No.157486

真・恋姫†無双~真・漢ルート~ 第八話:漢達、逃亡する

大鷲さん

名前がややこしいですが、隠しルートである『漢(かん)ルート』の再構成した『漢(おとこ)ルート』です。

ガチムチな展開は精々ネタ程度にしか出て来ないのでご安心ください。
ただし、漢女成分が多分に含まれるかもしれませんので心臓が弱い方はご注意ください。

2010-07-13 21:27:34 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:4499   閲覧ユーザー数:3513

一刀たちが魏にして大分月日が経った。

一刀なりに魏の武将達と仲良くなり、幾人かは真名を教えてもらうまでに至った。

 

そんな一刀は現在、荀彧の仕事を手伝っている。

もっとも、彼女は男嫌いなため、部屋の隅で作業をさせられているのだが……。

 

これでもマシになった方で当初は別の部屋で作業をさせられていたのだ。

しかも、一刀に割り当てられた部屋ではなく、警備隊宿舎でやらされていた。

 

それを考えれば格段の進歩といっても良い。

もっとも、今でも仕事以外のことで話しかけても返事はないし、仕事の話でも露骨に嫌そうな顔をすることはある。

 

魏に慣れてきた一刀も流石に彼女とは親しくなれないでいた。

 

そんな時ノックの音がする。

 

扉が開いた先には侍女に連れられた華佗が立っていた。

 

 

華佗「荀彧、一刀を借りていいか?」

 

一刀「え~っと……」

 

荀彧「さっさと行ったら?

   あんたなんかいなくても私はこのくらいこなせるわよ

   分かったら、あいつらが来る前にさっさと私の視界から消えなさいよ」

 

 

荀彧は華佗と共にいるであろう貂蝉たちが来る前にこの部屋から出て行けと毒を吐く。

元々男が嫌いな荀彧にとって華佗が医者であったとしても曹操の裸体を凝視した者として目の仇にしている。

 

そんな荀彧の態度に慣れてしまっている一刀は苦笑しながら華佗と部屋を出て行く。

そのまま城の外に出て、華佗の診療所に向かう。

 

そんな一刀たち出て行ったのを確認して荀彧は曹操の部屋に向かって行った。

 

 

 

第八話:漢達、逃亡する

 

 

 

 

1週間前。

 

 

その日は師匠たちの下に帰省していた左慈たちが帰ってきた日でもある。

皆で食事に行くことになり、診療所には全員がそろっていた。

 

久しぶりに顔を見る左慈と干吉は出て行った時よりもやつれており、ぐったりしていた。

 

 

一刀「左慈、干吉おかえり……大丈夫なのか?」

 

左慈「多少無茶をしただけだ……気にするな」

 

 

久しぶりに師匠の所に帰ると左慈と干吉からライバルである漢女の匂いを感知した師匠から新たな修行を言い渡されたらしい。

お陰で術の能力が上がったらしい。

 

 

華佗「まあ、本題に入ろう

   俺達がここに来て大分経った、そろそろ旅を再開した方がいいんじゃないか?」

 

左慈「そうだな、他国に行って分かったが、『魏に天の御遣いがいる』ってのはかなり有名になってきてる」

 

干吉「それ自体は悪いことではないのですが、北郷殿が曹操の下に『就いている』というよりも、『飼われている』という認識の方が大きいようで

 

す」

 

一刀「え?」

 

 

干吉の言葉に目が点になる一刀。

 

 

干吉「最近では『盗賊狩り』もやっていませんし、何より、毎日別の女性を連れて歩いているとか……

   それが原因で女性に釣られて曹操の元にいると思われているようですよ」

 

左慈「まあ、お前らしいと言えばお前らしい理由ではあるな」

 

華雄「とっかえひっかえ……か、いい身分だな」

 

一刀「世間の評価より仲間の評価をどうにかしたいぜ」

 

 

仲間達からの白い目に目を背ける一刀。

彼なりに彼女達と仲良くしようと努力した結果である。

 

 

華雄「それで、行き先はどうするんだ?」

 

貂蝉「南ね、こういうときは南に向かうのが定番よ」

 

左慈「俺たちの師匠からも呉に向かってはどうかと言われている」

 

卑弥呼「うむ、南の暑い空気は男と女を解放的にする

    我らにとって良い刺激になると思うぞ」

 

干吉「私は暑いの苦手なんですけどね……」

 

一刀「でも、曹操に頼んで開放してもらえると思う?」

 

 

一刀の言葉に何を言ってるんだと言うような視線が集まる。

 

 

貂蝉「ご主人様……曹操ちゃんが許すわけないでしょ?

   あの子は相当欲張りなのよん」

 

左慈「そういう訳だ、1週間後に決行だ

   各自準備を怠るなよ」

 

 

 

 

という会話から、1週間の時を経て診療所に全員で集まっていた。

準備は普段自由に動き回れる左慈と干吉が担当し、一刀の荷物は少しずつ城から運び込んでいた。

 

 

一刀「これで大丈夫かな」

 

左慈「あとは、この包囲網を掻い潜れればな」

 

一刀「包囲網?」

 

 

荷物のチェックが済み、一息つく一刀。

しかし、左慈を含めて他の皆は臨戦態勢を取ったまま警戒している。

 

 

曹操「あら?気付いていたのね」

 

一刀「げぇ!曹操!!」

 

 

銅鑼の音はない。

突然の曹操の登場に一刀は驚くが他の面々はあまり驚いていないようだった。

 

この可能性は十分にあったし、監視の存在には気付いていたのだ。

気付いていたからと言って騒ぎ立てればその時点で捕まってしまう為、完全に準備が終わるまで待っていたのだ。

 

 

曹操「どのような形でアレ、『天の御遣い』が魏内から逃げ出したとあっては私の名に傷がつくもの」

 

一刀「ならちゃんとした手続きを……」

 

華佗「一応『天の御遣い』が魏にいるとして集まった人間もいるんだ

   必ずしも悪い評価だけではないのも事実、容易く手放すわけにも行かないんだろ?」

 

曹操「そういうことよ、もっとも殺すわけにはいかないから一生牢屋で過ごしてもらうことになるわね」

 

 

そう言って笑う曹操。

その背後から兵士たちがわらわらと入ってくる。

 

兵士たちを確認して卑弥呼と貂蝉の視線が重なる。

 

 

貂蝉「今よ、卑弥呼!」

 

卑弥呼「意思疎通のアイコンタクツッ!」

 

一刀「口に出してるだろうがぁ!」

 

 

ふざけ合ってはいるが掛け声と同時に脱出用に診療所の壁を破壊する貂蝉と卑弥呼。

しかし、開いた穴にも魏の兵士たちの姿が見える。

その姿を見て左慈がため息と共に懐から二枚の札を出す。

 

 

曹操「逃がすな!捕らえないさいッ!」

 

左慈「あまり使いたくなかったが……瘟(オン)!」

 

一刀「ちょっ!左慈…………なんだこれ?」

 

 

左慈の言葉と同時に一枚の札が光り、燃えて無くなる。

 

そして何もない空間から白い毛玉のようなものが落ちる。

毛玉はもぞもぞと動くとその正体を現した。

 

 

羊の人形「メェ~」

 

曹操「羊……の人形?」

 

 

実物の羊にしては小さい人形、さらにそれは虚空から次々に現れ周囲に広がる。

警戒した兵士達が後ずさる。

 

それでも止まらず、増え続け足元を覆いつくし、診療所の外にまで増え続ける。

 

 

左慈「……逃げるぞ、瘟!」

 

 

次いでもう一枚の札が先ほどと同じように呪文と共に燃える。

 

左慈の言葉と共に一刀の目線が極端に下がる。

一刀たちも周囲に散らばる羊たちと同じ姿になってしまったのだ。

 

急な体の変化に一刀の体が前のめりになってこけてしまう。

こける途中で前に転がって行きうつぶしてしまう。

 

 

 

 

上を見上げると曹操のスカートの中が見える。

 

 

一刀「白か……意外と清純派だな」

 

曹操「やっぱり死になさい」

 

 

つい漏れてしまった言葉に曹操はどこに持っていたのか大鎌を振りかぶり羊の人形になった一刀を切り裂こうとする。

死んでなるものかと、全力で転がって逃げる一刀。

そんな一刀を追う様に部屋中の羊が一刀の周囲に集まり、一斉に部屋から飛び出す。

 

 

曹操「憲兵!あの人形たちを捕らえなさい!」

 

兵士「はっ!」

 

 

そういって大通りに出て行った人形たちを捕獲するために兵士たちが走っていく。

その姿を見て自らも出て行こうとする曹操。

 

しかし、一度立ち止まり後ろを振り向かずに誰かに話しかける。

 

 

曹操「真名を渡しておいてあげる……私の真名は華琳よ

   次に逢う時までに我が真名を託すに値する男になっていなさい

   それではね、『一刀』」

 

 

そう言って今度こそ出て行った。

 

曹操が立ち去った後、一刀たちの荷物の中から毛玉が『5つ』出てくる。

その毛玉は身を震わせたかと思うと膨らんで行き、元の人間の姿に戻る。

 

 

干吉「……ばれていましたね」

 

左慈「さすがは乱世の奸雄と言った所だな」

 

華雄「ふんっ!見逃したことを後悔するようになれば良いだけの話だ」

 

華佗「おい、貂蝉と卑弥呼はどうした?」

 

 

辺りを見回すがいない。

荷物の中も見てみるがいない。

 

 

兵士A「おい!なんかあの二体だけ大きいぞ!!」

 

兵士B「って言うか羊じゃないぞ!額に一本しか角がねえぞ!?」

 

貂蝉?「ぶるあぁぁぁぁ!!!」

卑弥呼?「ぬうぅぅうぅぅんっ!!!」

 

兵士A「回り込まれるな!尻を突かれるぞ!!」

 

兵士C「俺、こんなやり取りした覚えがある」

 

 

外で兵士たちの怒声が聞こえる。

 

 

左慈「……術が聞きにくい体質なんだろ

   あいつらなら敵陣のど真ん中からでも生還できる

   良い囮だ、今のうちに逃げるぞ」

 

一刀「それもそうだな」

 

 

核戦争があっても生き残る人種だと納得して、一刀は逃げ出す準備をする。

 

一刀たちは街の混乱に乗じて逃げ出すことに成功した。

武将たちも羊狩りに駆り出されていた所を見ると曹操が手を回してくれたのだろう。

 

 

一刀「呉に行くって言ってたけど当てはあるのか?」

 

華佗「心配ない、江東に虞翻(ぐほん)と言う文官の知人がいる

   そいつを訪ねよう」

 

左慈「話は後だ、あいつらが囮になっている間に行くぞ」

 

 

そう言って歩き始める一刀たち。

貂蝉たちを心配する者など誰もいなかった。

 

 

 

 

案の定無傷で合流した貂蝉たちと共に一行は急いで江東へと向かう。

曹操は見逃してくれてはいるが、追っ手が来ないとも限らないので急ぐ。

 

しかし、道中で曹操と袁紹が戦争を始めたという情報を手に入れる。

曹操たちが袁紹に負けるとは思えないのが、態々一刀たちの為に追っ手を出すことはなくなっただろう。

 

一刀たちはそのまま江東に急いだ。

しかし、孫策率いる呉が袁術に反旗を翻し、攻め入った。

 

虞翻の元に着いた一刀たちはそのまま孫呉の陣地で医療活動を頼まれる。

断る理由もない為一行は戦地へと赴いた。

 

 

 

 

華佗「よしっ、一刀は軽傷者の方を頼む」

 

一刀「分かった」

 

左慈「男ばかりだが大丈夫なのか?」

 

一刀「傷の手当なら魏でずっとやって来たよ」

 

 

警備隊の仕事を手伝う際にはどうしても怪我人は出るもので、態々華佗を呼ぶのも悪いので一刀が怪我人の治療をしてきたのだ。

今や一刀は応急手当やある程度の怪我であれば男女関係なく完璧にこなせるようになっていた。

 

華佗と貂蝉たちは重傷者の方の天幕に向かい、一刀たちは軽傷者のいる天幕に向かう。

軽傷者とはいえ、治療を待つ人が多く、天幕中からうめく声が聞こえる。

 

一刀は左慈と干吉、華雄に指示を出しながら的確に治療を施していく。

しかし、左慈と華雄は少々乱暴に扱う為たびたび悲鳴が上がる。

 

その時、天幕内に兵士の声が響く。

 

 

兵士「孫権様が突出され、敵陣で孤立されている!

   救援の為の部隊を選出したい、軽傷者の中でいけるものはいるか?」

 

左慈「俺達が行こう……こういうのは苦手だ」

 

華雄「同じく、戦場にいるのだ、じっとしているのは性に合わん」

 

 

入ってきた兵士に志願する二人。

二人が抜けてもどうにかなると思い、一刀は口を挟まない。

 

しかし、干吉が待ったをかける。

 

 

干吉「……北郷殿も行って下さい」

 

一刀「え?俺も?」

 

干吉「少々お耳を……」

 

 

そう言って一刀の耳元に顔を近づける干吉。

そして小声で話し始める。

 

 

干吉「先程出た『孫権』と言うのは孫策の妹君のことでしょう

   ここで恩を売っておくべきです」

 

一刀「恩を売るって……」

 

干吉「……孫権殿は女性で美人だそうですよ?」

 

一刀「お前が俺をどう思っているのか良く分かった」

 

華雄「結局、どうするんだ?」

 

 

 

 

左慈「とりあえず、俺たちからあまり離れるなよ」

 

一刀「分かった」

 

 

両サイドを華雄と左慈に固められて一刀は戦場を駆ける。

結局一刀は干吉の案に従うことに下のだ。

 

恩を売るという考え方はあまり好きにはなれないが、干吉が言うことももっともだと思っているのだ。

前回の魏では第一印象が最悪だった為に苦労したことは一度や二度ではすまない。

印象を良くしておくに越したことはないのだ。

 

 

一刀「孫権が可愛い子(予定)だから助けに行くわけじゃない!」

 

華雄「いきなりどうした?」

 

 

ごほんと咳払いをして真面目な顔でなんでもないと二人に言う。

二人の視線が冷たくなったが今更気にしても仕方がない。

 

すでに進軍し始めて大分経つ。

一刀も何人かの敵兵を倒している。

 

一般兵以下と言っても良かった一刀も今では護衛兵長ほどにはパワーアップしていた。

これも左慈と華雄の稽古のおかげだろう。

件の二人と言えば名もなき兵士たちをちぎっては投げちぎっては投げしている。

 

一刀たちの活躍により、孫権救出部隊の進軍も早まり、ついに孫権の部隊を発見した。

干吉からいち早く孫権に接触するように言われていた一刀は足を速める。

 

孫権と思われる褐色の肌で桃色髪の少女とその少女を守るように前に立つ黒い髪の少女を見つける。

一刀の本能が彼女達が救出対象の孫権たちなのだと告げる。

 

しかし、その時視界の端で動く影が見える。

彼女達が倒したのであろう袁術軍の兵士の死体の中を這うように動く兵士を発見する。

その兵士の視線の先は孫権たちであり、彼女達はそのことに気が付いていない。

 

助けなければと思った時にはすでに体は動いていた。

突然走り出した一刀に左慈と華雄が後を追おうとするが、一刀を横から狙う兵士がいた為すぐに迎撃に向かう。

 

一刀が危惧していた通り、孫権たちは這い寄る兵士に気が付かず奇襲を受けそうになる。

なんとか気が付いた孫権の護衛・周泰がその間に割り込むが無理な姿勢で割り込んだ為、迎撃は出来そうにない。

 

周泰はそのことを理解し、次に来るであろう痛みに目を瞑る。

肉を貫く音が周泰の鼓膜を揺らす。

 

 

 

 

しかし、痛みはない。

目を開けると周泰の目の前にさらに一人割り込んでいる。

 

その人物は手に持つ剣で敵兵の首を斬り飛ばす。

 

 

周泰「あ、ありがとうございます」

 

一刀「………」

 

 

しかし、間に入った一刀の返事はない。

 

周泰はおかしいと思い一刀の肩を叩く、それと同時に一刀の体が傾く。

慌てて体を支えた時にぬるりとした感触がする。

手を見ると血で赤く染まっていた。

 

 

 

 

あとがき

 

皆様、こんばんは。

 

アイスはバニラが好きな大鷲です。

 

今回の目玉は左慈の羊です。

演技でも羊に紛れて逃げるらしいですよ。

 

魏の次は呉、と言ってもまだ蓮華と明命しか出ておりませんが……

漢ルートならばこのまま明命が死にそうな傷を負うはずでしたが、間に入って一刀が負傷しました。

 

 

次回予告

 

周泰を庇って怪我を負った一刀

          責任を感じる孫権と周泰

                 しかし数日後、元気に走り回る一刀の姿が……

 

次回、『一刀、九死に一生を得る』にご期待ください。


 
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