No.1173359

夢の泉前話

暗紫さん

桜井さんがかつてスマブラXのインタビューで「メタナイトは大王の部下ではない」と答えてらっしゃったので。
夢の泉の物語での一幕、ナイトメア封印後――…デデデ大王とメタナイトが出会った時のお話をつらつらと。CP要素はありません。

2025-09-07 13:46:20 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:167   閲覧ユーザー数:167

 はじめてヤツを見たとき、おぞましいと心の片隅で思ってしまった。

今になって振り返ってみたら、あのときの直感は当たっていたのかもしれない。

思えばヤツは最初から何処か得体が知れず、思考が読めなかった。

正直なところ、今も読めている気がしない。

 

「食べ物が大好きだから、独り占めしてやるぜ!」

――…なんてそんな単純な思考ではないのだろう。

 

ただ当時おれさまはそんな自分の直感を信じず、ヤツにすがった。

ヤツの言っていることは綺麗で、正しいように見えた。

なにより、見た目だけで判断してはいけないと思ったんだ。

――…そう、見た目だけで。

 

おれさまはあの時感じた一瞬の寒気を――…

結局は、気付かなかったことにしてしまったのだ。

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

「くっそぉおおお!プププランドのアホー!!」

「だ、大王さま、落ち着いてくださいっ」

 

夢の泉に、白い月光が降り注ぐ、そんな深夜。

泉の淡い薄紫の光に照らし出されるのは、プププランドの自称大王デデデと、その忠実(?)な手下のワドルディ一匹である。もうお気楽な住人は皆夢の中で、周囲に誰もいないのをいいことに、今日も今日とて騒ぎまくっていた。

深夜で二人だけとは思えぬ、にぎやかさっぷりである。

 

「これが落ち着いていられるか!お、おれさまはなぁ……住人の……皆のことを考えて行動したっていうのに!誰もおれさまの話を聞こうともしない!スターロッドを返せだの全く大王さまはワガママだぁだの!」

「そ、そりゃ改心したっていっても大王さまには信用が……」

「うるさい!わかってんだよ、そんなことは!」

「はうっ!?」

 

地団駄しながらも、ワドルディの脳天にチョップをかます。「いたたたた…」と思わず半泣きになるワドルディを見ても、大王のイライラが鎮まることはなかった。

数日前、夢の泉に「悪夢」が突如として現れた。ナイトメアと名乗るその悪夢は夢の泉の流れに乗って、プププランドに住む住民に悪夢を見せて苦しめようとした。――…そこに颯爽と現れたのが、このデデデ大王である。彼はナイトメアを自力で倒すことはできないと判断するや否や、咄嗟の機転でスターロッドを外すことによって夢の泉にナイトメアを封印することに成功したのだった。

そのせいで住民たちは楽しい夢を見ることができなくなったが、苦しむよりはずっと良いだろう。事情を説明しようとしたが、楽しい夢を見れずに怒っている住民は一方的に彼を悪者扱い。先程の発言通り、話を聞こうともしてくれなかった。

さすがに、国中を食べ物を奪い取った前科を簡単に無視することなどできないのだろう。

 

「まあ良い……スターロッドさえ戻さなければ、ナイトメアは出てこられないんだからな!問題は、そのスターロッドを誰に守らせるか……」

 

どうせ悪者扱いには慣れてるんだ、と、強引に思考を切り替える。

その片手にある2本のスターロッドは、デデデ大王がスターロッドを分割したものである。他の分は、すでの信頼のおける部下に渡した。ウイスピーウッズやクラッコ、ペイントローラーにミスターシャイン・ミスターブライト達などなど――…どいつもこいつも灰汁が強い、大王ご自慢の部下で実力者ばかりだ。

――…残る1人は夢の泉の見張りを兼ねたおれさまで、さてもう1人は――…?

 

「おいワドルディ、お前腕に自信はあるか?」

「え……その、今は持ってないけど、パラソルを少々……」

「あのピンクだま……カービィが来たとしても撃退できるか?」

「えええ!無理に決まってますよぅ!!」

 

ぶんぶんぶん!と首――…というより全身を横に振って否定する。

こんな態度では駄目だ。皆が素敵な夢を見られなくなったとなれば、真っ先に立ち上がるのはあのカービィ。かつて撃退された身としても、あいつの強さは十分わかっている。だからといって、みすみす負けてやるつもりも無かった。

今回の事情が事情なのだから、と密かに大王は思う。

 

「くっそぉ……時間が無い、ここはおれさまが2本…」

「待っていただけないか」

 

突如、どこからか声がした。

大王ともワドルディとも違う、聞き慣れぬ若い男の声に二人はハッと目を見開く。

こんな遅く、こんなところに誰かが、いる――…そう悟って周囲を見回す。 

 

「事情は聴かせてもらった。宜しければ、私にも貴公達を手伝わせてもらえぬだろうか?」

 

それはいた――…ちょうど、大王の後ろに。

ごくりと、息をのむ。いつの間に立ったと焦りながらも表には出さず、警戒心を解かずにゆっくりと振り向く。

悪魔のような翼を広げ、黄色い目の、仮面をかぶった見たことも無いナゾの青い一頭身がそこにいた。

 

「おい、お前は……」

「ふむ、名乗るのが先だったな。私の名前はメタナイト、しがない騎士だ」

「……ああっ!この方、最近武闘派の間でちょっぴり有名になってるあの騎士さんですよ。ものすごい剣術の達人だとか」

「はは、よしてくれ。まだまだ修行の身、達人は言い過ぎだ」

「剣術の、なぁ……」

 

確かに、あの一瞬のすきに背後に現れた。――……しかも、まるで気配も無く。

もしかしたら、もしかすると、自分より相手は強いのかもしれない、と大王は感じる。

それほどまでに相手は、相当な手練れに見えたのだ。大王は警戒しながらも、相手をまじまじと見つめる。ワドルディの熱視線にも謙虚に答えてはいるが、その真意まではわからない。

いつの間にか悪魔のような翼は、青い布――…すなわち、マントに変化していた。

 

「だ、大王さまっ!これは是非とも手伝ってもらいましょうよ。メタナイトさんがいれば心強いですし!」

「そうは言っても……初対面のヤツに、いきなりよぉ……」

「大王様、お気持ちはお察しする。だがことは一刻を争うのだろう?実は貴公がナイトメアを封じるところを、私は見てしまったのだ」

「!?」

「邪悪な気配を感じ、こちらに辿り着いたのだが……一国の王に助太刀できなかったことを、騎士として申し訳なく思う。ゆえにあの悪夢がどうなったか気になってな、様子を見に来ていたのだ……すると貴公たちがいて、つい隠れてしまった」

 

衝撃の告白に驚き、かたまる二人をよそに、メタナイトと名乗る騎士は申し訳なさそうに目を伏せる。

そしてその光る黄の目を大王にしかと向けられた瞬間、大王に何故かぞくりと寒気がした。

 

「私は修行中の身とはいえ、騎士を名乗っている。国を守るとは、民を守ること。貴公は民を守ろうとしている――…そのような王に、私は協力させていただきたい」

「う、うぅーん……お前、強いんだっけか……?」

「確か、お城にいたソードナイトとブレイドナイトが、束になっても敵わないって苦笑してました」

「そりゃすげぇや……」

 

騎士と名乗るこの青玉が、ウソをついているようには見えない。騎士としての信念も立派なもので、同じく国を想っているハズの王さまとしては見習うべきところも多いのかもしれない。

だがどうにも苦手意識がぬぐえないのは、相手が小難しい単語を羅列するからだろうか。どうにも呆れるほど平和な国の民らしくない発言だから、自分は気後れしているのかもと大王は思うことにした。

思考を変えてみる。国を想う実力者――…今、必要な人材だ。この神秘的な世界、というよりナイトメアを封じた夢の泉で出会えたのも、スターロッドの導きなのかもしれない。 

 

「……こちらこそ、よろしく頼む」

 

スターロッドをある台の前で、大王と騎士はかたく握手した。これからの協力関係に向けて。

ワドルディは一歩離れたところで拍手していた。

――…が、ここでパッと大王が手を離す。それから、びしっ!と勢いよく騎士を指差した。

 

「ただし!騎士といっても、それ以降ずうううぅっとおれさまに協力する必要は無いからな!手下にするつもりもないし!」

「えー!そんなひどい!メタナイトさんみたいに強い人が手下になってくれたら…」

「いーや、いらない!なんか、その……そう!かたっくるしいし!メタナイト、お前もおれさまみたいなタイプ、実は合わないと思ってるんだろ!?」

「む?……そんなことは無い。大王様のような明るさこそ、今はこの国にとっての希望に……」

「いらねえよ世辞は!さっきも言ったが、時間が無いんだ。さくっと作戦会議でもしようぜ!」

「はぁい…」

「………」

 

いまだに不満げな目で大王を見つめるワドルディに気が付かないふりをする。どうも苦手意識がぬぐえない、言いようのない不安が消えないと本音を言うことは無かった。

三人は、すぐさま今後の方針を決めていく。カービィがいつ旅立つかもわからないから、焦るのも仕方がないのだ。

メタナイトの剣の素振りを見せてもらい、そのすさまじさを感じた大王はオレンジオーシャンに待機させることとした。また、彼には直属の部下メタナイツがいるというので、そやつらも召集させておくとのこと。

そして話題はカービィにうつる。メタナイトはカービィの活躍を風の噂で知ったというはなしであった。

おれさまの知るなかで一番ヤバイから十分気を付けるように、と、いつになく真剣に大王は告げた。

 

「大王様がそこまでおっしゃるほどの存在……そやつは剣も使えるとお聞きしました」

「ソードナイトの能力をコピーして、剣士になっちゃって……大変だったってぼくも聞いたことがありますよ~」

「なるほど……興味深い」

「おいおいメタナイト、お前まさかカービィと戦いたくて……」

「いえ、最優先はスターロッド奪還の阻止。私がカービィと戦うのは、必要なときのみ……カービィのもとに、何度か部下を派遣させても宜しいか?」

「ん、別にいいけどよ……」

 

作戦会議はこんなかたちで終えた。

どうにも煮え切らない部分が大王にはあったが、頭の固そうな騎士だからと無理矢理納得することにした。ただ、仲良くなれそうにないとは思う――……おそらく、メタナイトもそう思っているのだろうと。

遅くまで付き合わせて悪かった、帰り道はワドルディに送らせようと勧めると、騎士は遠慮してきたので途中まで送らせることにした。ひとあしさきに、大王は城に戻る。

帰り道の草原は、ただただ静かであった。月明かりに照らされる二人の声以外に、聞こえてくる音はない。

 

「すみません、メタナイトさん……大王さまったら手下にするつもりはないなんて、ツンツンしちゃって」

「いや、気にしていない。初対面の相手なら警戒も当然だ、信用もできんだろうし大王様の言い分も分かる。それでも協力を承諾していただいたのだ、感謝せねば」

「メタナイトさんって、ホントに良い方ですね……ぼくらの味方になってくれて、心強いです」

「そう言ってもらえて良かった。先程も申した通り、私はしがないながらも騎士」

 

目をきらきらと輝かせるワドルディに、メタナイトの声も柔らかいものになっていく。

大きな月を背景に、風にマントを吹かせたそのすがたは、青白い後光がさしているようにも見えた。

そこにただよう、底知れぬ雰囲気――…ともすれば、圧倒されてしまいそうな。

間もなく、彼ははっきりと断言した。

 

「国の利益となる限り、私は貴公たちの味方だ」

【完】


 
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