No.149199

真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 第五話

狭乃 狼さん

刀香譚の第五話をお送りします。

黄巾編は今回までです。

まずはお読みください。

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2010-06-09 12:42:40 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:33831   閲覧ユーザー数:27989

 冀州・平原郡。

 

 ここは今、おびただしい数の賊軍に包囲されていた。

 

 「むう・・・。まさかついて早々にこのようなことになるとは」

 

 「だから言ったでしょう!寄り道なんてするから、こんな目にあうんです!!」

 

 槍を手に持つ女性に、眼鏡の女性が大きな声で怒鳴る。

 

 「ぐう・・・・」

 

 「・・・こんなときまで・・。起きなさい、風!!」

 

 「おお、あまりの絶望的状況につい」

 

 頭に何かが乗った少女に、眼鏡の少女が突っ込む。

 

 少女たちは現在、旅の途中であった。

 

 本来なら今頃は、冀州を抜けて幽州に到着していたはずだった。

 

 なのに、

 

 「だがな稟、もしあのまま幽州に向かっていたら、どうなっていたと思う?昨晩のあの至高の出会いは無かったのだぞ?」

 

 「それは星だけでしょう。私たちはたかだかメンマのために、こ」

 

 「たかだかとは聞き捨てならんな、稟よ。あれこそまさに!この世の宝といってよい味だったでは無いか!」

 

 「たしかにあれはおいしかったですね~。稟ちゃんもばくばく食べていたじゃないですか」

 

 「そ、それはそうだけど・・・」

 

 そう、一行が予定を変更してまで平原に来た理由、それは星、趙雲が聞きつけた、最高級メンマを扱う店が、

 

 ここ平原にあるといううわさであった。

 

 連れである稟、郭嘉・字を奉孝と程立・字は仲徳こと、風の二人は反対した。

 

 これまで星のメンマ好きがらみで、ろくなことに遭遇したためしが、無かったからだ。

 

 そして今回もその予想通り、この町は黄巾の大軍に囲まれてしまっていた。

 

 「もし仮に、この町に逗留しなかったらどうなっていたと思う。あの至高の味を、ついでに、多くの民たちの命が失われていたであろう!

 そうなってはこの趙子龍の名折れというものだ!!」

 

 ((民の命はついでなのか))

 

 と、口には出さず突っ込む稟と風。

 

 「何はともあれ、こうなった以上は町のもの達に協力し、なんとしてでも守り抜く!!いいな、稟、風」

 

 「・・・仕方ないでしょう。守備隊の人たちにも頼まれましたし」

 

 「風もがんばるのですよ。・・・ただ、戦力差だけはなんとも」

 

 「そうだな・・・。援軍が来るまで、果たして何日かかるか」

 

 

 

 「平原に向かえだって?」

 

 「は。わが方には余分な戦力は無く、正面の戦力を抑えるのが精一杯。そこで、公孫賛様たちには、賊に包囲されている平原の救助に向かっていただきたいと、わが主・袁本初の言葉にございます」

 

 幽州の賊軍を壊滅させた白蓮たち幽州軍は、冀州の袁紹を援護するため、幽州と冀州の境を越えた。

 

 そこに、袁紹軍の将を名乗るものが、使者としてやって来た。

 

 「・・・どう思う、一刀」

 

 「どうもこうも無いさ。麗羽が実際何考えてるか、まあ、大体は見当つくけど、平原の人たちが危機なのに変わりは無いんだ。すぐにでも向かうべきだろう」

 

 意見を求めてきた白蓮に、一刀が答える。

 

 「そうだよ白蓮ちゃん。「小さい町なんか助けたって目立たないですわ!」とか言ってると思う人のことなんて、気にする必要ないよ」

 

 「こらこら、桃香。そういうことは思ってても言わない。ほら、沮授さんが困った顔してる」

 

 「え?あ、あはは、・・・すいません」

 

 「・・・何気にお前もひどいぞ、一刀」

 

 「いえ、お気になさらず。・・・おっしゃるとおりのことを、姫様が言っておられました。お恥ずかしい限りです」

 

 主君の悪口を言われたというのに、かえって申し訳なさそうな表情の沮授。

 

 「ごほん!!それで沮授どの、平原の戦力と、それを囲む賊の数は?」

 

 「平原の守備兵は三千。賊の数は、・・・三万、です」

 

 「はい~~~~~?」

 

 呆然とする一同。

 

 

 「ここからだと、平原までは三日というところですが、これでは到底間に合いませんよ、義兄上」

 

 「わかってるよ愛紗。・・・桃香、すぐに動ける騎兵は?」

 

 「ん~、五百って所だと思う」

 

 「白蓮の方は?」

 

 「こっちは白馬義従五千なら、すぐにでも動けるが。・・・一刀、お前まさか」

 

 「うん。騎兵のみでまずは先行する。その途中に、ここにある邑の人たちに頼んで、本隊用に食料なんかを用意してもらっておく」

 

 地図を見ながら、その一点を指す一刀。

 

 「輜重隊は置いていくと?」

 

 斧を担いだ女性、華雄が問いを挟む。

 

 「ああ。何より時間が惜しいからね。桃香、鈴々。君達は本隊を。俺と白蓮、越さん、華雄さんで、騎兵を率いる。輜重隊は愛紗に任せる。いいね?」

 

 「「「「「「応(なのだ)!!」」」」」」

 

 「よし!!出陣するぞ!!」

 

 

 

 場面は再び平原。

 

 黄巾の将、斐元紹はいらだっていた。

 

 3万もの手勢でこの町を攻めたはいいが、十日もたってもいまだに落とせずにいたためだ。

 

 城壁に取り付いて昇ろうとすれば、上から煮えたぎった湯や、どろどろに溶けた鉄が降って来る。

 

 さらに、こちらの食事時を見計らっては、少数で奇襲を掛けてきて、散々にかき回してくれる。

 

 おかげで一切、気の抜けない状況になっていた。

 

 そんな時だった。

 

 はるか後方から、馬蹄の音が響き、「劉」と「華」、そして二つの「公」の旗を掲げた一団が、彼らに迫ってきた。

 

 「馬鹿な!!幽州勢だと!?」

 

 何でこんなに早く、と斐元紹は疑問に思った。

 

 たとえどんなに馬を早く飛ばしたところで、幽州との境からは二日はかかるはずだ。

 

 細策の話では、やつ等が出陣したのは昨日の昼頃だという事だった。

 

 ありえない。

 

 だが混乱しつつも、斐元紹は自身の周りにいる兵達を反転させ、幽州軍にあてた。

 

 すると、「劉」と「華」の旗が、左右に展開。正面の「公」の部隊だけがそのまま突っ込んでくる。

 

 「こちらを囲むつもりか!!ならば!!」

 

 それにあわせて、斐元紹も兵を左右に展開し、鶴翼の陣に変化する。

 

 そこまでは、彼の判断は正しかった。

 

 しかし、「公」の旗の部隊が突然、反転した。

 

 前曲のもの達が、我先にと、反転した部隊を追いだし始める。

 

 「きさまら!!何をしている!!陣を乱すな!!」

 

 斐元紹が叫ぶ。しかし、時すでに遅し、であった。

 

 「よしいまだ!!敵の横腹を食い破れ!!」

 

 「華雄隊!!劉翔隊に遅れるな!!行けーーーー!!」

 

 一刀と華雄の部隊が、乱れた賊軍に横撃を掛ける。

 

 賊軍は大混乱に陥った。

 

 

 平原の城門。

 

 「あれはどこの軍でしょうか」

 

 「ふむ。なかなかの手並み」

 

 「ですね~。指揮官さんは結構優秀な人みたいですね~」

 

 星と稟、風の三人が、城外で賊と戦う一刀たちを見ていた。

 

 「ここは好機だな。我らもうってでるか」

 

 「ですね~。前後から挟撃されれば、敵さんもたまりませんでしょうし」

 

 「ならば行くとするか。全軍、出陣だ!!」

 

 

 その後、平原から星達が討って、出てくると、戦局はほぼ決した。

 

 さらに、おくれて到着した桃香たちが戦線に加わると、賊たちは蜘蛛の子を散らしたように潰走を始めた。

 

 「なんでだ!!何でこんなことになるのだ!!」

 

 斐元紹はおもわず叫んでいた。

 

 「あの小娘どもを利用し、いずれはこの”外史”を破壊することも出来た筈なのに!!」

 

 「どういうことだそれは?”外史”とは何のことだ?」

 

 斐元紹の近くに、いつの間にか一刀がいた。

 

 「・・・貴様か。・・・やはり貴様がすべてを狂わすファクターなのだな」

 

 「ふぁくたあ?・・・なんだそれ?それに、俺はあんたとあったことなんて無いはずだけど」

 

 「ふふ・・・。そうか、そうだったな。今の貴様は”あいつ”であって”あいつ”でないのだったな。まあいい。今ここで貴様を殺せば、再びチャンスはやってくるはず」

 

 剣を一刀に向ける斐元紹。

 

 「わけのわからんことばかりだな。・・・俺に勝てると思うか?」

 

 「くくく・・・。確かに、本来の”こいつ”なら勝てないだろうな。・・・だが!!」

 

 斐元紹が一枚の呪符を取り出す。すると、それが何枚にも増え、そして、

 

 「?!クグツか?!」

 

 「ほう、知っているか。ならばこやつらの力も知っているだろう!!さあ行け!!やつを殺せ!!」

 

 「く!!」

 

 次々と一刀に襲い掛かる、クグツたち。

 

 一刀はそれを次々に斬っていく。

 

 「くそ!!こいつら力はたいしたことは無いけど、この数では・・・!!」

 

 そのときであった。

 

 「はーーーーっはっはっは!!」

 

 「な、なんだ?」

 

 突如戦場に響く高笑い。

 

 それは、近くの崖の上から。

 

 そこには。

 

 

 蝶の仮面を掛けた、一人の、

 

 「・・・変人?」

 

 「誰が変人だ!!わが名は華蝶仮面!!そこのもの!!助太刀いたす!!とおっ!!」

 

 崖から飛び降り、そのまま周囲のクグツを薙ぎ倒す、華蝶仮面。

 

 さらに、

 

 「一刀ーーー!!生きてるーーー!?」

 

 「一刀ーーーー!!無事かーーーー!!」

 

 「義兄上ーーー!!」

 

 「お兄ちゃん、今助けるのだーーー!!」

 

 「劉翔!!待ってろ今行くぞーーー!!」

 

 次々にクグツたちを吹き飛ばしながら、一刀の元に集まる桃香たち。

 

 「みんな!!」

 

 「おやおや、愛されていますな、あなたは」

 

 「ちっ、これまでか」

 

 舌打ちし、ふわっ、と宙にうく斐元紹。

 

 「!!逃げるのか!!」

 

 「ふふ・・・。またいつかお会いしましょう、劉北辰殿。・・・いや、この世界の”北郷一刀”」

 

 すう、と。その姿が掻き消える。

 

 あっけに取られる一刀たちであった。

 

 

 それから数日後、青州の黄巾党が、兗州の曹操によって討伐されたと、知らせがもたらされた。

 

 黄巾の乱は終結した。

 

 

 時に、漢の初平元年。六月のことである。

 

 

 追記:

 

 このときの幽州軍の一日行について、その内容を記した記録は、史書には一切見られない。

 

 唯一、著者不明のある書物に、なぜかこのときの物と思しき記述が、あった。

 

 曰く、

 

 「戦の後に合流した彼らからは、それは凄まじい、臭気がした」

 

 と。

 

 その書物の名は、「めんまの味力」といった。

 

 

 あとがき

 

 さて、刀香譚第五話です。

 

 どうでしたでしょうか。

 

 ほんとは星だけ登場の予定だったんですが、あえて、稟と風も出しました。

 

 仲間になるかどうかは、はてさて。

 

 

 

 で、変な複線のようなものを張ってみました。

 

 あの男の正体は果たして?

 

 例のどっちかなのか、それとも、ほかのやつなのか。

 

 今後にご期待ください。

 

 

 で、最後の追記なんですが、一日行で何があったのかは、あえて書きません。

 

 てか、最初は書こうとしたんですが、ハム姉妹とかゆうまに、

 

 「「「書いたらコロス」」」

 

 と言われました(ガタブル、ガタブル)

 

 なので、皆様のたくましい想像力にお任せしたいと思います。

 

 

  

 さて、黄巾編はこれにて終わりです。

 

 次回はリクのあった、拠点をかこうかな。

 

 ではまた次回にて。

 

 ごきげんよう~~。

 


 
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