横島がこの世界に来てから数週間が過ぎた。
劉備に言った様に雑用などを進んでこなし、家の修繕や改築なども手伝って邑の住人達とも仲良くなっている。
そんな横島は子供達からの人気は高く、特に鞘花に懐かれていた。
「おにいちゃーん、さやたちとあそんでーー」
「今は仕事が忙しいから後でな」
「「「えーーーーーーーーーっ!」」」
「仕事が落ち着いたらちゃんと遊んでやるから」
「ぶ~~、やくそくだよ」
鞘花達はぶつぶつ言いながら帰って行き、横島はそんな後姿を見て軽く笑う。
そんな横島の所へ李典がやって来た。
「今日もご苦労さんやな横島はん」
「まあ、俺に出来る事はこれくらいだからね李典ちゃん」
李典達は横島に対して真名は預けていないものの、邑の人達から信頼されているし復興の手助けなどでかなり助けられているのでちゃんづけで呼ぶ事位は許容している。
「あのお日さんの熱を使うて湯を沸かす風呂も評判ええし、これでホンマに御使いはんやったら言う事なしなんやけどな」
「俺はアイデ…うろ覚えの知識を教えただけで実際に作ったのは李典ちゃんじゃないか」
この邑で暮らす事になった横島がまず最初にした事は風呂場の設備だった。
小さな邑ゆえに風呂なんてものはなく、皆は沸かした湯で体を拭うか近場にある小川で水浴びするかしかなかった。
五右衛門風呂でも良かったのだが今、此処での季節は夏だったという事で横島が提案したのは薪などの燃料を必要としない太陽熱温水器であった。
此処で大きかったのが李典の存在であり、横島が書き起こした設計図を見て彼女はさっそく作り上げた。
大勢が入れるような大きな風呂場を作る必要はなく一般的な家庭用サイズでいいのですぐに其々の家に作る事が出来た。
これに喜んだのが邑の老人達、何しろ風呂に入る事など生まれて初めてだったのだから。
「あの風呂の技術を他の村や町に売り込めばかなりの儲けになると思うよ」
「お、それはいい考えやな。さっそく桃香様達に相談しとくわ」
そう言いながら李典は鼻歌を歌いながら劉備達の所へと歩いて行く。
「さてと、次はあの家の雨漏りか」
横島もまた、家の修理の続きをする為に屋根の上に上る。
しばらくはこの様な日常が続いていた。
第六節「襲来と開戦」
「戻ったか。おい、どうだった?」
「へい、此処から二里ほど先に小さな邑がありやした」
「そうか、拠点にするには丁度いいかもな」
「へへへ。見栄えのいい女共も何人かいましたぜ」
「そいつはたまんねぇな、ぐへへへへへ」
荒野の中に陣を作る野盗達。
彼等もかつては僅かな財を朝廷に税として奪われていた農民の成れの果て。
食い繋ぐ為にと仕方無しに野盗へと身を堕としたに過ぎなかったが、奪う事に慣れすぎた彼等は今やただの盗賊へと成り下がっていた。
「憐れな奴等でしたぜ。これから何が起こるのかも知らずにへらへらしてやしたからな」
「へへへへへ、弱い奴等が悪いのさ。奪われるのが嫌なら奪う側に回ればいいだけだ。俺達のようにな」
「お頭の言う通りでさ。銭、美味い飯、良い女、全部お頭と俺達のモンでさ」
「「「「ひゃぁーーはははははははははっ!!」」」
闇夜の中で炎を囲み、まるで宴会の様に……
否、彼等にとってはもはや宴会なのであろう。
酒を飲み、食事をしながら笑い叫ぶ彼等から少し離れた場所には破壊された荷馬車、そして商人達の亡骸が放置されていた。
ー◇◆◇ー
翌日の夕暮れ時…
劉備達が拠点としている邑では其々が一日の仕事を終えて家路に着こうとしていた。
その時、偵察に出ていた義勇軍の数名が慌てふためいて駆け込んで来た。
「たっ、た、大変だぁーーーっ!」
「何事だっ!?」
その悲鳴の如き報告に、楽進は片付けの手を止めて聞き返す。
「一体何があった!」
「はぁ、はぁ、はぁ、一里程先に馬が上げる土煙が…。聞こえて来る奇声から恐らく、いえ間違いなく盗賊団かと」
「くっ、遂に来たか」
その報告に怒りの表情を隠そうともしない楽進、李典、于禁、そして義勇軍の面々。
劉備もまた同じ様に怒りが見て取れるが、同時に脅えも僅かながら浮かんでいる。
「皆は早く小屋へ隠れて!」
「は、はい」
「大丈夫、皆は私達が…守るから!」
脅えながらも劉備は拳を握り締めて覚悟を決める。
「早くしなさいっ!」
荀彧は邑人達の避難誘導しながらもその頭の中ではどの様に戦うか戦略を立てている。
その視界の端に横島が映り、さっさと邑人達を連れて隠れてろと罵倒しそうになるが、その手には槍が握られており子供達を率先して逃がそうとしていたので軽く舌打ちをしてその思考を再び戦略へと戻した。
(こんな所で死んでたまるもんですか!まだ私は仕えるべき主君に出会ってもいないのに)
「ひゃはははははははあーーーーっ!収穫の時間だぜぇーーーーっ!」
空に星が瞬き始めた頃、遂に野盗達が邑へと乗り込んで来た。
迎え撃つ劉備達が率いる義勇軍ではあるが、何しろ数が違いすぎた。
義勇軍の攻撃を潜り抜けて幾人かの野盗が流れ込んで来てその刃を振るう。
家の中に隠れている老人や女性に子供達を守る為に若者達、そして横島も懸命に防衛に回るがやはり、傷つき倒れる者は出て来る。
「おい、こんな所に隠れてやがったぜ!」
「「「きゃああ~~~っ!」」」
そして遂に邑人達が隠れている小屋が野盗達に取り付かれてしまった。
「「「うおおぉーーーーーっ!!」」」
「くそっ!」
野盗に切りかかる男達、横島も後に続くがGSとして妖怪や悪霊と戦った事はあるが、悪党とはいえ生身の人間相手では二の足を踏んでしまう。
子供達を庇いながら逃げ出す村人達、野盗の一人はその中の一人である鞘花の母親の腕を掴む。
「きゃあっ!は、はなしてぇ~~~っ!」
「かかさま!」
劣情を催したのか舌なめずりをしながら腰布に手をかける野盗に鞘花は母親を助けようとその小さな手で叩く。
「かかさまをはなせぇ~~~っ!」
「このクソガキッ!」
その態度が気に障った野盗は剣を抜き、鞘花へと向ける。
「死にやがれっ!」
「や、やだぁ~~!」
「鞘花っ!」
野盗が鞘花に切りかかろうとすると、鞘花の母親がその身を護ろうとして覆い被る。
だが……
「ちっ、もういい面倒くせぇ!まとめて切り捨ててやる!」
「あぶない!かかさまにげて」
「そんな事、出来るわけないじゃない!」
「やめろぉーーーーっ!」
二人を切り裂こうとしたその剣は……
「なっ!何だこりゃぁ」
「や、殺らせるかよぉ……」
横島のサイキックソーサーで受け止められていた。
「桃香様っ!」
「どうしたの、凪ちゃん?」
「あ、あれを!横島殿を見てください!」
「なんや、アレ?横島はんの手に」
「光の盾?」
「横島様、まさか本当に…」
それを呆然としながら見つめる劉備達、そして荀彧の目の前で。
「殺らせるかぁーーーーーーーーーっ!」
横島はハンズ・オブ・グローリー、霊波刀で眼前の敵を切り裂いた。
《続く》
(`・ω・)次回、遂に……
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