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新・恋姫無双 ~呉戦乱記~ 第12話

4BA-ZN6 kaiさん

続きを上げます。よろしくお願いします

2021-08-30 11:39:15 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:597   閲覧ユーザー数:542

そうして北郷、冥琳、雪蓮の3人での束の間の休暇を楽しみ、英気を養った冥琳、雪蓮は再び仕事へと邁進する。

 

北郷はというと、明命の部隊と共同で袁術がいる寿春への潜入を敢行。諜報活動にて情報を集めていた。

 

今度の敵は袁術であることは間違いがなく、敵は無能ではあるが巨大であることには変わりない。

 

事前に情報を集め、対策を練る。冥琳も手堅い一手をうった。

 

「己を知り、敵を知る。まさにこのことだな」

 

「はい、ですが袁術が収める南陽郡はやはり重税により、疲弊しており、活気もなく見る影もありません」

 

明命と俺は旅人として偽装し、この南陽郡を訪れ、宿を借りている。

 

明命を含む他部隊員とが数名。斡旋している間諜と連絡を取りながら、敵の内情に探りを入れていた。

 

「これが王朝の交通の要所、寿春とはな。予想はしていたことだが、同情する。ん?どうした」

 

「北郷隊長!宮廷内部に入る手筈を整えました」

 

「すごいな、そこまでどうやって・・・・」

 

北郷は驚くが、明命は厳しい表情で部下の代わりに説明をする。

 

「袁術に不満を持つ者は民衆だけではない、ということでしょうね」

 

「そういうことか。これは思ったより楽にいきそうだ・・・。各員、諜報員と接触後、宮廷に潜入する。不審な行動は控えるんだ」

 

「「御意」」

 

そうして北郷を含む数人は民間人の服装で、外に出ると、間諜と出会う。

 

「貴殿が北郷隊長ですか?お初にかかり光栄です」

 

宮廷の前にいるのは少し小太りな、いかにも豪商のような雰囲気の男が一人。

 

「彼は袁術の宮廷料理の食料を調達する商人です」

 

「なるほど、忙しところ申し訳ないですが、ご協力感謝します」

 

北郷が礼儀正しく、頭を下げると商人も笑顔で応える。

 

「頭をおあげください。呉の連合による自由な商いに魅力を感じるの者は、この南陽郡でも多いです。袁術では我々の権益を守ることは厳しいでしょうしね」

 

「・・・・ご事情はよくわかります。我々も国民の生命・財産の保護が最優先であり、人道的な観点からもこのような疲弊した人々をほうってはおけませんゆえ」

 

「そのように思って下さり恐縮です・・・。では案内します、どうぞこちらへ」

 

間諜の案内の元、門番などもスルーパスで通り北郷は部下たちに城の間取り図や撤退や攻撃が可能な進撃ルートの割り出すなど間諜の案内をもとに徹底して調べ尽くす。

 

それからは宮廷で働く労働者に偽装し、食料を収めるために台車を用いて、毎日宮廷を出入りしては、敵の食料庫や武器庫などの位置を割り出してはそれを間取り図に加えていく。

 

そうして出入りをするようになって1ヶ月ほど、北郷たちは十分な情報を入手できたとして、帰還を果たす。

 

北郷は直ぐ様軍令部に報告をすると、対策会議が開かれ、議長である冥琳が声を上げる。

 

「先の明命と北郷たちの働きにより、敵の詳細な情報を入手する事ができた。そのこと関して北郷が説明をする!」

 

冥琳は北郷を呼ぶと、彼はそのまま説明を始める。

 

まず第一に袁術軍の補給線は脆弱であること、さらに医療品や武器等の貯蔵が十分でなく、長期戦を行うだけの物量がない。また疲弊した民衆たちの蜂起が著しく、混沌を極めているという事などを説明。

 

 

「・・・・となります。以上です」

 

「ではまずみんなの意見を知りたい。各自意見はないか?」

 

冥琳はこの会議で雪蓮・蓮華といった孫家や軍の人間だけでなく、内政・法務・経済関係に詳しい文官たち等も引き連れ、参加せせていた。

 

今回は多方面からの意見を取り入れ、山越での開戦時に備え疲弊なく独立を果たすのが目的である以上、慎重に慎重を喫して戦うのは理解はできる。

 

特に袁術サイドの経済面での打撃と敵補給面での杜撰さをついての強襲が意見としてあげられた。

 

まずは経済面での打撃は間諜を利用しての、亡命、逃亡の誘導である。

 

呉に逃げれば、自由な生活が保証できる、重税に苦しむことなく、財産・命を脅かされることはないと露店商人たちを通じて噂を広げる。

 

逃亡者を増やし、裏切り者を取り込む。袁術としても民あっての税である以上、逃亡・脱走が相次げば税による収入が低下するし、国内不安も増す。

 

特に南陽郡内での有力な商人たちをコチラに取り込むことができれば、内政面でも打撃を与えることができる。

 

その後、農民たちを斡旋、軍事支援し、反抗運動を誘発させる。

 

農村への接触と軍事支援は蓮華と陸遜こと穏が行うことになった。

 

というのも蓮華は農政面の知識に関しては抜きん出たのものを持ち、農村への接触や指導力を買われてのことであった。

 

蓮華自身も初の大役で緊張の色が隠せないが、意を決して承諾。

 

この農民決起の鎮圧に乗り出すことで孫策サイドの裏切りではないというカモフラージュとし、袁術を救援をするという体裁で呉の軍を各地に派遣させ、好機を伺う。

 

その後鎮圧を行うように見せかけ時間をかけ、鎮圧に業を煮やした袁術も軍を動かした後に、宮廷に潜入させていた工作員を用いて、食料庫、武器庫を破壊し敵の士気を落とす。

 

農民たちを保護しつつも、共闘し、各地に派遣していた鎮圧軍を袁術側へと向ける。

 

それと同時に劉備軍が挙兵し、挟撃、敵を撃破する。という内容であった。

 

特に内政面での覚束なさを文官たちは指摘し、経済面での打撃を与えれば、動揺は確実に広がると指摘。

 

法務においても今回は緊急法令を制定し、時効付きで予算を承認させると連携を取る。

 

ここで資金を出し渋っては本末転倒だ。

 

軍もカネ、モノ、そして人を可能な限りつぎ込む姿勢を見せる行政府に対し、軍令部もアレコレと要請を挙げ要点を詰める。

 

特に今回は諜報活動が物を言う、最初は時間をかけて外堀を削るため、諜報部隊の新設の案が合議・可決され、その部隊を束ねるのは明命に決まった。

 

明命の部隊は隠密に長けてはいるが、思春や北郷隊も合同で作戦を行う関係上、隠密行動ができる。

 

ゆえに明命本人は、北郷が情報部隊長になるべきだと当初は主張したが、冥琳は首を縦にはふらなかった。

 

「適材適所という言葉があるように、北郷と思春は優秀ゆえ、便利屋のような扱いになっている不明確な部分を刷新したいのだ。思春は水軍、北郷は陸、そして明命は隠密とな。お前の作戦遂行には思春や北郷などの部隊を使っても構わないが、作戦の立案と実行は全てお前の権限で行うことにしたい。これは命令だ、明命」

 

「明命よ、お主が新設される部署の長になるという重圧はよく分かるつもりじゃ。しかしお前もこれからは兵を率いて、戦っていかねばならぬし、それが儂も冥琳も可能であるとふんでいるからお主に任せるのじゃ。儂もお主を出来うる限り支援するゆえ、すまぬが引き受けてくれんかの」

 

「・・・・ぐぅ・・・分かりました。引受させていただきます!」

 

冥琳の命令と祭の説得により明命は渋々承諾する。

 

魏が側面から強襲をしてくる可能性もあったが、先の連戦で魏も大規模な行動は起こせないと踏んでいた。

 

領土が増えれば、それを統治するのには時間を有する。

 

ましてや力による侵略だ。抵抗も大きく、反発を抑えるのには十分なリソースを必要とするからだ。

 

暫くは内政面での安定に力を注ぎ、然るべき時期に攻撃をするという方法を採るであろう結論づけていた。

 

これにより連合は幾ばくかの猶予期間を与えられたとみて、これを機に呉が独立し、連合の力をより高めておきたいという思惑もあったのである。

 

「よし当面は情報部による間諜工作を行い様子をみよう。それと同時に我々も不満を持つ農民たちに接触をし、武器供与と指導を行う。とりあえずの期限は1年。じっくりと行おう。この戦いの勝利で我々はついに建国、独立を果たせるのだ。前王孫堅様や孫策様のためにここは踏ん張りどころだぞ」

 

冥琳が総括し締めくくると、皆が強く頷く。

 

「よし、では解散!」

 

解散の声が出されると、皆はいっせいに持ち場へと戻っていく中、祭と雪蓮は冥琳は二人話し合う。

 

「この作戦と並行して山越と本格的な交渉に入ります。ゆえに1年の期限を設けました」

 

「なるほどの。だが山越の連中は儂らの条件を飲むかの?」

 

「こちらが圧倒的な勝利で独立を成し遂げられれば、形勢はこちらに傾くわ。山越も情勢を理解している。こちらに損害の多い出血ある独立では、今度は山越は牙を見せてくるでしょうね」

 

雪蓮が現状を話すと祭も納得の表情で頷く。

 

「そうじゃな・・・。儂らを落とせば、曹操への手土産に、そして逆に儂らにつけば防波堤替わりに、か。全くずる賢い連中じゃな」

 

「だがそういった姿勢を見せてくれる方が、交渉はしやすい。今現在、下交渉も上手くいっています。そのためになんとしてでも圧倒的な勝利、独立が必要となってくるのです。ここは慎重に、機が熟せば電光石火で大胆に、といきましょうか」

 

「冥琳の言うとおりね。結局は私たちが自分で切り開いていかなければならない、試練の道というわけ。天に試されていると思い、全力でやるしかないわ」

 

「ふむ・・・儂も腹をくくっておるゆえに、お主についていくだけよ。ただ後悔のないようにな。明命に関しては心配無用じゃ。儂も支援する」

 

「そう言っていただけると助かります。祭さん、頼みます」

 

祭は冥琳の肩をポンと叩くと微笑み、じゃあと言って会議場をあとにした。

 

 

それから明命が主導し、諜報活動が行われるようになった。

 

露店に工作員を紛れ込ませる、または現地での諜報員を用いての情報戦である。

 

最初は微々たるものであったが、ジワリジワリと噂が広まり、離反、脱走者が相次ぐようになっていった。

 

これに対し袁術側は重税による逃亡だと判断し、特に気にもとめないが、この判断が致命的なミスであったと気づくのは暫くしてであった。

 

商人たちの離反が相次ぎ、深刻な経済不況となると、税収が1ヶ月、2ヶ月と経つごとに少なくなっていく。

 

これにより農村への重税がさらに課せられ、農民を中心に不満がたまることに。

 

蓮華、穏たちは明命と連携を撮り、不満を持つ農村の実力者とコンタクトを取り、レジスタンスを結成させることになんとか成功する。

 

『なんとか』というのは、蓮華が農村の信頼を得るのに幾分時間を要したことにあった。

 

「我々が急に言っても疲弊した民は立ち上がらないわ。私が先鋒に立ち、苦境を分かち合う事で民は立ち上がる、そう考えている」

 

蓮華はそういい、農村をめぐっては支援と武器供与を呼びかけ、対話に時間をかけることで理解と信頼を構築させていったのである。

 

蓮華と穏は、農政学や農業での研究の知見を生かし、疫病の治療法の伝授や作物の防疫などの知識伝播をし、また貧困が著しい農村等では食料の配給を始め、農民たちの心、信頼を次第に掴んでいく。

 

次の段階に移ったと判断した蓮華たちは、その後農民の決起を呼びかけ、武器の供与と教育を本格的に、そして徹底して実施していく。

 

教育に関しては、手を抜かず思春の隊の者や北郷隊の人間を派遣し、徹頭徹尾軍事的な教育を施した。

 

そうして約束の1年がすぎると農民たちは力をもち、決起を行った。無論、農民の指導者は蓮華である。

 

「今こそ、この苦境を脱する時!立ち上がれ農民たちよ!」

 

と蓮華が大号令をあげ、まずは米を保管する倉庫を一斉に打ち壊し、そして要人が住む屋敷の強襲をおこなった。

 

保管された米は地面に大量にバラまかれ、倉庫は火がつけられ燃え上がる。ひとつの農村が決起したら、あとは連鎖的に農民たちが一揆と打ち壊しを起こす。

 

これが南陽郡全域に一斉に広がり、袁術も軍を派遣するも鎮圧は困難を極めた。

 

袁術がいる寿春も無事ではすまず、多くの打ちこわしと一揆が多発し、宮廷にも損害を与える。

 

宮廷の構造を丸裸にされた袁術は特に武器庫、食糧庫の破壊の被害を負い、補給線に深刻なダメージを受けてしまう。

 

「ひえ~農民が一斉に蜂起して、鎮圧が間に合いません~」

 

「七乃~そ、孫策じゃ!孫策を呼ぶのじゃ!!」

 

袁術が雪蓮を呼び出し、鎮圧の支援を呼びかけると、雪蓮は快諾。

 

「そ、孫策よ~妾を助けてたも~」

 

「ええ!私も鎮圧に向かうわ。ただ頼みがあるんだけど・・・・」

 

「なんですか~?」

 

「これだけ広範囲に反乱が起これば、1箇所ずつ鎮圧しても埒があかないわ。軍の一斉展開を行いたいんだけど、構わないかしら?」

 

「え?それは・・・う~ん」

 

「七乃~孫策はこう言っておるのじゃ、ここはあやつに任せるのじゃ」

 

張勲はこの願いに一瞬警戒を強めるが、袁術の可愛い泣き顔から晴れ渡る可憐な笑みを目にすると、頭から懸念が吹っ飛び張勲もニコニコと笑い快諾してしまう。

 

「そ、そうですね~。では孫策さん、お願いできますか?」

 

「・・・・もちろんよ♪」

 

雪蓮はニコリと笑うと城をあとにする。

 

その後呉の兵士を一斉に派遣し、袁術を取り囲むような形であえて配置させる。だがこれにも袁術は疑問に介さなかった。

 

 

「孫策が妾を守るためにそう配置したのじゃ!」

 

と鎮圧が約束された安心感からか、袁術は完全に黙殺してしまう。

 

だが鎮圧は時間がかかる。呉は全く鎮圧に手を貸さず、袁術軍に手を貸すような真似事をしているだけであり、成果は一向に上がらない。

 

農民たちの中には当然呉軍の人間も大量に紛れ込んでおり、彼らが戦闘を指揮し、統率をとっていた。

 

袁術軍もなぜか恐ろしく練度が高い農民たちの動きに翻弄され、また兵站に大きな不安がのこる中、次第に劣勢に立たされていく。

 

軍が劣勢になった結果、打ち壊しがどんどんと多発し、袁術軍の食糧事情についに火が付き始めた。

 

袁術が統治する南陽郡 寿春は治安が完全に崩壊し、統率が取れるような状況でなく、無政府状態となり兵士の裏切りや脱走が相次いだ。

 

このタイミングを見計らっていた雪蓮たちは、軍を反転する。

 

「農民たちよ!!今こそ諸悪の根源である袁術を打ち倒すのだ!!敵は袁術なり!」

 

と声を上げると、農民とともに共同戦線をとり侵攻を開始。雪蓮は人質として軟禁されていた、孫尚香を救出に成功する。

 

「お、お姉ちゃ~ん」

 

「シャオ、もう大丈夫だからね。よく頑張ったわね」

 

「こ、怖かったけど、シャオ頑張ったよ。ずっとお姉ちゃんが来てくれるって信じてたんだから!」

 

雪蓮は泣いて抱きすがる妹を優しく抱きしめ、頭を褒めてやる。

 

これにて孫家の三姉妹は全て揃った。袁術の強みであり、孫家の弱みであった孫尚香の軟禁が解かれることになり、呉軍の本格的な侵攻が始まったのである

 

「美羽様~孫策さんが裏切りました~。ひぇ~ん、人質の孫尚香も救出されてしまいました~」

 

「な!?そ、そんな馬鹿なことが・・・・」

 

「農民の反乱鎮圧に支援するべく各地に展開した呉軍でしたが、それが仇となったようです・・・」

 

袁術と張勲はまさかの孫策の裏切りに驚きとともに伝令兵からさらに悪い報せが届き、一気に青ざめる。

 

「み、美羽様・・・・。さらに悪い報せが・・・劉備軍がこちらに向かっていると・・・・」

 

「なんじゃと~?!」

 

雪蓮の号令と共に、劉備軍も挙兵し、最早袁術は逃げることができず袋の鼠である。

 

その後補給もなく、食料もなく、捨て駒とされる袁術軍の兵士たちはなすすべもなく制圧されていく。

 

呂布と祭、そして北郷を筆頭とした主力部隊を展開し、敵を一気に制圧。

 

思春たち水軍は事前に海上を封鎖し、逃げ場をなくすとともに、補給線を確保する。

 

海から命からがら、袁術軍兵士たちは逃げようとすれば、海上封鎖している呉の水軍により、船は強襲され、轟沈していく。

 

陸だけでなく、海ももはや逃げる場所などない。

 

連合軍の前に兵士たちも勝てる見込みのないことを悟り、降伏勧告に従うと武器を下ろし降伏していった。

 

 

農民たちの一揆・反乱を機に孫家の裏切りからわずか1ヶ月。袁術は降伏し、南陽郡 寿春は陥落。ついには追い出されてしまう。

 

「もう二度と私たちの前をうろつかない事ね。今度見かけたときは、分かってるわよね・・・?」

 

「「ひぇ~ん」」

 

捕獲した袁術、張勲の前に雪蓮が現れると、南海覇王を袁術の顔面につきつけ、恐ろしく底冷えする恐ろしい声で吐き捨てる。

 

二人は雪蓮の恐ろしさに泣き出し、恐ろしさのあまり小便を漏らして、逃げおおせるのであった。

 

 

これにて雪蓮の謀反が成功し、独立を果たす。

 

「皆の者聞け!!我が故郷である江東を袁術の手から取り返し、虐げられていた農民を開放したのだ!!我々を妨げるものはコレで無くなった!!!国民が生存、幸福を追求し立ち上がったこの行いは、後世に延々と語り継がれる偉業であろう!!」

 

勢力は一気に増し、雪蓮も自分の故郷が取り返せたことに、喜びと興奮の声を大きく上げる。

 

周到に準備を重ね、その後スピードある攻撃により呉の損害はほとんど生じる事なく独立を果たすことに成功した。

 

これにより雪蓮は呉を正式に建国。「江東の小覇王」の異名をより大きく轟かすことになった。

 

そのころ冥琳たちは・・・・山越で再び会談を行っていた。

 

会談は未だに平行線を辿り、膠着状態が続いていたが、冥琳は慌てることない。

 

山越は待っている。恐らく雪蓮と袁術の攻防を知っているであろうことを鑑みれば、彼らも結果次第で動きを変えてくるであろうことは、冥琳は知っていたからだ。

 

だが時は来た。会談の最中に冥琳の耳に孫呉独立の報せが届くともに、山越の交渉人にも耳打ちがされる。

 

「どうやら孫家が独立を果たしたようですな。それも大きな損害もなく、わずか1ヶ月でとは恐れ入る」

 

山越の交渉担当である重鎮が静かに語ると、冥琳は内心ほくそ笑みながらも、晴れ晴れとした表情で嬉しがってみせる。

 

「ええ、そのようです。これで正式に蜀と国交を結べます」

 

「と、なると・・・・。我々もここで連合に参加する意味も出てくる・・・ということですな」

 

山越は呉の独立の成否の出来次第で、対応を決めるつもりでいた。

 

結果が出た、特に呉軍の圧勝という事実がある以上、山越はこれで対応を決めていく必要があった。

 

「はい、連合の共栄圏の傘下に入れば貴殿たちが考える利点も享受できるでしょう」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

重鎮は渋い表情を決して崩さず、冥琳の出方を伺っている。だが彼女はそんな重鎮を気にするまでもなく、悠々と語る。

 

冥琳はすでにこの交渉での勝利を確信していたからだ。あとは全て自分次第だが、自分の手玉に取られようとしている山越を見て、余裕を決して崩さない

 

「我々は返事は急かしませんが・・・・、待ちもしません。我々と手を結び、独立国家として共存するか。魏に下り、我々を滅ぼすのもよし・・・です。しかし魏に忠誠を誓えば、貴方がたは仮初の平和を享受したあと、漢王朝時と同じ抑圧対象であり続け、弾圧はより過激になるでしょうね」

 

「公瑾殿、我々を脅すつもりですかな?」

 

重鎮が怒りの表樹で睨みつけるが、冥琳は心外だとばかりにオーバーな仕草でそれを否定する。

 

 

「脅す?フッ、冗談はやめていただきたい。事実を言っているまでですよ」

 

「なんだと・・・?」

 

「曹操は確かに天下を欲している。それに手を貸せば、一枚かませてくれる、という考えが山越の方々にはあるのかもしれない。ですが曹操は果たして、そこまで利口な人間であるのか?ということです」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「彼女は争いを欲している。恐らく全ての彼女の構成する原理が、競争と争いであるのであろう。優れたのもは勝ち続け、劣ったものは負け続ける。優れた者が劣った者を画一的に支配する世界、それが曹操の目指す世界だ。確かに競争による闘争は、進化と変化を促す上で重要ではある。だが競争に負けた者はどうなります?勝者がいるところに、常に敗者ありだ。強烈な競争は格差を生み、階級的な分断が生じ、社会的不安を増すでしょう。だがそういった時に為政者は共通の敵を見つけ、不満をそらすのは常套手段だ。・・・私の言いたいことが分かりますか?」

 

「つまり、曹操は我々を利用したあとは裏切り、共通の敵として討伐すると?」

 

「そうです。もともと貴方がたは漢王朝に従わず、独自の文化、治世を収めてきた。そのような者は彼女からしてみれば、野蛮な人間であると譲らないだろう。そして野蛮で劣った人種は、優れた人種が支配しなければならないと曹操はそう考えるはずだ。曹操たちは格差、社会的不安を助長しているのは異民族国家であると吹聴するでしょう」

 

「バカな・・・・。でたらめだ!」

 

「では北方の異民族である五湖はどうなりましたか?漢王朝に忠誠を誓っていた涼州連合でもいいでしょう。曹操は果たして異民族に寛容であるのかな・・・?」

 

山越は否定をするが、冥琳の投げかける質問に対して、有効な反論を述べる術はもはやなかった。

 

山越も他国の異民族国家の存在を周知しており、彼女が先に挙げた国家の行く末もまた周知していたからだ。

 

話し合いによる平和的解決を一切せず、侵略し、他国の尊厳を魏は踏みにじる。

 

そして将来、山越もその覇権に飲み込まれてしまうだろう。

 

あの魏が大陸を制覇したならば、魏を止める防波堤はもはやなく、山越も消滅した異民族国家の仲間入りとなるだけである。

 

共存を図り平和を選ぶか、それとも尊厳を一切捨て去り魏に忠誠を誓うか。山越に選択の余地はないと重鎮は悟った。

 

「・・・分かった。我々も共闘しよう。毒をもって毒を制すというが、我々も北方の脅威に対抗する手段を持たねばならぬ」

 

「ご理解が早く助かります」

 

「連合に入れば我々を国家として認めるのだろうな?」

 

「ええ、山越をひとつの国家として我々は認め、対等な関係を保証します。無論、先に挙げていた我が領土の一部割譲もお付けいたします」

 

冥琳は山越に対し、領土の一部割譲を条件としていた。だが冥琳としてもタダでくれてやるというわけではなく、割譲する一部を共通経済郡として呉の人間も駐留させることを条件にしており、それを承諾させることに成功している。

 

これにより、呉は領土を奪われても、山越自身は好き勝手に領土を支配できるという事は難しくなり、牽制ができる。

 

だが山越自身もそれは承知であったが、彼女の提案を受け入れたのは冥琳が割譲する地域というのは山越と呉を結ぶ重要な行路が幾つも存在することからも、貿易権益を確保できるという旨みもあったからだ。

 

経済の利点が山越にある分、呉の監視があっても、それは些細な問題だということだ。

 

「・・・・それを聞けて安心した」

 

重鎮は安心したように目を閉じ、息を吐き出す。

 

だが冥琳も山越のそういった狙いは知っているし、それを知っている上で割譲をあえてしている。

 

大物は大きな餌にしか食いつかない。ということだろう。

 

呉自身も間接的にではあるが、その権益を享受できうるし、山越がたとえ権益を独占しようと動いても、呉軍を駐留している以上動くことは難しい。

 

さらに山越が連合に入るという事は、所詮は呉が作った経済法のもとで支配されることにほかならない。

 

経済を法により間接的に支配できるという事実を、山越もまだ深刻には考えてはいない。

 

だが呉の法律がベースということは裁判等も呉側に一日の長があるということだ。それはいわば経済的な治外法権を意味していた。

 

だがそういった呉の真の狙いはともかくとして、山越としては連合の法を遵守さえすれば、自由な経済活動ができるともとれる。

 

それにこれから連合に入る以上、連合での大枠の政策に、山越は重要な議決権を持つことになる。ゆえに決して冥琳の狙いを鑑みても必ずも不平等というわけでもない。

 

そういったギリギリな均衡を持って、領土割譲が実行ができた事を冥琳自身は満足していた。

 

「それでは正式な参加は調印式を設けましょうか。それにて我々連合の仲間とさせていただく」

 

「・・・騙し討ちによる暗殺などが考えられる以上、お主たちがいる建業には行かんぞ」

 

「ええ、我々がこちらに赴きます。貴殿の考えは私にも十分理解できるゆえ。しかし私たちも貴方がたを、完全に信頼しているわけではない。我が軍の駐留を、山越に認めていただきたい。なに大部隊ではありません。1個大隊をあくまで護衛で付けさせるだけです。」

 

冥琳は内心、ニヤリと笑う。所詮護衛での一個大隊ではあるが、護衛は隠密・諜報に長けた明命部隊を使うつもりだった。

 

つまりは山越が裏切ろうとも、事前に謀略で暗殺することもできる。

 

この時のために冥琳は部隊を展開し、情報の収集にも時間を当てていた。山越の重鎮たちの住処や家族の構成など全てが丸裸となっている現在、冥琳はその情報を元に明命たちに命じるだけでよいからだ。

 

「では今までの事は水に流すということは厳しいが、時間をかけ、友好国として共に共存を目指していこうではありませぬか」

 

「私も貴殿と同じ考えです。これからは群衆割拠で縄張り争いをするのではなく、互いに権利を認め合い、法による支配、そして民衆のための統治を目指す仲間として共存共栄は図っていきましょう」

 

二人は強く握手を交わすと、これにて会談は終わった。

 

双方は晴れ晴れとした表情が、二国間の会談の満足度を物語っており、長い間対立が続いていた二国間の雪解けを意味するのであった。

 

 

冥琳の交渉によりこれにて山越は連合に参加。呉と蜀は魏とは対等に戦えるような勢力圏ではなかったが、三国で合わせれば魏に並ぶ巨大な軍事同盟でもあり、統治共同体でもあった。

 

雪蓮は孫家独立の声を上げるとともに、呉を正式に建国。都を建業にかまえた。

 

これに乗じる形で異民族国家 山越、蜀が独立の声を上げ、三国連合がスタートすることになった。

 

三国連合は『平等な法支配』、『平等な経済活動』、そして『平等な統治』を理念とする『三平(さんへい)主義』を提唱。あくまで平和的な連合であるゆえ、参加を他国に、特に異民族国家郡に呼びかける。

 

山越と呉の歴史的和解と同盟は他国に衝撃を与え、これにより北方で曹操とにらみ合う異民族国家も、山越の平等な扱いに関心を示すことに。

 

これにより巨大な魏に対し北方は異民族国家郡、西は蜀、南は呉・山越が睨みをきかせ始め、対魏包囲網が着々と完成しつつあるのであった。

 

その頃魏は確かな快進撃を続け、勢力は急速に拡大をした。だがそれと同時に拡大した勢力に順応できるよう、内政面での強化を重点的に行うことで国力拡充を図っていた。

 

だが魏の本拠地でもある許昌は連合樹立に動揺を広げていた。

 

山越がまさか連合に参加するとは思いもよらず、魏の軍師たちは対魏包囲網が形成されつつある今の現状を、快くは思わないのは当然でもあった。

 

曹操は連合樹立の宣言の情報を知ると直ぐ様、軍議を開く。

 

「孫策と劉備が早々に同盟関係であるのは知ってはいたけれども、まさか山越も参加するとはね」

 

曹操がそう呟くと側近の荀彧が頷き、同意する。

 

「はい、これにより我々も南征の計画を早める必要性が出てきたと思われます」

 

「そうね・・・。桂花、貴女ならまずどこを攻める?私としてはまずは呉を攻める、というふうに考えているのだけど」

 

「華琳様の言うとおりですね。私もまずは呉を攻め落とします。というのも、この連合の主導は明らかに呉が担っており、陥落せしめれば包囲網に風穴を開けることができます。江東を平定できれば、山越も恭順の態度を示すでしょう。そうすれば連合は崩壊し、あとは戦力を一点投入し益州を平定することも可能かと」

 

郭嘉は眼鏡を光らせ、荀彧の意見に反対意見を申す。

 

「私としては今の状態で南征の実施は反対です。涼州、袁紹と早々と攻略は出来ましたが、連戦により民は疲弊しております。今は国力充実を計り、王朝との関係深化に務めるべきだと思います」

 

程昱も郭嘉同様の意見であり、今の状況下での南征は慎重姿勢を崩さない。

 

「う~ん、私も反対ですねぇ~。先の戦闘でも圧勝であるとは言えませんでしたしねぇ」

 

荀彧以外は反対意見をあげる事態となり、荀彧は不快感を示す。

 

「ではこのまま連合の勢力の拡充を黙って見ているというの?それこそ孫策たちの思う壺よ!」

 

「まぁ~そうカッカしないでくださいよ~。今現在で呉を攻撃することは可能ですが、南征を行えば北方から干渉が入りますし、西からは蜀が攻めてきますよ~?蜀を攻めれば呉に背中を向けることにもなり好ましくない。これでは本末転倒な気もしますがね~」

 

程昱はアメをペロペロと舐めながら、涼しい顔で荀彧の怒気を受け流す。

 

実際、魏としては連合が成熟する前に、主導権を握り、王朝と手を組み和睦を目指すという方針であった。

 

つまり曹操自身は呉や蜀といった国々を完全に制圧できるとは考えてはおらず、できるだけ自分たちが優位な状況を速やかに構築、圧力を加えるということだ。

 

だが蜀は降伏せず、益州を平定し、呉に至っては山越と和解し、民衆の支持も大きく、大陸の物流を支配している寿春を制圧したことで、経済的な優位性も持つまでに至ってしまった。

 

魏が描いてたシナリオは狂い、大きく加筆、修正を迫られていた。

 

 

また情報を集めている最中だが、連合は民衆による統治、平等かつ自由な社会構築を謳っているようである。

 

弱き者は強き者に支配されるべきである、という考えのもと曹操は今までは覇道を歩んできた。

 

それを弱き者たちが集まり、統治をし、さらには自由に生活を送るなどと、彼女からしてみれば理解不能な考えであり、また受け入れられる思想であるはずがなかった。

 

曹操としては、和睦による平定は諦め、呉を征服し、我が覇道主義を推し進めていきたいと考えるようになっていたのである。

 

自分の思想と価値観が、連合の連中相手に負けるはずがないと、思い知らせてやりたかったのだ。

 

だが反董卓連合の際に自分を小馬鹿にし、見下した態度で接してきた孫策と周瑜を曹操自身、今でも忘れることができなかった、という恣意的な理由ももちろんあるのだが・・・・。

 

結局は軍議は平行線を辿り、国力拡充派と南征推進派とで二つに分かれ、議論は全くとして進まなかった。

 

ただ曹操は自分たちの描いていた構想が瓦解し、劣勢にたち始めている事を自覚しており、劉表を征服したあと、直ぐ様呉を叩くべきであった事を後悔し始めていた。

 

あの時蜀を追い出したあと、曹操は連合は崩壊すると踏んでいたのだ。勢力図としては連合を分断し、朝廷もこちらに味方をしている以上、このまま抵抗を続ければ国賊扱いとなる事は目に見えていたからだ。

 

この状況で呉と蜀は服従をしてくるであろうと考えるのは無理のない話でもあったし、魏の軍師たちもそう考えていたことは事実であった。

 

だが曹操たちは呉の『義を尽くす』という孫家の家訓とも、国の根源でもあることを知る術はない。

 

自分の信念に基づかない行為には、断固として立ち向かう。それがどれだけ自分たちが苦境に立たされていても、だ。

 

呉のそういった姿勢が、あのとき失意に立たされていた蜀に希望を見出したのである。

 

だからこそ曹操はこの不毛な議論をさっさと終わらせて、呉を叩き潰したいと考えていたのだ。

 

(自由に幻想を抱き、信じる連中が絶望に打ちのめされる。そうでなければならないのよ)

 

曹操の人生というのは常に厳しい生存競争であった。父・母が他界して信じられるものは己の知略、そして武の技量のみであった。

 

生きるか死ぬかの紙一重の競争世界を、生き抜いてきた曹操だからこそ、自分が歩んできた人生、そして厳しい競争こそが、世を正しい道へと導くのであると信じて疑わなかった。

 

(だから必ず、私は勝たなければならないのよ・・・・!)

 

曹操は次第に自分の心が、大きく湧き上がっていくのを感じる。今現在も厳しい状況ではある、だが厳しいからこそ挑むのである。

 

その厳しい剣ヶ峰の向こうに、いったい何があるのか?戦いに勝ち続けた先に何があるのか?彼女はそれを知りたいのだ。

 

喧々諤々とたいして進展しない議論に内心ウンザリしながらも、曹操は不敵な笑みを浮かべると同時に、自らの考えを伝えるため声を上げるのであった。

 


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