹騎たちが止まりましたぞ~!」

 

 「……ん」

 

 「ご主人様も無事みたいね。……それにしてもあの剣。何なのかしら、あれ」

 

 「……貂蝉も、知らない?」

 

 「んまあね。……なーんか、聞いた覚えがあるような気は、するんだけど」

 

 「そんなことはどうでもいいのです!早いところ許へと向かうのですぞ!」

 

 「音々音の言うとおりだな。許にはおそらく、あと一人五神将が残ってるはずだ。十分気をつけないと」

 

 「……白蓮、……居たの?」

 

 「……も、いい。ど~せ、こんなんばっかだよ、わたしはさ」

 

 すっかり存在を(呂布にすら)忘れられていた公孫賛を、全員がそろって慰める。ある意味いつもの光景が見られていたのだった。

 

 

 

 そしてその翌日。

 

 勢い込んで許へと進んだ一刀たち。

 

 だが、そこにいるはずの五神将五の席、禰衡の姿はどこにも無かった。

 

 一刀たちは少々拍子抜けしながらも、その戦力の半分を、兗州へと送り、その制圧に成功した。

 

 

 これで、遅れている魏の面々を待って洛陽に入れば、残すは河北のみ。

 

 それも、晋の帝都である鄴さえ落とせば、すべてに決着がつく筈。

 

 

 そして、曹操率いる魏軍が到着し、洛陽へと進発しようとした、その時だった。

 

 その、誰もが思いもよらなかった、信じがたい報告がもたらされたのは。

 

 

 

 『泰山が、消えた』

 

 

 

 と。

 

 

                                   ~続く~

 


 
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