No.149453

真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 第三・一話~

狭乃 狼さん

刀香譚の拠点でございます。

タイトル通り、三話の後のお話です。

内容については、ご一読のほどを。

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2010-06-10 14:40:35 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:31156   閲覧ユーザー数:26013

 

 桃香は自分の部屋で、布団に包まったまま、自己嫌悪していた。

 

 

 

 昼間、愛紗に対し、つい、口を付いて出てしまった一言。

 

 

 

 その時の愛紗の表情が、頭から離れないでいた。

 

 

 

 彼女らと義兄妹になろうと言い出したのは、ほかならぬ自分だ。

 

 

 

 なのに、その関係を壊しかねないような事を、口走ってしまった。

 

 

 

 それは、今日の昼間、邑の中を巡回中のこと――――――。

 

 

 「劉備ちゃん、おはよーさん」

 

 「おはよう、おじさん」

 

 「劉備ちゃん、今日はいい野菜が入ってるよ!どうだい?」

 

 「わ!おいしそ~!うん、後で買いに来るね!」

 

 声をかけてくる人々に、笑顔で答える桃香。

 

 「今日もいい天気~。お散歩・・・じゃない、巡回日和だね~」

 

 ぽかぽかとした春の陽気の中、のほほんと歩く桃香。

 

 「・・・ちょっとのどが渇いちゃったな。あ、あそこでお茶しよ」

 

 そういって、近くにある飯店に入る。

 

 「おや、劉備ちゃん、いらっしゃい」

 

 「こんにちは。えっと、冷たいお茶と、お団子、ください」

 

 「はいはい」

 

 奥へと引っ込む女将。

 

 しばらくして、お茶と団子が運ばれてくる。団子をほおばり、茶をのどに通す。

 

 「はふ~。・・・やっぱりここのお団子はおいしいな~。・・・って、あれ?」

 

 その視界の中に、ふと飛び込んでくる、見知った顔が二人。

 

 「愛紗ちゃ~ん!鈴々ちゃ~ん!」

 

 ぶんぶんと、手を振って二人を呼ぶ。

 

 「あ、桃香おねえちゃんなのだ!」

 

 「桃香さま?」

 

 「二人とも、今日は非番だよね?お散歩中?」

 

 そばに来た二人に問いかける桃香。

 

 「あ、はい。この邑のことをよく知っておこうと思いまして」

 

 「お姉ちゃんは何してるのだ?」

 

 「おさん・・巡回中だよ。で、ちょっと休憩中」

 

 あわてて言い直す桃香。

 

 「なるほど。・・・さぼられている訳ではないと」

 

 「や、やだな~、愛紗ちゃんてば。そんなことないってば~」

 

 「愛紗、鈴々も団子が食べたいのだ」

 

 「ま、いいでしょう。女将、団子と茶を二つくれ」

 

 

 

 「いい天気だね~」

 

 「そうですな・・・」

 

 「ZZZ・・・」

 

 「鈴々ちゃん、寝ちゃってる」

 

 「まったく。こんなところで寝たら風邪を引くぞ、鈴々」

 

 寝息を立てる鈴々を、やさしく起こそうとする愛紗。

 

 「ふふ」

 

 「な、何でしょうか」

 

 「ううん、仲がいいんだな~って」

 

 「物心ついてから、共に居りますから。・・・あの、桃香さま、ぶしつけながら、お聞きしたいことが」

 

 「なに?」

 

 愛紗がまじめな、そして少し照れた表情で、桃香にあることを聞く。

 

 そして、それを聞いたとたん、桃香がその表情を一変させる。

 

 「ですので、その、義兄上が喜ばれそうなものをお教えいただけたら、と」

 

 「・・・や・・・よ」

 

 「え?」

 

 すっく、と。突然立ち上がる桃香。その肩が、小刻みに震えている。

 

 「いやって言ったの!!」

 

 「と、桃香さ、ま?」

 

 きっ!と、愛紗を睨む桃香。

 

 「・・・私だって、わ、たし、だっ、て・・・!!」

 

 桃香の目に、涙が浮かび始める。そして、

 

 だっ!!と、走り出す。

 

 「桃香さま!?」

 

 思わず立ち上がる愛紗。

 

 「・・・どうしたのだ~?」

 

 目を覚ました鈴々には何も答えず、走り去った桃香の後姿を見つめる愛紗。

 

 

 

 「わたしって、馬鹿だ・・・」

 

 布団を頭から被ったまま、一人ごつ、桃香。

 

 昼間、愛紗から聞かされたその一言、

 

 「・・・私は、義兄上を、お慕いしております」

 

 ズキン!!と。胸に痛みが走った。

 

 自分が、絶対に口にできないその言葉を、他の人から始めて聞かされた。

 

 私塾時代、兄と仲のよかった、白蓮、麗羽、華琳、蓮華からも、聞くことのなかった言葉。

 

 それを聞いたとき、桃香の頭の中は真っ白になった。

 

 気がついたら、とんでもない事を口走り、逃げ去っていた。

 

 知られてしまった。

 

 自分が兄に抱く、禁忌の感情を。

 

 それも、義姉妹の契りを交わした義妹に。

 

 「はあ~~~~~~~」

 

 これで何度目のため息だろうか。

 

 「・・・お風呂でも入って、あたま冷やそ」

 

 寝台を出て、着替えを持ち、部屋を出る。

 

 楼桑村が豊かな理由の一つに、豊富な湯量の温泉がある。

 

 なので、邑ではこの時代には珍しく、各家に持ち風呂が備わっている。

 

 とぼとぼと廊下を歩き、風呂場に着く。扉を開け、中に入り、服を脱ぐ。

 

 ふと、姿見の中の自分と目が合う。

 

 その前に立ち、自身の体を上から下まで見やる。

 

 子供のころから瓜二つだった、自分と兄。

 

 その違いが現れたのは、女としての特徴だけ。桃香は自身のふくよかな胸に触れる。

 

 「・・・こんなものあったって、何の役にも立たないのに」

 

 愛しい人に対して使うべき女の武器。けれど、自分はこれを使えない。

 

 なぜなら、愛しい相手は、実の兄だから。

 

 「はあ。何してんだろ、私」

 

 脱衣所を出て、湯につかる。

 

 そこへ。

 

 

 ガラガラガラ、と。扉の開く音。

 

 入ってきたのは、

 

 「愛紗・・・ちゃん?」

 

 「桃香・・・さま?」

 

 しーーーーーーん。

 

 と、空気が固まる。

 

 長い沈黙の後、

 

 「くしゅっ!!」

 

 愛紗がくしゃみをした。

 

 「・・・風邪引くよ、入ったら?」

 

 「あ、は、はい・・・」

 

 湯につかる愛紗。

 

 再びおとずれる沈黙。

 

 「「・・・・・・・・」」

 

 そして、ほぼ同時に、

 

 「「あの!!」」

 

 声を出し、見詰め合う二人。

 

 「・・・何?愛紗ちゃん」

 

 「・・・その、桃香さま、は、もしや、義兄上を・・・」

 

 「・・・笑ってくれていいよ?ううん、軽蔑してくれていい。実の兄が想い人だなんて、変だよね?」

 

 「・・・そうですね。変です。おかしいです。狂ってます。どうかしてます」

 

 愛紗のその返答に、カチンときた桃香。

 

 「・・・ちょっと、言い過ぎじゃない?」

 

 「事実を答えただけです。」

 

 「愛紗ちゃんに何がわかるの!?どんなにどんなに思ったところで、絶対に叶わない気持ちの何が!!」

 

 ザバッ、と、立ち上がって叫ぶ桃香。

 

 「私も同類ですから」

 

 「え?」

 

 愛紗の言葉に、きょとんとする桃香。

 

 「・・・とはいえ、私の大切な人は、もう居りませんが」

 

 「愛紗・・・ちゃん?」

 

 「私の兄は、幼いときに、賊に殺されました。私のすぐそばで。私が自分の想いに気づいたのはその時です。・・・すでに手遅れでしたが」

 

 「そんな・・・」

 

 愛紗は桃香を見つめる。

 

 「桃香さま、確かに実の兄を愛してしまうのは、禁忌です。ですが、人の想いは理屈でないのも、また事実です」

 

 「愛紗ちゃん・・・」

 

 「・・・だからと言って、私も譲る気はありませんが」

 

 「む。・・・いいよ。なら、私も正々堂々と受けて立ってあげる」

 

 「はい。・・・ふふ」

 

 「あはは」

 

 「「あははははははは」」

 

 

 

 翌日から、桃香は今まで以上に一刀に甘えるようになった。

 

 嫉妬を抑えることも、少しだけ、緩めた。

 

 一刀が誰か別の女性と話しているのを見ただけで、凄まじい嫉妬の炎を燃やしては、

 

 靖王伝家を振り回し、一刀を追いかける。

 

 時にはそこに、愛紗も加わって。

 

 一刀と自分は決して結ばれない。

 

 それは判りきっている。

 

 だから、兄が誰かふさわしい伴侶を見つけるまで、自分は徹底的に甘え続ける。

 

 自分のことを、嫉妬の女帝と言うものが、増えつつあっても。

 

 好きなものは好きなんだから。

 

 だから、

 

 (覚悟してよね、一刀。私の、愛する、お兄ちゃん)

 

 

 あとがき

 

 というわけで、拠点、桃香編です。

 

 最初は愛紗も込みで書くつもりだったんですが、

 

 ちょっと長くなりそうだったので、まずは桃香だけのお話にしました。

 

 

 

 女心、しかも実の兄妹での恋の悩み。

 

 ・・・も~、難産。頭が痛いです。

 

 とりあえず、妄想純百パーセントです。

 

 いろいろなご意見、ご感想、お待ちしております。

 

 

 

 次回は愛紗編のつもりです。

 

 また難産かな~。

 

 それでは、また。

 

 再見~。

 


 
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