No.133575

恋姫無双 3人の誓い 第三話「覇王の始まり」

お米さん

今回で第三話目となります。今回は前回より少し過去にもどって違う人視点でいきます。あとオリキャラもでてくるので、その辺も期待して読んでください。

2010-04-01 06:44:53 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:3589   閲覧ユーザー数:3174

昼間だというのに、空に一筋の流星が過ぎていくことに気づいた。

「流れ星?・・・まさかあの占いの?」

「・・・様!出立の準備が整いました。」

「・・・様?どうかなさいましたか?」

「いいえ・・・なんでもないわ。予定通り出立する、無知な悪党どもに奪われた貴重な財産、なんとしても取り戻すわよ!・・・総員出撃!」

 

 

 

 

 

 

なんだか・・・明るい。もう・・・朝なのか・・・?

じゃあ起きて、顔洗って、飯食って、それから____________。

俺はまだ、ぼんやりした頭で予定を確認しながら、ゆっくりと目を開けたが、そこには天井がなくかわりに青い空が広がっていた。

「・・・・・・・・・・・あれ?」

一瞬、思考が停止する。

「なんじゃこりゃーーーーーーーーーーーーー!!」

目の前の光景に、思わずそう叫んだ。

 

 

 

 

 

 

果てまで抜ける青い空、浮かぶ雲はずっと閉じていた目には痛いほど真っ白だ。そして周りは無人。

もちろん俺の叫びにも、リアクションを返してくれる人なんてどこにもいないわけで・・・。

「ど、どこだここ!?」

地平線はなんだか黄色っぽいし、風も妙に乾いてて、というかどう見てもフランチェスカ・・・いや、そもそも日本の光景でないような気がする。

「でも、夢でもないんだよな・・・?」

ほっぺをつねっても髪を引っ張っても、ちゃんと痛いってことは・・・夢じゃないのだろう。

 

 

 

 

 

豪快なセットを組んでその中に放り込むとか、寝ている間に海外にこっそり連れ出した・・・なんてドッキリなら説明がつくのだろうけど、残念ながらそんなとんでもないことのできる友人なんて心当たりがない。ましてや・・・蒼介や飛鳥には無理だ。

「せめて、何かヒントがあればなぁ・・・」

ポケットを漁っても、小銭が少々しかでてこない。思わず溜息がでる。

「・・・どっちに行けばいいのかな。」

太陽はまだ真上で、たぶんお昼ごろ。今のおれに分かるのはそれだけだ。

ただ、方向が分かっても、どこに何があるか分からない以上、どこに行けばいいのか分からないわけで_______________。

 

 

 

 

 

 

「おう兄ちゃん。珍しい服着てんじゃねえか。」

独り言意外に声が聞こえたのはその時だった。

 

「・・・・・コスプレ?」

声を掛けてきたのは、三人の男だった。

とりあえず、東洋系の顔つきであるけど・・・その格好は、鎧というかなんというか、少なくとも日本で普通に通りを歩いてる格好じゃない。

「はぁ?何言ってんだこいつ?」

「さぁ?あっしに聞かれても・・・」

「・・・おらもわがんね。」

 

 

 

 

 

「まぁいい、面倒くさい。兄ちゃん、金出してもらおうか?」

その言葉と共に頬に触れたのは、冷たい鉄の感触だった。

「・・・は?」

ぴたぴたと頬をたたくそれは、薄く研がれた刃を備え、包丁よりも大振りな、ナイフの刃。

「え、えっと・・・?」

銃刀法・・・違反?いや、ここが海外なら日本の法律関係ないしなぁ・・・。

「言葉は通じてるんだよな?なら、テメェの持ってる金、全部置いていきな。ついでにそのキラキラした服もだ。」

「え、あ、は、はい・・・っ!お金は・・・すいません、これだけしかないんですけど?」

とりあえず、ポケットの中に入っていた小銭を全部取り出して、脇の小さな男にそっと差し出した。

俺も剣道部員だが、真剣を持った相手に太刀打ちなんてできない。

 

 

 

 

 

「・・・なんだこりゃ?」

「何って・・・お金だけど・・・」

もしかして通貨ってドルとかユーロとかか・・・?

「ワケわかんねぇこと言ってんじゃねぇ!」

「ぐぅっ!」

一瞬、何が起こったのか分からなかった。

お腹を突き上げられた衝撃に、中の空気が全部押し出され。俺はその場で吹っ飛んで、乾いた地面の上を二転、三転。

蹴られたと気づいたんのは、その後だ。

 

 

 

 

 

 

「おいおい、服を蹴るんじゃねぇよバカ野郎が。汚れるじゃねぇか。」

「こりゃしまった、すいやせん、アニキ。」

口の中に広がるのは、ぬりりとした鉄の味。立ち上がろうとするが、足がガクガクと震えてできない。

「やれやれ・・・とっととバラして、服だけ引っぺがすか。」

リーダーらしきヒゲ男の口調には、なんの凄みもない。それこそ、コンビニでタバコやジュースを買うような、軽い口調。

だから、その言葉を理解するまでに・・・ほんの少しだけ、時間がかかった。

 

 

 

 

 

「お、おい!バラすって・・・殺すってことか!?」

「・・・頭おかしい上にそんな変な服を着てりゃ、奴隷にも売れねぇだろうが。引き取ってもらえねっつの。」

「ち、ちょっと待て・・・奴隷って・・・!」

俺の知っている常識とはかけ離れた単語をサラリと言う目の前の男達の態度に、冷たい汗となった危険信号が背中をかけ落ちる。

「ふ、ふざけんなよっ!なんだよ奴隷って!」

震える声をなんとか搾り出して、自分の中の恐怖を打ち払おうと叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

「ああもううるせぇ!おい、さっさとやっちまうぞ!」

「く・・・っ!」

抜き身の刃を構える男の姿に、恐怖とも締め付けともつかない感情が、俺の身体の自由を奪う。

「だ、誰か・・・っ!」

「こんなところに誰も来ないっての!おい、こいつの口、とっとと塞いじまいな!」

 

「ちょいと待ちな!」

どこからか声が聞こえた。

「っ!」

「だ、誰だっ!」

男達が後ろを振り返ると、そこには俺の身長くらいある長剣を持った長身の男がいた。

「たった一人相手に、三人がかりなんて、なっさけないね~!」

「ぐふっ!」

声が響いた次の瞬間。既に三人組の一人は膝を折り、その場に崩れ落ちていた。

 

 

 

 

 

「な・・・っ!何だこいつ!ぐはぁっ!」

潰れたような無様な叫び声を上げて、小柄な男が吹っ飛んだ。

それが、長身の男が振り抜いた長剣によるものだと気づいたのは・・・剣の構えが変わっていることに気がついてから。

おいおい。剣の動きなんか、これっぽっちも見えなかったんですけどっ!?

「なんだなんだ~?所詮は弱者しかいたぶることしかできない三下か~?」

「くっ・・・おい、お前ら逃げるぞっ!」

「へ、へぇ・・・」

「だ、だな・・・」

「あっ!ちょと待てコラっ!」

 

 

 

 

 

「あ、あの・・・」

・・・行っちゃった。助かったみたいだけど、なんだったんだ、今の。

「大丈夫ですかー?」

「・・・え?」

次に掛けられたのは、おっとりと間延びした、女の子の声だった。

「傷は・・・大したこと無いな。立てるか?」

「あ、ああ・・・大丈夫・・・」

もう一人、メガネをかけた、さっきの彼女よりもしっかりとした感じの子が、俺の背中を支えてくれる。

 

 

 

 

「風。包帯は?」

「もうないですよー。こないだ、凛ちゃんが全部使っちゃったじゃないですかー。」

「・・・そうだったっけ?」

「いや、そんな・・・包帯で手当てするほどの傷じゃないから・・・」

____________そう言いかけて、頭から血が流れていることに気づいた。どうやら転んだとき、口だけじゃなくて頭も少し切ったらしい。

「そうですか?ならいいですけどー」

 

 

 

 

 

それにしても、この子達もまた、随分と個性的な格好してるよな・・・。中華風というか、なんというか。少なくとも、日本じゃ普通に見ない格好だ。

何かのゲームとかアニメのコスプレとかでも、ないと思うんだけど・・・。

「・・・やれやれ、逃げ足だけには才能があるな。」

「お帰りなさい。・・・盗賊さん達、馬でも使ったんですか~?」

「ああ、同じ二本足なら負ける気はしないけど、倍の数で挑まれちゃーな。」

「まぁ、追い払えただけで十分ですよー」

 

 

 

 

 

「それにしても災難でしたね。この辺りは盗賊は比較的少ない地域なんですが・・・」

比較的・・・?日本に、そんな無法地帯あるんか?それとも、やっぱりここ、海外・・・?

「あの・・・風、さん?」

「・・・ひへっ!?」

チャキ・・・!

「おい、小僧・・・!」

その瞬間。突きつけられたのは、先程のチンピラを追い散らした男の、剣先だった。

「な・・・何・・・っ!?」

「お前、どこの世間知らずの貴族様か知らないが、いきなり人の真名を呼ぶとは、いい度胸してるじゃないか・・・?」

「て・・・っ、訂正してください・・・っ!」

 

 

 

 

「え・・・?だ、だって・・・え?」

「訂正なさい!」

「うぅぅ・・・!」

な、なんだ、この人達・・・。名前ひとつ呼んだだけで、さっきまでの様子と全然違うじゃないか。まるで、胸を触ったとか、裸でもみたような・・・。まさかそういう風習なのか?この国は。

「わ、分かった!ごめん!訂正する、訂正するから!お願いだから、その剣引いて・・・っ!」

 

 

 

 

 

「・・・まったく」

「はふぅ・・・。いきなり真名で呼ぶなんて、びっくりしちゃいましたよー」

そりゃこっちの台詞だよ。

「ま、真名・・・ねぇ。じゃ、なんて呼べばいいの?」

とりあえず、真名ってのはヘタに呼んだら剣を突きつけられても文句は言えない・・・それだけは覚えた。っていうかこの風習。初見さんにはキツイだろ?

 

 

 

 

 

「はい。程立と呼んでくださいー」

「私は今は、戯志才と名乗っております。」

「俺は龍玄。しがない用心棒兼鍛冶屋さ。」

龍玄さんと程立ちゃんはともかく、なんかすげぇ偽名の名乗り方されたな。

「程立に、戯志才って・・・」

確かそういう名前の人、昔居たような気がするんだけど・・・気のせいか?

 

 

 

 

 

 

「ええと・・・三人の名前からして、ここは中国?」

「ちゅうごく?用心棒さん、この辺りにそういう地名あるんですかー?」

「いやー、聞いたことがないな。・・・それと、用心棒さんって言うのやめなさい・・・ちゃんと名前があるんだから。・・・それよりお前、その格好を見たところ、どこかの貴族や豪族の人みたいだけど・・・どこの出身だ?」

別に貴族や豪族でもなんだけど・・・。

「出身?えっと・・・日本の東京の・・・」

「・・・にほんのとうきょう?凛ちゃん、そんな地名心当たりあるか?」

「無いわね・・・。南方の国かもしれなけど。」

 

「はぁ・・・?」

日本ってそんな知名度の低い国だったっけ?漢字を使うのはアジア周辺だけだろだろうし・・・日本はアジアじゃ、有名な国に入るんだけど・・・。

「・・・ふむ。まぁ、後のことは陳留の刺史殿に任せるとしますか。」

「そうですねー」

 

 

 

 

「・・・しし?」

「ほら。あそこに曹の旗が。」

戯志才と名乗った少女の指差した方向を見れば、地平線の向こうからもうもうと砂煙が立ち上っているのが確認できた。

しばらくすると、騎馬武者の群れと、その上にひるがえる大きな旗が見えてきて・・・。

「っていうか三人とも、行っちゃうの?」

 

 

 

 

 

俺だけ置いてけぼり?せめて近くの村か街まで・・・!いやもうこうなったら、大きな道路沿いでいいから!

「我々のような流れ者が貴族のご子息を連れていると、大概の者はよからぬ想像をしてしまうのですよ。」

「だから、俺は貴族なんかじゃ・・・!」

「そのへんは自分で説明してくれ。面倒ごとは楽しいが、官がからむと途端に面白みがなくなるからな。」

「ちょ、ちょっとぉ・・・っ!」

 

 

 

 

 

「そんじゃ、頑張れよ!」

「ではでは~♪」

そして三人はあっという間に姿を消して、俺の前に次にやってきたのは・・・。

「え、ええ・・・っと。」

 

周囲を取り囲むのは騎馬の群れ。俺、こんなにたくさんの騎馬武者を生で見たのは、生まれて初めてだよ・・・。

「華琳様!こやつは・・・」

「・・・どうやら違うようね。連中はもっと年かさの中年男だと聞いたわ。」

「どうしましょう。連中の一味の可能性もありますし、引っ立てましょうか?」

誰かをさがしているようだけど、話が全然見えてこない・・・。ただ運のいいことに、さっきの人達と同じで言葉だけは通じるらしい。

 

 

 

 

 

「あ、あの・・・」

「・・・何?」

とりあえず真名とか言うのはヤバイので、リーダーらしき華琳って子の名前だけは呼ばないように・・・。

「君・・・誰・・・?」

「それはこちらの台詞よ。あなたこそ何者?名を尋ねる前に、自分で名乗りなさい。」

 

 

 

 

 

「えっと・・・北郷一刀。日本で、聖フランチェスカ学園の学生をしている、日本人だ。」

「・・・はぁ?」

「それより、ここどこなの?日本でも、中国でもないっていうし・・・」

「貴様、華琳様の質問に答えんか!生国を名乗れと言っておるだろうが!」

だからさっきから日本って言ってるじゃないかっ!この子達も日本と中国を知らないクチか・・・!華琳とか、名前漢字っぽいクセに!

 

 

 

 

 

「姉者。そう威圧しては答えられる者も、答えられんぞ。」

「ぐぅぅ・・・。し、しかし秋蘭!こやつが盗賊団という可能性もあるのだぞ!そうですよね、華琳様!」

「そう?私には、殺気ひとつも感じさせないほどの手練れには見えないのだけれど。春蘭はどう?」

殺気とか手練れってそんな、ホントの武術の達人みたいに言われてもな・・・。

「それはまぁ・・・確かに。」

 

 

 

 

「北郷・・・と言ったかしら。」

「あ、ああ。」

「ここは陳留・・・。そして私は、陳留で刺史をしている者よ。」

「・・・しし。」

「刺史も知らないの?」

「初めて聞いた言葉かな?」

さっきの龍玄さんの言葉にもでてきたけど、意味まで聞く暇なかったし・・・。でも、彼女達の名前といい刺史っていう言葉といい、どう聞いても漢字のニュアンスだ。彼女達の顔立ちも東洋系だし、アジア周辺で日本と中国の両方を知らないなんて、ありえないと思うけど・・・。

 

「呆れた・・・秋蘭。」

説明するのが面倒になったのか、華琳はさっきから大声で叫んでいない方の子を呼んだ。

「刺史というのは街の政事を行い、治安維持に従事し、不審者や狼藉者を捕まえ、処罰する務めのことだ。これなら意味が分かるか?」

「・・・なんとなく。要するに、警察と役所を足して二で割ったようなもんか。」

 

 

 

 

「またワケの分からんことを・・・」

「要するに、税金を集めたり、法律を決めたり、街の治安を乱す悪いヤツや怪しいヤツを、捕まえたり処罰するための仕事なんだろ?」

「分かっているじゃない。なら、今の自分の立場も分かるわよね?」

「・・・税金の未税はともかく、街の治安を乱した覚えはないんだけど。」

そもそも乱せるだけの街の場所を知っていたら、こんな苦労はしてないわけで・・・。

 

 

 

 

 

 

「少なくとも、十分以上に怪しいわよ。春蘭、引っ立てなさい。」

「はっ!」

ちょっと待て!少なくとも十分って、完璧に怪しいじゃねぇか!?

「まだ連中の手掛かりもあるかもしれないわ。半数は辺りを捜索。残りは一時帰還するわよ。」

 

 

 

 

 

そして俺は、待望の街へと向かうことになった。

・・・思っていた方法と、だいぶ流れが違ったけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※どうもお米です。今回は一刀が魏のみなさんに引っ立てられるまでのお話でした。今回は新オリキャラ、龍玄さんが登場しましたね。これから一刀たちとどう関わってくるのか・・・。楽しみですね~。さて次回は街に入ってからのお話となります。ご指摘ご感想どんどん待っています!それでは失礼します~。


 
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