No.154909

萌えろ! 焔耶!

萌将伝が発売される前に どうしても上げておきたかった一作です。
以前書いた焔耶の作品が、自分的にイマイチ満足できなくて、いつかリベンジしたいリベンジしたいと思っていたところ、やっとその思いを果たせました。
焔耶って、恋姫で一番正統派なツンデレだと思うんです。混ざりっ気なし、純度百パーセント、ツン:デレ比5:5の純ツンデレ。
思えばモデルのブラック○ャック先生も大概ツンデレですし。
そんなわけで焔耶のデレッぷりを堪能していただければ幸いです。

2010-07-03 06:00:03 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:9514   閲覧ユーザー数:7903

 

 

桂花「北郷一刀許すまじ!」

 

 

 ここに集ったのは、魏・呉・蜀、三国の中でも特に一刀を危険視する三人の傑物。

 

 魏代表・荀彧こと桂花。

 呉代表・甘寧こと思春。

 そして蜀代表は魏延こと焔耶にて構成される。

 

 いずれも各陣営で1、2を争う一刀嫌い。その面々で結成された、反一刀連盟であった。

 

桂花「三国間に和平が結ばれ、その中心に新都まで設営され、ちょ~っと いい気になってるみたいだけれど、あの種馬男を調子に乗せたままで いいのッ?」

 

 桂花はテーブルを叩いて大喝する。

 

桂花「世間はアイツのことを見誤っているわ! どれだけ手柄を立てようと! アイツが如何わしいことしか考えない変質者という事実は変わらないの! いいえ これは真実よ! 真理だわ! だからヤツの淫蕩を止める者が必要となる。その大義を担うのは私たちよ!」

 

思春「……なるほど、それで私が呼ばれたわけか」

 

 三国でも指折りのディスコミュニケーションの達人、思春が静かに呟く。

 

思春「たしかに三国が和解し、そのすべての女将たちが集った今、あのバカの漁色グセは ますます猛威を振るいかねん。我が主・蓮華さまのためにも、あのバカには矯正の必要がありそうだ」

 

焔耶「私も賛成だ!」

 

 続いて立ち上がったのは、魏延こと焔耶。これも北郷一刀嫌いで有名な将だ。

 

焔耶「大体 桃香さまも、他のみんなも、あの男に甘すぎるのだ! アイツには、自分の軟弱さを改めて自覚してもらわねば、本人のためにならん!」

 

 気炎を上げる焔耶だった。

 思春、焔耶の二人は、名軍師・彧サマこと桂花が「これは!」と睨んで声を掛けた、有望株。北郷一刀への敵意、憎悪、すべてが申し分ないほどだ。

 

桂花「では、二人とも、私の案に賛成してくれるわね?」

 

 ニヤリ、と悪党っぽい笑いを浮かべる桂花。

 

思春「いたしかたない。本来 群れる主義ではないが、この甘興覇、貴君に協力を約束しよう」

 

焔耶「私もだ! あの軟弱物に目に物見せてやる!」

 

 ここに、三国の垣根を越えた、反・一刀連合が結成された! 

 

桂花「ではここに誓いを立てましょう! 私たちは心まで鋼鉄に武装する乙女! 悪を滅ぼして正義を示すのよ!」

 

思春「我ら、生まれた日は違えども!」

 

焔耶「北郷一刀に犯される日は一緒たらんことを!」

 

桂花&思春「「ダメだろ それッ!!」」

 

焔耶「アレ?」

 

 とにかく結成された。

 

 

     *

 

 

焔耶「しかし、お館に反対する連合を組んだのは いいが、具体的に何をするんだ?」

 

思春「ふむ……」

 

 素朴な疑問が出て、思春が指を顎に当てて考え込むこと10秒。

 

思春「……暗殺するか」

 

焔耶「いきなり最終手段が出たッ!?」

 

 さすが江族出身のアウトロー思春、発想が斬るか殺すかの二択しかない。

 

桂花「ちっちっち、甘いわね呉の猛者さん」

 

焔耶「甘いのッ? 今のがッ?」

 

桂花「あの変質者に対して何をすべきなのか、私が実地で見せてあげるわーッ!」

 

 と叫んで、桂花は いきなり部屋から駆け出していった。

 一体何処へいくというのだろうか?

 

 ガチャリ(自室のドアを開けて、外へ出る)

 パタパタパタ……(廊下を走る ※走ってはいけません)

 ガチャドンッ(ノックもせずに隣の部屋のドアを開ける)

 

 

一刀「あれ? 桂花じゃないか? どうしたんだいきなり?」

 

 

焔耶「隣 お館の部屋だったのかよッ?」

 

 壁が薄くて、隣室の様子を やんわりながら窺うことのできる焔耶たち。

 どうやら隣では、急襲した桂花と、それを受けた一刀が、一対一になっている模様だ。

 

一刀「一体どうしたんだ? オレ今、新都の設計作業で頭 煮詰ってるんだけど……。あ、そうだ! 桂花 軍師だろ? ちょうどいいから意見聞かせてくれよ、居住区の上下水道に関して…………」

 

桂花「……このブタ」

 

一刀「は?」

 

 いきなりの暴言に一刀固まる。

 

桂花「近付かないで、息から精液に臭いがするのよ! 変態! 犯罪者! アンタより異常な精神をもつ人間は、レ○ター教授が現れるまで一人もいないでしょうねッ! 近付かないで! アンタの抜け毛が体に付くだけで妊娠しちゃうわッ! 一日500本抜けてるんでしょッ! ハゲは性欲強いって言うもの! ハゲ! ハゲ! あと固焼きソバに お砂糖かけて食べるなッ!」

 

一刀「え? 何? なんなの この突如として始まった罵詈雑言ッ?」

 

桂花「アンタなんか ぱんつを喉に詰まらせて死んじゃえーーーッッ!」

 

 だだだだだッ、逃げていく桂花。

 ポツンと取り残された一刀はリアクション不可能だった。

 

 ぱたぱたぱたぱた……。

 がちゃん!

 

桂花「どうッ!」

 

思春「見事な暴言だったな」

 

 パチパチパチと、思春が惜しみない拍手を送る。

 何だかよくわからないが、反・一刀連合とは、こうして一刀に対し地味な嫌がらせをする団体であるらしい。……地味?

 

思春「あいわかった、ならば次は私が試してみよう」

 

 主旨を理解したらしく、今度は思春が出陣する。

 

 ガチャリ(ドアを開けて、外へ出る)

 …………(移動中 ※足音なし)

 ガチャドンッ(ノックもせずに隣の部屋のドアを開ける)

 

一刀「あー、あれ、どうしたの思春? ……それより聞いてよ、さっき桂花が来てさー、なんだか よくわからないことを叫びまわってさー。かまってほしい年頃なのかな? 校舎の窓ガラス壊して周りたいのかな?」

 

思春「………(ザンッ!)」

 

一刀「うひおへッ?」

 

 いきなり切りかかってきた思春の斬撃を、寸前でかわす一刀。

 

一刀「何今のッ? 殺す気? マジ殺す気? オレに自動回避のスキルが付いてなかったら今頃 本気で真っ二つだ!」

 

思春「……(ザンッ! ザンッ! ザンッ! ザンッ! ザンッ!)」

 

一刀「いやーッ! 無言で何度も切りかかってくるーッ?」

 

 ザコ兵士だったら200人は斬り捨てているであろう乱舞を、一刀はすべて紙一重で かわしていた。

 もはや思春は、一刀をマジ殺す気だった。ウラジミール=マジコロスキーだった。

 壁際まで追い詰められた一刀、もはや逃げ場はない。

 絶体絶命のピンチ。

 

一刀「いや、こんなときこそ、華琳から教わった、甘寧を追い払う魔法の言葉を使うときだ!」

 

 一刀は、華琳から護身のために教わっていた合言葉を唱える。

 

 

 

一刀「……刺客よ、その一万年どこまで縮めることができる?」

 

 

 

 このネタがわかる人 何人いるだろうなー?

 

思春「…………」

 

一刀「…………(ドキドキ)」

 

思春「一刻半」

 

 それだけ言い残して、思春は去っていった。

 

 …………(※足音なし)

 ガチャリ。

 

思春「どうだ?」

 

桂花「ハオ(好)よ、ハオ(好)! 思春 最高の仕事をしたわねッ!」

 

 桂花は大興奮で、思春のことを迎え入れた。

 

思春「喜んでくれたようで幸いだ」

 

桂花「この勢いでドンドンあの変態を追いつめていきましょう! 焔耶、次はアナタよ!」

 

焔耶「ええっ? 私かッ?」

 

 ご指名されて戸惑いの焔耶。しかし順当に言ったら次は彼女の番にしかならないわけで。

 前二人が ここまで がんばってくれた以上、蜀代表として この場にいる自分の面子にかけても、引き下がるわけにはいかない。

 

焔耶「わかった、この私の力で、お前たち以上に お館をヘコませてくれよう!」

 

 モチベーションは最高だった。

 そして、彼女も前二人と同様に、部屋を出て、隣の一刀部屋に突入する。

 

焔耶「お館! 私は お前のことが―――――ッ!」

 

 

一刀「シクシクシクシクシクシクシクシク………………」

 

 

 もう既に これ以上ないくらいにヘコんでいた。

 さもありなん。小娘からは鬼のように罵倒され、江族娘からは危うくタマをとられる寸前までいったのである。

 これで心が折れなければ、それは鋼のハートの持ち主に違いない。

 しかし一刀がもっていたのは ごく普通の一般人ハートだったらしく、その心はバキバキに折れまくっている。

 

一刀「シクシク、エグエグ、桂花がウザいよ、思春が恐いよ……」

 

 一刀は、もはや自力では立ち直れなさそうだった。

 焔耶は どっと溜息をついて、この使い物にならなくなった我が主に詰め寄る。

 

焔耶「オイ、お館」

 

一刀「……アレ? 焔耶いたの?」

 

焔耶「私は お館の、そーいう軟弱なところが嫌いだ!」

 

 やっぱり容赦のない焔耶。

 

焔耶「罵倒された? 斬りかかられた? それがなんだ、三国の大戦を潜り抜けてきた お館なら、その程度の困難 屁のツッパリにもならんではないか!」

 

一刀「おお! 何だかよくわからんが、凄い自信だ……!」

 

焔耶「しっかりしろ! 自信をもて! 何事にも諦めぬ不屈の精神をもつのが、桃香さまの信頼する お館だろう! ホラ、そんなところで いつまでヘタりこんでいる……!」

 

 焔耶は、うずくまっている一刀の手を取って、無理からに立たせる。

 

焔耶「……まったく、顔も埃だらけじゃないか」

 

 思春の攻撃から逃げ回るときに汚れたらしい。

 焔耶は手持ちのハンカチで、一刀の顔をグシグシ拭き上げる。

 

焔耶「よし、綺麗になった」

 

 そこまでくると、一刀も元気を すっかり取り戻していた。

 

一刀「ありがとう焔耶! 君のお陰で明日を生きる勇気が湧いてきたよッ!」

 

焔耶「フン! 桃香さまのためにも しっかり働くんだな!」

 

 憎まれ口を捨てゼリフに焔耶は退室した。

 そして戻ってみると、

 

桂花「…………」

思春「…………」

 

 ブリザードの視線が焔耶を出迎えたのだった。

 

思春「……何たるブザマ」

 

桂花「まったくね、あの変質者の心を挫くどころか、励ましてくるなんて、反・一刀連合にあるまじき失態だわ」

 

 それを聞いて、焔耶大いに焦る。

 

焔耶「ええっ? ちょっと待て! ビシッと叱りつけたろ? アイツの心は傷だらけだろッ?」

 

桂花「どこがよッ! あーもーッ、蜀のヤツらは使えないわねッ!」

 

 ガーンッ、もっとも傷付く一言。

 

桂花「いいわッ! 私たちが見本を見せてあげる! いくわよ思春ッ!」

 

思春「承知した」

 

 悪魔の二人が再出陣。

 目的地は、隣のアイツの部屋だった。

 

一刀「あ~、焔耶が癒してくれたおかげで心が軽やかだなぁ、仕事がスイスイ進むんだなぁ、人間だもの、かずと」

 

桂花「くたばれ変質者ぁ~ッ!!!!」

 

一刀「うぎゃああああああーーーーッ!!?」

 

 二人揃っての乱入に、先ほど以上の大混乱に陥れられる。

 

思春「斬るッ! 斬るッ! 斬るッ! 斬るッ! 斬るッ! 斬るッ!!」

 

一刀「ひぃッ? 死ぬッ、死ぬッ、殺されるぅ~~~ッ!!!」

 

思春「ひとつ! ふたつ! みっつ! よっつ! いつつ! 五光ッ!!!」

 

一刀「なつかしい わざッ!?」

 

思春「また つまらぬものを斬ってしまった……」

 

桂花「今度は私よ! この気持ち悪いウネウネの入った袋を喰らいなさいッ!」

 

一刀「ぎゃあああーッ! 投げつけられた袋の中からヘビが出てきたッ! カエルも、クモもッ! ヒヨケムシ や タイワンサソリモドキ や ウデムシ や コモリグモ や テイオウゼミ や アフリカマイマイもぉ~ッ!!」

 

桂花「どうッ? 門番の兵士に命じて集めさせてきたのよ!」

 

一刀「このキモ生物 集めた兵士 世界中回ったろッ!!」

 

 こうして一刀に大ダメージを与えた両雄は、意気揚々と引き上げてきた。

 

桂花「どうッ? これが心を折る攻撃というものよッ!」

 

焔耶「なるほど、勉強になる!」

 

 しかし よい子は絶対 桂花や思春のマネをしてはいけません。

 

焔耶「よしわかった! もう一度私にいかせてくれ! そしたら お館を、もう二度と立ち直れないようにしてみせる!」

 

桂花「その意気やよし! アナタに もう一度機会を与えるわ! いってきなさい!」

 

 許可を貰い、再び部屋を飛び出す焔耶。

 失敗は もう二度と許されない。蜀のヤツらは使えねぇ! などと言わせないためにも、全身全霊を賭けて一刀を叩きのめし、地獄のズンどこ、違う、ドン底へ叩き落すのだ!

 

焔耶「お館 覚悟ッ!」

 

 ドアを叩き破る。

 

一刀「ん?」

 

 そして対面した一刀は、裸だった。

 

 

 

 

 

焔耶「何故 裸ッ!!!!!!?」

 

 

 

 

 

一刀「え? イヤ、風呂に入ろうかと思って。……だって、思春は斬りかかってきて体中 埃だらけだわ血まみれだわ。それに桂花に投げつけられたヌルヌルのキモ生物の おかげで、湯で流さないと気持ち悪くてたまらないよ」

 

 と、意外に筋骨のしっかりした上半身を晒す一刀。

 

焔耶「で、でも、そう気軽に風呂なんて入れるのか?」

 

 そう、現代社会ならともかく、この世界での入浴は明らかな贅沢行為。水も薪も大量に使用する風呂は、週に数回しか利用することができなかった。

 

一刀「ふっふっふ……、そう思われていたのも前作までの話」

 

焔耶「なにッ?」

 

一刀「なんと新都に設営したオレの自室には、専用の浴室が完備されているのだぁーーーッ!」

 

焔耶「な、なんだってーーーーッ!?」

 

 なんだそのテルマエ・○マエと突っ込みたくなる豪華さに、焔耶は普通に驚愕する。

 まさか そんな豪華さが、三国時代の建築技術によって可能だとは。マジか、どこまで凄いんだ天の御遣いの技術力は?天のぉぉぉ、御遣いのぉぉぉぉ、技術力はぁぁぁぁ、世界一ぃぃぃぃぃッ!!! ということか?

 

一刀「これで華琳とかと楽しんだ後も ゆったりできるようになるゼ!」

 

焔耶「やっぱり目的は そこかッ!」

 

 当然と言うべき一刀の邪悪な思惑に、焔耶は義憤する。

 

焔耶「そんなことは許さんぞッ! 第一、為政者が率先して贅沢をしていては民に示しが付かないじゃないか! 即刻閉鎖すべきだ、その浴室はッ!」

 

一刀「ええぇ~? せっかく造ったのにぃ~? 大体風呂付き物件の どこが贅沢なんだよぅ?」

 

焔耶「贅沢に決まってるだろう! 沢山のお湯を、たった一人で使うなんてッ!」

 

一刀「なるほど、そういうことなら、焔耶も一緒に入ろうか?」

 

焔耶「なぬあッ?」

 

 唐突な トチ狂った提案に、焔耶は耳まで真っ赤にして慌てふためく。

 

焔耶「バババッ、バカお館! なんでそういう結論になるんだよッ?」

 

一刀「だって、一人で風呂使うのが贅沢でダメっていうんなら、二人で使えば問題ないだろ?」

 

焔耶「ううっ」

 

 一刀の理論に、反論を思いつけない焔耶。確実に相手のペースに乗せられているが、さりとて その流れを変えることもできない。

 

一刀「はーいーろーうー! 一緒に入ろうよ焔耶! 焔耶! それがエエンヤーッッ!」

 

焔耶「わかったよ! 一緒に風呂に入ればいいんだろ!」

 

一刀「わーい! わーい! わーい!」

 

焔耶「ああもう……、何でこんなことに……。って! 服脱ぐところを凝視するなッ! 風呂には入ってやるから、全部脱ぐまで あっち向いてろッ!」

 

 これより、スーパー一刀タイムの開幕です……。

 

焔耶「コラお館ッ! 脱いだあとも私のことを凝視してんじゃないッ! ……って、ずいぶん小さな湯船なんだな、私室付きじゃ仕方ないかもだが……」

 

焔耶「って! こんなに小さい湯船じゃ、体が密着するじゃないかッ! やめろ お館ッ! ムリに体をねじ込んでくるなッ! 当たる当たる、お尻になんか当たってるッ!」

 

焔耶「もう湯船じゃ落ち着かん、先に体を洗って……。え? 背中を流してくれって? それはかまわないが…、は? ヘチマを使わずに、石鹸を胸で泡立てて、それを直接……、なに考えてるんだアンタッッ!!!」

 

焔耶「結局やってしまった……。え? 今度は お館が私を? ……いいよ そんなに律儀にならんでも。……いいってば! キサマ、それは私が敏感肌と知っての所業かッ! だから やめ……、やんッ! 変な声でる! きゃあ!」

 

焔耶「もう上がる……、百数えたら上がるからな……。いーち、にーい、……え? 口付けしながら数えてみろって? ――――アンタはバカかッッ!!!!!!!?」

 

焔耶「……ふゃーん、ふぃーい、ぶぉーお、りょーく…………」

 

 

 スーパー一刀タイム終了です。

 こうして歌舞伎町 顔負けの お風呂を楽しんだ後、湯上り卵肌でポカポカしながら戻ってきた焔耶は……。

 ……一瞬で湯冷めする、桂花と思春のコールドアイを浴びることになった。

 

思春「……キサマには失望したぞ」

 

 なんか凄い失望されてる。

 

桂花「フン、どうやら私の人選が間違っていたようね。何かしら? 何が悪かったのかしら? 巨乳? そうね、考えてみたら この三人の中で焔耶だけが巨乳だもの! すべての元凶は それだわ!」

 

焔耶「ちょっと待った! アレは仕方なかったんだ、その場の流れというか、勢いというか……!」

 

思春「桂花よ、コイツは もはや信頼できん、別のヤツと入れ替えた方が いいのではないか?」

 

 無慈悲な思春の提案。ってか、いいんですか思春さん、アナタ勝手に貧乳仲間に加えられてますよ。

 

桂花「そうね、新人のめぼしは もう付けてあるわ。……董卓んところの詠なんてどうかしら、変態のことは嫌いだし、主への忠義は厚いし、―――なにより貧乳よッ!!」

 

焔耶「ホントに ちょっと待ってーーーーッ!!」

 

 泣きの一回。

 泣きの もう一回が入りました。

 彼女の武将としての名誉に賭けて、信用にかけて、今度こそ一刀をヒドイ目にあわせて見せる。

 

焔耶「お館 お命頂戴ーーーーッ!」

 

 もはや刺客と なんら変わりない文句で部屋に乱入する焔耶。

 しかし、それを迎える一刀は………。

 

 寝ていた。

 

焔耶「ええぇ~~?」

 

 拍子抜けの展開に、ガクリと肩を落とす焔耶。

 おそらく、風呂上りで気持ちよかったところでウトウトしてしまったのだろう。起きてるときは邪悪ながら、寝顔は子供のような一刀だった。

 

一刀「……むにゃむにゃ、もう食べられな~い」

 

 えらくテンプレな寝言だった。一体どんな夢を見ているのか?

 

一刀「愛紗の料理は食べられな~い」

 

 悪夢だった。

 しかし、悠長に構えていられる余裕は。今の焔耶にはない。

 相手が眠っているというなら、今この状態は やりたい放題だ。

 どうしてくれようか? 焔耶の装備から考えて、ハンマーを限界まで溜めて大回転で殴り倒すか。それとも罠を使い、落とし穴→大タル爆弾Gのコンボでいくか。甲乙付けがたいところだが……。

 

一刀「…………うぅん、焔耶……」

 

 一刀が寝言で、焔耶の名を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

一刀「結婚しよう 焔耶…………」

 

 

 

 

焔耶「はッッッッッ!!!!!?」

 

 

 

 

 

 今 凄い爆弾発言が流れてきたようなッ?

 なんつった?

 今 寝言で なんつった この男?

 

焔耶「けっこ、けっこけっこけこけこけこ…………?」

 

 あまりの衝撃的な一言に、焔耶は不覚にも我を忘れて右往左往する。一歩、二歩、無意味に足を動かしていると、何故か落ちてたバナナの皮を踏んづけスッテン。

 

焔耶「きゃああッ?」

 

 周囲の家具を盛大に巻き込みながら転倒する焔耶に、一刀も浅い まどろみから引き戻されて、

 

一刀「ううん…? アレどうしたの焔耶? また戻ってきて」

 

 完全に見つかってしまった焔耶だった。

 しかも、顔面が茹蛸のように赤くなっているのも、隠すことができない。

 

焔耶「あ……、し……」

 

一刀「ん?」

 

焔耶「幸せにしてくれないとブン殴るからなッ!」

 

 混乱の極みに出てきた言葉がそれだった。

 もっとも、そこに至る最初の言葉を、夢の中で呟いただけの一刀は、その意味するところを まったく読み取ることができない。

 

一刀「……ふむ」

 

 しかし、そこは女運最強の天の御遣い。すべてはノリだけに任せて、

 

一刀「うん、幸せにするよ」

 

焔耶「ホントかッ? 私なんかでいいのかッ?」

 

一刀「バカだなあ、焔耶は とっても素敵な女の子だよ!」

 

焔耶「子供はアメリカ総人口ぐらいほしい! あと白い家に住んで、白い犬を飼いたい!」

 

一刀「わかったよ、焔耶 犬苦手なのにね」

 

焔耶「それぐらい克服してみせる! お館が望んでくれるなら!」

 

 何故そこまで乙女チックになった? と聞かずにはおれないほどの焔耶だった。

 

一刀「じゃあ、最後にこの一言で閉めてみようか?」

 

 一刀は焔耶に耳打ちする。

 

焔耶「うむっ? ……わかった、そう言えば いいんだな」

 

 焔耶は息を吸い込み、たからかに叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

焔耶「私を幸せにしてくれるものはいるかッ!!」

 

一刀「ここにいるぞ~」

 

 

 

 

 

 

 

                  終劇

 

華琳「……なにコレ? これで上手くまとめたつもり?」

 

蓮華「上手いことを言ったつもりかしら? ……あ、思春、正座崩しちゃダメよ」

 

華琳「桂花もね。勝手なことをしでかした反省を、しっかりして頂戴」

 

 隣の部屋には、いつの間にか華琳・蓮華の君主トリオの内2名が揃っていた。

 思春・桂花と腹心たちの姿が見えないのが気になり、探してみれば よからぬことを企んでいたので、正座させてる最中である。太腿には石畳を5枚ほど乗っけてある。

 

蓮華「しかし一刀が あの子を娶るとは、大穴もいいところだったわね」

 

華琳「まあ危惧することもないでしょう。どうせ新都に集う 各国の将全員、一刀の妻みたいなものなんですから。いずれ私たちを含め全員に、一刀は何らかの形を示してくれるでしょうよ。……ねえ桃香?」

 

 と話を振られたのは、君主トリオ最後の一人、劉備玄徳こと桃香だった。

 焔耶には直接の君主に当たる桃香。その彼女が、うららかな笑顔で、隣室の、甘々な雰囲気を疑っている。

 

桃香「………………………………ふふっ」

 

華琳「と、桃香……?」

 

桃香「ご主人様って、一度吐いた言葉は 八つ裂きにしても覆らないのかしら?」

 

蓮華「恐いッ?」

 

 一刀は早急に桃香にもプロポーズする必要があった。

 

              今度こそ終劇


 
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