No.160878

恋姫 夏SS 熱帯夜だからこそ女の子と一緒に寝たい!

 恋姫夏祭り投稿作品。
 こんなタイトルみたいなことを言う一刀は鬼畜以外の何者でもありません。
 ところで筆者は、まだ萌将伝未プレイなんですが、このSSのラストに来るようなシチュは実際あるんでしょうか。
 恋姫で想像しうる最高に贅沢な組み合わせ。これがないことには……っ。

2010-07-26 14:26:55 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:10882   閲覧ユーザー数:8979

 

 

「あ゛~……、暑い」

 

 

 執務中も そればかり言っていた。

 盂蘭盆も まだまだ先の、大暑の うだるような昼下がり。

 

「暑い、暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い……」

 

桃香「もう ご主人様ァ~ッ、やめてよ暑い暑い言うのぉ~。私まで暑くなっちゃうよぉ~ッ」

 

 執務室で机を並べていた桃香から苦情が上がる。

 しかし それも やんぬるかな。

 オレだって、実際こんなクソ暑い中、隣で「暑い暑い」言ってるヤツがいたら、一撃必殺で息の根止めて永遠に黙らせてやるところだ。

 しかし暑い。

「暑い」と世界の中心で叫びたくなってしまうほど暑い。

 この世界には温度計なんてないので正確なところは わからんが、計ったら きっと三十五℃は越えているだろう。熱中症を警戒すべきレベルである。

 だからオレと桃香が、室内で溶けきっていて、執務がまったく はかどらないのも仕方のないことなのだ。

 

「どうしてこんなに暑いんだろう……?」

 

 オレの何気ない一言に、桃香が、さも鬱陶しそうに反応する。

 

桃香「……ご主人様、そりゃ夏だからでしょ? 今まさに夏真っ盛り、言うまでもないことなんだから、イチイチ頭使わせないでよぅ。脳ミソが熱疲労ぅぅ~」

 

 あまりの酷暑に桃香が荒んでしまっている。

 

「そんなことないぞ、オレはな桃香、何故こんなに暑いのか? その答えを見つけ出した!」

 

桃香「ほぇ~~」

 

 暑さのせいでリアクションが ぞんざいだ。だが負けぬ!

 

「昨夜も非常に寝苦しかった! 布団は熱気こもってるわ、寝汗は気持ち悪いわで、快適な眠りなどありえない熱帯夜だった。オレは眠れないために仕方なく、なんで この夜は こんなに暑いんだろうと臥所の中で考えたさ!」

 

桃香「ふぇう~……」

 

「するとオレは、結論にたどり着くことが出来たんだ! 暑い理由! わかってみれば簡単なことだった、両脇に愛紗と焔耶が添い寝していたら、暑いに決まってるじゃないかッ!」

 

桃香「ご主人様は死ねばいいと思うなッ!!」

 

 真顔で言われてしまった。

 

桃香「ご主人様は、昨夜は愛紗ちゃんと焔耶ちゃんを まとめて頂いてたんだ。……で、アレなの? やっぱ二人とも裸なの?」

 

「イグザクトリィ(その通りでございます)!」

 

 お陰で熱伝導性も保温性もバツグンだったわ。

 暑かったら安易に脱げ、なんて思うべきじゃないな。

 

「あとアレだ、二人とも巨乳だから。あんな熱の こもりそうなモノに左右から挟まれたら、そりゃ暑苦しいな! と夕べ寝ながら思ったよ」

 

桃香「……それでご主人様は、最近私を閨に呼んでくれないのカナ? 私の おっぱいが大きくて、暑苦しいと思ってるのカナ、カナ?」

 

 桃香の様子がおかしいのは暑さのせいだと思いたい。

 まあ、それはそれとして、

 原因がわかれば対処もできる。暑苦しい添い寝があるのなら、逆に涼しく寝させてくれる添い寝もあると思うんだ。

 

「というわけで大々的に募集します。涼しい添い寝をさせてくれる女の子。入賞者には、オレと一晩を共に出来る権を!」

 

桃香「それ、フツーに賞品として成立するところが恐ろしいよね……」

 

「桃香は参加するかいー?」

 

桃香「私の おっぱいで眠ってみるー?」

 

「あと四ヶ月ぐらいしたら桃香の胸で冬眠させてー?」

 

 オレも桃香も、暑さのせいでグダグダだった。

 そんな陽炎 立ち上るような執務室へ、来訪者が、

 

 

    *

 

 

風「話は聞かせてもらったのですよ、お兄さん!」

 

「おや、風ではないか?」

 

風「いかにも風です。お兄さんに涼しく添い寝をしてあげる挑戦者第一号なのですよ」

 

 といって現れたのは、魏軍でもっとも良識的な軍師・程昱こと真名は風だった。

 このお話は、萌将伝をベースに書かれているので、桃香の執務室にも平気でヨソの子が顔を出す。

 

桃香「あぁ~、風ちゃんだ。たしかに風ちゃんの お胸、ペタペタして冷たそぉ~」

 

風「なにやら壮絶な上から目線を感じるのですが、残念ながら選手は風ではないのですよ。この稟ちゃんなのです」

 

 稟とな?

 稟は その姓名を郭嘉、風と共に魏王・曹操に使える純粋軍師だ。

 その稟が、どうやってオレを涼ませてくれるというのか?

 

風「では行きますよー、稟ちゃん、お耳を拝借」

 

稟「なんですか風? 私は仕事中で、遊んでる暇など……」

 

風「(ごにょごにょ……)……華琳さまが……(……にゃふにゃふ)」

 

稟「ッッぴーーーーーーーーーーーーッ!!」

 

 出したーーーッ!

 稟が鼻血を出した!

 人間として何かが絶望的なまでに緩い彼女は、ふとした拍子に すぐ鼻から血を漏らしてしまうのだッ!

 間欠泉のように噴出す鼻血に、執務室が見る間に赤一色。

 

「何のつもりだ風ッ? 部屋ん中を、ベアトリーチェがオイタしたような地獄絵図に変えて……ッ!」

 

風「さらに……(……ごにょごにょ)」

 

稟「ぷふーーーーーーーッ!」

 

風「……無理やり凸凹×」

 

稟「ばほぉぉーーーーーんッ!」

 

「もお やめてあげてぇーーーーーーッ!!」

 

 稟のHPはゼロよッ。

 

風「……そろそろ頃合ですね、ハイ、お兄さん」

 

「何を……ッ? キャッチ! 風が投げよこしてきた稟の体を受け止めるオレッ! そして うわッ! 凜の体 冷たい! 触ってみると冷たいけども、コレはッ!!」

 

 消えゆく命の冷たさじゃねーのッ?

 あんだけ血を体外に排出してるんだから、そら体も冷たくなるわな! っていうか死ぬわな!

 

風「よかったですね お兄さん。その稟ちゃんを抱いて眠ることで、今年の お兄さんは暑さ知らず」

 

「怖すぎて使えないよ この等身大アイスノン! たかだか暑さをしのぐために、ヒトの灯を消す寸前まで追い込めってのかッ! どんだけ暴君だよオレッ?」

 

 第一挑戦者・風の提案は、あまりにデンジャー過ぎて失格になりました。

 

「まったく一発目からインパクトありすぎるよ……」

 

 初っ端からコレなんだから、二人目、三人目となると どーなるんだ。

 

 

    *

 

 

明命「一刀さまーッ! 次に挑戦するのは私です!」

 

 元気に飛び込んできたのは、呉所属の明命だった。

 一人目が あんだけ殺伐なことをしてくれただけに、この純朴が子が来てくれただけで なんだか和む。

 

「……で、明命は どうやってオレを涼ませてくれるのかなー?」

 

明命「ハイッ、お猫様を使うのです!」

 

 明命は、その両手に抱えた、四本足の小さな獣を差し出してきた。ニャーと鳴く。

 

明命「この お猫様が、一刀さまに快適な眠りを提供してくださるのです! ……モフモフですぅ~」

 

 言ってる側から誘惑に抗えなかったのか、ネコの頭に頬ずりしだす明命。

 それって、ネコと一緒に寝るってことか? それは さらに暑苦しい気が……。

 

明命「甘いですね一刀さま、お猫様の能力はモフモフだけにあらず! その天地鳴動の力を見るといいのです!」

 

 なんだか大げさなことを言いつつ、明命はネコを地面に置く。解放されたネコさんは、その場からトコトコと走り去っていった。

 

明命「追うのです!」

 

「ええッ?」

 

 なんだか明命と一緒になって、大追跡24時を行うことになったオレ。

 ネコのヤツめは塀を飛び越えたり隙間をくぐったりと手こずらせてくれたが、最終的には お城の北寄りの、日陰の風通しのいい石畳の上にグテンと寝転がる。

 

明命「おお! ここです! ここなのです一刀さま!」

 

「ここって何が?」

 

明命「ここが お猫様の教えてくれる涼しく寝れる場所なのです!」

 

 そういってる側から、ネコは日陰でノビノビしている。

 

「そうかッ、ネコは涼しい場所を探し出すのが旨いというが、それを利用したんだな明命!」

 

明命「その通りなのです~」

 

 さすがは明命、ネコ好きであることを利用した見事な知恵だ。

 

「となれば早速、オレもここで昼寝させてもらおう」

 

明命「お猫様と一緒にお昼寝です!」

 

 と、その場にグテンと寝転がろうとした そのときだった。

 

 

 

霞「ちょ、待ちい」

 

 

 

 後ろから剣呑に声をかけられた。

 振り返ると そこには張遼こと霞がいた。恋姫最強の武将と目される一人、霞だ。

 

「ど、どうしたの、霞?」

 

霞「一刀も オチビもどいてんか、そこ、ウチの場所やさかい」

 

明命「オチビって私のことですかッ?」

 

霞「ええい、やかましいわ! ふしゃーーーーッ!!」

 

 霞の頭からネコミミが生えて長刀をブン回す。これにはオレも明命もネコさんも たまらず、一等の涼地から追い出されてしまった。

 

霞「いいか! この場所は たった今からウチのモンや! 一歩でも入ってきたら噛み付くさかいな!」

 

 と啖呵を切って、霞は その場にゴロンと寝てしまった。

 恋姫最強(候補)であると同時に、恋姫で もっともネコっぽい武将でもある霞。このボスネコがいる限り、この近辺の涼しいスポットは彼女の独占物となるのだろう。

 

「仕方ない、執務室に戻るか」

 

明命「うぅ…、残念無念です」

 

 はなはだ残念ではあるが、一等地でウニャウニャ寝ている霞を置いて、オレは その場所から去った。

 

「あ、ところで そこの通りすがりの兵士君」

 

兵士A「は、何でしょう天の御遣い様?」

 

「華琳に、ここで仕事サボって寝てるヤツがいるって伝えておいてくれないか?」

 

 さりげなく復讐を果たしておくオレだった。

 

 

    *

 

 

「というわけで、明命の案も いいとこ行ったんだけど、失敗に終わったよ」

 

 執務室に戻って、コトの顛末を桃香に報告するオレ。

 

桃香「そっかー、じゃあ涼しく沿い寝させてくれる子は、まだ募集中なんだね?」

 

「優勝者が出てないからねー」

 

桃香「じゃあ、私も参加してみよっかな?」

 

「お、行くのかい桃香、でも君の……」

 

 オレの視線が、自然と 彼女の顔より下に行く。そのいかにも保温性の高そうな、二つの巨大なふくらみ。

 

桃香「大丈夫だよ ご主人様。だってコレ、他薦もアリなんでしょ? 前の二人もそうだったし」

 

「たしかにそうだが……、じゃあ桃香、オレを涼しくしてくれるキャラに心当たりでもあるの?」

 

桃香「ウン、あの子なら絶対、ご主人様をヒンヤリさせてくれると思うな!」

 

「じゃあ呼んでみてくれ! その期待値100の大本命を!」

 

 そう言って桃香が呼び出した その人は―――――、

 

 

     *

 

 

 

 

 

華琳「ふぅん、そんなことで この私を呼び出したわけ?」

 

 

 

 

 

     *

 

 

 涼しい。

 たしかに涼しいが、それは涼しいを通り越して もう既に寒かった。

 それは物理的な冷たさじゃない。

 絶対零度のコールドアイだ。

 そんな帝王からの冷めた視線が、オレの体を責めさいなむ。

 

華琳「寝苦しいから? 涼しくなってくれる添い寝の相手を探していたと? それで呼び出したのが この私、三国の支配者、帝王 曹孟徳だと?」

 

 華琳は、激昂するでもなく冷静に、オレのことを見下していた。

 その冷静さが怖い、まったく熱くなく、クールに怒っているところが怖い。

 なんだ この背筋がゾクゾクする寒気は?

 これが本当の恐怖なのか?

 恐怖とは、ここまで体温を急激に下げるものなのか。

 

桃香「そうなんだよ華琳ちゃん! ご主人様がね、貧乳の女の子が体が冷たくて寝心地いいだろうなっ、て言うんだよ!」

 

華琳「アラ、そうなの?」

 

 言われた瞬間、華琳の目が冷たく光った。

 アレは捕食中のヘビの目だ。

 超怖い!

 

桃香「ホラ、私の場合、おっぱいが大きくて、大きくて、大きいでしょ?」

 

 なぜ三回も言う?

 

桃香「だから夏の間は、ご主人様 私の相手をしてくれないの。 それで代わりに、私と真逆の体型の華琳ちゃんに、ご主人様の ことをお任せしたいなァーって!」

 

 桃香ッ? なんでそんな不必要なまでに華琳のことを煽ってんの?

 

「桃香? もしかして怒ってる? さっき言ったことなら冗談だよ! 君は夏でも十分魅力的だよ! その巨乳をビキニ姿で鑑賞できるチャンスは、夏以外にあるもんか!」

 

華琳「へぇぇ、やっぱり一刀は、小さいより大きい方が いいのかしら?」

 

「そんなことないです華琳さま! 華琳さまの均整の取れたボディに比べれば、巨乳など ただの脂肪の塊に過ぎませんとも!」

 

桃香「へぇぇ、これって、ご主人様にとっては ただの脂肪の塊なんだァ」

 

「巨乳をバカにするヤツは七代まで祟れ!」

 

 もう暑いとか言ってられなかった。

 暑いだの寒いだの、そんなことは生命の危機の前では些細な問題だと思い知る。

 右に華琳、左に桃香。

 華琳の貧乳か?

 桃香の巨乳か?

 この大陸を統べる三人のうちの二人に挟まれて、オレはどう生き延びればいいのか?

 生命の危機と ひたすら相対しているとき、また別の誰かが、執務室のドアを叩いた。

 

蓮華「一刀いる? この書類のことで聞きたいことがあるんだけど……」

 

「君には国宝級のお尻があるじゃないかァーーーーーーッ!!」

 

蓮華「何いきなりぃーーーーーッ!?」

 

 第三勢力の介入によって、この場は無事回避することができました。

 

 

    *

 

 

 ちなみに その日の晩は。

 何故か なし崩し的に桃香と華琳と蓮華の三人に添い寝してもらうことになり。

 天下三分の縮図が オレのベッドの上で再現されて、

 暑い以前に非常に寝心地の悪い夜になりましたとさ。

 

                   終劇


 
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