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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

soranoさん

ハーケン会戦~戦場の再会~

2022-05-08 00:20:11 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1384   閲覧ユーザー数:1191

~ハーケン平原~

 

「あ、貴方達は……!」

「リィンの訓練兵時代の同級生――――――黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)の連中か……」

「リィン君が”月の霊場”で前もって教えてくれたとはいえ、まさか”リィン君と先輩勢を除いた全員”とはね……」

エーデルガルト達の登場にトワは不安そうな表情で声を上げ、クロウとアンゼリカは真剣な表情でエーデルガルト達を見つめ、

「ルーレ以来になりますね、皇太子殿下。オリヴァルト殿下とミュラーさんはいらっしゃらない事から察するに……どうやら殿下達は皇太子殿下とは違う目的で動いていらっしゃっているようですね。」

「!その声は……オリエさん。」

「あ、貴女は……オルテシア卿……!」

「ワジから教えてもらった話から貴方とリオンが教会の意向によってリィン君達に協力している事は察してはいましたが、よりにもよって貴女が私達の足止めの担当ですか……」

「ハッ、アタシがここにいるのは副長も原因の一つなんですから、悪く思わないで下さいよ。」

「…………ッ!ヴァン…………」

(エレイン……?)

「……………………………」

シュピーゲルから聞こえて来たオリエの声を聞いたセドリックは驚いた後複雑そうな表情でシュピーゲルを見つめ、エーデルガルト達の中にいるセリスを見つけたロジーヌは不安そうな表情で呟き、トマスは疲れた表情で溜息を吐き、セリスは鼻を鳴らした後苦笑しながら呟き、ヴァンを見つけたエレインは唇を噛み締めた後厳しい表情でヴァンを睨み、エレインの様子に気づいたジンが眉を顰めている中ヴァンは黙って静かな表情でエレインを見つめていた。

 

「き、君達はそれぞれ部隊を率いる立場なのに、この大戦でそんなに多くの部隊長が離れたら本末転倒になるんじゃないのか!?」

「その心配は無用だ。部下達の指揮に関しては俺達よりも適正な人物に任せている。」

「今の灰獅子隊には”司令官クラスの指揮官の能力を持つ人物が二人もいる”上、これほどの大規模な戦闘になると僕達がそれぞれ細かく指示するよりも、その二人が戦況を判断して直接指示した方が適正だからね。」

「”二人の司令官クラスの指揮官の能力を持つ人物”……?一体誰の事を指しているんだ?」

「……状況を考えると恐らくはプリネ皇女殿下とルクセンベール卿の事ではないか?」

「二人は皇女と親衛隊の隊長なんだから、司令官クラスの能力を持つ人物として適しているからね~。」

困惑の表情で指摘したマキアスの指摘に対して答えたドゥドゥーとフランツの答えを聞いたガイウスは首を傾げ、ラウラは推測を口にし、ラウラの推測にミリアムは同意した。

「違う違う。そのお二人は特攻隊の相手をする兵達の指揮の担当だ。俺達の部下達を指揮しているのはお前達もやり合った事がある協力者達だ。」

ラウラの推測を聞いたクロードは片手をひらひらと振って否定した後それぞれ指揮をしたり、自ら得物を振るってエレボニア兵を討っているベアトリースとルシエルがいる戦場を指さした。

 

「ベアトリースとルシエル……!」

「……なるほど。オリヴァルト殿下の話によればベアトリース様の種族である”飛天魔”という種族は戦闘能力だけでなく指揮官としての能力にも優れている上、優れた智謀で状況に合った戦術を導き出して戦場を駆ける頭脳派である事から”参謀”に抜擢されたルシエル様のお二人はまさに大勢の兵達を指揮する”司令官”に適していますわね。」

「ええ。おかげでこうして、私を含めたリィンさんの同期生にしてリィンさんと同じ黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)出身の者達全員が皆さんの足止めを担当する余裕ができたのです。」

「!そ、そういえば、ステラさんまでいらっしゃっていますから、今この場にいるのはリィンさんと”先輩”の方々を除いた黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)出身のリィンさんの同期生の方々ばかりですね……」

戦場で戦い、指揮しているベアトリースとルシエルを見つけたアリサは声を上げ、シャロンは真剣な表情で呟き、シャロンの話に頷いたステラの言葉を聞いたエマは不安そうな表情でエーデルガルト達を見つめた。

「ステラの話で気づいたとは思うけど、これで私達と貴方達、それぞれリィンがいない状態の学級同士という”お互いリィンを欠いた状態”という事で条件は同じよ。」

「厳密に言えばそちらにはセレーネもいませんが、その点に関してはそちらの”先輩”の方々が補っているから文句はないでしょう。」

「まあ、セレーネ一人に対して数人の人達が補っているのは人数という点を考えたらセレーネ一人の時よりも戦力はアップしているでしょうが、あたし達が今までの戦いで得た”実戦経験”からすれば大した事はありませんから、あたし達は人数差を理由に”不公平”だなんて思いませんから安心していいですよ。」

「チッ、言ってくれるじゃない。」

「フン、わざわざ”お互いリィンを欠いた状態という条件”を作り上げる為に、戦場でここまでするとはご苦労な事だ。」

エーデルガルトとイングリット、リシテアの指摘に対してセリーヌは舌打ちをし、ユーシスは鼻を鳴らしてそれぞれ厳しい表情でエーデルガルト達を睨んだ。

 

「エリンの時にも言ったはずだ。”リィンがメンフィル帝国軍側で戦っている事が間違い”と思っているお前達の傲慢と我儘を俺達が徹底的に叩き潰す事をな。だからこそ、お互いに文句のない状況を作りあげてやったという訳だ。」

「ルーレの時は不覚を取ったけど、あの時と違って今の私達は貴方達を阻む事に全力を注ぐ事ができるから、リィン達の元へは辿り着かせないよ!」

「ハッ、そっちはパイセン達との対決に随分と拘っているようだが、俺達”協力者”の事を忘れていやしねぇか?」

「”協力者”もそうだけど、今回はオルディスの時のように”騎士団”のみんなも最初から同行してくれているから、幾らそちらに”剣聖”や”守護騎士”がいても、わたし達にも勝機は十分にある……!」

「フフ、確かに”月の霊場”の時と比べたら戦力は圧倒的に充実している事は事実だね。」

「あ”?ガキ共の分際で、”守護騎士”を舐めるなんて随分といい度胸をしているじゃねぇか。」

ディミトリとアメリアの宣言に対してアッシュは鼻を鳴らし、フィーはパトリック達”騎士団”の面々に視線を向けた後真剣な表情で指摘し、二人の指摘に対してシズナは余裕な笑みを浮かべて答え、セリスは顔に青筋を立ててフィーを睨んだ。

「ハッ、テメェも俺達と同じ”ガキ”な癖によく言うぜ。」

セリスの言葉に対してアッシュは鼻を鳴らして反論した。

「………だ……」

「あん?」

「アタシは22だ、文句あるか?」

「ハアッ!?22歳!?」

「て、てっきりⅦ組のみんなやワジ君と同い年くらいなのかと……」

アッシュの反論に対して凄まじい殺気を纏って答えたセリスの答えを聞いたサラは驚き、アネラスは信じられない表情でセリスを見つめた。

 

「テメェら……」

「お、落ち着いて下さい、オルテシア卿……!サラ教官達に悪気はないんです……!」

「……もしかしなくてもあの守護騎士にとってガキ扱いは”禁句”なのかよ?」

「ええ……彼女――――――守護騎士第三位”烈火の真焔”セリス・オルテシアにとって身長と童顔は一番触れられたくない話題なんです……――――――それよりもセリス。第11位――――――リオンはどこにいるのです?ここにいない事を考えるとまさか彼は守護騎士――――――いえ、聖痕(スティグマ)の力を”戦場”で振るっているのですか?」

全身に目に見える程の怒気を纏ったセリスの様子を見たアリサ達がそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ロジーヌは声を上げてセリスをなだめようとし、セリスの様子を見てある事に気づいたアガットに訊ねられたトマスは困った表情で答えた後表情を引き締めてセリスに訊ねた。

「……リオンは今頃トールズのガキ共に合流しようとしている”蛇”共の相手をしていると思いますよ。」

「ぼ、”僕達に合流しようとしている蛇達”っても、もしかして……!」

「ヴィータ姉さん達――――――結社を抜けて私達に協力してくれている”蛇の使徒”や”執行者”達がまだ私達に合流してこない理由は、守護騎士(ドミニオン)によって足止めされていたからなんですか……!?」

トマスの問いかけに対して少しの間黙り込んだ後答えたセリスの答えを聞いたアリサ達がそれぞれ血相を変えている中エリオットは信じられない表情で、エマは不安そうな表情で声を上げた。

 

~少し前・パンダグリュエル・甲板~

 

「……そろそろ時間のようね。」

少し前、クロチルダはパンダグリュエルの甲板で魔術でアリサ達の状況を見守り、合流する時期が来た事を悟ると展開していた魔術を止めた。

「ふふっ、今回は”灰獅子”達も相当念を入れているようだね。」

「荒廃する東ゼムリアで日々、鎬を削る数多の猟兵団”の中でも”最強”を誇る”SSS級”猟兵団に共和国最大のマフィア”、更には守護騎士を自分達の”協力者”として”紅き翼”にぶつけるなんて、3年前の”福音計画”でリベール相手に”戦力過剰”としか思えない程の戦力を用意した”教授”ですらも彼らを”哀れ”に思うでしょうね。」

するとその時ブルブランとルシオラがそれぞれの転位術で現れてクロチルダに声をかけた。

「そうかしら?あの悪趣味の”教授”の事だから、むしろエマ達の絶望的状況に愉悦に浸るのじゃないかしら?――――――それよりも、すぐにエマ達の所に向かうわよ、公女の口ぶりから察するに、恐らく今回に関しては連合に協力する”裏の協力者達”が私達をエマ達に合流させないように仕掛けてくる可能性は非常に高いわ。彼らが私達の足止めに来る前にエマ達と合流するわよ。」

「!いや……どうやら、”連合の裏の協力者達は既にこの艦に潜んでいたようだよ”。」

「!!」

ルシオラの推測に対して静かな表情で答えたクロチルダが表情を引き締めてブルブラン達にアリサ達との合流を急ぐように促したその時、ある気配に気づいたブルブランはある方向へと視線を向け、ブルブランの言葉を聞いたルシオラが目を見開いて厳しい表情を浮かべると突如拍手の音が聞こえて来た。

「フフ、”戦士”ではなく”魔女”である”深淵”の目は誤魔化す事はできてもさすがに”怪盗”の気配察知からは逃れる事はできませんでしたか。」

するとブルブランが視線を向けた物陰から法衣姿の青年騎士が現れてクロチルダ達と対峙した。

 

「法衣の騎士………さしずめ、3年前の”福音計画”で”教授”を抹殺した”外法狩り”と同じ”守護騎士”ね?」

「ええ。ちなみに今の彼の”渾名”は別の”渾名”ですけどね。――――――おっと、自己紹介が遅れて失礼しましたね。星杯騎士団所属守護騎士第11位”絶凍の氷獄”リオン・バルタザールと申します。短い間にはなりますが、お見知り置きを。」

「ほう……まさか守護騎士が二人も”灰獅子達”に協力しているとはね。それで……”君達はいつ、私達に名乗ってくれる”のかな?」

警戒の表情のルシオラの問いかけに対してリオンは恭しく礼をして名乗るとブルブランは興味ありげな表情を浮かべた後2枚のカードをそれぞれ別の方向へと投擲した。すると1枚のカードは障害物に刺さり、もう一枚のカードは切り裂かれると共にカードが切り裂かれた場所から数個の東方の隠密――――――”忍び”と呼ばれる存在が使う投擲用の暗器――――――”手裏剣”がクロチルダ達目掛けて放たれ

「ハッ!」

自分達目掛けて放たれた手裏剣をブルブランは短剣を投擲して撃ち落とした。

「あれは一体……?」

「……見覚えがあるわ。確か東方の隠密――――――”忍び”と呼ばれる存在が扱う”手裏剣”と呼ばれている東方の”暗器”の類よ。」

「―――――左様。」

ブルブランが撃ち落とした手裏剣を初めて見るクロチルダは眉を顰め、クロチルダの疑問にルシオラが答えると突如その場に男性の声が聞こえた後クロチルダ達の目の前に煙が発生した後全身を黒衣に身に纏い、更には顔には仮面をつけた偉丈夫が現れ

「―――――”斑鳩”の姫、”白銀の剣聖”の従者、クロガネ推参。」

煙の中から現れた偉丈夫――――――クロガネは堂々と答えてリオンと共にクロチルダ達と対峙した。

「フフ、最後はウチやね。」

「!その声はまさか――――――」

クロガネが名乗り終えるとブルブランが投擲したカードが刺さっている障害物の物陰から女性の声が聞こえ、声に聞き覚えがあるブルブランとルシオラがそれぞれ血相を変えている中クロチルダが信じられない表情で声を上げると障害物に刺さっていたブルブランが投擲した一枚のカードは”障害物ごとえぐり取られ”、そこから全身を喪服のような黒衣で身を包み、素顔もベールで隠した女性が現れ

「”元”身喰らう蛇、執行者No.Ⅲ”黄金蝶”ルクレツィア・イスレや。―――――クスクス、ウチをよく知っている深淵はんらには今更な自己紹介かもしれへんけどなぁ。」

女性――――――結社の執行者No.Ⅲ”黄金蝶”ルクレツィア・イスレは名乗った後、可笑しそうに笑いながらクロチルダ達に近づいてリオン達と共にクロチルダ達と対峙した。

 

「”鋼の聖女”、”劫焔”、”剣帝”に次ぐ”結社最強”の一角――――――”黄金蝶”………!」

「やれやれ、まさか君まで灰獅子達に協力していたとはね。」

「……カンパネルラの死と”死線”の結社脱退によって結社にまだ残っていた執行者達もついに結社に見切りをつけて全員結社から脱退したという話は聞いてはいたけど……何故、貴女がリィン君達――――――いえ、メンフィル・クロスベル連合に協力しているのよ、レティ……ッ!」

ルクレツィアの登場にルシオラは厳しい表情を浮かべ、ブルブランは肩をすくめて溜息を吐き、クロチルダは厳しい表情でルクレツィアに問いかけた。

「フフ、”それ”を”執行者”のウチに聞くなんて”今更”やあらへんか、深淵はん?」

「……ッ!」

「……”執行者は一部の例外を除いてあらゆる自由が認められている”………私やブルブランがそれぞれの思惑でシェラザード達に加勢しているように、貴女も貴女の思惑でメンフィル・クロスベル連合に加勢しているという事ね。」

「フム、もしかして君の”古巣仲間”である”死線”の結社からの脱退が関係しているのかい?」

可笑しそうに笑いながら問いかけたルクレツィアの指摘に対して反論できないクロチルダは厳しい表情でルクレツィアを睨み、ルシオラは静かな表情で呟き、ブルブランは不思議そうな表情を浮かべてルクレツィアに問いかけた。

「まあ、”あの娘”の件も少しは関係している事だけは肯定するわぁ。――――――さてと。挨拶は終わって、”役者も揃った事”やし、そろそろ始めよか?――――――深淵はんとは一度もやりあった事が無かったから、ちょうどいい機会やなぁ?」

ブルブランの問いかけに答えたルクレツィアは自身の得物である長大なバターナイフのような形をした武器――――――”盟主”から授かった”外の理”の武器の一つである”ダスクグレイブ”を構えてクロチルダを見つめ

「ならば拙者は”怪盗”のお相手をさせて頂く。変幻自在の我が”朧月流”にて音に聞く”怪盗”の妙技を翻弄してさしあげよう。」

「フム、という事は余った私は同じ余り物の”幻惑の鈴”殿の相手ですか。――――――貴女の”幻惑”、我が氷獄を前にすれば全て凍てつく事を教えてさしあげましょう。」

ルクレツィアに続くようにブルブランと対峙したクロガネと共にルシオラと対峙したリオンは得物を構えた後背中に聖痕(スティグマ)を顕現させた。

「ハア、まさか貴女も”劫焔”や”痩せ狼”の同類とはね………エマ達には悪いけど、今回は間に合わないかもしれないわね。」

「フハハハハッ、面白い!ならば貴殿の希望に応じて我が妙技(マジック)、存分に振るおうではないか!」

「挑発に乗った訳ではないけど……可愛い妹(シェラザード)の為にも、加減をするつもりはないわよ。」

対するクロチルダは溜息を吐いた後複雑そうな表情を浮かべて自身の得物であるグリアノスの羽で作り上げた扇――――――”妖扇グリアノス”を構え、ブルブランとルシオラもそれぞれ戦闘の構えをした後それぞれルクレツィア達との一騎打ちを開始した!

 

~現在・ハーケン平原~

 

「チッ……さすがのヴィータ達でも”守護騎士”が相手だと、すぐには合流できないだろうな。」

「あ、君達に協力している”蛇”達の足止めには私の従者であるクロガネも参加しているから、”蛇”達の足止めは教会の”守護騎士”だけじゃないよ?」

「い、”斑鳩”の猟兵まで……!」

「やれやれ、SSS級猟兵団を率いているシズナ君の直属の従者までクロチルダさん達の相手を担当しているなんて徹底しているじゃないか。」

状況を察して舌打ちをしたクロウにシズナはある指摘をし、その指摘を聞いたエリオットは不安そうな表情で呟き、アンゼリカは疲れた表情で溜息を吐いて呟いた。

「ハッ、確かに向こうの相手もヤバそうだが2対3ならあの歌姫の姐ちゃん達に分があるだろ。」

「いや――――――”2対3じゃなくて、3対3だぜ?”」

鼻を鳴らして呟いたアッシュの言葉を聞いたヴァンは静かな表情で指摘し

「それはどういう事、ヴァン!?」

「エ、エレインさん……?」

「……先程から気になっていたが、あの男はお前さんの顔見知りなのか?」

ヴァンの指摘を聞いたエレインは厳しい表情でヴァンに問いかけ、初対面であるヴァンと顔見知りの様子のエレインにセドリックは戸惑い、ジンは真剣な表情でエレインに訊ねた。

 

「………はい。――――――彼の名前はヴァン・アークライド。私の昔からの幼馴染の一人で……3年前に突如書置きを残して行方をくらまして、今までずっと探していた幼馴染です。」

「エレインさんの幼馴染さんですか………」

「ちょっと待て……”アークライド”って確かっさっきワジとかいう守護騎士が言っていた……!」

「殲滅天使が雇った”裏解決屋(スプリガン)”とやらね……!」

「そして吼天獅子殿の”裏弟子”でもある人物か。」

エレインの説明を聞いたアネラスは複雑そうな表情でヴァンを見つめ、ある事に気づいたアガットは信じられない表情で、サラは厳しい表情でヴァンを見つめ、アルゼイド子爵は静かな表情で呟いてヴァンを見つめた。

「ったく、俺の事をバラし過ぎだろ、アンタの同輩は。」

「ハッ、アタシが知るか。」

苦笑しながら指摘したヴァンに対してセリスは鼻を鳴らして答えた。

 

「………3年ぶりね、ヴァン。自分から勝手に行方をくらませた癖に、まさかこんな所で出くわすとは思わなかったわ。」

「ハッ……そうだな。ったく、俺が言えた義理じゃねぇが、お前も厄介な”仔猫”に目をつけられたものだな。”この光景”を作り上げる為だけに戦争中の状況でありながら”本職”の連中を動員するとか、お前、あの”仔猫”に一体何をしたんだよ?」

静かな表情で話しかけたエレインに対して気まずそうな表情で答えたヴァンは苦笑しながら問いかけた。

「”仔猫”……?――――――!そう………要するに”殲滅天使”はオルディスの件での私に対する”意趣返し”の為に、メンフィル帝国軍に所属している諜報関係者達を動員してまで貴方を探し出して雇ったという事ね……」

「ええっ!?じゃあ、レン皇女殿下がそちらの男性――――――ヴァンさんを雇った理由は……!」

「オルディスでエレインに一本取られた事に対する”意趣返し”の為に、”エレインが探し続けた幼馴染であるその男がエレインと敵対関係になるという状況”を作り上げる為か……」

「あのクソガキは……!案の定ろくでもない理由じゃねぇか……!」

「悪趣味過ぎ。」

ヴァンの話を聞いてすぐに察しがついたエレインは真剣な表情でヴァンを見つめながらレンを思い浮かべ、エレインの推測を聞いたアリサは信じられない表情で声を上げ、ジンは重々しい様子を纏ってヴァンが雇われた理由を推測し、ジンの推測を聞いたアガットは厳しい表情で、フィーはジト目でそれぞれレンを思い浮かべた。

「で、ですが……ヴァンさんもレン皇女殿下の考えを悟っているにも関わらず、どうして”灰獅子隊”に協力しているんですか……!?」

「裏解決屋(スプリガン)とやらは遊撃士のやり方を悪用した存在という話なんだから、大方後ろ暗い理由なのじゃないかしら?」

「否定はしねえが……俺があの”仔猫”の依頼を請けた理由は”仔猫”の依頼とは別の奴から裏解決屋(スプリガン)として請けた”依頼”にも都合がいいからというのもある。」

「”レンちゃんの依頼とは別の人物から裏解決屋として請けた依頼”……?」

「一体どういう内容で、何者から請けた依頼なのだ?」

一方ある事が気になっていたエマは不安そうな表情でヴァンに訊ね、エマの疑問に呆れた表情で答えたセリーヌの推測に対して肩をすくめて肯定したヴァンは説明を続け、ヴァンの説明を聞いてある事が気になったアネラスは戸惑い、ラウラは真剣な表情でヴァンに訊ねた。

 

「生憎だが”依頼内容”もそうだが、”依頼者”も答えるつもりはないぜ。裏解決屋に依頼する連中は”遊撃士協会には依頼できない内容の依頼をする連中か、もしくはそっちの白銀のような訳アリな連中”だから、当然依頼の取り扱いには細心の注意を払う必要があるからな。」

「シズナさん――――――猟兵のような人達…………―――――!も、もしかして……シズナさんがリィン君の”裏の協力者”になった経緯にはヴァンさんも関わっているんじゃ……!?」

「あ…………ッ!」

「リィンと同じ師匠の”剣仙”が関係しているとはいえ、猟兵――――――それもエレボニアもそうだけど、メンフィルとも疎遠の場所の大陸東部で活動していた”白銀の剣聖”がエレボニアの各地で転戦していたリィン達に接触できた理由は不明だったけど……」

「その理由が”レン皇女殿下に雇われた裏解決屋であるヴァンさんによる仲介”なら、辻褄はあうね。」

「ああ……裏解決屋とやらは、遊撃士みたいに”仲介”もしているらしいからな。」

ヴァンの話を聞いてある推測をしたトワは不安そうな表情で推測し、トワの推測を聞いたエリオットは声を上げ、サラとアンゼリカ、クロウは真剣な表情で呟いた。

「―――正解。弟弟子やセレーネからも君の評判は聞いてはいたけど、中々の洞察力を持っているようだね、紅き翼の”才媛”は。確か名前はトワだったっけ?君ならその気になれば”観の眼”に関しては私や弟弟子よりも早く極めて、老師(せんせい)のような”千里眼”を体得できるかもしれないかな。」

「やはりトワ様の推測通り、シズナ様がリィン様の”裏の協力者”になった経緯にはヴァン様も関わっていたようですわね……」

「……ッ!”観の眼”やお祖父(じい)ちゃんの”千里眼”を知っているという事は、やっぱり貴女の流派はお祖父ちゃんが関係しているようだね……」

トワの推測を肯定したシズナはトワを賞賛し、シズナの話を聞いたシャロンは真剣な表情でヴァンとシズナを見比べ、アネラスは唇を噛み締めた後複雑そうな表情でシズナを見つめた。

 

「フフ、ちなみにですが我ら”黒月(ヘイユエ)”もヴァンさんには大変お世話になりました。――――――お陰様で、メンフィル・クロスベル連合も戦後の旧共和国全土には黒月(わたしたち)が必要である事をご理解して下さったのですから。」

「何だと……!?」

「メンフィル・クロスベル連合が”黒月”を完全に滅ぼすのを諦めて、”ルウ家”の恭順を受け入れたのも、もしかしてヴァンによる”仲介”が関係していたの~!?」

「つーか、いきなり話に入ってきたテメェは一体誰だよ?」

するとその時チョウが静かな笑みを浮かべてヴァンの事についての説明の捕捉をし、それを聞いたアリサ達がそれぞれ血相を変えている中ジンは厳しい表情で声を上げ、ミリアムは信じられない表情でヴァンを見つめ、アッシュはジト目でチョウを見つめて指摘した。

「これは失礼。――――――私の名前はチョウ・リー。”黒月”の”長老”が一人にして”黒月”の本拠地たる”煌都ラングポート”を拠点としている”ルウ家”にお仕えしている者です。」

「”リー”、だと?」

「貴方、まさか”白蘭竜”の……!」

アッシュの指摘に対して静かな笑みを浮かべて自己紹介をしたチョウの自己紹介を聞いてある事が気になったジンは眉を顰め、エレインは真剣な表情でチョウを見つめ

「ええ、今は亡きツァオは私にとって”従兄”に当たる者で、私はツァオの”影”でもありました。」

「”影”……その口ぶりから察するに、其方はそのツァオとやらの”影武者”の類か。」

チョウの話を聞いて察しがついたアルゼイド子爵は真剣な表情で指摘し

「さすがは名高き”光の剣匠”殿。”光の剣匠”殿の仰る通り、私は今までツァオの”影”として”ルウ家”を支えさせていただいたのですが……遊撃士協会の関係者である方々はご存じかもしれませんが、ツァオは去年の”西ゼムリア通商会議”でのメンフィル帝国と六銃士による謀によって、謀殺されてしまい……それによって、ツァオが万が一の為に残していた自身の”影”にして”白蘭竜を継げる能力”を持つ私が”新たな白蘭竜”として”ルウ家”を支えさせて頂く事になったのです。」

「何ですって!?という事はアンタは……!」

「”白蘭竜”が自分に万が一があった時の為に残していた”予備の白蘭竜”か……!」

「”白蘭竜”に影武者がいたなんて、情報局でも掴んでいなかった情報なんですけど……」

アルゼイド子爵の指摘に対して軽く拍手をして笑顔で肯定したチョウの話を聞いたサラとジンは厳しい表情でチョウを睨み、ミリアムは疲れた表情で呟いた。

「……それよりも、先程から気になっていたがそちらの”黒月”という組織の幹部までリィン達――――――”灰獅子隊”に協力している経緯にもヴァンさんが関係しているのか?」

「はい。ヴァンさんには”ルウ家”が連合に恭順する件の連合への”仲介”の件の時のように、”灰色の騎士”殿への仲介にもお世話になりました。――――――今後ともヴァンさんとは良好な関係を築きたいと思っております。」

「ったく、よく言うぜ……ミラ払いはよかったが、連合への恭順の件もそうだがシュバルツァーとの顔合わせの件にしても体よく俺を利用しているだろうが。」

ガイウスの推測に対して答えたチョウは笑顔でヴァンに視線を向け、視線を向けられたヴァンは呆れた表情で溜息を吐いて呟いた。

 

「じ、自分が利用されているとわかっていながら――――――いえ、それよりもどうして貴方は猟兵や黒月と言った遊撃士協会が敵視するような存在――――――世間では”悪”に部類される方々の依頼を請けているのですか?」

「それが”裏解決屋(スプリガン)”だからだよ、皇太子殿。」

「フン、世迷言を……!」

困惑の表情のセドリックの疑問に対して答えたヴァンの答えを聞いたユーシスは鼻を鳴らしてヴァンを睨んだ。

「……”裏解決屋(スプリガン)”にも色々いるが、商売柄、俺は悪人だろうが差別はしねぇ。そこに幾許かの筋が通る限りは。黒月だろうが猟兵だろうが半グレだろうが、………気は進まないが結社だろうがな。」

「け、”結社の依頼も請ける”って……!」

「とんでもないクソ野郎だな……」

「ヴァン……その口ぶりだと、まさか貴方、”既に結社からも依頼を請けた事があるの”……!?」

皮肉気な笑みを浮かべてシズナとチョウに順番に視線を向けて話を続けたヴァンの話を聞いたアネラスは信じられない表情を浮かべ、アガットは厳しい表情でヴァンを睨み、エレインは怒りの表情でヴァンに問いかけた。

 

「”結社からも依頼を請ける”………”2対3ではなく、3対3”………――――――!ま、まさか……”クロチルダさん達を足止めしている3人目の人物”は結社に所属している人なんじゃ……!」

「ああ……っ!?」

「そういえば、さっき彼は”クロチルダさん達を足止めしている人物達は2人ではなく、3人”だと言っていたね。」

「ああ……それを知っているっつー事は間違いなくそいつがヴィータ達を足止めしている”3人目の人物”に関わっている証拠だな。」

一方ある事に気づいたトワは不安そうな表情で推測し、トワの推測を聞いたマキアスは声を上げ、アンゼリカとクロウは真剣な表情でヴァンを見つめた。

「確かアンタが”死線”だったな。――――――”レティ”という女から伝言だ。『あんたが心からやりたいと思った道を見つけた事、古巣の仲間として祝福するわぁ。機会があればあんたが変わる切っ掛けにもなったあんたが可愛がっている”お嬢様”をウチにも紹介してなぁ。』だとさ。」

「!!………なるほど……よりにもよってあの方がクロチルダ様達の足止めを担当しているという事ですか……」

「シャ、シャロン……?」

「どうやらアンタはその”レティ”という結社の人物の事を知っているようね?」

ヴァンはシャロンに視線を向けてある事を伝え、それを聞いたシャロンは目を見開いた後静かな表情で呟き、シャロンの様子が気になったアリサは首を傾げ、サラは真剣な表情でシャロンに訊ねた。

「はい。”レティ”というのはレーヴェ様のようにその人物の”愛称”の呼び方で、彼女の名前はルクレツィア・イスレ――――――”鋼の聖女”、”劫焔”、”剣帝”に次ぐ”結社最強”の一角にしてかつて私が所属していた暗殺組織――――――”月光木馬團”にも所属していた執行者No.Ⅲ――――――”黄金蝶”ですわ。」

「やっぱり”執行者”か。」

「それもサンドロット卿やあの”劫焔”、それにレーヴェ殿に次ぐ”結社最強”の一角と呼ばれる程の使い手とは……」

シャロンの説明を聞いたアリサ達がそれぞれ血相を変えている中フィーは静かな表情で、ラウラは真剣な表情でそれぞれ呟いた。

 

「あのマクバーン達に次ぐ結社最強の一角って、どのくらいの実力なんだ?」

「……少なくても”私では絶対に敵わない相手です。”3年前の福音計画で”痩せ狼”と直接戦った事があるジン様やリベールの皆様でしたら、”痩せ狼と同格”と言えば理解できるかと。」

「何ぃっ!?」

「あのヴァルターと………」

クロウの疑問に答えたシャロンの指摘を聞いてある人物――――――3年前の”リベールの異変”で戦った執行者の一人―――――No.Ⅷ”痩せ狼”ヴァルターを思い出したアガットは信じられない表情で声を上げ、アガット同様ヴァルターを思い浮かべたジンは真剣な表情で呟いた。

「更に彼女はレーヴェ様のように”盟主”から”外の理”の武装を授かっていますわ。」

「そ、”外の理””の武装まで……!」

「ったく、だからその”外の理”の武装をポンポンと渡せる”盟主”って結局何者なのよ……」

更なるシャロンの説明を聞いたエマは不安そうな表情で呟き、セリーヌは呆れた表情で呟いた。

 

「そ、それよりも……何で”結社”の”執行者”が灰獅子隊――――――メンフィル・クロスベル連合に協力しているんだ!?結社はオズボーン宰相達に協力しているんじゃなかったのか!?」

「言われてみれば確かに……」

「フン、”執行者”は”あらゆる自由”が認められているとの事だから、大方そこのメイドのように”結社ではなく、その黄金蝶自身の思惑”でメンフィル・クロスベル連合に協力しているのだろう。」

「私もユーシス様の推測が正解だと思うのですが……ただ、私が知る限り”黄金蝶”は”盟主”や多くの”蛇の使徒”達が抹殺された事で崩壊寸前の結社に残っていた執行者達のように今回の戦争の件では他国方面で暗躍をしていたのですが………」

困惑の表情で声を上げたマキアスの疑問にガイウスは頷いた後考え込み、ユーシスの推測に頷いたシャロンは真剣な表情でルクレツィアの思惑を考えていた。

「――――――その”結社に残っていた執行者達の事情が変わった為、黄金蝶は今後の自分達の事を考え、メンフィル・クロスベル連合に協力する申し出をしてきたのですわ。”」

するとその時女性の声が聞こえた後、オリエが搭乗しているシュピーゲルの物陰からセシリアが姿を現してアリサ達と対峙した――――――

 

 

 

 

今回の話で、ヴァンとエレインが会話を始めるシーンのBGMは黎の”目指す先にあるもの”、ヴィータ達とクロガネ達が相対するシーンのBGMは黎の”Get Rid of the Urgent Menace”、セシリアが登場するシーンのBGMはファイアーエムブレム風花雪月の”誓いを胸に”だと思って下さい♪


 
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