No.177876

真・恋姫†無双 十√ 27

kazさん

とりあえずなんとか更新

月一ペースになってるなあorz

2010-10-12 21:32:57 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:31300   閲覧ユーザー数:19053

 

西方諸侯軍迎撃に向かった一刀達がその目的を成し遂げ、帰還の徒に入ったとの報告が届くと

留守番組の春蘭、秋蘭、風、桂花、月、美羽、七乃の七人は慌しく一刀達を迎えるための準備をする

中でも春蘭は一刀と久々に会えるのが嬉しくて途中まで迎えに行こうとしたのだが他の皆から「抜け駆けは禁止!」

と注意されしぶしぶ皆と一緒に待つ事になるのだった

 

報告が来てから幾日か経ったある日、一刀達は許に凱旋してくる、一刀をはじめ主だった将が無事なのが見て取れた

留守番組は安堵する、そして馬を降り歩いてきた一刀達が春蘭達の前にやってくると

 

「ただいま、みんな」

 

久々に聞く一刀の言葉に皆は安堵と喜びに顔をほころばす、そしてそれを待ってた春蘭がぎこちなく前に進み出て

 

「お、おお! 何だも、もう帰って来たのか、も、もっとゆっくりしてきてもよかったのだぞ!

わ、私はお前がいなくても全然寂しくなかったからなっ!は、はははは!」

 

「そっか、俺は春蘭に会えなくて寂しかったんだけどな」

 

その言葉に”ずぎゅううううううううん!!!”って感じに心を撃ち抜かれる春蘭、必死で我慢し強がったがもう無理!

 

「う…、ほ、ほんごぉお、わ、わたしも寂「主様おかえりなのじゃーーーーーーーーーーーー!!!!」」

 

一刀に飛びつこうとした春蘭を避け どーーん!って感じに一刀に飛びつくのは美羽、それに呆然とする春蘭をよそに

 

「ただいま美羽、俺達が留守の間良い子にしてたかい?」

 

「もちろんなのじゃ~♪、妾は主様の妻にならねばらならぬからのぅ、頑張って妻になる為の勉強をしてたのじゃ~♪」

 

「はは…、えっと七乃さん、まさかとは思うけど美羽に変な事教えてないだろうね」

 

「あらあら心外ですねぇ、その言いようはまるで私が美羽様に悩ましい姿を教えたり、男性器の形を教えたり

夜の営みの体位を実践してあげたり、美羽様に際どい下着の付け方を教えたと言ってるように聞こえますよぉ~♪」

 

「教えたんですね…」

 

「もちろんですっ!(キリッ!)」

 

ドヤ顔をする七乃さん、なんか美羽の情操教育の為にもこの人と美羽を引き離した方がいいかなとも思うものの

この二人は姉妹のように仲がよかったりするので少しためらう一刀さん、あと引き離したら七乃さんは反乱とか

起こしそうだし、そんな事を考えたりしてると月と風と桂花が一刀に近づいてきて

 

「ご主人様おかえりなさいませ、ご無事でなによりです////」

 

「月ただいま、詠が頑張ってくれたおかげで何とか勝てたよ、これから涼州の統治に関して月の意見も聞きたいから

詠と一緒によろしく頼むね」

 

「はいっ!////」

 

「風、ただいま」

 

「おにーさんお帰りなのです、おにーさんがいなくて風は寂しくてずっと宝譿に慰められていたのですよ~」

「おうおうにーちゃん!あまり風を寂しがらせると俺がもらっちゃうぜ」

 

そんな感じでやりとりする風と宝譿さん、一刀は優しく微笑み風の頭を撫でてやると

 

「ごめんな風、寂しい想いをさせて、でもこれからは一緒にいる時間も多くなるからさ、寂しくなったら俺が

慰めてあげるから」

 

そんな事をさらっと言う一刀さんに風は真っ赤になって

 

「もうっ、おにーさんはずるいのです…////」

 

「桂花、留守番ご苦労さん、色々大変だったと思うけど君が後ろにいてくれるから俺達は安心して全力で戦えた

やっぱりこの国には、いや俺には桂花が必要だ、これからもよろしく頼むな桂花」

 

その言葉に「ふんっ!」と顔を背けるものの真っ赤になり聞こえないほどの小さな声で

 

「もっと… 早く帰ってきなさいよ、馬鹿っ!///」

 

そんな感じの事を言うのだった、その後西征組と留守番組が楽しげに語り合う中一刀の元に秋蘭が近づき

 

「秋蘭ただいま、留守の間この国を守ってくれてありがとうな」

 

「なに、お前のいないこの国を守るのが我らの役目だ、ところでな北郷、その…」

 

と、何やら口ごもるような感じで話す秋蘭に何事かな?と問おうとすると秋蘭が指で指し示す、そこには

 

 

「ふんっ!ふんっ!ふんっ!!」

 

 

と、三角座りして端っこの方で拗ねてる春蘭さんが壁を砕いていた

 

「しゅ、春蘭どうかしたの?」

 

「えっと、だな、姉者はその…な、北郷が帰って来るのをずっと待ちわびていたのだよ、それはもう毎日のように、

で、帰って来たら一番に抱きしめてもらおうと思っていたらしいが…」

 

と言って一刀に抱きついてすりすりしてる美羽を見、溜息を漏らす

 

「北郷、姉者を頼めるか?」

 

その言葉に一刀は「わかったよ」と優しく声をかける、そして美羽を七乃にまかせると春蘭の元に近づき

 

「春蘭、これから皆で宴を開こうと思ってるんだ、皆も待ってるし一緒に行こう」

 

「………ふんっ!お前達だけで行けばいいではないかっ!私はここにいるもんっ!」

 

と、まるで子供かよっ!ってくらいの拗ね方で拒否する、ATフィールドのようなものさえ見える春蘭に手を焼く…

かと思われたがそこは種馬覇王一刀さん、ATフィールドを中和すると春蘭をそっと後ろから抱き

 

「俺、春蘭がいないとダメなんだよ、春蘭がいないと何も楽しくない、だからさ、俺と一緒に皆の所に行こう、な」

 

その言葉に”ボンッ!”って感じに爆発する春蘭の頭、そして溜め込んでた涙が溢れ出し

 

「か、かぁじゅとおおおお、うぐうぐ、さ、さみしかったにょらああああ~」

 

そう言って一刀に抱きつく春蘭の頭を優しく撫でる一刀さんだった

 

 

その夜の宴は酒に溺れた人々の狂乱の宴となったのは言うまでもない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”違うっ!”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”違うっっ!!!”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぉ」

 

 

 

 

 

 

”やめろおおおおおおおおおおおお!!!!!”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ご…ぉ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「北郷!!!」

 

 

はっ!

 

 

「あ…、あれ、俺…」

 

周りを見回す一刀、左を見るとスヤスヤと幸せそうに眠る裸の春蘭が、そして右をみると同じく裸の心配そうな秋蘭

昨日は宴の後、酒に酔ってくっついて離れない春蘭を寝かす為部屋に連れてったのだが、今までの寂しさを思い出した

春蘭に襲われ、そこにほろ酔い加減の秋蘭も加わり今まで溜まった分を吐き出すかのように三人で激しく愛し合ったのだった

 

「大丈夫か北郷、随分うなされていたようだったが」

 

「あ、ああ大丈夫、ちょっと変な夢を見ただけだから、うん」

 

見ると汗だくになっている自分の身体、かすかに頭痛も残る

 

「そうか…、あまり心配をかけさせないでくれ」

 

そんな風に心配する秋蘭を安心させるように気丈に振舞う一刀、しかし何か無理をしてるような一刀に秋蘭は寄り添い

顔を見合わせ、いつもとは違う寂しげな表情をし

 

「北郷、お前がいない間姉者は毎日のように寂しがっていた、そしてお前の安否を常に心配していたのだ

いや、姉者だけではない、桂花や風、それに私も…、北郷、我らにとってはもうお前のいない世界は考えられないのだ、

だから北郷、頼むからお前はもう…「秋蘭」」

 

 

「俺はもう立ち止まる訳にはいかないんだ」

 

 

その言葉に秋蘭は黙ってしまう、”北郷、お前はもう戦場に立たないでくれ”そう言おうとした秋蘭

一刀が心配だからこそ言おうとした言葉、しかし一刀はもう安全な所で戦いの推移を見守るような事は考えはていない、

なぜなら一刀は覇王なのだから、自ら戦場に立ち全てを受け入れ大陸制覇を成し遂げようとしているのだから

秋蘭は何かを想い、そしていつものようにクールな秋蘭に戻り

 

「すまない、今のは忘れてくれ北郷」

 

「どうしよっかな、秋蘭の弱弱しい姿なんかめったに見れないしぃ~♪」

 

そんな風に悪戯っぽく言う一刀に秋蘭は頬を染め照れて

 

「馬鹿者///」

 

そんな感じで少しふくれっ面をして拗ねるのだった、そんな秋蘭を微笑ましく眺めながら一刀は

 

「秋蘭、ほんとにありがとうな」

 

「何だ急に?」

 

一刀が急に感謝の言葉を発した事に秋蘭は少し訝しがる

 

「ああごめん、変な意味じゃないんだ、ここまでこれたのは秋蘭と春蘭がずっと俺に力を貸してくれてたんだって改めて

思ってたそのお礼さ、二人が…、いや桂花や風や恋達がいなかったらこれから戦う雪蓮、そして劉備達から

俺はきっと逃げ出してたと思う」

 

「随分弱気だな、魏は今回の戦いで関中、涼州を得、兵力も呉と蜀を合わせたよりも多いというのに」

 

「雪蓮と劉備は英雄だ、まぎれもなく、正直そんな二人と戦うのが怖いんだ、戦えば

多くの大切なものを失うかもしれないって、立ち止まるわけにはいかないってわかってはいる、でもさ、

誰も失いたくないって思ってもしまうんだよ、もうこれ以上…」

 

そう言うと一刀は腕で目を覆う、そんな一刀に秋蘭が

 

「北郷、私はいつもこう思っていた、天命は天より到るものではなく、北郷の行いによって北郷に到るものだと

お前はお前の信じる道を、ただまっすぐ進めばよい、それこそ我等が愛した主の姿

お前が死ぬのなら私達も死のう、お前が生きるのならば私達はそれを支えよう

何が正しいのか、何が間違ってるのかではない、北郷の選んだ道がすべからく正義なのだ、我等にとってはな」

 

 

「だから北郷、お前はお前の信じた道を進め、私達は決してお前を裏切らないしお前を必ず支えてみせる!

生きろと命じれば生き残ってやる!」

 

 

「秋蘭…、ありがとう、うん、そうだなよな、ここまで来て何ビビッてんだろうな俺」

 

「ふっ、姉者が聞いていたら殴られている所だぞ」

 

「ははっ、確かに」

 

楽しそうに笑う一刀、そして秋蘭を抱き寄せる、秋蘭も身を任せそして一刀と口付けを、と、その時

 

 

がしっ!

 

 

と、一刀の腕をガッチリ掴む腕、もちろんソレは春蘭の腕、一刀がそーっとそちらをみると

 

「うりゅうりゅうりゅ……ぐすっ! な、仲間はずれにするにゃああ!!」

 

春蘭さんがいつの間にか起きていて涙目で一刀と秋蘭を睨んでいたのだった、

そんな春蘭を見た一刀と秋蘭は顔を見合わせるとぷっと吹き出し、

涙目の春蘭を抱き寄せてやる、その後三人は再び激しく愛し合うのだった

 

 

 

 

許城

 

許城の玉座の間では魏の主だった将、軍師が勢ぞろいしていた、各地での情報を精査し、今後の魏の行動を決める為の

軍議が行われていた、まず話すのは詠と稟、西征の成果、そしてその後の統治について話をする

 

「涼州に物資、人員を派遣する懐柔策が功を奏し反抗勢力の封じ込めはほぼ成功と見ていいわ、

現在はボク達が涼州にいた時に繋がりのあった有力豪族や貴族、降った揚秋などとの連携を密にしてその統治を任せる事で

安定した地となっているから魏に叛旗を翻すような事はしばらくはないと思うわ」

 

「敗走した西方諸侯軍ですが、その大半は故郷へ逃げ込みましたが多くは魏への投降を望んだ為

魏に忠誠を誓う事で罪を免じました、今現在は涼州に侵入してくる異民族との戦いにその力を発揮してくれています」

 

「馬超と馬岱のその後は何かわかったかい?」

 

「馬超、馬岱の行方ですが、蜀に派遣した細作の報告から劉備へ投降したとの報告がありました」

 

”そっか、無事でよかった”

 

声に出したら桂花や稟あたりが怒って突っかかってきそうだなとか思ったので敢て口に出さず心の中でそんな事を思う一刀、

いずれは自分達と戦う強敵ではあるものの何故か無事である事にほっとしてしまうのだった

 

次に話すのは許にいて各地の情報を集めていた桂花

 

「まず蜀の現状と最近の動きを報告するわ」

 

「蜀は劉備が主となって以降急激な発展を遂げているわ、中でも諸葛亮孔明の政治手腕は目を見張るばかり

数々の政策を実行し、ボロボロだった蜀を秩序ある国に作り変えている、もちろんそれを良く思わない連中もいたけど

劉備はそんな連中さえ取り込む事に成功していってる、正直反抗勢力を武力で押さえ込んで内乱でもしてくれればと

思ったのだけど」

 

「彼女は…、劉備はそんな事しないさ、それに今の彼女には助けてくれる多くの仲間、そして守るべき民ががいるしね」

 

「相変わらず劉備達の事を評価しているのね」

 

「戦う相手を過小評価しないだけだよ」

 

一刀が劉備達を過大に評価しているのは軍師達の中では知られていた、確かに蜀には一騎当千の武将が

数多く存在し、神算鬼謀の軍師によって瞬く間に蜀を手に入れた手腕は目を見張るものがある、しかし国力や兵力を単純

に魏と比べればとても相手になるものではなかった

 

「蜀について他に何か情報は?」

 

「新しい情報では蜀の南にある南蛮に不穏な動きがあるみたい、何でも南蛮王孟獲というのが”象”というのを使って

暴れまわってるらしいと」

 

「象?とは何だ?」

 

桂花の報告の「象」という言葉に春蘭が問う、この時代象というものを知ってる者はほとんどいなかったりする

春蘭の問いに軍師達も答えることができず、何度も春蘭に問われる桂花も段々機嫌が悪くなって

 

「知らないわよっ!動物というのはわかってるけど姿形までは詳しくはわからないのっ!」

 

「はぁ?何だそれは、まったく役に立たん奴だ!」

 

その言葉にカチーンときた桂花は春蘭と言い合いになったりのいつもの風景に、結局象を知ってる一刀が

”鼻が長くてビラビラした耳をしてぱおーんって鳴くでっかいやつ”という説明をして収まったが

数人が変なもの(というかぶっちゃけアレ)を想像して真っ赤になってたり、その後も蜀の報告がなされ

 

「蜀の現状は大体分かった、次は呉について聞きたいんだけど、俺達がいない間どうしてた?」

 

一刀はきたるべき決戦の為に呉は何かしら策を講じてると思っていたが風から出た言葉は

 

「おにーさん達が関中に行ってる間、呉には特に動きはありませんでした~」

 

と、さらっと言う、その言葉に一刀は違和感を感じ

 

「呉は…、動かなかったのか?」

 

「はい~、兵を動かす素振りは見えましたが結局魏領へ侵攻するような事はありませんでした~」

 

「蜀へ侵攻したとかは?」

 

「蜀ですか?今蜀を攻める可能性は低いと思いますが~、何せ魏と戦うには呉は蜀と同盟でもしない限り対抗する術はありませんし~」

 

確かにそうではあるのだが一刀は何か考え続ける、桂花と風が続いて呉の現状を話し終えた後

 

「皆の意見を聞かせてくれないか?」

 

 

 

 

一刀の問いに各軍師は各々の意見を稟、桂花、詠、風の順に述べていく

 

「蜀が南蛮に手を焼いているとなればこれはまたとない好機

これ以上勢力を大きくする前にこちらから攻め込んでしまうのが得策だと思われます」

 

「劉備を先に討つべきね、あれの思想は我々にとって妄想でしかないわ、庶民にとっては甘い密、危険すぎるわ」

 

「呉は守りを固めているから戦うとなれば激戦は必死、蜀に対してはボク達は関中を得てそちら方面からも軍を送れる

利点があるし攻めるなら蜀からの方がいいんじゃないかしら?」

 

「ぐう」

 

「「「寝るなっ!!!」」」

 

「おおう、いつもは仲の悪い三人なのにこういう時は息がぴったりですね~」

 

「風の考えは?」

 

「その前におにーさんの考えをお聞きしたいのです、先ほどから何か考えてるようですので~」

 

相変わらず一刀のさりげない心情に鋭い風さん、一刀は少し考え

 

「うん、実はどうも違和感があるんだ、俺達が関中に行ってる間あの雪蓮、いや大軍師周瑜さんが何も行動を

起こさないなんてありえるのだろうかって」

 

「確かにこちらの急な出征で呉は中原へ進出する機会はあったけどそれでも守る兵は呉と同等はいたし、長期戦となれば

各地から増援を呼べる事を考慮して出征を控えたんじゃないの?」

 

「仮に魏への侵攻が無理だとしたら蜀への侵攻を考えるんじゃないかと、周瑜さんは天下二分の計を考えている

今のままでは俺達と戦っても天下は取れないと思ってるはずだ、だとすれば俺達が西方諸侯軍と戦っている間に

蜀へ攻め込んで奪う千載一遇の機会を逃したりはしないと思うんだ」

 

「蜀の支配する南荊州には数万の兵しかいないとはいえ万人の敵関羽が守っていると聞きます、簡単には奪えないのでは」

 

「いや、もし呉が攻めれば荊州は落ちていたと思う、そして関羽は…」

 

そこまで言って一刀は言葉を止める、知っている知識から荊州が呉に奪われ関羽が討たれる話、もちろん時系列として

関羽が魏領の北荊州を攻めている間にというのはないもののもし呉が攻め込めばそうなる気がしていた、

 

「いずれにせよ俺の違和感はそれなんだ、周瑜さんほどの人物が何も行動を起こさないなんて考えられない、だけどもし…」

 

「「もし?」」

 

一刀は深く考え、そしてもう一つの知識を思い出し

 

 

「もし、周瑜さんが病に伏せったとしたら」

 

 

一刀の言葉に軍師達は息を飲む、もし仮にそうだとしたら呉は戦においての支柱を失う事になる、小覇王孫策という英雄が

いたとしても呉には魏と互角に戦う力はないだろうと

 

「それは、どこからの情報なの?」

 

聞く桂花に一刀は首を振り

 

「あくまで俺の想像だよ、実際どうかなんてわからない、細作を放って情報を得なきゃ、でももし俺の知ってる周瑜だったら

魏が西方諸侯軍と戦ってる間に天下二分の形勢を作っていると思う」

 

一刀の言葉に場が静まる、そして軍師達は何事かを考え

 

 

「「「「我らは、呉への南征を進言いたします」」」」

 

 

「蜀が呉と同盟し後背を突く可能性への対応は?」

 

一刀の問いに稟、桂花、詠、風が

 

「呉を攻めると同時に蜀に対しても軍を進めます、ただしあくまで牽制の軍

蜀軍が魏領への侵攻もしくは呉を助けるそぶりを見せればこれを防ぎ、動かない場合は予備兵力として後背を支える

双方を同時に攻めればお互いの連携を絶つ事ができます、どちらかに的を絞り後背を憂いながら戦うよりは良いのではと」

 

「我が軍の兵力は呉蜀合わせた数をすでに上回っており、さらに装備、兵糧の備蓄は十分な数を確保している為

蜀と呉を同時に相手にするような事になっても憂慮するような事態にはならないわ」

 

「もし呉が動かないのではなく動けないのであればこの機を逃す必要はないわね、時をおいて呉と蜀との強固な同盟が作られる前に攻めるべきと考えるわ」

 

「今こそ速やかに征呉の大功を立つべきかと~」

 

 

各々の軍師からの言葉を聞き一刀は決意する

 

 

「雪蓮と決着をつける」

 

 

一刀の言葉にその場にいる者が息を呑む、雪蓮との決着、すなわち呉侵攻だ

 

「赤壁の雪辱を晴らし、孫呉を打ち倒し揚州を制圧、その後劉備の蜀を攻め荊州、益州を制圧し大陸を制覇する!」

 

 

 

「「「「はっ!!!」」」」

 

 

 

 

建業

 

とある一室に入ってくるのは孫呉の王孫策こと雪蓮

 

「冥琳、気分はどう?」

 

そう尋ねる寝台に横たわるのは孫呉の大軍師周瑜こと冥琳

 

「ああ、今日はだいぶ楽だ、毎日すまないな」

 

「もうっ、何言ってるのよ、貴方と私の間で遠慮とかなしにしてよっ、それに冥琳が早く元気になってくれないと

私に仕事が廻ってきて遊ぶ暇もないんだから」

 

「ふふっ、すまない」

 

そう言って弱弱しく答える冥琳に雪蓮は辛そうな表情をする、そして深呼吸をして言葉を発す

 

「一刀が… 来るわ」

 

その言葉に冥琳はふーーっと息を吐き

 

「そうか、やはりあの男には隠し通す事はできないようだな」

 

 

一刀の予想の通り冥琳は病に冒され伏せっていた

 

 

 

 

-時間は潼関にて一刀達が関中十部軍と対峙している頃まで遡る-

 

 

関中にて馬超、韓遂を主力とする西方諸侯軍が魏領へと侵攻し一刀自ら軍を率いて迎撃に出た情報はすぐさま建業に

伝えられる、建業の玉座の間ではそれに対しての軍議がすぐさま行われる

 

「馬騰が一刀に暗殺された…か、一刀の人となりを知ってる者ならそんな事すぐ嘘だって気付くでしょうけどね」

 

「だが西方諸侯の奴らは北郷という人物をよくは知るまい、それに今回の事もまた長安の連中が絡んでる可能性がある」

 

「いずれにせよこれは好機です姉上!魏領へ侵攻し一気に中原を奪いましょう!」

 

呉の王孫策こと雪蓮と大軍師周ユこと冥琳の話を聞いていた孫権こと蓮華が力強く訴える

しかしそれに対し冥琳が

 

 

「いえ、蜀を攻めましょう」

 

 

その言葉に蓮華達は驚く、強大な魏と闘うには蜀との共同戦線でもしない限り立ち向かうのは不可能だと考えてるからだ

 

「しかし、そんな事をすれば魏を利するだけでは?」

 

「確かに我らが蜀と闘う事は魏を利するかもしれません、ですが孫家の悲願は大陸の制覇、

今の力では我らは魏とまともに戦う事はできません、揚、荊、益の三州を得、天下二分の形勢を作り出す事によってのみ

魏と対等に戦う力が出来、その悲願を達成できる可能性があるのです」

 

「であるならば今主力のいない魏を蜀と共同で攻めれば」

 

「劉備は…、魏を攻めるような事はないでしょう、何故なら彼女達の提唱する天下三分の計は魏呉蜀三国によって国を支えるという考えだからです、攻められれば守る為戦うかもしれません、ですが自ら進んで侵略戦争をする事は考えられません

今の三分の状態はあくまで過程にしか過ぎず、いずれ天下を取る者によって一つとなるでしょう、その一つになるのか、

その一つに屈するのか、天下二分の形勢を作るのは北郷が関中に向かっている今しかないのです!」

 

冥琳の言葉に皆は聞き入る、そして雪蓮は

 

「私は北郷一刀の魏と雌雄を決しこの大陸を制覇する、それこそが孫呉の悲願!

その為の策を我が軍師は語ってくれた、ならば私はそれに従うのみ!荊州、そして益州へ軍を進める!」

 

雪蓮の言葉に皆はもう何も言わない、進むべき道は示されたのだ

 

「「「はっ!」」」

 

決断された蜀との戦い、冥琳と穏はその為の策を練る、この時陸遜こと穏にはある秘策があった、

それは荊州と益州をつなぐ連絡網を密かに潜入させた工作員によって無力化し荊州を孤立させ関羽を討つというもの

冥琳はその策を良しとし、さらに荊州制圧を穏に一任させる、こうして着々と進む呉による蜀侵攻作戦

 

だが、それは行われる事はなかった

 

 

”っ!”

 

 

 

軍議途中で吐血し倒れる冥琳、一瞬にしてその場が凍りつく

 

 

「冥琳っ!!!!」

 

駆け寄る雪蓮、冥琳に悲痛なまでの言葉をかけ続ける

 

 

 

 

命に別状はなかったものの冥琳はしばらくは動けない状態となる、蜀への西征を穏に一任させたのは自分の身体の事を

知っていたからでは、という憶測も流れる、穏はそんな想いを受けて準備を進めるものの冥琳の事を知る主だった諸将の

動揺は隠せるものではなかった、特に断金の交わりを交わした雪蓮は冥琳の元を離れず看病を自ら買って出るほど

結果として呉軍の動きは鈍化し、必要以上の時間を要す事となってしまう

 

魏にけどられないよう兵を少しずつ荊州方面へ移動させ準備を整える呉軍に予期せぬ報告がなされる、曰く

 

『潼関にて魏軍が勝利、西方諸侯軍は壊走』

 

その報告に穏は動揺する ”早すぎる!”と、予想では魏軍の遠征は最低でも数ヶ月はかかると予想していた

長ければ数年にも及ぶと、西方諸侯の騎馬軍団はそれほどまでに強力なのだ、しかし予想を遥かに上回る期間で敵を

打ち破った一刀達は戦後処理を済ませればすぐにでも許へ帰還してくるだろうと

 

”もし今呉と蜀が戦えば魏はその隙を突いて間違いなく侵攻してくる”

 

穏は考えた末雪蓮に西征の中止を進言する、雪蓮にとっても潼関での一刀の勝利は予期していたより早すぎるものであった、この頃起きれるくらいにはなっていた冥琳の元を訪れた雪蓮の何かを隠すような様子を見抜いた冥琳は一刀の事を聞きだし

 

「やはり、あの男は我らの予想の上をいく…」

 

「西涼の馬超や韓遂は決して弱い相手ではなかったはず、それでも北郷にとっては敵ではなかったか」

 

「一刀はどのくらいでもどってくると思う?」

 

「戦後処理にどの程度時間がかかるかはわからんが北郷自身がそれをする必要はない、北郷だけならば

すぐにでも許へ帰還してくるだろう、ただ遠征の直後でもあるしすぐに再出征のような事はないとは思う」

 

「そっか、蜀を呑気に落としてる時間はないかしら、穏は蜀への侵攻をやめた方がいいって言ってるんだけど」

 

「……その方がいいだろうな…」

 

と、そして冥琳は目を閉じ、深い溜息をつき

 

「天下二分は成らなかったか…」

 

そんな風に意気消沈するのであった、そんな冥琳に雪蓮は少し怒ったように

 

「もうっ、まるでもう終わったみたいな事言わないでよ!私たちは一刀の魏を倒して天下を取るんだから

弱気はなしにしてよね!それとも私の愛した大軍師周瑜はもう白旗を揚げて一刀に頭を垂れるつもり?」

 

「ふっ、そうだな、まだ何も終わったわけではないな、これからの事を考えねばな… 雪蓮、蜀の劉備と同盟を結ぶ手筈を

整えてはくれないか、そうだな、使者には小蓮様がいいだろう、そしてできればそのまま蜀にいてもらうようにしてくれ」

 

「小蓮?あの子にそんな大役が…」

 

そこまで言って雪蓮は冥琳の真意を見抜く、雪蓮は当然動くわけには行かない、そして妹の蓮華も次代の王として一刀との

戦いに挑まない訳にはいかない、しかしもし戦いに敗れる事があれば二人は死ぬ可能性はある、孫家の血筋を絶やさぬ為にも三女孫尚香こと小蓮は呉から離れていてもらう必要があると

 

「そうね、わかったわ、シャオには大切な任務だからって言って行かせる事にするわ、

まぁあの子ならお小遣いを増やしてあげるって言えば何も疑わず喜んで行ってくだろうし♪」

 

「確かに」

 

笑いあう二人、しかし雪蓮はやはり不安ではあった、一刀との決戦、絶対に負けられない戦いに冥琳の力が

得られない事への不安が

 

 

 

 

-時は戻る-

 

「じゃあ、私は行くわね」

 

「ああ、穏には各地の防衛の為の策は伝えてある、後は、北郷がその上を行かない事を祈るばかりだ」

 

「大丈夫よ、穏だってもう呉を背負ってくだけの軍師にはなってるでしょ」

 

「うむ、そうだったな」

 

「でも一刀を倒すには冥琳の力が必要なんだから、早く元気になりなさいよ」

 

「ああ」

 

そう言うと雪蓮は冥琳に軽いキスをし部屋から出て行く、それを見届けた冥琳は

 

 

ごほっ!ごほっ!!

 

 

我慢していた咳と共に手にこびりつく血

 

「はぁ…、はぁ… 、もう少し、もう少しだけもってくれ…」

 

 

祈るような想いの冥琳は自らの命数が尽きつつあるのを感じていた

 

 

 

 

そして万全の体制を整えた魏が遂に動く

 

 

下邳より夏候惇こと春蘭が

 

寿春より夏候淵こと秋蘭が

 

安成よりは張遼こと霞が

 

江夏よりは楽進こと凪が

 

襄陽よりは于禁こと沙和と李典こと真桜が

 

そして江陵よりは許緒こと季衣、典韋こと流琉、そして北郷一刀自らが水軍を率いて長江を下る       

 

 

総兵力二十五万の大軍が六方面より呉へと進撃を開始する

 

 

 

 

あとがきのようなもの

 

 

その様はまさに破竹の勢いの如く! by杜預

 

って感じで書いていきたいなと

 


 
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