No.173081

~真・恋姫✝無双 孫呉伝~第一章第二幕

kanadeさん

第一章第二幕をお送りさせていただきます。
今回の話は強いて言うなれば〝交流〟でしょうか・・・前作における香蓮の初拠点の話が元ネタなので、気になる方はそちらをチェックしていただけたらよいかと。
それではどうぞ
感想等お待ちしております

2010-09-17 21:49:14 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:12911   閲覧ユーザー数:9130

~真・恋姫✝無双 孫呉伝~ 第一章第二幕

 

 

 結果として孫堅達の提案を一刀は受け容れた。。

 それから数日後、屋敷の敷地内であれば自由行動を認められた一刀は、こうして中庭で基礎鍛錬をこなしていた。

 「四百十一・・・四百十二・・・」

 木刀による素振り。

 一刀が用いている木刀は、その辺にあるようなモノとはわけが違っていた。

 (・・・母さんが使ってた木刀、コレまであったなんて)

 天の御使いと種馬としての役目を引き受けた一刀はその直後に香蓮から、この母が愛用していた殺人仕様の木刀を受け取ったのだ。なんでも、一刀が現れた場所に一刀が眠っている間に見に行ったら件のこの品があったとのことだった。

 (まぁ、荒燕で素振りするよりかはずっと安全なんだからいいんだけど)

 自分が来た理由さえ分からないのに、この二つの道具がある事の理由なんて分かる筈がないのだ。

 であれば、いい方に考えるしかない。とはいえ、この鉄芯入りの木刀はかなり重い。

 これを棒きれのように自在に振り回していた母に改めて尊敬と畏怖を抱く。

 「ご、ひゃく・・・。ふう・・・さて、呼吸を整えるとしますか」

 肩幅ほど足を開き、両手を腹の高さまで上げ、静かに息を吸う。

 (・・・丹田に氣を集める・・・)

 体を巡る氣を丹田(へそのちょい下あたり)に集め吐き出す息と共に解き放つ。

 すると、先程まで体にあった疲労から来る気だるさが和らぎ、軽くなった。

 そうして静かに目を開けると、ささやかな拍手が一刀に贈られる。

 

 ――「見事な氣だな。淀みがなく、澄んでいて綺麗だ」

 「香蓮さん」

 中庭に至る廊下の柱にもたれかかっていた香蓮を一刀は真名で呼ぶ。

 数日前、彼女らの提案を受けた一刀はそれぞれの真名を預かる事となったのだ。

 孫策からは〝雪蓮〟、周瑜からは〝冥琳〟、黄蓋からは〝祭〟、そして全員の紹介を受けた後で新たに紹介された呉の軍師の一人である陸遜からは〝穏〟と真名を預かった。

 そして、〝香蓮〟というのは今一刀の目の前にいる絶世の美女と言っても過言でもない女性、孫堅の真名である。

 「今までの鍛錬は以前からやっていたのか?」

 「少し前までは毎日ね。最近は・・・」

 「やっていない・・・か。その手の鍛錬は毎日続けんと身につかないぞ?」

 「アホらしい事情があってね、毎日頑張る事に虚しさを感じるようになったんだ。だけど、家に帰ったらその時は問答無用で母さんにやらされてた」

 苦笑しながら話す一刀に、香蓮はフッと笑って見せた。

 「お前の母君は腕が経つのだな」

 「俺の知る限りでは最強だよ。この木刀もあそこに立て掛けてる荒燕も、本来は母さんの持ち物なんだ。どうして俺と一緒にこっちに来たんだろ?」

 「必要だからじゃないのか?まあ、それはともかく、どうして虚しさを感じるようになった?」

 「・・・〝剣道〟と〝剣術〟は違ったからだよ。これから〝型〟をやるんだけどね。・・・〝剣術〟は元を辿れば人を殺めるための術で、〝剣道〟は競い合うためのものなんだ。だから、いくら剣術の鍛錬を積んだところで発揮できる機会なんて、全く・・・とは言わないけど、あんまりないんだ。だから、虚しくなった」

 「・・・随分とお前のいた世界は平和なのだな。羨ましいよ。あたし達が生きている〝今〟は研鑽を積んだ力を発揮しなければ死ぬ事さえあるからな・・・戦う術が意味をなさなくなるなんて考えられない。時代に呑みこまれぬように、あたし達は戦うしかないからな。だが、一刀・・・今のお前がいる場所は、発揮しなければ間違いなく死ぬぞ」

 「・・・やっぱただの神輿じゃ終わらない、か」

 ある程度は予測していた。

 孫堅が生きているという史実との食い違いがあるとはいえ、孫家――呉は、三国志の時代においてある時期まで袁術の客将になっている事を知っていたからだ。

 そして、昨晩に聞かされた呉の状況は、香蓮の娘である孫権や孫尚香を含め臣下の多くが散り散りとなっているとのことだった。

 つまり、人手が足りていないのだ。

 そんな中にあって戦えるであろう人材、しかもそれが〝天の御使い〟という肩書を持っているならばどうするかなど考えるまでもない。

 「無論、今すぐに前線に立って戦えとは言わない。しかし、どうあろうと戦場には立つ事になる。・・・つまり何が言いたいかというとな、これからは毎日鍛錬をしろという事さ」

 「了解・・・で、まだ見物なさるおつもりなんでしょうか?」

 「当然、見物なさるつもりだ。天の剣・・・興味がある」

 「まあ、いいけど・・・」

 気を取り直して一刀は木刀と荒燕を持ち換えて、改めて呼吸を整え精神を統一し、幼少期から母や実家にいる祖父から叩きこまれた型を繰り広げた。

 

 

 (しかし・・・本当に綺麗だな。氣も信じられないくらいに静かだ。あたし達とは正反対・・・)

 自身のまだ知らない目の前にいる青年。型から繰り出される技は見ている全てがまるで舞っているかのような錯覚を覚える。しかし、それでいて無駄がない実戦的な物で、香蓮はこれを一刀に仕込んだ一刀の母に改めて尊敬の念を抱いた。

 (一刀でコレだ・・・師に当たる母君は恐らく、あたしか祭とも互角に渡り合えるだろうな)

 そうやって感心する中、一つの確信が生まれる。

 (あれを母君以外の人間に使った事はないな。・・・殺気にだけでも慣れさせておく必要があるな)

 「一刀、鍛錬を中断しろ」

 有無を言わさぬ迫力を秘めた声に一刀は何も言う事が出来なくなった。

 ただ言われるままに鍛錬を中断し、剣を下ろす。

 「一刀、これからあたしと手合わせしろ。無論、真剣でな」

 反論をしたくとも声が出ない。彼女から発せられる殺気に、北郷一刀は呑みこまれてしまっていた。

 「手加減の類は一切ナシ。持てる力を全て引き出せ・・・でなければ――死ぬぞ」

 「!」

 抗議などもはや何の意味を成さない事を悟る一刀。

 大気を震わす殺気に自然と息を呑んでしまう。

 退路は既にない。それ以前に、退いたらその瞬間に全ての幕が引いてしまうに違いない。

 「・・・ご指導のほど、よろしくお願いします」

 「ハッ、いい覚悟だ・・・いくぞ!」

 腹を括った一刀は、迫りくる鬼神に等しい武人と相対した。

 

 ――ギンッ、キンッ、ガッキィィン。

 

 鳴り響く剣戟。その場に人はいないが、いたならば魅了されていたことだろう。それほどまでに荒く、典雅で、苛烈だった。

 

 そして、その場にいなくとも二人の攻防を見守る者たちはいた。

 「一刀ったら凄いわね。母様、楽しそう」

 「北郷・・・あ奴、まさか」

 「祭様?どうかされたのですかー?」

 「いや、終わればわかるじゃろう」

 雪蓮、祭、穏の三人はそのまま何も言わずに二人を見届ける事にした。

 

 ちなみに、この場にいない冥琳はというと。

 「・・・伯符、覚えておけ」

 政務室に山積みされた竹管、書簡の山にこめかみに青筋を浮かべながらただ一言、そう呟くのだった。

 

 

 一体幾度目の交叉なのか、二人の剣戟は終わる気配を見せない。

 しかし、それは表面上の話であって水面下ではまるで違っていた。

 (・・・ちょっと、ちょっとちょっと――じゃなくて)

 瞬間、ザ・○っちが出たが慌ててそれを押し込むとその刹那。

 「余所見している余裕があるのか!?」

 顔面向かって放たれた横一閃。まともに受ければ無論、首から上が無くなる。それは冗談ではすまない。

 「くッ・・・とぉっ!!」

 かわし反撃を試みるが、疲労が出始めた一刀の攻撃は掠りもしない。

 (まだ力みがあるな・・・まぁ、本気出せばカタは着くんだが・・・それは流石に勿体ない)

 一刀にはまだ底がある。そう踏んだ上で、幾度目かの一刀の反撃をかわす。

 (ふむ、疲労のせいか重心が低くなり始めたな。力みも最初に比べれば随分とマシになった)

 今の一刀は、疲労しているにも拘らず徐々に〝強くなっていた〟

 

 「いいねぇ・・・いい〝眼〟だ。男の眼をしている・・・」

 「はぁ・・・はぁ・・・・・・母さん・・・ごめん・・・」

 香蓮の楽しむ台詞も一刀には届いていない。

 この時、死にたくないという思いだけが一刀を動かしていて、自然と呟いた。

 「!」

 急遽後退し、香蓮との距離をとる一刀。

 (なんだ・・・あの構えは)

 納刀した一刀がとった構えは、彼女が知る由もないが《居合い切り》の構えなのだが、一刀のソレは、通常の居合い切りの構えより前傾姿勢で、明らかに踏み込んでくると教えていた。

だが、そんな見え見えの状態にもかかわらず、香蓮は決して嘗めてかかる気はなく。むしろ今までの遊びを交えたこの手合わせから〝遊び〟の要素を一切排除する。

 瞬間、覗き見していた雪蓮達は息を呑んだ。

 

 香蓮が――孫文台が――〝江東の虎〟が本気になった、と。

 

 鳥達は一斉に飛び立ち、空気が一気に張りつめる。

 〝江東の虎〟が放つ圧倒的な覇気は、一刀の放つ気迫など比べるまでもないほどに圧倒的。

しかし、それでも数多の戦場を駆け抜けてきた彼女の体は、決してその身の緊張を解こうとしなかった。

 

 「・・・北郷流、奥義の壱・・・・・・〝瞬刃〟」

 

 「!!」

  一陣の風が駆け抜けると、ギィィンという高い音と共に香蓮の前から一刀は姿を消した。視線を左へ右へと動かしその姿を探すと背後からドサリという音が聞こえ振り返るとそこには一刀が倒れていた。

 「すぅ・・・すぅ・・・」

 歩み寄れば一刀は汗だくのまま眠っていた。恐らくは先程の一撃で残った力の全てを使い切ってしまったのだろう。

 「全てを出し切ったと言わんばかりの顔だな・・・しかし」

 先の一撃、果たして受け止める事が出来る武人が何人いるだろうか。自分でさえ、あの悪寒がなければ〝確実に死んでいた〟

 これが戦場であったら彼女は避けただろう。今回一刀の底を見たいがためにこうなった。力量を見誤っていた自分を少し恥じる。

 (・・・殺気に耐えることに体力を割いたから倒れたのだろうな。あたし相手によく持ったものだ・・・)

 一刀を背負い、中庭を後にする。

 「祭、一刀の刀と木刀・・・部屋まで持ってきてくれ」

 「心得た。して堅殿・・・気付かれておったかな?」

 「一刀が急所を避けていた事か?当たり前だ馬鹿者・・・さて、雪蓮。お前は背後にいる冥琳と仲良くやってくれ。穏は仕事に戻れ・・・お前なら多少の遅れは取り戻せるだろうからな」

 穏は元気に返事をし、雪蓮は母に言われた言葉に頸を傾げる。

 「へ?・・・げ!めい・・りん」

 そして振り向いてみれば、そこにはその場を凍らせる覇気を放つ冥琳の姿が。

 「いい陽気だな?さて・・・伯符よ、自分の仕事を投げ出すだけならまだ良かったが、私に全てを押しつけたことについて何か言い訳はあるか?」

 「それは・・・あの・・・・え、っと・・・」

 全身から冷汗が溢れ、頭の中が警鐘を鳴らしている。

 

 逃げろ

 

 だが、それは不可能である事を悟った。

 「覚悟はできたか」

 そこで出来ていないと言えるのだろうか。そのまま雪蓮は冥琳に連行されていった。

 ――合掌。

 

 

 その日の晩、一刀は香蓮に呼び出され城壁まで来ていた。

 そこでは、香蓮、雪蓮、祭、冥琳、穏がささやかな酒宴――というよりは飲み会を開いていた。

 ただそこで気になったのは、雪蓮がまるで魂が抜けたように真っ白だった事だったが、香蓮に気にするなと言われて取り敢えず一刀は流すとことにした。

 「ほれ、お前も飲め」

 杯を渡され、問答無用で並々と注がれ、グイッと杯を煽る。

 「げほっ・・・これは中々・・・爺ちゃんに飲めって何度かキツイの飲まされた事あるけど、いい勝負だよこれ」

 「白酒じゃ。ほれ、紹興酒もあるぞ」

 一口飲んでこっちが気に入った。

 「それが気に入ったなら、老酒も美味かろうよ」

 代わる代わる色々な酒を飲まされる一刀は程良く飲んだところで、本題を切り出した。

 即ち、自分をこの場に呼んだ理由である。

 

 「なに、お前が最後に出したあの技、なんだ?」

 頬を上気させている香蓮は服装もあって、非常に危険極まりない。それは、いつの間にか元気になっている雪蓮も、元気になった友人に優しい笑みを浮かべている冥琳も、全体を微笑ましく見守っている穏も、色々と眼のやり場に困る服をしている。

 今更ではあったが、酒が入っているためいったん意識してしまうと赤信号が点灯し始めた。

 「えっと・・・最後って・・・ああ、〝瞬刃〟」

 自身が使った技の事を思い出して、一気にトーンが落ちる一刀。

 「しゅんじん・・・どういう字を書く?」

 「瞬く刃で〝瞬刃〟。すれ違いざまの一瞬で相手を〝斬る〟技。北郷流の禁じ手の一つで・・・奥義の一つでもある」

 「なるほど・・・禁じ手の理由である理由は察しがつく。だから最後の最後で使ったわけか」

 「・・・ごめん」

 「謝らんでいい。むしろ謝るのはあたしだ。嘗めてかかっていたために最後の最後でかなり危なかったからな・・・他にもあるのか?禁じ手は」

 「あるよ。全部で七つ・・・どんな技かは言わないけど、技の名前なら」

 「是非、聞かせてくれ」

 ずいっと身を乗り出す香蓮。胸が非常に危険です。危ないです零れます。

 不意に視線をそらせば周りも興味があるようで、武人である雪蓮や祭に至っては目がキラキラしている。

 「〝瞬刃〟、〝衝破〟、〝穿刃〟、〝旋華〟、〝砕月〟、〝音断〟・・・最後のは見た事ないけど・・・確か〝無名〟」

 「気になるのがあったけど、なんていうか・・・全部覚えやすい名前ね、ね♪一刀は全部使えるの?」

 「残念ながら、俺が使える技は〝旋華〟まで。〝砕月〟以降はいまだ完全に習得できてるわけじゃないから・・・完全に使えるのは四つかな。七つ目に関しては使う以前の話・・・」

苦笑してみせる一刀。香蓮は何かを察して、何も言わず、何も言わせず、続きを待った。

 「・・・なんで禁じ手なのか聞かないの?」

 

 ――「察しがつくと言ったぞ?・・・。まぁ、それに善悪をつけるのは、結局は使い手の心次第だからな。だからこそ聞いておく・・・一刀よ、戦でそれを使えるか?」

 

 

~あとがき~

 

 

 

 孫呉伝第一章第二幕をお届けしました。

 今回は一刀の実力披露のお話で、本格的に外史に一歩に踏み出す始まりとなる話となります。第一章はまだ続き、燕との出会いや氷花との出会いも描きますので楽しみにしていただけたら幸いです。

 今回披露された一刀の技の一つ、〝瞬刃〟について補足します。

 この技は瞬動術(ようは縮地)と居合いを掛け合わせた技で、すれ違い様に斬る技となっているため、全てにおいて疾さが命の技となっています。

 他の技につきましては後の話で解説します。

 さて、次回の話は燕の登場――お楽しみに。

 

 


 
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