まだ三月中旬なのに随分暖かいな、いやなんなら暑いくらいだ。俺は事務所のヒーターの温度を最低にして、いつも着てるジャージも脱いで、ソファでスマホを眺めていた。すると、入口の方で「すみません」と遠慮がちな声が聞こえた気がした。行ってみると、ちょっと怪しい身なりの頼りなげな男が、半分だけ開けたドアからこちらを覗いていた。
「あの、すみません。何でも屋はここですか」
「おう」
変わった兄ちゃんだった。カタい感じの、訛りのある話し方だった。野球帽の上からパーカーのフードをかぶって、ネックウォーマーまでしてる。一見防寒対策バッチリなのかと思えば、コートは着てないし手袋もしてないし足元もスニーカー。着てるパーカーも半袖、下も半ズボンで、中に長袖の黒いスポーツトレーナーみたいなのを着てるらしいが、いやそれじゃ寒いだろう流石に。
「実はちょっと、お伺いしたいことがあって」
「ん」
「この辺りで最近、巨大な白い飛行物体を見ませんでしたか?」
なんだナゾナゾか?
「……いいや」
「じゃあ、霧が濃い日はありませんでしたか?」
「霧?」
ちょっと思い返してみたが、特にそんな日はなかったように思う。
「ねえな」
「そうですか……」
「霧だったら、もうちょっと郊外の方とか、あとピーテルの方とかなら、もっとありそうだがな」
「なるほど……ピーテルというのは?」
「ペテルブルクだよ」
「ああ、ペテルブルク。そういえばここへ来るとき雨雲がかかってたな」
「あそこはしょっちゅう雨だからな」
「そうなんですか。……あっ、え?」
「あ?」
「あ、いえ! そうなんですね」
「おう」
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モスクワに熱い男がやってきた!
以下、前回同様のがんばるぞ抱負(コピペ)です:
作品完成しない病を克服したいので、創作15分ルーティンをがんばってます。その日に思いついたテーマでランダムに書いて投稿します。
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