No.1090272

英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

soranoさん

ハーケン会戦~貫く意志~

2022-04-29 01:28:19 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1429   閲覧ユーザー数:1191

 

同日、14:10――――――

 

ハーケン門へと向かうヴァンダイク元帥率いる特攻部隊目掛けて突撃する灰獅子隊は特攻部隊を守るように迎撃態勢を取っているエレボニア帝国軍に接触するとルシエルとベアトリースの指揮によって凄まじい猛攻を開始して、エレボニア帝国軍を圧倒していた。

 

~ハーケン平原~

 

「クロード隊、一斉射撃”制圧”、放てっ!!」

「アメリア隊、、一斉射撃”制圧”、放てっ!!ドロテア隊は”雷”の一斉詠唱、リシテア隊は”純粋”の一斉詠唱を開始しなさい!!」

「イエス・マム!!」

「ガフッ!?」

「ぐあっ!?」

ベアトリースとルシエルの指示によってドロテアを含めたドロテア隊の魔術師達、リシテア隊の魔術師達がそれぞれ詠唱や駆動を開始している中クロード隊に所属している竜騎士達、アメリア隊に所属している弓騎士達はそれぞれ矢を雨のように降り注がせるクラフトをエレボニア帝国軍目掛けて放ち、二つの部隊が放った矢の雨はまさに逃げられる場所等なく、次々とエレボニア帝国軍の軍人達に命中して討ち取ったり重傷を負わせたりしてエレボニア帝国軍を怯ませた。

「くっ……機甲兵や戦車を盾にして矢を防げ!機甲兵は竜騎士達を、戦車は弓騎士達をそれぞれ撃ち落とせ!」

「イエス・サー!!」

次々と討ち取られたり怪我をする軍人達の様子を見て唇を?みしめたエレボニア帝国軍の将校の一人が指示を出し、エレボニア帝国軍は将校の指示によって防御や反撃の為の行動を始めようとしたが

「甘い!ドロテア隊並びにリシテア隊、敵軍の兵器を目標にして放てっ!!」

「死の舞を踊ってあげる!裁きの雷よ、今ここに来たれ――――――審判の轟雷!!」

「ぐぎゃあああああ……っ1?」

クロード隊とアメリア隊による攻撃の間に既に詠唱を終えたドロテアやドロテア隊やリシテア隊の魔術師達がルシエルの指示によって次々と雷を発生させる魔術やアーツ、純粋属性の魔術や幻属性のアーツを放って機甲兵や戦車達を怯ませたり機甲兵や戦車を盾にする為に機甲兵や戦車の背後へと移動した軍人達を討ち取ったりした。

「今だ!魔族部隊、ローレンツ隊、フェルディナント隊、ディミトリ隊、機甲兵部隊!敵陣を切り裂いてリィン様達の敵総大将までの道を作れっ!!」

「イエス・マム!!」

「斑鳩の侍と忍び達も遅れるな!侍達は”猛攻陣”、忍び達は”攪乱陣”で敵軍を蹂躙せよっ!!」

「ハッ!!」

魔術師達による怒涛の魔法攻撃で敵陣が怯むとベアトリースの指示によってベアトリース率いる魔族部隊、ローレンツ率いる鷲獅子騎士(グリフィンナイト)達、フェルディナントとディミトリの代わりにフォルデが率いる騎士達、ヘクトルに乗り込んで機甲兵達を率いるカイルの部隊が一斉にエレボニア帝国軍に襲い掛かり、斑鳩の猟兵達も後方でリィン達と共に待機しているシズナの指示によってベアトリース達に続くようにエレボニア帝国軍に襲い掛かった。

「天使部隊、ドゥドゥー隊、カイル隊、エーデルガルト隊、フランツ隊、イングリット隊、戦友達が切り拓いた道を更に広げなさい!クロード隊とアメリア隊、ドロテア隊とリシテア隊は味方への援護を決して絶やさないようにしなさい!!」

「イエス・マム!!」

ベアトリース達に続くようにまだ攻撃に参加していなかったリィン隊とプリネ隊以外の部隊はルシエルの指示によってベアトリース達に続くように攻撃に参加してエレボニア帝国軍を圧倒していた。

 

個人としての戦闘能力だけでなく、指揮官としての能力も優れている”飛天魔”であるベアトリースと”智”に優れている戦闘型天使のルシエル。魔族と天使……本来なら決して相容れない種族同士でありながら、ベアトリースは”忠誠と飛天魔としての誇りを示す為”、ルシエルは”恩返しと天使としての正義の為”と理由は違えど”リィンを支えるという目的”は一致している為、ベアトリースは自ら最前線で自身の圧倒的な力を奮って敵には恐怖を与えて士気を下げ、味方にはベアトリースが味方であるという心強さで士気を高め、ルシエルは味方軍と敵軍の戦況を見て冷静に判断して次々と適切な指示を出して最前線で戦うベアトリース達を支援する事で”天使と魔族が協力して共に戦うという光と闇の共存を理想とするメンフィルが目指し続けている光景”を実現していた。

 

「ったく、最前線で戦えとか、一番俺に向いてねぇ指示じゃねぇか……っと!」

「ぐふっ!?」

「がっ!?」

フォルデは口から出た不満とは裏腹に騎馬を駆って次々と槍による鋭い突きで敵兵の急所を一撃で貫いて絶命させ

「包囲して一斉に襲い掛かれ!」

「よくも戦友達を!」

「お疲れさんっと!」

「ガハッ!?」

「グアッ!?」

自身を包囲するように囲んだ後それぞれ跳躍して一斉に襲い掛かった敵兵達には槍で薙ぎ払いを放って敵兵達を纏めて絶命させ

「させるかよっ!!」

「あぐっ!?」

「ぎゃあっ!?」

銃で味方を狙撃しようとする敵兵には投擲用の短剣を放って敵兵の喉元や額に命中させて絶命させ

「潰れろ!!」

「っとぉ!機甲兵に乗っているなら先にこっちの機甲兵を攻撃しろっての!――――――シルフィードキス!!」

「があっ!?あ、ありえない……生身相手に……機甲兵が破れる……なんて……」

機甲兵が自身に襲い掛かって来た時は騎馬を巧みに操って軽やかに回避した後烈風の刃を敵の機甲兵の操縦席に位置するヘッド目掛けて放ち、烈風の刃はヘッドに命中するとそのまま貫通して操縦席にいる操縦者を切り裂いて絶命させた。

 

「す、凄い……まさかあれがフォルデさんの”本気”なのか……!?」

「フォルデさんを含めた”先輩”の方達もそれぞれ活躍なさっていますけど、その中でもフォルデさんが一際活躍なさっていますわね……」

「はい。普段どころか隙あらば軍務まで怠惰にしようとしているフォルデさんとは思えないくらいの”化物”っぷりです。」

「しかもフォルデさんは馬を駆りながら”ヴァンダール流”の技まで振るっていらっしゃっていますわね……クルトさん、”ヴァンダール流”は騎馬戦までできるのですか?」

アルフィンを後ろに乗せて騎乗しているクルトは驚きの表情でフォルデの活躍を見つめ、クルトのように後ろにアルティナを乗せて騎乗しているセレーネはアルティナと共に信じられない表情でフォルデを見つめ、クルトと同乗しているアルフィンは自身の疑問をクルトに訊ねた。

「い、いえ……殿下もご存じかとは思いますが、”剛剣術”にしても”双剣術”にしても”ヴァンダール流”は”白兵戦を前提として剣術”ですから、”騎馬戦”までは想定していません。ですから、修行中の自分は当然として既に”ヴァンダール流”を”皆伝”している兄上や父上、母上や叔父上も馬を駆りながらヴァンダール流を振るう事は厳しい、もしくは振るう技も限られてくるかと思われます。」

「フフ、フォルデ先輩の場合、”剣術ではなく槍術”だからこそ、”騎馬戦でもヴァンダール流の技を自由自在に振るう事ができるのです。”」

アルフィンの疑問にクルトが困惑の表情で答えたその時馬に騎乗しているステラがクルト達に近づいて声をかけた。

「”剣術ではなく槍術”だからこそ、騎馬戦でもヴァンダール流の技を自由自在に振るう事ができる”、ですか?それは一体どういう事なのでしょうか?」

「言葉通りの意味です。”槍”は”剣”のように接近戦では扱いやすい武器ですが、”剣”と違い、リーチがある事で間合いが大きくとれるため、騎兵が扱ってこそその真価を発揮します。だからこそ”騎兵でもあるフォルデ先輩は馬を駆った状態でヴァンダール流の技を振るう事ができるのです。”」

「なるほど、武器の性能の関係ですか。という事は”ヴァンダール流槍術”は”騎馬戦も想定した上で編み出された武術”なんですか?」

クルトの疑問に答えたステラの答えを聞いて納得したアルティナは新たな疑問をステラに訊ねた。

 

「いいえ、”騎馬戦でヴァンダール流を振るう事を思いついたのはフォルデ先輩であって、そもそもヴァンダール流槍術も剛剣術、双剣術同様白兵戦を前提として編み出された武術”だったそうですよ。」

「な――――――」

「ええっ!?という事はフォルデさんご自身が”騎兵としてヴァンダール流を振るう事を編み出す”――――――つまり、”ヴァンダール流の新しい戦い方”を見つけるという”偉業”を成し遂げられたのですか……!?」

ステラの説明を聞いたクルトは驚きのあまり絶句し、セレーネは信じられない表情で訊ねた。

「フフ、フォルデ先輩は”馬に乗りながら槍を振るった方が楽だからと思ったから騎馬戦でもヴァンダール流を振るえるようにした”だけですから、本人はそれがどれ程の”偉業”であるかを自覚していないご様子ですけどね。――――――勿論、フォルデ先輩ご自身の才能やセンスも関係しているとは思いますが。」

アルフィンの質問にステラは苦笑しながらフォルデを見つめて答えた。

 

「……………………」

一方ベアトリース達が最前線で戦っている中後方で待機している部隊の中にいるヴァリマールの核の中でリィンは自分達の出番を待つかのようにその場で目を伏せて精神統一をし続け

(兄様…………)

(大丈夫……今の兄様なら恩師であったヴァンダイク元帥を討つ事にも躊躇わないわ……!)

(覚悟を決めて時が来るのを待っている今のシュバルツァー少将にはもはやかける言葉は不要、ですわね。)

(……どうやら既に恩師であるヴァンダイク元帥を討つ覚悟は決めたようですね。”彼女”が今の彼を見れば、彼の成長を誇るでしょうね……)

リィンの様子を映像端末で見守っているエリスは心配そうな表情で、エリゼとミュゼは真剣な表情で、リアンヌは静かな笑みを浮かべて見守っていた。するとその時最前線で戦い続けていたベアトリース達が進軍し続けているヴァンダイク元帥達への道を切り拓き

「!今です!リィン隊並びにプリネ隊、敵総大将への突撃を開始してください!」

「了解した!――――――リィン隊、突撃!!」

「プリネ隊、突撃開始!!」

「イエス・コマンダー!!」

「イエス・マム!!」

道を切り拓いたベアトリース達の様子を見たルシエルが通信でリィンに状況を伝えるとリィンとツーヤが号令をかけ、二人の号令に応じたリィン隊とプリネ隊の面々はヴァンダイク元帥達へと突撃し始め

「さあ!私達はリィン達の突撃が成功するように援護しますわよ!」

「イエス・マム!!」

「さてと……私達も”光の剣匠”や姉弟子(仮)達が来るまでの”準備運動”を始めようじゃないかな!」

「さり気なく俺をその中に含めるなっつーの!」

「ハッ、文句を言っている暇があったらとっとと敵兵の一人くらい殺りやがれ、裏解決屋(スプリガン)!!」

「フフ、それでは私達も行きましょうか。」

ヴァリマール達が突撃を始めるとセシリアは号令をかけて”紅き翼”と戦う予定のメンバーと共にヴァリマール達の後を追い、不敵な笑みを浮かべて号令をかけてセシリア達のようにヴァリマール達の後を追うシズナに文句を言いながら後を追うヴァンにセリスは鼻を鳴らして指摘し、チョウは静かな笑みを浮かべて答えた後ヴァリマール達の後を追い始め、セシリア達やシズナ達はヴァンダイク元帥達へと突撃するヴァリマール達を阻む、もしくは後を追おうとする敵兵達を討ち続け、それによってヴァリマール達は戦闘による疲弊は一切なくヴァンダイク元帥達の元へと到着しようとしていた。

 

「あの騎士人形は……―――――”灰色の騎士”……!」

「元帥閣下の邪魔はさせんぞ!」

「元帥閣下、この場は我らに任せて閣下はハーケン門に急いでください!」

「……ッ!すまぬ……っ!!」

突撃してくるヴァリマール達を目にしたヴァンダイク元帥が駆るゴライアスの傍に控えていた機甲兵達と戦車の一部はヴァリマール達の進む道を塞ぐように横並びの隊列を組んでヴァリマール達を阻もうとしたが

「お願いします、エヴリーヌお姉様!」

「ベルフェゴールも頼む!」

「どっかーん!二つ回廊の轟雷!!」

「輝きなさい、翼輝陣――――――ケルト=ルーン!!」

「ぐぎゃああああああああ………っ!?」

プリネとリィンの呼びかけにそれぞれ答えたエヴリーヌとベルフェゴールが上空へと転位した後それぞれ無詠唱で高位の魔術を発動してヴァリマール達を阻もうとした機甲兵や戦車達を纏めて薙ぎ払った。

「な――――――」

戦う所か時間稼ぎすらも許されず一瞬で容赦なく薙ぎ払われた部下達の無残な最期を見たヴァンダイク元帥が思わず絶句した時リィンが駆るヴァリマール率いるリィン隊とプリネ率いるプリネ隊がヴァンダイク元帥達の元へと到着し、ヴァンダイク元帥達と対峙した。

 

「――――――本当に久しぶりじゃの、リィン君、セレーネ君。まずはトールズの学院長として、君達の無事に安堵しておるよ。」

「学院長………」

「……恐縮です。」

ヴァリマール達と対峙したヴァンダイク元帥は優し気な表情を浮かべて声をかけ、敵対しているにも関わらず自分達を気遣うヴァンダイク元帥の様子にセレーネは辛そうな表情を浮かべ、リィンは静かな表情で答えた。

「メンフィル・クロスベル連合とエレボニア帝国との戦争で君とセレーネ君が祖国であるメンフィル帝国の為にメンフィル帝国軍に所属し、クロスベルではあのルーファス公子を討ち取り、その後も戦場で活躍をし続ける君達とはいずれ相対する事になるとは思っていたが、まさか儂達エレボニア帝国にとっては命運をかける乾坤一擲となる作戦を阻むという形で相対することになるとは、女神(エイドス)は随分と酷な導きをされたものじゃの………」

「ええ……それには同感です。――――――学院長。学院長はこの”大戦”で敗色濃厚となったエレボニア帝国軍の状況を覆す為に精鋭部隊を率いてハーケン門の突破、そしてロレント郊外にあるメンフィル帝国の大使館の早期制圧を狙っておられるのでしょうが………かつて”学院長にお世話になった身”として忠告します。学院長達”エレボニア帝国軍にとっては乾坤一擲となる作戦は絶対に失敗します。”その理由はメンフィル帝国は万が一ハーケン門を超えられた時の事を考えて、ロレント近郊には20万の戦力をリベールの許可を取って展開しているからです。」

「馬鹿な……っ!?ハーケン門を超える事ができても、リベールの領土であるにも関わらずメンフィルの20万もの戦力が展開されているだと!?」

「そ、そんな……たったこれだけの戦力で20万もの戦力――――――それも、メンフィル帝国軍を相手にするなんて”絶対に不可能”だ……」

ヴァンダイク元帥の言葉に頷いたリィンはヴァンダイク元帥に忠告し、リィンの忠告に驚いた周りのエレボニア帝国軍の軍人達は驚きの声を上げたり、絶望の表情を浮かべて呟いたりして動揺していた。

「……………………………」

一方ヴァンダイク元帥は一切動じることなく目を伏せて黙り込み

「例え学院長が一騎当千の強さの実力者であり、また率いている部隊も精鋭とはいえ、たったそれだけの数で20万もの戦力――――――それも、百日戦役もそうですが今回の戦争でもエレボニア帝国軍を圧倒しているメンフィル帝国軍を超える事は”絶対に不可能”である事は学院長もおわかりのはずです。学院長もそうですが率いている部下の方々を”犬死”させない為にも……そしてこの”大戦”を早期に終結させることで双方の被害を少しでも抑える為にも俺達に降伏して下さい。」

「リィンさん………」

かつてのトールズの学生としての感情、灰獅子隊の軍団長としての立場に葛藤しながらヴァンダイク元帥に降伏を促すリィンの様子をプリネは心配そうな表情で見守っていた。

 

「リィン君……こんな状況になってもなお、儂達エレボニア帝国軍を気遣って投降を促してくれた事には感謝する………――――――だが、それだけは絶対にできぬ。」

「……もしかしてエレボニア(そちら)にとって敵軍に所属している俺の言葉は信じられないからですか?」

「いいや、この”大戦”での王国軍とメンフィル・クロスベル連合、そしてヴァイスラント新生軍の連携や策を考えると、リィン君が教えてくれたメンフィルの20万もの戦力が儂達が襲撃しようとするロレント市やメンフィル帝国の大使館近郊に展開しているという話も真実なのじゃろう。」

「だったら、何故………」

「それが”国を護るために全てを尽くすのが軍人”だからじゃよ。」

リィンの疑問に対してヴァンダイク元帥は静かな表情で答えた。

「横から失礼しますが、元帥閣下はオズボーン宰相のように”国を護るためならどのような悪行を犯しても許される”というお考えをお持ちなのですか?」

「その声は確かミルディーヌ公女か………公女殿の問いかけは耳が痛い話じゃの………ギリアスによる謀――――――”焦土作戦”も儂は作戦実行前に知っておきながら、それが”内戦が終結したばかりの疲弊したエレボニアを護るため”と自分に言い聞かせて阻止せず、”アルスター襲撃”も”第二のハーメル”である事にも気づいていながら、目を逸らした。そんな儂もギリアスと”同罪”じゃから、公女殿の指摘に対して反論するつもりはない。――――――だからこそ、儂はこの戦争でエレボニアを勝利に導く事を貫き通さなけばならないのじゃ。戦争に勝つ為に自らの手で国民達を傷つけ、苦しめてしまった以上、その責任を取る為にも”どんな絶望的な状況に陥ろうとも国民よりも国を優先してギリアスの謀から目を逸らし、従い続けた儂には諦める資格は許されないのじゃ。”」

「…………ッ!」

「ヴァンダイク学院長………」

「馬鹿者が……時代が変わろうとも”軍人は不器用で融通が利かない”事は変わらんの……」

ミュゼの問いかけに対して答えたヴァンダイク元帥の答えを聞いたリィンは辛そうな表情で唇を噛み締め、アルフィンは悲しそうな表情で、ローゼリアは複雑そうな表情でヴァンダイク元帥が搭乗しているゴライアスを見つめた。

 

「……じゃが、リィン君の言う通り、このまま作戦を遂行した所で儂と共に死地に付き合ってくれている部下達まで”犬死”させる事は本望ではない。―――――よって、特攻隊の皆に”命令する。”このまま儂と共に作戦を遂行し続けるか、敵軍に降伏するか、各自己の意志で決めよ!降伏しても、罪には問わん!命が惜しい者達は儂達に遠慮する必要は無い!」

「げ、元帥閣下……」

ヴァンダイク元帥は部下達に新たな命令を出し、ヴァンダイク元帥が出した信じられない命令に部下達はそれぞれ複雑そうな表情や辛そうな表情を浮かべたりしたが、すぐに互いに視線を交わして決意の表情を浮かべて答えた。

「我らも最後までお供します、元帥閣下!」

「この特攻隊は元帥閣下の御指示によって祖国の為に死ぬ事も厭わない兵(つわもの)達が志願した精鋭部隊!我らにとって今更”死”等恐れるに足りません!」

「どんな絶望的な状況であろうと、必ずや祖国エレボニアを勝利に導きましょう、元帥閣下!」

「お主達………」

誰一人降伏の申し出をせず作戦の続行を望む部下達の申し出を聞いたヴァンダイク元帥は驚いた。

「ほう、さすがエレボニアの総大将が率いる精鋭部隊だけあって、どいつもこいつも命知らずのようだなぁ?」

「――――――意気やよし。ならば、我らも我らの勝利の為に一切の容赦はせぬぞ。」

するとその時ギュランドロスとオーレリア将軍の声が聞こえた後側面から黄金のシュピーゲルを操縦するオーレリア将軍率いるヴァイスラント新生軍の精鋭部隊と深紅のヘクトルを操縦するギュランドロス率いるクロスベル帝国軍の精鋭部隊が自分達の行く道を阻む敵達を吹き飛ばしながら側面から現れてリィン達と共にヴァンダイク元帥達と対峙した!

 

「き、貴様らは――――――!」

「お、黄金の羅刹にその深紅のヘクトルは確か……六銃士の一人にしてクロスベル皇帝の片割れ、”紅き暴君”の専用機……!?」

「オーレリア将軍閣下……!それにギュランドロス陛下まで……!?」

「フフ、間に合ったようで何よりですわ。」

オーレリア将軍達の登場にエレボニア帝国軍が驚いている中リィンもエレボニア帝国軍同様驚き、ミュゼは静かな笑みを浮かべて呟き

「フッ、我らをヴァンダイク元帥達の元へとたどり着かせない為の部隊はこちらの予想よりも抵抗は激しかったのですが、こちらにとっても予想外の援軍のお陰で何とか間に合いました。」

「クク、ゼムリア大陸の歴史に残るこの大戦を締めくくる事になるこの戦いにクロスベルだけ参加しないのはどうかと思って、急遽部隊を結成して援軍に来てやったという訳だ!だぁっはっはっはっ!」

「たったそれだけの理由で、総大将自らが部隊を率いる危険を犯すなんて、理解不能です。」

「ア、アハハ……ギュランドロス陛下の行動はお父様どころかギュランドロス陛下を最も理解していらっしゃっている三銃士の方々すらも予想できないとの事ですから、仕方ないかと……」

苦笑しながら答えたオーレリア将軍の言葉に続くように答えた後豪快に笑ったギュランドロスの様子にリィン達がそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アルティナはジト目で呟き、メサイアは苦笑していた。

 

「何はともあれ、天下分け目の決戦となるこの大戦を終結させる為にもここからは我々も其方達に加勢させてもらおう、シュバルツァー少将。」

「当然俺様達も加勢するぜ、シュバルツァー!」

「加勢、ありがとうございます。――――――本当に残念です、学院長。だったら、俺もこの大戦を終結させる為……そして俺の目的の為にも貴方を討つ!」

オーレリア将軍とギュランドロスの申し出に感謝の言葉を口にしたリィンは決意の表情を浮かべてヴァンダイク元帥が操縦するゴライアスを睨んだ。

「(この戦争が始まってから本当に大きく成長したものじゃの……)――――――笑止。幾ら複数の騎神達の力があり、黄金の羅刹とクロスベル皇帝の加勢があろうとも、エレボニア帝国軍の総大将たる儂の首はそう簡単に取らせはせぬぞ、リィンく――――――いや、”灰色の騎士”!!」

リィンの決意を聞き、リィンの成長の速さに心の中で喜んでいたヴァンダイク元帥はすぐに気を引き締めてヴァリマールを睨んで声を上げた。

「オーレリア将軍とギュランドロス陛下とも連携して学院長を討つぞ、エリゼ、エリス、ミュゼ!!」

「「はい、兄様!!」」

「後方からの支援攻撃は私にお任せを!」

リィンの呼びかけにエリゼ達はそれぞれ力強く答え

「”準起動者”としての援護、頼むぞ、セレーネ、アルティナ、クルト、アルフィン!!アイドスはセレーネ達の守りを頼む!」

「わかりましたわ、お兄様!」

「お任せください!」

「了解しました!どうかご武運を……!」

「はい!エリス達共々、必ず全員無事に勝ってください、リィンさん……!」

「ええ!セレーネ達の事は私に任せて!」

セレーネ達もリィンの呼びかけに力強く答えた後それぞれの戦術オーブメントを構えていつでもEXアーツを発動できるようにし、アイドスは結界を展開してセレーネ達の護りを始めた。

 

「リィン隊の白兵戦の指揮はお願いします、プリネ皇女殿下!」

「ええ!白兵戦は私達に任せてリィンさん達は敵総大将の撃破に集中してください!――――――リィン隊白兵部隊、抜刀!」

「同じくプリネ皇女親衛隊、抜刀!殲滅目標はエレボニア帝国軍特攻隊!」

「敵軍は自らの死も躊躇わない”死兵”と化している。決して油断せず、戦友達と連携して敵の動きを最大限に警戒しながら着実に敵兵を討て。」

「イエス・マム(サー)!!」

「キャハッ、”死兵”になった所で、エヴリーヌがいたら”無駄”って事を思い知らせてあげる♪」

更にリィンはプリネに呼びかけ、リィンの呼びかけに答えたプリネは号令をかけ、プリネに続くようにツーヤとレーヴェもそれぞれ号令をかけ、エヴリーヌは凶悪な笑みを浮かべて武器を構えた。

「この大戦で仲間達全てが生き残れるように”伝説の魔女”と”現代の鉄騎隊”の力、存分に振るって下さい、ロゼさん、デュバリィさん!」

「フッ、言われるまでもないわ!亡き友ドライケルスの為にも、例え相手がドライケルス達と共に守ったエレボニアの兵達であろうと、このローゼリア、加減はせぬぞ!」

「いいでしょう!今こそ”至高の武”の主たるリアンヌ様に見出された私達”現代の鉄騎隊”の力、存分に振るいますわよ、エンネア、アイネス!」

「ええ!そしてマスターの望みの為にも……!」

「我ら”鉄機隊”の底力、存分に振るうぞ!」

「「「星洸陣!!」」」

プリネの後にリィンに呼びかけられたローゼリアは力強く答え、デュバリィも力強く答えた後エンネアとアイネスに号令をかけた後”星洸陣”を発動した。

 

「ベルフェゴールはエヴリーヌ殿と協力して敵の機甲兵達を優先的に撃破してくれ!白兵戦の仲間達の事は頼む、メサイア、ユリーシャ、レジーニア、アンリエット、リタさん!」

「ええ、あんな連中、さっさと片付けてご主人様の援護に回るわ♪」

「はい、お任せを!リィン様達の為……そしてお父様とお母様の為にも全身全霊で挑ませて頂きますわ!」

「どうかご武運を、我が主!」

「やれやれ、あたしの研究もそうだが主達の為にも雑事はさっさと片付けてあげるよ。」

「この場は私達に任せて、あなた様はあなた様の目的の達成に集中してください……!」

「主の敵は私の敵。そして私にとって新たな友達のアンリエットの敵も私の敵。”聖霊リタ”、参ります……!」

リィンの指示にベルフェゴールはウインクで返し、メサイアとユリーシャは力強く答え、レジーニアは溜息を吐いた後それぞれの武器を構え、アンリエットとリタはそれぞれ決意の表情を浮かべて戦闘の構えをした。

「――――――総員、戦闘開始!出陣前にも告げたがもう一度告げる!”誰も死ぬな!”この命令は絶対に死守せよ!」

「おおっ!!」

そしてリィンの号令を合図にリィン達はヴァンダイク元帥達との戦闘を開始した!

 

~少し前~

 

リィン達がヴァンダイク元帥達の元にたどり着く少し前、アリサ達”紅き翼”はヴァンダイク元帥達の元へと急行していた。

「!おいっ、あれを見ろ!」

仲間達と共に急行していたアッシュは何かに気づくと走りながら声を上げてある方向に指を刺した。アッシュが指を刺した方向の先ではヴァリマール達がヴァンダイク元帥達の元にたどり着こうとしていた。

「ああっ!リィン達が学院長達の元にたどり着いちゃったよ……!」

「まだ戦闘は始まっていないから、まだ間に合うわ!急ぎなさい!!」

ヴァリマール達の様子を見たエリオットは不安そうな表情で声を上げ、サラは真剣な表情で声を上げてアリサ達に急ぐように促した。

「おっと、それ以上先には進ませないぜ?」

するとその時男性の声が聞こえた後空からアリサ達目掛けて数本の矢が襲い掛かり

「!ハッ!!」

空から襲い掛かる矢に逸早く気づいたシャロンが瞬時に鋼糸による結界を作って空から襲い掛かってきた矢を鋼糸による結界で受け止めた。

「そ、空から”矢”!?一体誰が僕達を狙ったんだ!?」

「そ、それよりも先程聞こえてきた声には聞き覚えがあるのですが……」

突然の出来事にマキアスは驚き、ある事に気づいていたエマは困惑していた。

「零の型――――――双影!!」

「黒き刃よ――――――蝕め!!」

そこにシズナがアリサ達の側面から襲い掛かり、チョウはシズナとは正反対の位置から数本の暗器をアリサ達に放って奇襲し

「「させん!!」」

シズナとチョウの奇襲に気づいたアルゼイド子爵は宝剣を振るい、ジンは拳を振るって篭手の部分で暗器を叩き落して奇襲攻撃を防いだ。

「へえ?完全に気配を消した状態の私の奇襲を完璧に防ぐなんて、さすがは老師(せんせい)とも互角に斬り合った”光の剣匠”と言った所かな?」

「フフ、さすがは音に聞く”不動”殿ですね。」

攻撃を防がれたシズナとチョウはそれぞれ興味ありげな表情でアルゼイド子爵とジンを見つめて声をかけた。

「あ、貴女は”月の霊場”でリィンさん達の代わりに僕達と戦った……!」

「”白銀の剣聖”……!」

「何っ!?」

「あ、あの人が……」

「それにもう一人の方は誰なの~!?」

「まあ、もう一人の方は身に纏っている服が俺とエレインにとっては見覚えがあり過ぎる服だから、所属に関してはわかるがな……」

「ええ……まさか灰獅子隊の方にも協力していたなんて。」

シズナの登場に驚いて仲間達と共に立ち止まったセドリックは驚きの表情で声を上げ、真剣な表情で声を上げたフィーの言葉を聞いたアガットとアネラスはそれぞれ驚きの表情でシズナを見つめ、困惑の表情でチョウを見つめて声を上げたミリアムの疑問に疲れた表情で答えたジンの言葉に頷いたエレインは厳しい表情でチョウを睨んだ。

「彼女達だけでなく、私達もいるわよ。」

するとその時女性――――――エーデルガルトの声が聞こえた後、エーデルガルト達が現れてアリサ達と対峙した――――――!

 

 

 

 


 
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