No.182334

真・恋姫†無双 記憶の旅 14

たくろうさん

真・恋姫†無双 記憶の旅 14です。

さて、前回のお遊びはこれまでで色々と付箋を回収しがてら一気にクライマックスといきましょう。

関羽は原作の扱いがアレなので頑張ってもらいますよ!!

2010-11-03 17:35:44 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:8801   閲覧ユーザー数:6822

凄まじい。

その一言に尽きる。

三人の力はそれ程までに圧倒的だ。

 

貂蝉と卑弥呼の一撃で何十・・・いや、下手すれば何百という数の敵が吹き飛び、華佗も二人に数は劣るものの凄い勢いで敵を殲滅していく。

 

「ふむ、貂蝉の話だと北郷一刀は武を持ちあわせていないと聞いたが実際は将並の働きぶりではないか」

 

「どぅふふ、ご主人様の覚悟がそれだけ強固なものってことよぉん」

 

昔の俺ならこんな数相手にしたら瞬殺だったろうな。

本当に俺は強くなったものだ。

 

「しかし四人になったとはいえこうもシラミ潰しのような作業ばかりでは明日になってしまうな・・・」

 

卑弥呼の言う通りだ。

倒しても倒しても敵が湧くもんだからこのままいくと本当に明日になってしまう。

 

「北郷一刀よ、お前の今の目的はなんなのだ?」

 

そういえば華佗は本当に理由を知らずに戦いに加勢してくれているんだったな。

本当にこいつはいい奴だな。

 

「あそこに神殿があるだろ? 俺はあそこの中に入りたいんだ」

 

だが白装束達に囲まれていてこのままでは進むことは出来ない。

 

「なら俺が全力でお前を援護する。だからお前は一気に神殿まで向かえ!! 今度は俺が道を切り開く番だな」

 

「だぁりんがそう言うのであれば外の敵はだぁりんと儂が引き受けよう。貂蝉、北郷一刀のことは任せたぞ」

 

「ええ、わかってるわ。 でも、その先は私は管理者として傍観することになるわよ」

 

「そんなこと言われずともわかっておるわい。では一気に道を切り開くぞ!!」

 

「行くぜぇぇ!!」

 

卑弥呼と華佗が神殿までの道を阻む白装束に渾身の一撃を叩き込んだ。

すると円を作るように取り囲んでた白装束の集まりにCの文字が出来たように道が作られる。

 

「さぁ今の内に行け!! 北郷一刀!!」

 

ぐずぐずしていたらまた取り囲まれてしまう。

俺と貂蝉は横から来る攻撃を流しながら一気に神殿まで駆ける。

 

華佗達の援護もあっていよいよ神殿の中まで辿りついた。

俺達は今神殿の廊下を歩いている。

 

「いよいよね。 ご主人様」

 

貂蝉がそう言うとやがて大きな広間に到達した。

一番奥には貂蝉の言っていた銅鏡が飾られている。普通の銅鏡とは明らかに違う。それはこの広い空間を照らし尽くすほどに輝いていた。

 

「ふん、待っていたぞ。 北郷一刀」

「やはりあの程度の傀儡ではあなた方を抑えきれませんか」

 

二人の男が柱の影から現れた。

一人は俺より若干背が低い道士の格好をした少年。もう一人は長身で眼鏡を掛け、こちらも道士の格好である。

 

「左慈ちゃん、于吉ちゃん。 お久しぶりねぇん」

 

「またも俺達の邪魔をしおって・・・貂蝉め!!」

 

「私達は前からそういうものでしょう? 私は肯定し、左慈ちゃん達は否定するもの」

 

「ふん、減らず口を・・・!! まあいい。北郷一刀!! ここで決着をつけさせて貰うぞ!!」

 

左慈と呼ばれた男が俺に殺気を向けてくる。

態度からして俺のことを知ってるようだ。そして俺を相当恨んでるように見える。一体俺はこいつとどんな因縁があるのだろうか。

 

「決着? お前は何を言っているんだ」

 

俺はとりあえず質問を投げかける。

 

「ふん、貴様は知らずともよいことだ。貴様が北郷一刀であるなら俺はお前を殺し、そしてこの外史を潰す。それだけだ」

 

「そうかい。じゃあ俺も何も考えずお前を倒させてもらう」

 

俺は左慈という男に向かって刀を構える。

 

「貂蝉、邪魔はするなよ」

 

左慈という男が貂蝉に釘を刺す。

 

「わかってわよん。私はただ傍観するだけよん。于吉ちゃんはどうするの?ご主人様の戦いに口を挟むようなら私が相手してあげるわよ?」

 

「ご冗談を。私は肉体労働向きではありませんしここにあなた方が来られた時点で私の役目は終わりました。私もまた、ただ傍観するのみです」

 

「さて、これで邪魔者はすべていなくなった。今回は前回のような邪魔者はいない。正真正銘の一騎打ちだ、北郷一刀!!」

 

「その前回がどうにも引っかかるが・・・まあ今はどうでもいいか。北郷一刀・・・いや、今は第六天魔王の名を借りて全力でお前を叩き潰す!!」

 

「行くぞ!! 北郷一刀!!」

 

俺と左慈、両者がぶつかり合った。

左慈は俺の刀にまったく怯まず素手で向かってくる。

 

そして強い。これほどの体術の使い手は呂布を除いては一度も相手をしたことがない。

攻撃のスピードに至っては呂布以上かもしれない。

速すぎて見極めることが困難で上手く受け流すことが出来ない。

 

「どうした!? さっきまでの威勢はハッタリか!?」

 

「それは結果で証明してやるよ!!」

 

俺も攻撃を加速させて相手に対応する。

俺達の攻防はまだまだ続く。

 

 

「北郷一刀。 前とは比べ物にならないくらい強くなりましたねぇ」

 

「于吉ちゃん。 これがご主人様の強さよ。記憶を失って、たとえ自分の向かう先が見えなくなったって信じて突き進んでいった。ご主人様の持つ信じる力とは本当に尊くて眩しいものね」

 

「ふふ、そうかもしれませんね」

 

「あらん、于吉ちゃんにしては随分と素直な反応ねぇん」

 

「そうかもしれませんね。 前回私が否定していたものは覆されてしまった。そのせいかもしれません。ですが左慈も五虎大将を一人で相手取るほどの男。一筋縄ではいきませんよ?」

 

 

 

 

「はぁ!!」

 

俺は一度後方に飛んで左慈との距離をとる。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

こんな戦いしてたら息が持たない。

手首にも相当な疲労が溜まってる。相手は俺と違ってまだまだ余裕と見える。

力が左慈という名前に似合わないだよ、畜生。

 

 

「・・・・・・・ぐっ!?」

 

急に収まっていた筈の頭痛が戻ってきた。それは銅鏡の光に呼応するかのようにやってくる。

何でこんな時に限ってやってくるんだ!?

 

「ははは!! どうやらこの外史もお前を認めたくないようだな!!」

 

左慈がここぞとばかりに飛びかかってきた。

俺はすぐに刀を構え直す。

 

 

 

バキィン!!

「・・・・・・!?」

 

刀が左慈の攻撃に耐えきれず根元から折れてしまった。

 

酷使し過ぎたんだ。

元々日本刀って物は人を二、三人斬れば使い物にならなくなる。

あんな数相手にしてて今まで折れなかったのが不思議だったんだ。それだけ爺ちゃんの日本刀が業物だった証だ。だがそれでも今限界が来てしまった。

 

すぐに体術に切り替えようとするが間に合わない。

 

「ガハッ・・・!?」

 

左慈の拳が鳩尾にめり込む。

そして駄目出しの蹴りが胸を襲い紙のように俺の体が吹き飛ぶ。

 

「ゲホッ・・・」

 

鉄の味が口いっぱいに広がる。

この感じ・・・肋骨も何本かイッてしまっているな。

すぐに起き上がるが体が思うように動かない。さっきの攻撃で内臓が悲鳴を上げている。

 

「はぁ!!」

 

「・・・くっ!?」

 

また左慈の攻撃が来たと感じたら既に俺の体は地面に叩きつけられていた。

 

「フン、無様だな。北郷一刀」

 

左慈の足が俺の腹を踏みつけ内臓を圧迫する。

 

「所詮お前はこの程度の男だったという訳だ。お前は何も出来ない、救えない。本当に無様な男だ」

 

言い返してやりたいが口からあふれる血のせいで上手く喋れない。

それにあいつの言ってることは確かだ。だから俺はこうやって今地面に這いつくばっている。

 

俺は・・・ここで終わりたくない・・・。あの娘の流した涙に報いていないんだ・・・。

でも体は動いてくれない。

 

「・・・・!?」

 

手が透けている!?

何で・・・畜生、そんなにこの世界ってのは俺を除け者にしたいのか。

 

「ふん、この世界の象徴である銅鏡の前で世界の嫌われ者であるお前がそれだけ弱っているんだ。このままなら俺が手を下すまでもなく貴様は世界に存在を喰われるだろうな。だが貴様を殺すのはこの俺だ。 じゃあな、北郷一刀」

 

ここまで・・・なのか。

「左慈ちゃん」

 

「何だ貂蝉。まさかこの期に及んで手を出すのではないだろうな?」

 

「いいえ、そんなことしないわ。いえ、する必要なんてないわ」

 

「何が言いたい?」

 

「左慈ちゃんはご主人様を何もわかっちゃいないわ。ご主人様の本当の強さ、それは信じる心。そしてその心で人を惹きつける人望。たとえご主人様がどうしようもない状況に立たされた時だって誰かが絶対に手を差し伸べてくれるわ。ご主人様という日輪は決して沈むことはないわ」

 

「ふん、そういう戯れ言は状況を見て言うんだな」

 

「状況? ええ、しっかりと見てるわ。だからほら、やって来た」

 

 

 

 

 

ガキィン!!

 

「・・・・・何ぃ!?」

 

「・・・何だ?」

 

突然大きな音が響いたと思ったら左慈が俺のもとから飛び退いた。

起き上がろうとすると一つの人影が俺の傍に立っていることに気付いた。

 

黒い美しい長髪に輝く青龍偃月刀。

まさか俺を助けてくれたのは・・・・

 

「北郷が一の家臣関雲長、最果てのご主人様の危機を聞きつけ外史の果てから馳せ参じた!!」

 

関羽が高らかとそう叫んだ。

確かに姿は関羽だが俺の知ってる関羽とは違うように感じる。それに北郷が一の家臣?

 

「貴様が何故ここにいる!?」

 

「私が呼んだのよ。外史を渡り歩いている時に偶然最初のご主人様のいる外史に辿りついてね。事情を説明したら二つ返事で愛紗ちゃんは力を貸してくれたわぁん。それに反対しなかったご主人様にも感謝ねぇん」

 

「くっ、何処までも忌々しい。北郷とその家臣め!!」

 

 

 

 

 

「ご無事ですか、ご主人様」

 

「・・・・君は、関羽なのか?」

 

「愛紗とお呼びください。何処の世界のご主人様でも私はあなたを全力でお守りします」

 

そういうと彼女は青龍偃月刀を一振りした後左慈に向かって構える。

 

「あら、愛紗ちゃん? もう一人は何処に行ったのかしら?」

 

「もう一人の自分に会ってくると言っていたが」

 

「他に誰か来ているのか?」

 

「ええ、そうよん。本当はみんな来たがってたけど私の力じゃ二人連れてくるのが限界だったわん。まあともかくご主人様は休んでいて」

 

「そう言われてもなぁ・・」

 

銅鏡にすぐに向かいたいが体が言う事を聞いてくれない。それどころか気を抜くとどんどん俺の体は透けていっている。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「何で・・・・なのよ」

 

自室に自分の情けない声だけが木霊する。

私の心配をする春蘭達の言葉を降り切って今は自室に篭ってただ寝台の上に寝転がっている。

部屋の外から聞こえる宴の音が今の私の情け無さをより大きなものにさせる。

 

そしてまた思考の海に浸り始める。

 

あれは一刀だ。間違いない。

触れようとすれば消えてしまう、そんな言葉が耳に付いて離れない。

しかし納得出来ない部分が多い。

私と会うのがマズイなら何処か辺境の村にでもいればいいだけのこと。しかし私と会う可能性があるのに何故わざわざ三国を回っていた?

それに一刀の態度はまだ何か引っかかる部分が多い。

特に天和達の扱い。あれは明らかに私達と違っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「そんな涙で目元を赤くして情けないわね」

 

「誰!?」

 

突然部屋に誰かの声が響いた。

 

「誰ですって? あなた自分の声も分からないくらい腑抜けちゃったの?」

 

しばらく部屋の周囲を警戒すると部屋の椅子に誰か座っていることに気付いた。

その姿は私がよく知っていて、だけどこんな形で見るのは有り得ない姿だった。

 

「・・・私?」

 

それは鏡で見る自分そのものだった。

 

「ええ、初めまして。 もう一人の私」

 

口元に笑みを浮かべてもう一人の私がそう言った。

 

~続く~

 


 
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