No.128867

『舞い踊る季節の中で』 第23話

うたまるさん

『真・恋姫無双』の二次創作のSSです。
明命√の作品となります。

自分の気持ちに気付く明命、だが浮かれる明命はひょっとした事から翡翠の想いを知ってしまう。
そのことを知った明命は、そのまま家を出てしまう。

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2010-03-08 18:28:23 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:26258   閲覧ユーザー数:17961

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』

  第23話 ~ 秘めたる想いに舞う決意 ~

 

 

(はじめに)

 

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

        :●●●●

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(ただし本人は無自覚)

         気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

         神の手のマッサージ(若い女性には危険です)

 最近の悩み:今回はお休みです

  (今後順序公開)

 

★オリキャラ紹介:

諸葛瑾:

  姓 :諸葛    名 :瑾    字 :子瑜    真名:翡翠

  武器:"双天" 対の双剣

  武力:52(平均的な将を60とした場合)

  智力:81

  政治:89

  家事:92

  魅力:想像にお任せします(w

  焦った時の口癖:『 あうあう 』又は 『 ぁぅぁぅ 』等の類語です

  性格:基本的に温厚で、外見に反して大人の女性

     だが、焦ると地が出てしまう。(朱里と違って、自分を律しています)

     警戒心が強い性格だが、一度心を許されると、親身になってくれる。

     妹がいるため、基本的には面倒見が良く、放っておくと、食事を取るのを忘れる明命を心配してよく

     食事を差し入れていた。

     やはり、妹がいるためなのか、時折人をからかって、その反応を楽しんだり、とんでもない悪戯を仕

     掛ける悪癖もある、だが性質の悪い事に普段が完璧なだけに、周りは怒るに怒れないでいる。

     家事全般は人並み以上に出来、そこらのお店以上と自負していたが、丹陽で知り合った男性の腕を見

     て自信を喪失。 以降こっそり腕を磨いているが、全然敵わないと嘆く毎日を送っている。

     武術は好きではないが、妹達を変態共から守るため、必要最低限身に付けたもの。

     姉妹揃っての発育の悪さをコンプレックスに思いつつも、それを武器にする強かさを持っている。

     自分を子供扱いしない男性が好みだが、言い寄ってくるのは変な趣味の持ち主ばかりで、17の時、現

     実の男(変態の多さ)に愛想が付いた時に『八百一』と出会う。 以降のめり込み、妹達を洗脳する

     も、基本的には周りには秘密にしている。 そのうち執筆も行うようになり、掲載されるようになる。

     数年たった現在では、定期的な愛読者もつき『八百一』の主要作家の一人となっている。

     黄巾の乱後、作品が益々洗練され、世に愛読者を急増させる要因となった。

一刀視点:

 

 

翡翠の膝の上で泣き付く等と言う恥ずかしい姿を、見せてしまった俺は、戦という慣れない緊張もあってか、目が覚めれば翌朝という、我ながら呆れる体たらくぶりだった。

そんな情けない俺を、翡翠は嫌がる事なく、傍に居てくれた事には、本当に申し訳ないと思いつつも、彼女の優しさが、今の俺にはとても嬉しく思えた。

この世界の現実を直視し、その中で生きていかなければいけないというのは、少し変わった家に生まれたと言っても、平和な日本で育った俺にとって、辛い事実なのは変わらない。

それでも翡翠の優しさのおかげで、心が軽くなったのは、はっきりと感じる事ができた。

本当に、明命と翡翠には甘えてばかりいるな、俺・・・・・・・

そんな俺にも愛想を尽かさず、優しくしてくれる二人に、深く感謝の気持ちが沸く。

ん?

そう言えば、

 

「明命は?」

「どうやら、戦の後始末に追われ、夕べは城に泊まったようですね」

 

俺の問いに、翡翠は淀みなく応えるが・・・一瞬、肩を小さく震わしていた。

それは、本当に僅かな変化、普通であれば見逃してしまいそうな変化だったが、俺は何故か気になり、

 

「何かあったの?」

「別に特にありませんよ。

 明命ちゃんは、れっきとした将ですから、それなりの事後処理があるのです。

 戦というのは、起こした後の方が忙しいくらいですから、一刀君もそのうち身をもって知る事になりますよ」

「・・・それは嬉しくないな」

「駄目です。

 今は良いですが、一刀君の力を当てにしているのですから、諦めて手伝ってください」

「その時は、お手柔らかにお願いします」

「うふふふ、そう言う訳で、私も明命ちゃんも当分忙しくなるかもしれませんので、気にせずに今日から、お仕

 事に精を出してくださいね」

 

そう、何時もどおり柔らかい表情で言う翡翠だが、俺にはどこか辛そうに感じてしまう。

 

「翡翠、何かあったの?」

「・・・本当に何もありませんから」

 

俺の再度の問いかけも否定して部屋を出て行く翡翠の後姿に、俺は不安を覚えていながら、翡翠の言うとおり日常に戻るためにお店に向かう事にした。

まだ、正直逝ってしまった人達の事を考えると辛い、

でもそういつまでも、立ち止まっているわけには行かない。

俺は孫策に約束したんだ。

民のために、そして何より二人のために、この世界で頑張る事を、決めたんだから。

二人に少しでも恩を返せるように、立ち止まるわけには、行かないよな・・・・・・

 

 

 

 

 

自分を無理やり奮起し、店を頑張る俺を待っていたのは、

 

『一刀ーーっ、琉おばあちゃん達が、腰痛で動けないんだって、代わりに手伝いに行くわよーっ!』

 

『一刀ーーっ、近くに、熊が出て怪我人が出たから、狩に行くから付き合いなさいっ』

 

等と、帰ってきて早々、七日連続して俺を巻き込む等と、孫策の暴挙だった。

(もう今更、俺を巻き込む事に関して、孫策に文句を言う事は諦めた・・・・・・どうせ聞いちゃくれないし)

しばらく店を空けていた分を取り戻そうとするのと相俟って、俺は落ち込む暇等無く、忙しい時間を過ごす事となった。

そのおかげもあってか、夜は前のように魘される事も無く、朝を迎える事が出来る。

(まぁ、お店に、孫策に連れまわされる等と、忙しいせいなのか、疲れが取れないのは困った事だが

 ・・・・・孫策なりの心配りなんだろうが、こう連日しては・・・・・今度、それとなく文句を言ってみるか)

ただ目が醒めると、俺の寝台に寄りかかるように眠る翡翠が、俺の手を握ってくれている事に、嬉しいと思いながらも、心配を掛けている事実に、自分が情けないと悔やんでしまう。

でもそんな思いも、翡翠の寝顔で癒されてしまうのも事実だった。

(いかん、いかん、彼女は恩人で、俺を義弟の様に面倒見てくれているだけだ)

そしてそんな翡翠の姿に、

(確か、妹が二人いるとか言ってたけど、良い姉だったんだな・・・・・・)

義弟として、なんとも情けない所ばかりを見せている事に、強くならなければいけないと決意する。

 

そんな翡翠も気になるが、今俺が一番気にしているのは、あの惨劇やこれからの事に関してではなく、明命の事だった。

結局明命は、あれから帰ってくる事は無く、顔を見ていない事が、俺を不安にさせていた。

幾らなんでも、戦から帰ってきて、其のまま城に篭るほどの仕事というのはおかしい。

ましてや、明命は、今回一番疲労の多かった部隊だ。

幾らなんでも、孫策がそんな無茶をさせるとは思えない。

(まるで自分の意思で、・・・・・・・そんなはず無いよな・・・・・・明命・・・・・・)

翡翠に聞いても

 

「一刀君が心配するのは分かりますが、もう少し待っていてください」

 

やはり、どこか辛そうな翡翠の一言で、明命に何かが在った事は分かったが、それ以上は踏み込ませない何かを、翡翠から感じ、俺は黙ってそれを受け止めるしかなかった。

・・・・・・情けないな、俺・・・・あれだけ二人に世話になっていながら、こんな時、力になれないなんて、

そう俺は、自分の無力さを歯噛みしながら、明命のいない日々を送るしかなかった。

 

 

 

 

 

翡翠(諸葛瑾)視点:

 

 

一刀君達が凱旋した日、明命ちゃんは、結局帰ってきませんでした。

いいえ、おそらく一度は帰ってきたのだと思います。

今は、緊急を要するような案件はないはずですし、幾ら戦の後始末があると言っても、雪蓮様達が将である明命ちゃんを、帰さないわけありません。

ましてや、一刀君のことを知っていれば尚更です。

そして、帰ってきた明命ちゃんは、一刀君との場面を目撃してしまったのだと思います。

一刀君に必要な事とは言え、傍から見たら、どう見えるかは想像がつきます。

だからこそ、明命ちゃんは誤解したのだと思います。

 

自分は必要ない

 

のだと・・・・・そんな訳が無いと言うのに・・・・

そう、そんな訳が・・・・・ありません・・・・・ね。

そんな事で、明命ちゃんが、一刀君を放って置くなんてありえません。

考えられるのは、突発的に発生した任務のため・・・・そうであれば、私の耳にも入ってくるはずです。

なにより、街にいるのに、一刀君に顔を見せないだけでなく、私を避けている理由にはなりません。

 

もうやめなさい翡翠、本当は分かっているのに、分からない振りなんて、

貴女は、一刀君に何を言ったか忘れたの?

分かっているから、心配しないように言ったのでしょ。

 

・・・・そうですね。

答えなんて、最初から一つしかありません。

ただ、その答えが怖かったから、認めたくなかっただけ、

 

「・・・・怖いからか・・・・」

 

政治なんて化物を相手にしている私が、こんな事で怖気つくなんて、一年前には、思いもしなかった事です。

そもそも、とっくの昔に幻滅したのに、また男に興味を持つなんて・・・・ね・・・・

 

でも、もう悩むのもお終いにしなければいけませんね。

これ以上時間を掛ければ、明命ちゃんはもう二度と、私達に笑顔を見せる事は無くなるでしょう。

そして、明命ちゃんを失った今の一刀君では・・・・・きっと・・・・・

考えるまでもなく、私のやる事は決まっています。

元々、そう選択肢なんて無いのですから・・・・・これ以上時間を掛ければ、全てが終わってしまうだけです。

そう、全てが・・・・・・

 

 

 

 

 

明命(周泰)視点:

 

ぎぃ~~~~~っ

 

私は、倉庫の扉を潜ると

 

「冥琳様、お呼びでしょうか」

「ああ、来たか」

「あのぉ、この様な所に呼び出されたという事は、何か秘密裏の任務でしょうか?」

「うむ、明命にはこの・・・・・・・私とした事が、渡すべき資料を一つ、部屋に忘れてきたようだ。

 すまんが、中で暫し待っててくれるか? 何、すぐに戻る」

「はい」

 

冥琳様にしては、珍しい事です。

何かあったのでしょうか?

そうして、しばらくすると、外から冥琳様が此方に戻ってくる気配がします。

 

ぎぃ~~~~~っ

ぱたんっ

 

「っ!」

「明命ちゃん、お久しぶりですね」

 

扉を潜り、扉を閉めたのは、冥琳様ではなく翡翠様でした。

・・・・そう言う事ですか・・・・冥琳様まで人が悪い・・・・

でも、今はまだ付き合うわけにはいけません。

私は、翡翠様に会釈をして、倉庫を出る事にします。

 

「無駄ですよ。

 外から鍵を締めてもらいましたから」

「なっ」

 

翡翠様の言葉に、驚愕します。 だって何時の間に、そんな気配は・・・・・・まさかっ

 

「はい、思春ちゃんにお願いしました」

 

そう言うことですか、まさか思春様まで翡翠様に手を貸されるとは、

・・・・・翡翠様が考えられている手を、抜けるには・

 

「明命ちゃん、何時まで周幼平で居るつもりです? 私は、明命ちゃんに話しに来たのですよ」

 

やはりそう来ましたか、でも、そうは行きません。

 

「冥琳様や思春様まで巻き込んで、このような事、幾ら翡翠様の悪戯でも、暫し度が過ぎていませんか?」

 

冥琳様達を巻き込んだ以上、翡翠様の言うとおりにする必要はありません。

幾ら私を捕まえるためとは言え、このような手では、会話を断る理由を与えるようなものです。

・・・・・・おかしいですね。

翡翠様が、そんな私の考える事に、気がつかないわけ無いです。

なら、次に来るのは、

 

「明命ちゃん、一刀君を見捨てる気ですか?」

 

やはり感情論ですか、ですがそれは感情の起伏があってこそ効果がある技です。

今の私には何の意味はありません。

なにより、一刀さんには翡翠様がいるのですから、何の問題もありません・・・・問題・・ありません。

 

「今のままでは、一刀君が壊れるわ」

 

えっ・・・・・・・

・・・・今、翡翠様はなんて?

 

「一刀君、明命ちゃんが出て行った事に、なんとなくで気が付いているみたいです。

 でも、怖くて確かめれないでいます・・・・それが余計に、一刀君を追い詰めているんでしょうね。

 一刀君、前みたいに悪夢で、喚きだすような事は無くなりました」

「・・・それは良い事の様に聞こえますが・・・・」

 

私の言葉に、翡翠様は、小さく首を振ります。

そして、疲れた顔で

 

「・・・・良い事ですか・・・・確かに傍から聞いたら、そう聞こえるかもね・・・・でも、明命ちゃんは見

 ていないから、そう言えるのよ・・・・」

 

翡翠様の辛そうに吐き出す言葉は、沈痛の面持ちは・・・・・・・私を酷く不安にさせます。

一刀さんに、いったい何が・・・・・・

 

「一刀君・・・・夜になるとね、悪夢に魘されては目を覚ますの。

 そして、私の手の温もりに安心して、また寝るの。

 これだけなら、前にも在った事、私もそう心配はしないわ、でも今回は違うの、

 一晩中ひたすらそれを繰り返すの・・・・・・そして、一番の問題は、一刀君、何も覚えていないのよ。

 目を覚まして私と話した事も、手の温もりも・・・・・朝にはみんな忘れているの。

 一刀君本人は、朝までぐっすり寝ているつもりなのよ。

 ・・・・でも実際は、まともに寝てなんてしていない、疲労が体を、悪夢が心を蝕んでいっているの」

 

・・・・・う・・・・そ・・・・・・・

・・・そんなの・・・・・うそです。

・・・違う・・・・・そうでなければ、皆が協力するわけありません。

なら、・・・・翡翠様が言っている事は・・・・本当の事・・・・

 

翡翠様が告げる一刀さんの様子に、私は目の前が真っ暗になります。

 

「今、一刀君のお店に来ている人達が、一刀君をなんて言っているか知ってますか?」

 

翡翠様が何か言っています。

でも、私はそれ所ではありません・・・・なんで、そこまで酷く

 

「今の一刀君の笑顔が、『 愁いを含んだ笑顔も素敵 』なんて言っているんですよ。

 冗談じゃないわ、あんな壊れそうな笑顔が素敵なんて、本当の一刀君の笑顔を知っていたら、とても言えない

 言葉よ。

 その話を聞いた時、そんな馬鹿な事を言った女を、本気で殴ろうと思ったわ」

「な・なんで、そんな事にっ! だって、あの時一刀さんは、翡翠様の膝の上であんなに安らかに寝ていたでは

 ないですかっ!」

 

翡翠様の怒りの声に呼応するように、私は翡翠様を感情的に、問い詰めてしまいます。

今私は、きっと翡翠様の掌にいるのだと思います。

でも、そんなもの関係ありません。

だって、もしそれが本当なら、一刀さんは・・・・・・、

そして一刀さんを追い込んだのは・・・・・

 

「そう、やっぱり見ていたのね・・・・・でも、そんな事はどうでもいい事。

 ・・・・・・考えてみれば当たり前の事だったのよ。

 一刀君は天の国の人間、この世界に縁や所縁所か、なにも拠り所になるものがなかったのよ。

 自分の意思とは関係無しに、目が覚めたら丹陽の街にいた。

 ・・・・・・・・生きるための意義を失ってしまったと言えるかもしれないわね。

 それでも一刀君が、ここまで頑張ってこれたのは、自惚れかも知れないけど、私と明命ちゃんの存在なんだ

 と思うの・・・・・・・・以前、雪蓮様に襲い掛かった事を考えても、あながち間違いではないと思うわ.。

 そんな一刀君が、心に大きな傷を負いながらも、必死にこの世界を受け入れようとしている時に、その足元

 が崩れては、ああなっても仕方ないのかもしれない・・・・・・」

 

私が・・・・私が、一刀さんを、そこまで・・・・

翡翠様の言葉に、足元が揺れる様な感覚に襲われます。

今の私でさえ、これだけ不安になるというのに、

一刀さんが受けている不安なんて、・・・・・・とても想像がつきません。

 

・・・・・私が迂闊でした。

一刀さんの置かれた立場を考えずに、翡翠様が居れば大丈夫と、そんな安易な考えで、一刀さんを追い込んでしまった。

私が、逃げてしまったばかりに・・・・・・・・

一刀さんを・・・・・・・・・、翡翠様を・・・・・・・・・

 

「明命ちゃん、たぶん今ならまだ間に合うわ、一刀君の為に戻ってきてほしいの」

 

悔やむ私に、

自分の迂闊さを呪う私に、

私は・・・・・・ただ翡翠様の言葉に、頷くしか在りませんでした。

 

一刀さんを救いたい。

そのためなら、なんでもします。

でも・・・・・・・・でも、そしたら、今度は私の心が・・・・・・いえ、今はそんな事は事関係ないです。

今はただ・・・・

 

翡翠様は、私の承諾を得られた事に、安堵した息を吐くと、

 

「明命ちゃんが、家に戻ってくれる約束もしてくれた事ですし、一刀君もきっと立ち直ってくれると思います。

 今は私達が一刀君の拠所ですが、この世界に慣れてくれれば、孫呉その物が拠所になってくれるはずです。

 そう言う意味では、雪蓮様が一刀君を連れ回している事は、良い方法なのかもしれませんね」

「・・・・・・はい」

 

・・・そうです。

一刀さんが、私が居なくても大丈夫なくらいに、孫呉が拠所になれば

・・・・・その時まで我慢すれば、

 

「明命ちゃん、一刀君が独り立ちするまでは、なんて考えていませんか?」

 

えっ、

 

翡翠様が、私の考えている事を指摘されます。

翡翠様は、一刀さんの事もあるので、私に出て行って欲しくないのでしょう。

でも、それは不自然です。

翡翠様を、一刀さんの事を想えば、私が居ては邪魔になるだけです。

二人で居る事が自然の姿のはずです。

そう考えている時、翡翠様は真面目な顔で、そして誇らしげに私に告げます。

 

「明命ちゃん、正直に言うわ

 私は、一刀君の事を、一人の男性として好きよ」

 

 

 

 

 

 

「明命ちゃん、正直に言うわ

 私は、一刀君の事を、一人の男性として好きよ」

 

ズキンッ

 

翡翠様の言葉に、胸が痛くなります。

呼吸が苦しくなります。

頭が重くなります。

分かっていた事です。

でも、正面からはっきり言われてしまうと、

胸が締め付けられます。

好きになってはいけない人を、好きになったのだと、思い知らされます。

その事実に、涙が出そうになります。

でも、ここで涙を流すわけにはいけません。

だって・

 

「明命ちゃん、貴女が家出をしたのは、私が一刀君を好きだから、

 私が好きな人を、好きになる訳にはいかないと思ったからよね」

 

ビクッ

 

翡翠様は、いきなり核心を突いてきました。

『邪魔をしては悪い』とかではなく、私の気持ちを断定したうえで、確認してきました。

どうやったら、翡翠様に納得していただけるのでしょうか・・・・・・駄目です・・・自分を騙せないような嘘で、翡翠様を誤魔化せるとは思えません。

でも、そうしたら・・・・・・

 

「言っておきますけど、その理屈で言うのなら、家を出なければいけないのは、私の方よ。

 明命ちゃんは自覚してなかったみたいですけど、貴女、丹陽の時からもう一刀君に惹かれていたわ。

 だから私は、一刀君の義姉で居ようと身を引いていたの・・・・・」

「えっ・・・えーーーーーーーーーっ!

 わ・私、そんな前から・・・・と言うか、えっ、あっその・・・・」

 

翡翠様の予想外の言葉に、私は顔を真っ赤にして、頭が茹だって上手く回らない頭で、一生懸命昔を思い出してみます。

・・・・・・・・確かに、今思い起こしてみると、そんな気がします。

おそらく、そんな予兆が在ったのでしょう、いくら一刀さんを義兄の様に慕っていたにしろ、私の行動は義兄に対しては行き過ぎたものです。

きっと、あの頃には私は、もう一刀さんの事が・・・・・・

あっ、でも、と言うことは、

 

「そう言うことです。

 明命ちゃんが家を出る理由なんて、何も無いの、悪いのは私の方なのですから・・・・・・

 それとも、明命ちゃんは、私が上役だからなんて、くだらない理由で一刀君を諦めるつもりなのかしら?

 もしそうだとしたら、私を馬鹿にしている事になるわよ」

「そっ、そんな事はっ・・・・・・ですが、それでは・・・・・・」

 

言い淀む私を遮り、翡翠様は私を抱きしめます。

背の関係上、翡翠様の頭が私の目線より下にありますが、それでも、私は翡翠様に抱きしめられます。

優しく、・・・・・・温かく、・・・・・・そして、

 

「明命ちゃん、いいのです。

 悪いのは全部、私ですから・・・・・・

 ごめんなさい、・・・・・・辛い思いを、させてしまいましたね」

 

私を慈しむように、ゆっくりと、謝罪の言葉を告げます。

・・・そんな・・・・謝罪の言葉・・・なんて・・・違います・・・私はそんな

 

「・・・・翡翠様・・・・」

 

「もう大丈夫だから、

 

 自分の心を凍らせなくても良いから、

 

 明命ちゃんは、明命ちゃんの想いを大切にしても良いの、

 

 明命ちゃんは、一刀君を好きになっても良いの、

 

 自分の気持ちに、素直になって良いの」

 

「・・・ひ・・す・・い・・・・さま」

 

翡翠様の、優しい言葉に、温かい心に、

私は、氷が解けるように、いろんな感情が、一気に私を押し流そうとします。

そんな私の背中を、愛しげに、ゆっくり軽く叩く感触に、

もう、その感情を止める事などできるはずもなく、

涙が溢れ、

翡翠様に泣きついてしまいます。

 

一刀さんに、会いたい気持ちも、

一刀さんを、抱きしめたい思いも、

一刀さんに、頭を撫でられたい気持ちも、

一刀さんに、想いを告げたい思いも、

凍らせていた想いが、私の胸に溢れ出します。

 

でも、そんな私の想いが、二人の中を壊してしまうのではと、

そんな勝手な思いが、一刀さんをよけいに苦しめる事になったなんて、

 

私は涙を流しながら、一刀さんへの想い、そして後悔、そんな感情に押し潰されそうになります。

でも、翡翠様の優しさが、温もりが、私を押し留めさせます。

私を、ゆっくりと、いつもの私に戻していきます。

 

・・・・・・そうですか、翡翠様のこの包容力が・・・・・・きっと、一刀さんを救っているんですね。

翡翠様は凄いです。

悔しいですけど、私には、こんな真似はできません。

でも、あの時一刀さんは言いました。

私の存在が一刀さんを救ったと、

なら、きっと私にしかできないものが、あるはずです。

 

翡翠様のおかげで、私の想いはもう決まりました。

一刀さんが私を必要としているのなら、もう迷いません。

 

一刀さんに、早く会いたい、

一刀さんを、立ち直らせてあげたい、

一刀さんの、温かな笑顔を、見たい、

そして、私の想いを告げたいです。

 

「明命ちゃん、気持ちは決まった?」

「はい」

 

涙を拭き、翡翠様から離れた私に、翡翠様は聞きます。

そして私の返事に、やさしい笑顔を向けながら

真っ直ぐ澄んだ目で

 

「明命ちゃんの口から、きちんと聞きたいの」

 

そう、寂しげに言います。

でも、此処で誤魔化す事も、逃げ出す事も出来ません。

それは絶対やってはいけない事です。

翡翠様のためにも、

一刀さんのためにも、

そして、私のためにも、

 

だから、私は意を決して、翡翠様に今の想いを全て籠めて伝えます。

 

「わ・私は、一刀さんが好きです。

 一人の男性として、一刀さんと結ばれたいです」

 

言えた。

そして言ってしまった。

今までの関係を壊してしまうかもしれない、

いえ、壊してしまうだろう言葉を、

その事が辛くないといえば嘘になります。

でも、私は今の言葉を誇れます。

私の、確かな想い。

この事を、今きちんと翡翠様に伝えなければ、

きっと後悔する事になると思えるからです。

この先どうなるかは分かりません。

でも翡翠様のためにも、

私は全てを受け入れていこうと思います。

口にした想いが、私に力を与えてくれます。

一刀さんへの想いが、私を支えてくれます。

そんな私の決意に、翡翠様は嬉しそうな顔で、

 

「それでこそ、明命ちゃんよ」

 

そう優しい言葉を、口にするのでした。

そんな翡翠様に、私は視界が滲むのがわかります。

だって、翡翠様はきっと・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

私の決意に、翡翠様は嬉しそうな顔で

 

「それでこそ、明命ちゃんよ」

 

そう優しい言葉を、口にするのでした。

そんな翡翠様に、私は視界が滲むのがわかります。

だって、翡翠様はきっと・・・・・・・・・・・・

 

「じゃあ、これからは、明命ちゃんとは恋敵ね。 正々堂々といきましょう」

「・・・・・・・・・・・・・・・えっ?」

 

翡翠様の言葉の意味が分からずに、私は間抜けな声を出してしまいます。

そんな私に、翡翠様は、楽しそうに笑いながら、

 

「だって明命ちゃん、一度一刀君を諦めようとしたんだから、私が一刀君に迫ってももう問題ないでしょう」

「えっ・・・・・・でも、さっきは、・」

「そうしなければ、明命ちゃん自分の気持ちに、素直になら無いと思ったからよ。

 そんなのじゃ一刀君、自分が原因と気がついて、ますます落ち込んでしまいかねなかったもの。

 それに、私は、身を引こうとしたとは言ったけど、一言も一刀君を諦めるなんて言ってないわよ。

 私も一刀君へ想いを、はっきりと口にしてしまった以上、もう一刀君を諦める気にはなれません」

 

そんな、翡翠様の言葉に、私は唖然とします。

たしかに、翡翠様の言っている事は、嘘は言っていませんし、筋は通っているように見えます・・・・

でも、それでは、私の先程の想いは・・・・・・なんだったのでしょう・・・・・・

 

「明命ちゃんには、感謝して欲しいくらいですよ。

 あのまま一刀君を諦めて、近くで励まそうなんて、明命ちゃんにはとても無理ですもの」

「えっ、あのぉ、それはどういう意味でしょうか?」

「はっきり言って、辛いですよ~~。

 一刀君、此方の気も知らないで、無自覚に人の心を、鷲掴みするような事ばかりしてくるんですもの・・・・

 そのくせ、此方の気持ちには、これぽっちも気がついていないのですから、本当に性質が悪いです。

 あれはもう蛇の生殺しなんて、生易しいものではありませんでした。

 ず~~~~~~~~~っと、明命ちゃんの為にって、我慢してきた私が言うのですから、間違いありません」

 

翡翠様は、そう言い終わると、疲れた様に溜息を吐きます。

あの最高位の文官として、政治の場では、時に冥琳様達より苦難に立たされ、乗り越えてきた翡翠様が、そこまで言われるなんて・・・・・・・・・・と言うか、一刀さん、一体翡翠様にどのような事を・・・・・・

 

「それとも明命ちゃん、気持ちのはっきりした今から、闘わずして諦められるの?」

「う・・・・・・それは」

 

流石の私も、はっきりと、自分の想いを口にしてしまった以上、もう後には引けません。

幾ら煽られたからと言って、ああも翡翠様の良いように動かされただなんて、私もまだまだ未熟です。

でも、不思議と腹は立ちません。

踊らされたのは本当ですが、あそこにあった想いは、私も、翡翠様も、全て本当の事だったからだと思います。

だからでしょうか、先程の翡翠様に自分の想いを伝えた時のように、私の心は晴れやかなものになっています。

そうです。 私が間違えていました。

たしかに、人に悪いからなんて言う理由で、諦めれる様なものでは在りませんでした。

なら、どうすれば良いいのか、

翡翠様が教えてくれました。

だから

 

「はい、今回はやられましたが、一刀さんの事は、翡翠様には負けません」

 

私の宣言に、翡翠様は力強い笑顔で、

 

「もちろん、私も負ける気はありません。

 でも勝負は、一刀君が立ち直ってからにしましょう」

「はい、その時は翡翠様相手でも手加減はしません」

 

そんな私に、翡翠様はすこし悪戯っぽい笑顔を浮かべ、

 

「別に私は、明命ちゃんさえ良ければ御妾さんでも良いんですけどね」

「ひ・翡翠様っ!?」

「ふふふふっ、今の所は冗談です。

 もしそうなったとしても、決めるのは一刀君です。 私達の決める事じゃありませんから」

「あ・・ぁ、あの翡翠様?」

「あ~あ、明命ちゃん相手ですと、さすがに一刀君を押し倒して、手篭めにするなんて手は使えませんね。

 何か別の手を考えなければいけません」

「ひ・ひっ、翡翠様っーーー!?」

「ふふっ、半分冗談です」

 

私の叫びに、翡翠様は残念そうに言います。

・・・・・でも半分冗談って事は、もう半分は・・・・・・これも冗談ですよね?

 

「明命ちゃんが元気になった事ですし、今度は二人で協力して、一刀君を元気付けて上げましょう」

 

そう言って、倉庫の扉を開けて、明るい外へ出ます。

・・・・あれ? 扉の鍵は・・・・・・・・・・はっ

 

「ひ・翡翠様ーーーーーーっ!」

 

私は、翡翠様を怒るために、翡翠様の後を追いかけます。

でも、不思議です。

この薄暗い倉庫に入った時の自分が、

今はとても下らない事をしていたのだと思えます。

間違った事を、正しい事だと信じ込んでいた自分が、愚かに思えます。

今は、心が、体が、とても軽いです。

一刀さんの事を考えると、辛いですが、構いません。

私と翡翠様で、必ずもとの様に笑えるようにして見せます。

その後は、決まっています。

必ず、一刀さんを振り向かせて見せます。

 

 

 

 

 

雛里視点:

 

キィーー

 

扉を開け、部屋に入った私の瞳に、とんでもないものが飛び込んできました。

赤い血の海に倒れる、親友の姿を・・・・・・、

 

「あ・・・あわわ・・・しゅ・朱里ちゃんっ!」

 

血の海に倒れる朱里ちゃんに駆け寄り、その体を起こします。

 

「うぅ」

 

体を起された朱里ちゃんの呻き声に、

(よかった、まだ息はあります。)

私は少しばかり安心し、

 

「し・朱里ちゃん、ど・どうされたのでしゅか?」

「す・すごいです」

 

そう虚ろな目で呟く親友は、床にあるものを指差している事が分かり、視線をやると

・・・・・本?

 

「や・・・八百・・一?」

「はい、そうです」

 

・・・・朱里の愛読書で、朱里ちゃんの勧めで、時々一緒に見ているの物ですが、何故、それがこんな事態に?

よく朱里ちゃんの姿を見てみると、出血はどうやら鼻だけで、他には目立った外傷が無いことに気が付きます。

つまり、この血溜まりは、朱里ちゃんの鼻血によるものだという事に気がつき、親友の行動に頭痛を覚えます。

 

「朱里ちゃん、あまり脅かさせないで欲しいのです」

「あははははっ、ごめんなさい雛里ちゃん」

「でも、どうしたのですか? 今までこのような事無かったのに」

「うん、雛里ちゃんこれを見て」

 

そう言って、朱里ちゃんは、鼻に布を当てながら、床に放り出された本を拾い私に渡します。

あれ?

 

「いつもより、随分と分厚い」

「はい、そうなんです。

 今回はしばらく休まれていた作家さんの新作が発表されていて、その分厚くなっているんです」

 

親友の言葉に、なんとなく納得しますが・・・・・・これ、いつもの倍の厚さではないでしょうか?

それに、

 

「あの例の作者さんですか?

 てっきり、あまりの激しい描写に休載に追い込まれたと思っていたのですが・・・・・でも、朱里ちゃんが

 あんなになるなんて、あれ以上の描写は流石に問題になるのでは?」

 

私は、素朴な疑問を口にすると

 

「ち・違います。

 今回は、今までのものとは全然違うんです。

 むしろ、そっちの描写は、殆どありませんし、ものすごく柔らかな描写しかされていないんです」

「えっ? でも、だとしたら、何で朱里ちゃんは鼻血なんて」

「とにかく読めば分かります。

 この増項分が、編集局のこの作品に対する評価の表れでもあるんです」

 

親友の熱意ぶりに、私も恐る恐る目を通してみます。

この作家さんは、確かに、過激な描写も多いですが、作品としては凄く面白いですし、色々勉強にもなるような事が書かれているので、正直毎回、楽しみにしていた所もあります。

 

 

 

 

 

「あわわぁ・・・あわ」

 

顔が真っ赤になって、熱いのが分かります。

押さえた鼻がとても熱くなっていて、もし手を離したらと、思うと怖くて手を離せません。

かと言って、目を離す事も・・・・・

うぅ、駄目です限界です

 

ぱたん

 

これ以上は朱里ちゃんの二の舞になってしまうと、

思い切って、本を閉じます。

 

「す、すごいでしょ?」

「あわわ・・・た・たしゅかに、しゅごすぎましゅ」

 

朱里ちゃんの言葉に、何とか返しながら、私は一生懸命、気を静めようとします。

人前では、なかなか戻れませんが、此処は朱里ちゃんの部屋で、今は二人っきりです。

何も怖いものや不安になるものはありませんから、やがてある程度まで気が静まって来ると、今度は別の興奮が私の中で、どんどんと膨れ上がってきます。

 

「今までの作風とは全然違います」

「そう、そうなんです。

 茶店の店主と店員、そして常連の客が織り成す禁断の愛への想いが、凄く切ないんですよ」

「はい、いままでと違って、露骨な描写がない分、よけい想像をかき立てます。

 それに、この繊細さの中にある力強さが、読者の心を、ものすごく揺らします」

「この主人公の店主も、店員に対する優しさや、客が少しでも安らげる様にと想う心配りが、二人の心をそれ

 以上の物へとなり、何時しか二人は、主人公を・・・・・」

「しかも、その二人も親友と言う事で、お互い遠慮する苦悩が、ものすごく美しく描かれています」

「普通、こういう展開は愛憎劇へとなるものなのに、自然とそう感じさせないんですよ」

「ものすごい技術です。 いえ、それだけ二人の想いが奇麗なのかも知れません」

「でも、この主人公、そんな二人の想いに全然気がつかないなんて」

「流石に、・・・これはありえないです・・・・」

「そうですね。

 これだけ細かな事に気が付く利く主人公が、二人の想いにだけ気がつかないなんて、ありえません。

 でも、それが逆にこの作品の完成度を上げているのだと思います」

「そっか、そう言う考え方も出来ますね」

 

そうして、私と朱里ちゃんは、この作品について語り合います。

まだ読んでいない部分は、休み休みに読みながら、語り合い。

全てを読みきり、一通り語り終えたのは、この部屋に来て二刻程経っていました。

 

「そういえば、雛里ちゃんこんな時間に、部屋に来るなんて何か用事があったのですか」

「あっ、そうでした。

 朱里ちゃん、都で大変な事が、・・・・・・劉宏様が御亡くなられになったとか」

「えっ、雛里ちゃんそれ本当?」

「真偽を確かめるために、細作を放っちましたが、まだ時間はかかると思います。

 ですが、今朝街に入った旅の商人達の話から見ても、ただの噂と思えません。

 今の朝廷の力を考えれば、黄巾の乱後少しばかり戻った平穏が、再び乱れる恐れが在ると考えれます」

 

朱里ちゃんは、私の話を聞いて、頷きながら考えを廻らせています。

 

「雛里ちゃんの言うとおり、力を失った朝廷に対し各諸侯や邑が、この機会を黙っているとは思えません。

 此方から打って出るにしろ、待つにしろ、早急に準備をした方が良いでしょうね」

「はい、私もそう判断します」

「この事は明日の朝議に掛けるとして、その前にどれだけの準備が行う事が出来るのか、調べて起きましょう」

 

 

 

 

 

某所:

 

ブハッ

 

「うっううっ」

「おややー、稟ちゃんまたですかー、 はーいとんとんしましょうねぇ」

「今の鼻血の飛距離は過去最高記録だぜっ」

「宝譿よく覚えてますねー」

「此処までくると、もう芸術の域だぜい」

「風は、芸術と言うより、芸だと思うのですよー」

「うぅ、風、あまり勝手な事ばかり言わないでもらいたいものです」

「おやや、稟ちゃん生きていたのですかー」

「勝手に殺さないでください。

 幸い、まだ話しの途中だったため、この程度で済みました」

「はあー、そうなんですか、これ稟ちゃんの愛読書ですよね」

「はい、今回はずっと休んでいた作家の作品が、大きく取り上げておりまして、これが今迄に無い表現方で・」

 

サッ

 

「あっ、風何を、返してくださいっ」

「駄目ですよー、もうすぐ仕官のための試験があるのですから、それまではこの本は預かっておくのですよー」

「そんな、そんなことされたら、気になって試験どころではなくなってしまいます」

「稟ちゃんがそこまで言うとは、気にはなりますが、駄目ですよー

 この本のおかげで、貧血で倒れられては困ります。

 もし試験に落ちようものなら、この本は燃やさせていただくのですよー」

「そっ、そんなっ風、それはあまりにも横暴と言うものでは」

「大丈夫ですよー、普段の稟ちゃんなら、試験なんて軽いものなのです。

 それに、この本の続きを読むためと思えば頑張れるのではないですかー」

「ふむ、たしかに、風の言う事も一理あります。

 分かりました、試験結果がでるまでお預けいたします。

 ですが、くれぐれも私より先に読んでしまわないでください」

「そんな事しませんよー」

「誰も、そんな鼻血だらけの本なんて読みやしねぇよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

あとがき みたいなもの

 

 

こんにちは、うたまるです。

  第23話 ~秘めたる想いに舞う決意~ を此処に、おおくりしました。

今回は苦労しました。

何度書き直した事か・・・・・・大雑把に7回くらい書き直したかも・・・

うち5回くらいは どろどろ の愛憎劇に・・・・他2回をベースに、作品を詰めて書き上げました。

どろどろ の展開も好きなんですが、この作品ではあまりそう言った事は出したくないので、

この二人らしく、話を纏めようと四苦八苦しました。

そんな二人と、私を助けてくれたのが、一刀でした。

一刀君のおかげで、二人らしく話を纏めれたと思います。

まぁ、そのおかげで、一刀に女難の相が濃くなった気が(w

一刀は、今回舞台裏で、壊れかけましたが、この二人のおかげで、しっかりと自分の足場を広げていく事になります。・・・・・・と言うか、某破天荒王によって無理やりとも言うが(w

 

今後は、そんな三人の想いに関係なく、時代は三人を巻き込んでいく事になります。

 

明命視点でも、今回は目立ったなぁ・・・・翡翠

街にいる時しか出番無い人物だから構わないのかな・・・・

それに、明命も翡翠に触発されてと言うか・・・・踊らされて暴走しそうな予感が・・・・・・

しっかり脳内翡翠の手綱を握らねば(汗

 

では頑張って書きますので、どうか最後までお付き合いの程お願いいたします。


 
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