「アーイ!キャーン!フラーーーーーイ!」
豪臣は、そう言って戦場に向かって飛んだ。
そして、身体に氣を込めて言う。
「―――反(ハン)!」
すると、地面に触れる直前、豪臣の体は、フワ、と一瞬少しだけ浮き上がった。
そして、無傷で、トス、と着地する。
周りの兵たちは動きを止める。前方に集中していた兵たちには、豪臣が何処から出てきたのか分からない。
「貴様、何処から湧いて出た!?」
一人の兵士が怒鳴る。他にも二十人程の兵士が豪臣に剣を構える。
しかし、豪臣は
「ん?・・・上から」
と、素知らぬ顔で空を指差した。
「「「「・・・はぁ?」」」」
眉を寄せる兵たち。
しかし、豪臣はそんな兵たちの反応を無視して
「じゃ、そう言うことで」
と言って、一瞬豪臣の体がぶれる。
「「「ぐあ!」」」「「「ぶふ!」」」「「「ご!」」」
十人近くが吹っ飛ぶ。
豪臣は、ニヤ、と笑うと
「じゃあな!」
そう言って、戦場中央にある黄の旗の下に向けて走り出した。
~孫堅軍 本陣前~
【視点・雪蓮】
それは異常な光景だった。
私が、どうにか前線を押し上げようと奮戦していた時、急に戦場の空気が変わった。
敵軍の中から鬨では無く悲鳴が上がったのだ。
本陣前の戦いは一時動きを止め、皆、声の上がった方向を見る。
山の方向から敵軍中央に向けて、何者かが、いや、何かが進んで行くのか良く分かった。
人が飛んでいたのだ。しかも、一人二人では無い。山の方から飛んで、飛んで、飛んでいく。
「何・・・これ?」
気づいたら、私はそんな言葉を漏らしていた。
「何が・・・起こっておるんじゃ」
私の横では、祭が私と同じように驚いていた。
そして、蔡瑁軍の兵たちは、この不可解な現象に恐怖を覚え始めていた。
私も、少しだけ恐怖を感じていた。
何かが居るはずの場を見れば、あまり氣を使うことが出来ない私でも分かる程、膨大な氣を感じていた。
そして、戦場に
「敵将、黄射(こうえき)!孫堅軍が客将、紫堂が討ち取った!!」
あの男の鬨が響き渡った。
そして、また人が飛び始める。
これで、蔡瑁軍は崩れた。此方が何をするでもなく混乱を始めたのである。
それを見た祭は
「策殿、今じゃ!」
私に声を掛けてくる。
私は頷き、兵たちを鼓舞する。
「孫堅軍の兵たちよ!敵は混乱している!一気に叩き潰すぞぉ!」
「「「「おおぉぉぉおおぉぉ!!」」」」
戦闘は一方的だった。
蔡瑁軍は、実質的に指揮をしていた黄射が討たれて混乱。大将である蔡瑁は早々に逃げた様で、兵たちは散り散りに逃げて行った。
その場に残ったのは、私たち孫堅軍と、その眼の前に佇む一人の男。
男は武器を持たず、両腕は返り血で紅く染まっていた。
(さっきのあれを、全部素手でやったの?)
私は驚愕し
「本当に、何なのよ・・・」
と、言葉を漏らす。
しかし、驚くとともに、私は自分の顔がニヤけることを抑えられなかった。
~山道 甘寧隊~
【視点・思春】
私は、自分でも信じられない程の悲鳴を上げた後、文台様から説明を受けた。
あの男の名は紫堂豪臣。そして、この喋る虎は朔夜というらしい。
二人は、それぞれ仙人見習いとその式神だそうだ。二人は、紫堂殿が仙人と成るために別の世界から来たという。
「・・・・・・」
私は、突拍子の無い話に言葉を失っていた。
が、絶対に違うとは言いきれなかった。
先程、崖下へ飛び降りた時は無傷で着地してみせた。そして、孫策様の剣を指だけで止めてみせた。
私は、これが仙人の力だと言われれば、そうなのか、と納得しそうになってしまう。
私が考え込んでいると
「それにしても、朔夜さん。せっかく私が黙っていたのに、あなたが喋っちゃ駄目じゃない」
文台様は朔夜殿に声を掛ける。
「すみません。
あの莫迦が莫迦なことをするだろうと思っていたのですが本当に莫迦なことだったので莫迦莫迦しくなってつい声が出ました」
「・・・・・・そんなに莫迦莫迦って言わなくても・・・」
息継ぎ無しで、淡々と話す朔夜に文台様が苦笑する。
私も、何もそこまで、などと思っていると
「敵将、黄射(こうえき)!孫堅軍が客将、紫堂が討ち取った!!」
戦場から、あの方の声が上がる。
「あら。客将だなんて、粋なこと言ってくれるわね!」
嬉しそうに文台様が言う。
私は、もう一度彼を見る。
(本当に、何て・・・何て雄々しい方だ///)
また、周りの敵兵を殴り飛ばしている。
私には、そんな彼が輝いて見えた。
「・・・紫堂豪臣、様///」
自分でも気づかぬ間に、そんな言葉を呟いていた。
すると
「「ふ~ん(・・・)」」
と横から視線を感じた。
顔を左に向けると、無言の朔夜殿と、馬上で嬉しそうに微笑む文台様と眼が合った。
「な、何か?」
「ふふ、頑張ってね、思春ちゃん!」
私の問いに文台様は笑顔で答える。
「なっ、何を頑張るのですか///!わ、私は紫堂殿に対して何も「思春ちゃん」・・・?」
私が、何故か慌てて答えていると、文台様が声を挿む。
「私・・・豪臣さんのことだって、言ってないわよ」
「//////!!」
私は、文台様のその言葉に何故か頭が沸騰した。
【視点・青蓮】
私は豪臣さんが戦いに参加したので、安心して思春ちゃんで遊んでいた。
そして、遊んでいるといつの間にか戦いは終わっていた。
残ったのは、我が軍と、その前に佇む豪臣さんだけ。
(本当に強いわ。・・・さっき自分で客将って言ましたし、そのまま仕えてくれないかしら?)
などと思っていると
「またですか・・・あの天然すけこましは」
朔夜さんの声が聞こえてきた。
朔夜さんの目線を追うと、私の娘である雪蓮に眼を向けていることが分かった。
私には顔を窺えないけど、朔夜さんには見えているのでしょう。
(思春ちゃんに続いて雪蓮まで?・・・ふふ、負けないわ!)
私は、心の中だけで拳を握った。
そんな彼女たちの様子を見ていた朔夜は思う。
(アイツ・・・どうにかして止めないと)
そして、そう思った後、すぐに
「無理、ですね・・・ハァ」
と、呟いて溜息を吐いた。
あとがき
どうも、虎子です。
作品の話でが・・・
何か、無理やり終わらせた感がバリバリですよね(実際そうなのですが)。
敵将の蔡瑁と黄射は名前だけですしね。プロフまで作ってたのに・・・
一応、二人のプロフは、次のページに載せました。
まあ、雪蓮と仲良くなれそうなフラグを立てられましたし、良しとして置いてください。
※後、一人称の時には【視点・○○】と書くことにしました。
10話のQ&Aです。
Q.サブキャラは、黄祖みたいな感じの出番はあるの?
A.あります! 三國志での雑魚キャラが活躍したり、その逆だったりします。
ちなみに、出して欲しいキャラが居たら、コメントにどうぞ。出演させる“かも”しれません。
Q.技術的な事に関するコメント書いて良い?
A.大丈夫です。何しろ、初めて書いていますので、小説の書き方なんて全く理解していませんので。
でもね、作者の心は非常に脆いから、ソフトに書いて下さい<m(__)m>
Q.1刻って2時間じゃね?
A.確かに、現代ではそうです。ただ、この作品の中では四八刻法を採用しております。
四八刻法とは、24時間を12辰刻(シンコク)に分け、1辰刻を4刻(コク)に分ける。そして、1刻を10分(ブ)に分けたものです。
つまり、1辰刻=2時間 ・ 1刻=30分 ・ 1分=3分です。
これなら、細かくて切りの良い、というのが理由です。
と、こんな感じです。
次回投稿は、早ければ16日。遅くとも17日終了までにと予定しています。
作品への要望と共に、誤字脱字等ありましたら、どんどんコメント下さい。
最後に、ご支援、コメントを下さった皆様。お気に入りにご登録して下さった皆様。
本当にありがとうございました。
ではでは、虎子でした。
プロフィールの能力値は、真・恋姫✝無双のパーフェクトビジュアルブックでの能力値の5~1をA~E。恋達のEXをSと置き換え、それぞれに+・無印・-を(作者の独断と偏見によって)つけました。つまり、最強がS+で、最弱がE-となります。
補足Ⅰ:SとS+の間には絶対的な壁があります(という設定です)。
補足Ⅱ:一般兵はオールE(という設定)です。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
蔡瑁 徳珪(サイボウ トクケイ):? ♂
身長 170㎝ 年齢 40前後
劉表軍の筆頭とも言える将。姉や娘が劉表やその家族に嫁いでいるためだ。
陸戦は苦手。しかし、水上戦では劉表軍のどの将兵からも一目置かれている。が、性格的のため、皆に嫌われている。
外見
体つきはガッチリとしていて、まさに戦士といった感じだが、顔はだらしない。女を見る目がいやらしい。
性格
見栄っ張りで自尊心が強い。度胸が無く、酒と女が好き。
口調
自分を俺呼ぶ。基本的に、主以外呼び捨て。
武器
①剣
兵卒よりも少しだけ良い剣。
能力値
統率C-・武力D+・知力D・政治力C・魅力E+
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黄射 (コウエキ):? ♂
身長 170弱 年齢 20後半
劉表の将で黄祖の子。父と違い、武では無く智で軍を指揮する。勇敢さはあるが、武の才能は無い。豪臣に、あっさりと撲殺されてしまう。
口調
自分のことを私と呼ぶ。基本的に敬称をつけて話す。
武器
①普通の戟
兵の物よりも少し良い戟。
能力値
統率C-・武力D-・知力C-・政治力C・魅力D
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お気をつけ下さい。
あとがきにQ&Aがあります。
拙い文章ですが、よろしくお願いします。