No.1064516

新・恋姫無双~呉戦乱記~ 第5話

4BA-ZN6 kaiさん

続きをあげます。かなーり長い話にはなりますがよろしくお願いいたします。

主人公が政治をあれこれ語るシーンはかなり長いですが・・・すみません

これで2週間分は上げましたので来週は空けるかもしれません。

2021-06-16 22:44:50 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:483   閲覧ユーザー数:425

医務室では気の疲れだと医者は言う。どうやら初陣での疲れが極限まできてしまったのだと。

 

孫策とあとから知らせを聞いた周瑜、甘寧、孫権は神妙な面持ちで彼を見ていた。

 

「姉様、彼は・・・・、彼はどうして・・・・」

 

孫権は倒れた北郷を見ながら呟く。

 

孫策は自責の念にとらわれていた。

 

自分が北郷をあの時追い込んでしまったのではないかと・・・と。孫策は謝罪をしようと弱々しく口を開いたとき、周瑜が頭を下げる。

 

「蓮華様、私が悪いのです。今回の戦いは北郷の素質に依存した策だった。彼がここに赴くときも私はなんの配慮も考えていなかった・・・。彼が平気な顔しているのに安心しそれに胡座をかいてしまったのですよ。全ては私の責任です・・・」

 

「冥琳様が悪いわけではありません。この甘寧、彼を、彼に頼りすぎてしまいました。あの時彼の・・・・」

 

甘寧はそれから口を塞ぎ、噛み締める。

 

「それは私も一緒よ。あの時もっと早く挟撃が出来ていれば彼がここまで追い込まれることはなかったはず。あの時の責任者は私である以上私の・・・・」

 

孫権は静かにそういうと彼にごめんなさいと絞り出すように頭を下げた。

 

「皆のせいじゃないわ・・・・」

 

「雪蓮・・・・・」

 

「雪蓮様・・・・・」

 

「姉様・・・・」

 

一同が項垂れ意識を失う彼に謝罪をした。

 

特に周瑜は目に涙を浮かばせて彼を見続けていた。

 

周瑜は人前では決して泣かない人間であるがここまで精神をかき乱してしまうほどの懺悔の気持ちが周瑜にあったのだろう。

 

実際特に周瑜は北郷に対して面倒をよく見ていた。弟子とはいえないがそこには陸遜と周瑜の師弟関係に似通った何かが二人にはあったと思う。

 

「北郷は私が見るわ。蓮華、あなたは気を止む必要はないのよ。あなたはあなたのできることを全力でやった。その結果が民の安息をもたらしたのならそれは誇っていいことだわ」

 

「しかし姉様・・・・」

 

「ごめん、すこし、すこし2人きりにさせて・・・」

 

孫策は妹にそう言うと顔をフイと北郷に向ける。孫権はでも・・・と言おうとするが周瑜が優しく肩に手を置き無言で首を横に振り諭す。

 

「分かったわ雪蓮。また何かあればそのときは呼んで頂戴?」

 

周瑜が優しく言うが孫策は北郷に顔を合わせたままだ。周瑜は孫策の心境を察し皆に席を外すよう再度促したのだった。

 

 

「・・・・あなたに真名、また呼ばれちゃった・・・。でもねあなたに雪蓮って呼ばれた瞬間・・・私・・・私ね・・・・すごく嬉しかった。そして懐かしかったのよ。

変でしょ?昔からの知人というわけではないのに・・・・。私、貴方にあったことがある。そんな気がするの・・・・」

 

孫策は顔を優しくなでる。北郷の顔は運ばれた当時よりは血色よく呼吸も穏やかになっていた。

 

「ね?あなたは一体誰・・・?」

 

そう語りかけても北郷は意識を失ったまま答えることはない。孫策は自分の考えを整理するかのように彼の寝顔をずっと見つめ続けていた。

 

「う、う~んここは?」

 

あの時孫策と話していて気を失って・・・それで・・・・。

 

「多分医務室か・・・・・・」

 

また同じ病室だなと呟き寝ようとするが寝具に俺とは違う重みがあることに気づく。あたりを見ると孫策が寝具に覆いかぶさるように寝ていた。

 

高校の授業とかでよく見ていた机に突っ伏すようなあの姿勢で頭を腕で枕みたいにして覆うように健やかに寝ていた。

 

「よくこんな姿勢で寝れるなぁ・・・。ってなんで孫策が?」

 

孫策は俺が起きるのをずっと待っていたということか?それが嬉しいやら申し訳ないやらで俺は苦笑をする。

 

彼女の頭に手をやって起きないように優しくなでる。

 

「・・・・すまない、孫策。俺は・・・・」

 

「俺が・・・・なにぃ・・・・?」

 

急にのそっと頭が上がると頭がボサボサで目にうっすらクマができた孫策がそこにいた。

 

 

「お、おはよう。孫策」

 

「ん~おはよう。体はもう大丈夫なの?」

 

ふぁ~と深いあくびをしてトロンとした目つきで彼を見てくる。寝起きの子猫みたいで可愛いです。はい。

 

「あ、あぁもうなんともないよ。このとおりさ」

 

「そう・・・・。それはよかったわ・・・・」

 

「孫策は大丈夫かい?その・・・・寝てないようだけど」

 

「失礼ね~私は武人よ北郷。戦をするのが仕事な人間が1日寝てないぐらいワケないわよ。それより・・・昨日のことだけど・・・」

 

「みんなに心配かけたかな・・・・?」

 

「うん、冥琳なんてすごかったんだから。もう鼻水と涙でびぇーんって泣いてたっけなぁ」

 

あの凛々しい美女がそんな幼稚園児みたいな泣き方したのかと想像してみたがなかなか想像がつかなかった。

周瑜は常に冷静で余裕を崩さないから、そんな表情は想像つかないのだ。

 

「・・・・ごめん」

 

「うん。でも元気になったし気にしなくてもいいわ。あとは‐‐‐‐」

 

「違うんだ。その真名ってあるだろ?それで君を呼んでしまったことを・・・・その・・・・申しわけない」

 

彼女に謝る。何を?色々なことをだ。倒れたこと、そして真名で読んだことも・・・だ。

 

「なぜ謝るの?北郷は、あなたは・・・・」

 

孫策はその先を言おうとはしなかった。そう俺は多分孫策を知っている。

それも真名で呼び合う程の深い関係でということだ。

 

「俺は・・・・多分君を知っている。それもどこか遠い記憶で君は・・・・」

 

孫策は俺の言葉に驚いたように目を見開いたが、そのあと目がわずかに揺れる・・・・。

 

「ねぇ北郷?」

 

「なんだい?」

 

「あなたに真名で呼ばれた時ね。私、すごく嬉しかったのよ。胸が高鳴った。泣きそうになるくらいに」

 

「ねぇ北郷?私・・・・あなたを知っているかも。私・・・・以前貴方に会ったことがあるかもしれない・・・・」

 

俺もいつか見たあの泣きじゃくる女性の声が頭によぎる。あれは孫策なのか?もしそうなのだとしたら・・・・・・。

 

「でもねそれから私は考えたわ。私はあなたに感じる違和感って貴方すればきっと・・・・」

 

孫策はそれっきり口をつぐんだまま俺の手に自分の手を重ねる・・・。

 

「きっと恐ろしいことなんだって分かったわ。自分ではない自分が存在するということ。そしてそれは自分よりはるかに「何か」を知っているという事実。そしてその違和感がどんどんと大きくなっていくということ。自分という存在がぼやけていく、自分ではなくなっていく感覚。それは常人では耐えられないと思う」

 

重ねた手をギュッと握り締める。まるで一人ではないからと訴えかけるかのように優しく包み込む。

 

「でもねどんな貴方でも貴方は貴方よ。確かに・・・記憶が・・・抜け落ちているかもしれないけれど・・・・。自分が今ままでやってきたことを思い出してみて?仲間との訓練や叱咤。そして今回の戦にそのあとの民たちの笑顔。あれは貴方の知らない貴方がやったわけでない。貴方が自分で決め自分で責任を取り行った結果なのよ?価値のあることなのよ、北郷。孫呉の根源は自分の理想のために決して曲げない信念とその信念に対し責任を取ることよ。貴方は孫呉の民として、兵として責任ある行いをした。昔の知らないあなたではない「今」の貴方が行った結果よ」

 

孫策の紡がれる言葉が今までの不安を溶かしてくれるのを知覚する。

 

その事実に嬉しくて視界がグニャグニャと歪む・・・。泣いているのだ・・・。彼女にそう言われて救われた。何が救われたかは分からないが心の大きな闇が広がっている俺はそれを感じとり、彼女がそれを晴らしてくれたことに嬉しさを感じていたのだ。

 

「うまく言葉にできないけど・・・・。その・・・」

 

「孫策、いいんだ有難う。すごく・・・すごく気分が楽になった。ははは・・・孫呉の、江東の小覇王に慰められるなんて末代まで語り継がせないとな・・・・」

 

泣いている俺の姿を見てしんみりしている彼女を心配かけまいと明るく務めると彼女も俺の思いを感じ取ってくれたのか何時もの明るい天真爛漫な女性に戻る。

 

「そ、そうよ!誇っていいことなんだから!!だから・・・ね?」

 

 

「うん、わかってる。今の自分が行うこれからの行為は今の俺が責任をもってやればいい・・・。俺も・・・今の俺は孫呉の民として君たちに尽くす。そう決めた。孫策、君を必ず天下人にしてみせる・・・!」

 

「・・・・ふ~ん、ようやく何時もの坊やに戻ったようね。うん、北郷は・・・・いえ、一刀はそれが一番よ」

 

紡いだ手を解くと背中をバシっと叩いた。と同時に坊やと呼ぶ彼女からしたら俺はただの弟分としか見られていないという事実に少し寂しさを感じる。

 

この寂しさの正体が何なのかわからないほど鈍感男ではない。

 

「坊やって・・・・君とはそう年齢だって変わらないだけどなぁ・・・ん?一刀?」

 

「そう、貴方って真名がないでしょ?だから一刀、あなたの字もらうことにするわ。そのかわり・・・・私の真名受け取ってくれる?」

 

孫策は・・・いや雪蓮はそう言うと笑顔をこちらに向けてくる。がちがう・・・。耳が赤い。照れてるのだ。それが分かり、やっぱり年頃の女性なのだなぁと感じることができ嬉しく思った。

 

「うん、雪蓮か・・・・。これからもよろしく頼む雪蓮」

 

「こちらこそ一刀!」

 

二人は握手をすると微笑みあい柔らかい雰囲気が二人を包み、満たしていく。

 

そこには主従関係を越えた大きな何かが含まれているというのを雪蓮はまだ知る由もなかった。

 

目が覚め雪蓮から真名をもらったあとは周瑜が来て黄蓋が、そして孫権や甘寧と見舞いに来てくれた。

 

特に周瑜はすまなかったと再度頭を下げたが、自分は気にしてないからと寛容に接した。

 

「あなたにそう言ってもらえて私も助かる。これからは皆がいる。あまり抱え込まないようにして?」

 

すごく女性口調な周瑜が聞けた。なんだかいつもと違う柔らかい雰囲気の彼女をみて雪蓮は俺に耳打ちする。

 

(冥琳、今は眼鏡を外してるじゃない?)

 

(ああ)

 

(眼鏡が自分を入れ替える重要な道具なんだって。)

 

(なるほど)

 

と耳打ちする。まぁこれが本来の彼女だとしても別に驚きはしなかった。周瑜はこうして二面性を持つことでセーブしている。そういう事なんだろう。

 

それから主要な文官たちとも顔合わせとなった。今回の孫呉復活のお祭り騒ぎはこの文官たちの工作だったようだ。

 

「初めまして北郷さん~。私は名は陸遜 字は伯言といいます~。貴方の噂は冥琳様から聞いておりますよ~」

 

「陸遜様お初にかかります。・・・・やはり・・・・」

 

「ん?なんですかぁ~」

 

「いえ、なんでも・・・」

 

女なんですね。というのは飲み込んだ。もう慣れた。うん。

 

しかしなんでこうも美女ばかりなのか。三国志の著名人は美女でなければならないという縛りでもあるのだろうか・・・。

 

周瑜は陸遜に肩に手をぽんと叩き、紹介をした。すでに眼鏡が付けられており何時もの周公瑾に戻っていた。

 

「陸遜は私の一番弟子でな。北郷の文字や知識の習得なども今後は便宜を図ってくれると思う。こやつは孫呉の全ての書物を暗記する知の要塞だからな」

 

「冥琳様ったら~そんな褒めても何も出ないですよぉ~」

 

イヤンイヤンとクネクネと体を揺らすが実際陸遜は史実においても素晴らしい秀才であったと聞く。それは史実通りということか。

 

「ん?亞莎はどうした?来ているはずだろうに?」

 

「あれぇ~そういえばいないですねぇ。さっきまでそばにいたのに~」

 

「・・・・・す、すみません~」

 

戸の端っこに縋り付いてる少女が一人。ひーんと半べそをかきながらこちらを見ている。

周瑜はため息を着くとこっちに来い!と少し強めに促した。

 

「す、すみません、冥琳様・・・。わ、私は名は呂蒙 字は子明と申します・・・。北郷さんの噂はかねがね・・・。よろしくお願いします・・・・」

 

最後の方になればなるほど声が小さくなっていたが。周瑜は苦笑しながら説明する。

 

「呂蒙は人見知りが激しくてな、許してやってほしい。ついでに彼女も私の2番弟子だ。もとは甘寧の部隊にいたが抜擢したということさ」

 

「へ~もとは武官だったのか~」

 

「そ、そんな北郷さんほどでは・・・・」

 

恐れ多いいのか顔を腕で隠してしまう。恥ずがしがり屋なんだなこの娘。

 

しかし陸遜と呂蒙は史実としては先輩としては呂蒙が先輩のはずだが・・・・。やはり少し史実とは違う・・・ということなのか。

 

「陸遜さん、呂蒙さんこれからもよろしく!!」

 

「はい~よろしくお願いしますねぇ」

 

「は、はい~よろしくお願いします・・・・」

 

二人と握手をして手短に紹介を済ませてもらうが周瑜たちは戦後処理がまだ済んでいないということだったので早々と去っていった。

 

「北郷、この戦後処理が終わってらこの前の約束果たさせてもらうぞ」

 

周瑜はそう言って去っていった。

 

 

「この前の約束って?」

 

急に雪蓮が後ろから聞いてきたから少し驚きながらも説明をする。

 

「ああ・・・周瑜が俺の故郷の話が聞きたいって・・・・。お互い忙しかったしね」

 

「ふ~んそう・・・」

 

まぁいいけどと彼女がつぶやくがなんか怖い。雪蓮は顔こそ普通ではあるが雰囲気が剣を刺すかのような鋭さをこちらに向けてくる。

 

「雪蓮もよかったら一緒にどうだい?まぁあまり面白くないかもしれないけど・・・・」

 

「ほんと?!実は私も一刀の国の話聞きたかったのよねぇ~。ふふん♪抜けがけなんて許さないんだから」

 

急にパァーと華やかに雰囲気が戻る。雪蓮妬いてたのかな?そうであれば・・・・少し嬉しい。

 

まぁ俺のことを坊やとか言ってんだから弟ぐらいにしか思ってないんだろうなぁ~という事実が胸にのしかかり少し悲しくはなるが。

 

その後は孫権と甘寧が来てくれた。

 

私たちは共に戦う戦友であるのだからこれからは無理はするなと孫権にいなされ。

 

「では北郷・・・・いや私も一刀って読んでもいいかしら?」

 

孫権のお願いに甘寧も雪蓮も目を丸くするが直ぐ様面白いものを見たようにニタァ~と笑みを浮かべ雪蓮が孫権をイジってくる。

 

「へぇ蓮華は一刀のこと意識してるの~?お姉さまびっくり!」

 

「な?!違います!!これから孫呉のために尽くす忠臣なんだからと・・・・」

 

「でも真名言う男って一刀だけでしょ~?それってどうなのぉ?」

 

「それは・・・・・そのぉ・・・・もう!!姉様!!」

 

「雪蓮様、蓮華様をあまりいじめないでいただきたい。私も北郷に真名を預けたいと思っています。彼は私の良き戦友になるだろうという期待がありますゆえ」

 

答えに窮する孫権に甘寧は助け舟を出すが甘寧も真名を預けるということらしい。だが甘寧は俺を純粋に一人の兵士として敬意を表してということらしい。

 

雪蓮は甘寧にビックリしたようでヒュ~と口笛を鳴らす。この驚き具合、甘寧はあまり心開くというのはなく珍しいというのが分かる。

 

「もちろんです。蓮華様、思春さん」

 

「『様』はいいわ。貴方とは対等に関係を築きたいから。貴方の今後の活躍期待してるわ、一刀」

 

「北郷、お前とはいい酒が飲める、背中を預けられる仲でありたい。この時代が終わるまで死ぬなよ。それと私にも敬語は不要だ。真名まで預けて他人様のような扱いはこの甘寧を侮辱するに等しいぞ?」

 

「分かった。二人共よろしく。そして共に戦おう!」

 

おれは二人の真名を喜んで受け入れ再度蓮華も思春も喜んで握手を交わしてくれた。

 

その後黄蓋が見舞いに来たのだが見舞いにと酒を持ってきてくれた。しかも樽みたいなデカい容器を担いで・・・。病人ですよ?と言うと。

 

「お主はもうなんともないのじゃろう?だったら酒を飲んで英気を養う!!これも兵の立派な勤めよ!」

 

と笑いながら勝手に自分が飲んでいる。多分自分が飲みたかっただけなんだろうが雪蓮がずるい~私も~とせがんでともに飲む。

 

「ほれ貴様も、駆けつけ一杯!!」

 

「それ言う立場が逆なんじゃ・・・・」

 

「男がウダウダと文句を言うでない!!」

 

「はい・・・・ん?これは・・・?」

 

黄蓋に酒を注がれ飲む。これは・・・・美味い。

 

「美味い・・・・」

 

「ほんと~。祭の酒はホント美味しいのよねぇ~」

 

雪蓮も目をトロンとして恍惚に浸る。流石小覇王と言われるだけあり酒豪なのだろうピッチが早いが顔色変わらない。

 

 

「そうじゃろう?儂の至高の酒ゆえに。今日は特別だ。どんどん飲め!」

 

黄蓋はそう言って自分で酒を注ぎ飲むが最早つっこみ入れることなく話を進める。

 

「そういえば今、黄蓋指令は・・・?」

 

「祭でいい。お主とはもうこうして酒を交わす仲よ。今更遠慮は無用じゃて」

 

「分かりました・・・祭さん」

 

あっさりと真名で呼ぶことを許可した祭が酒煽りながら話す。

 

「今は黄巾党の大規模討伐戦の組織とその根城の偵察・視察をしておる。今はここにはいないがもう一人隠密に長けた奴がいる。そちらで今探りを入れておる」

 

「明命(みんめい)のことね?黄巾党の規模が大きくなっているというのは私も報告を受けたわ」

 

雪蓮が補足で説明を入れたがどうやら孫呉には隠密部隊がいるようである。忍者みたいなものなのだろうか?

 

「うむ、今の黄巾党では儂らだけでは簡単には駆逐はできん。いくら烏合の衆といえども数が揃えば驚異であるのは変わりないのでな。策殿、儂としては現在は急激に名を挙げている劉備と言う諸侯と手を結ぶべきだと思うが・・・・」

 

「劉備・・・・?あの劉勝の末裔だとかいう?」

 

雪蓮が祭に聞く。劉備は魏呉蜀三国時代に中心人物の一人であり今後黄巾党の討伐で名を挙げ有力諸侯の仲間入りを果たすことを考えたら、祭の先見の明は合点が行く。

 

「そうじゃ・・・。今は小さな勢力ではあるがあれは必ず大きくなる。今後恩を売っておいても悪くはないだろうて」

 

「一刀はどう思う?参考としてあなたの意見が聞きたいのだけれど?」

 

雪蓮から聞かれ今の私見を主張する。

 

「劉備とは今後・・・・絶対に仲違いはできない相手になることは確かだと思う。現状は俺たちが劉備を支援し連合を組んで黄巾党の拠点を潰していくほうがお互いの利点が一致しているし、劉備に貸しを作れる。劉備側も諸侯の仲間に入ることができるからお互いの利益享受は可能だと思う」

 

「劉備は裏切るかもしれないとは考えないわけ?」

 

「雪蓮が言うように劉備が裏切るというのは選択肢というのはあるとは思うが現時点は考えられないとは思う。俺たちは袁術の言ってしまえば保護下にある。劉備は漢王朝の復興が目標であるはずだから今ある冠位制度を無視して裏切るということはしないとは思う」

 

「私たちの今の立ち位置を逆手に取るということね」

 

「なるほどのぉ・・・」

 

「袁術は聞けばまだ子供だという。それならば黄巾党の討伐の総大将は袁術にし名誉を袁術に捧げる代わりに袁術の代理として討伐に代理の大将軍として孫呉が出るという体を取れば袁術の一軍扱いになることができる。これで劉備は裏切ることはないだろう。また袁術側も何もしないで黄巾党討伐の手土産を手に宮中に出入りができる。袁術側も断る理由もないだろう」

 

「あの餓鬼はものは言いようで言いくるめられるから・・・・。それなら劉備との同盟での討伐ね・・・。確かにこちらも劉備に恩が売れるし、うまくいけば交易や貿易も行えるかもしれない・・・悪くない話ね」

 

「北郷、お主やはり頭がキレるようだな。大したものよ」

 

「いえ・・・・私は・・・・」

 

北郷を祭は褒めると酒を注ぐ。俺は礼を言ってさらに酒を流し込む。

 

「そう謙遜するな。今のお主の考え筋が通っており聞いていてい心地よい。わしもお主の考えに賛成よ。策殿、今後は劉備との連合を結ぶため手をうちましょうぞ」

 

「そうね・・・・。祭、劉備との連合の協定はお願いできるかしら」

 

「任されよ。この黄蓋かならず成功させますがゆえ!!ああ、冥琳には心配無用と伝えてくだされ。あやつは心配性ゆえガミガミ煩くてかなわんのでな」

 

「祭のことを冥琳は心配してるのよ。冥琳、前言ってたよ~?もう若くないのだから酒は自重していただかなくてはな~って」

 

「なに?!あの小童、この儂をもう若くないだのと・・・。北郷お主はどう思う?!」

 

「は?」

 

「だからぁ儂は年老いた老婆なのかと聞いておるのだ。どうじゃ?儂はまだ一口も二口もイケルじゃろうて」

 

雪蓮がケラケラ笑いながらこちらを伺う。さぁ?どうする?そう言ってる。

 

「本音でいいますと俺は祭さんは一口も二口もいけると思いますよ」

 

「ほぉ!それは本当か!!」

 

喜ぶ祭をよそに孫策は驚き口をあんぐりと開ける。予想していた回答とは大きくズレているといったところか。

 

「はい。祭さん、僕の国でしたら全然若いですよ。本音でいうと結婚適齢期っぽいしその容姿だったら文句なしですよ。実際祭さんすごく綺麗だし」

 

「・・・・お、おう。なんだかな儂の想像していた回答が来なくてちょっと・・・うん、まぁこそばゆいのぉ」

 

まいった、まいったと顔を赤くして頬をポリポリとかく祭に対し雪蓮はジトーッと睨みつけてる。

 

それに気づかず祭は気をよくしたのか今日は儂の美貌に乾杯!!と大きく笑い声を上げながらさらに酒を飲む。

 

雪蓮も祭を見て笑顔を浮かべるが怖い。目が全然笑っていない。

 

雪蓮の感情の機微に全くと言っていいほど鈍くそのまま気をよくした祭は儂の時代はこれからじゃ!!とハッハッハと気分よく部屋をあとにした。

 

それから雪蓮と俺の二人きりになりシーンと静まり返る。すごく刺々しい、心が沈み、たまらず彼女に声をかける。

 

「しぇ、雪蓮・・・?」

 

「・・・・・・・何かしら?」

 

「怒ってる?」

 

「別にぃ~。一刀は祭みたいな年上が好みなんだもんねぇ」

 

「あ、あのな・・・・」

 

「確かに祭は包容力もあるし、私よりスタイルいいし?面倒見もいいしねぇ、お似合いなんじゃない?」

 

正直言うと雪蓮も容姿も然ることながらスタイルだって出るとこはすごく出ている。豊満な胸にくびれたウエストに弾力に富んだ臀部ははっきりって言って目に毒だ。

 

「雪蓮も十分負けてないよ・・・。むしろ俺は雪蓮の・・・・・・」

 

「私のなによ」

 

「雪蓮が・・・・俺には雪蓮が一番だと思う。雪蓮じゃなきゃ俺・・・、って何言ってんだご、ごめん。これ以上は・・・・」

 

「・・・・・って?」

 

「え?」

 

「言って?私じゃなきゃどうなの?」

 

雪蓮はじっとこちらを見てくる。先ほどの刺さる視線ではく、目が柑橘色に満たされかすかに潤んでいる。彼女のその視線を見て俺の顔が一気に沸騰する。緊張で胸が破裂しそうだった。あぁやっぱり俺は・・・・。

 

「・・・・・・・・・」

 

俺が何も言えずにいると雪蓮すぐに笑顔に戻る。

 

「バッカねー、冗談に決まってるでしょう?一刀はすぐ騙されるんだから・・・」

 

「へ?あ、ああそうか。冗談か」

 

雪蓮はその後クルリと後ろに向き病室の戸口に向かうも顔はそのまま見せず雪蓮はそのまま話し続ける。

 

「さてと私もそろそろ戻らなきゃ。じゃ・・・。明日よろしくね、場所はいつもの広場!冥琳には言っとくわ。・・・明日楽しみにしてる。今日はしっかり休みなさい」

 

「あ、ああ。雪蓮も根を詰めないようにな」

 

「平気平気~。酒飲んでるから仕事なんてできないし~」

 

それはそれで問題はあるのではないだろうかとも思ったが深く追求するのはやめた。彼女はああ言うが多分仕事はやるだろう。そういう人間であると言うのは短い付き合いでも良く分かる。

 

「そうか。じゃ明日・・・」

 

「ん」

 

雪蓮はそう言って部屋を出て行った。俺は頭を抱え溜息を付いた。

 

(俺は何を言おうとしたんだ・・・・。雪蓮は・・・・雪蓮が・・・・ごめんな・・・)

 

心の中で彼女に謝罪すると、酒が酔いが回ってきたのか睡魔が襲ってくる。

 

(とにかく今日はしっかり休もう。明日からいつもの自分に戻るために・・・・)

 

これ以上みんなに心配はかけれない。今はベストな状態に早く戻すそれが俺にできる唯一の恩返しだからだった。

 

 

孫策は北郷の病室を出ていきそのままカツカツと音を鳴らしながら歩き、誰もいないことを確認するとそばにあった柱にドンと拳を当てる。

 

「バカみたい・・・・、ほんと・・・・」

 

孫策は先程まで北郷のやり取りが自分らしくないというのに辟易としていた。

 

それは今まで感じたことない気持ちだった。イライラする。言葉にできないこのイライラはなんなのか?

 

周瑜にもそれに北郷にも、そして黄蓋にもだ。なぜこんなにイライラするのかが分からない。彼がおべっか使うからか?それとも他の女性と仲良くしているのが気に食わないのか・・・・。

 

「・・・・どちらもあるのね・・・・」

 

孫策はそう呟く。そう私は彼が他の女性と仲良くするのが嫌なのだ。彼を独り占めしたいという独占欲が働いていることが原因なのだろうと客観的に分析してみた。

 

「なぜ?なぜ彼を・・・・わからない・・・。いや・・・・ほんとうは分かってる」

 

孫策は再び歩き自分の執務室へと着くと椅子にドカっと座りため息つく。執務室についたが仕事をする気にはさっぱりならない。

徹夜しても仕事はできるのだが今回だけは無理そうであった。

 

「私・・・・彼が好きなんだ・・・・」

 

そう呟くと再度心の中にあるしこりを吐き出すように深い溜息をついたのであった。

 

 

俺はあのあとしっかり休養を取り非番であったということで約束通り周瑜と雪蓮とで一緒に過ごすことになった。

 

実はあの2人とは仕事の面、特に周瑜に関しては面倒をちょくちょく見てもらっていたので親交はあったがこうしてプライベートな時間を過ごすというのは周瑜や雪蓮は始めてだったのかもしれない。

 

「あ!一刀~こっちこっち~」

 

雪蓮の声が聞こえてきたので声の方を向くと雪蓮と周瑜が酒を飲んで談笑をしていた。周瑜はともかく雪蓮は出来上がっているのか酒の瓶が大量に置いてあった。

 

「雪蓮・・・・飲みすぎは・・・・」

 

俺が心配のあまり諌めようとするが周瑜はやめておけと顔を引きつらせて無言で主張する。

 

「待たせてすまない」

 

キジも泣かねば撃たれまいということか。ここは周瑜の言うとおり雪蓮の件はともかく先に来ていた彼女らに詫びる

 

「気にするな。お前は退室の手続きなどがあったのだろう?仕方ないさ」

 

「そうよそうよ~一刀、ほれ~駆けつけ一杯~」

 

雪蓮は俺に酒を注ぎ差し出すと俺は礼を言っていただく。

 

「さて北郷、お前の話しを是非ここで聞かせて欲しい。お前の時代の為政、経済、通商、など知る限りだ。今は無理でも実現が出来うる制度があるかもしれないからな。何度も言うが時代が変われば人も変わる。それに合わせて制度を常に改善していかないといけない」

 

「ん、周瑜の主張はもっともだよ。せっかく雪蓮もいるし聞いてもらおうか」

 

すまないなと周瑜は礼を詫びるが雪蓮はへべれけになっているのか反応はイマイチであった。が目はこちらに向いているのは分かるので聞いてはいるのだろう。

 

「では始めようか・・・・・」

 

それから俺の知る限りで周瑜と俺とで議論を交わした、雪蓮は酒を飲んで黙って聞いているというだけだったが。

 

「すごいな・・・・民草の政の参加とは・・・」

 

「じつはこの民衆の政治参加は昔からあった。今は交易しているかわからないが漢王朝がローマ帝国という西果ての国と交易をしていたと思うのだが・・・」

 

「ああ、私もそれは聞いたことがあるな。我々とは違う高度な文明を気づいた帝国があるのだと」

 

「そのローマ帝国が強大になる前というのは小国の連合国家だったんだ。その連合国家は小国ゆえ民衆による政治参加、意思決定の機関が設けて逆に民意反映による政治を行っていたんだ」

 

「なるほどな・・・。小国であるが故民衆の政治参加が容易であると・・・・」

 

「そうだ。と言っても漢王朝や今俺たちがいるような高度な政策がなかったが近所の諸問題や揉め事などの議題を設けそれに対し民衆が集まり議論を交わし最後は多数決で採決を行ったそうだ」

 

「ほぉ・・・多数決か。国民同士で議論が交わせば、理解も深まるし政治参加の自覚も促せる。なるほどな・・・・」

 

周瑜はどうやら西欧の政治システムがかなり真新しい政治制度であったため興味津々で聞き入っていた。

 

 

「でも多数決での決定となれば民衆の腐敗等は起こるんじゃないの?」

 

「雪蓮の言うとおり、実際自分たちの都合のよい政策誘導を行うため投票者を買収するということもあった。まぁ汚職だな。これは後に小国を飲み込んだローマ帝国もこの問題にさしあたり腐敗をするようになった。

 

ローマ帝国は民衆の直接参加と意思決定は人口などの問題などもあり難しいことから各地域から代表を選出し、その人間が地域の代表として為政で議決権を持つようになったんだ・・・・。だが結局は権力が肥大すればそれを使い富の蓄積や自分の利益を最大化することに尽力し腐敗、帝国は結局は衰退してしまう」

 

「なるほどな・・・・・。まぁその部分は漢王朝と対してからわないということか。全く・・・人間の考えることはどこでも同じということか・・・」

 

「でも一刀の国は汚職はあったけど衰退はしていないんでしょ?」

 

雪蓮の興味具合に周瑜は少し驚いてはいたが俺は彼女を見て話す。

 

「ん、もちろん汚職はある。民衆による政治参加であり権力が大きくなれば必然だからね。しかし政治・権力の暴走はとりあえずはなかった」

 

「どういうことだ?」

 

周瑜は汚職があると聞いた際にはやっぱりなという顔をしていたがその後の話しを聞いたときまた身を乗り出す。

 

「ローマ帝国や小国の話でもあったが結局は個人の強大な権力と富の独占が行われ本来の政治趣旨からかけ離れた暴走が起きてしまっていた。だがそれからしばらくし西果ての諸国は民衆による統治を諦め、国家単一による統制統治へと移っていく。まぁ民主制に辟易したのだろうな。

 

だが結局は単一国家の下政治が行われていても権力を持つ者の暴走がおきてしまう。国家間との利害対立が深刻化したあと戦争が相次ぎ30年戦争や100年戦争といった戦争がおき国は疲弊してしまうんだ」

 

「30年?!100年の戦か・・・・。私たちの動乱が可愛く思えてくるよ・・・・」

 

「さすがの私もそんなに戦はしたくないわね~」

 

二人はありえないという絶句の表情を見せ俺も苦笑する。さすがの英傑も、特に頭に血がのぼる雪蓮がそれほどの戦争はゴメンだということが少しおかしかったからだ。

 

 

「そうだ、そして民衆による自由な統治で引き起こした腐敗の反省もあってか神の名のもとにと謳い統一した身分制度を作り為政者に逆らえないようにした。ここの統治は漢王朝と変わらない。だが王の権力の集中と戦争の激化から知識人が権力の暴走がなぜ起こるのか?という点に着目し多くの見解を出した。それが市民政府二論、権力分立の原理のよる相互監視の統治の安定だ」

 

「相互監視と市民・・・?」

 

「そうだ、かいつまんで話すと法律を作る権力である立法権、政治を立法に基づいて行う行政権、そして作られた法でその市民を統治・裁判を行う司法権この3つの権力を持つものが国家であると定義をした。そして権力の腐敗はこの3つの権力どれか1つでも腐敗した場合に3つの分裂した権力が融合され権力が集中し暴走が発生すると結論づけたそうだ」

 

「確かに我々が統治を行ううえで明確な権力というのはその3つだ・・・・。それに暴走するという観点からも確かに一致しているのだろう。つまりはその3つの権力を相互に監視し抑制をさせるということか?」

 

「さすが周瑜。3つの権力の均衡をさせるために3つの権利には独立して各個相互に監視させる権利を設けたんだ。そのうえで市民参加による最大多数の最大幸福を掲げた」

 

「つまりは古代から行われた民衆の政治参加による多数決の原理とそれの権力監視を民衆にさせるということか」

 

「そうだ、俺たちの国でも結局は汚職はあるが権力の暴走がないのはそう言った相互の監視制度による権力の均衡があったからなんだ」

 

それからというもの色々と話した。貨幣経済による自由経済と重商主義による富の独占とそこからの政府の役割の変化。

 

所得の再分配と機会均等な生活、福祉政策といったこと。教育での平等な実施など

 

周瑜はいつの間にかメモ帳のようなもの用意し俺の話を逐一ビッシリとメモを取りながらまとめていた。雪蓮はただ黙って酒を飲みながら耳を傾けていた。

 

「つまりはその後権力は安定はするが国家内での富の集中が問題となったと・・・・」

 

「ああ、経済が発展すればもちろんイイ面は計り知れない。金の廻りが大きくなればそれだけ税も入ってくる。その税での国家を運営が容易になるからね。しかし自由経済による弊害は富の独占であった。国家での役割もその当時は国家運営は警察と軍隊・そして自由経済を迅速に行える制度の確立の支援という点で重きがおいていた。

 

経済も基本的には不況があれば好景気もある。その流れを阻害しなければ問題はなかったんだ。それは波のように周期があって予想も容易であったからだ」

 

「どういうことだ?」

 

「需要と供給の話だよ。経済というのは需要と供給の関係で説明ができると当時の学者は考えていた。好況になれば需要がまし供給量は増え、その後収束し増えすぎた需要は満足され落ち着き供給量も収束していく。この流れが自由経済の理想的な流れであったと定義づけたんだ。政府はその理想的な流れを阻害しないよう調整をするだけだった」

 

「なるほどな・・・・国家はあくまでも調整に徹してはいくが・・・しかしそれでは平民はどうなる?自由はあれど何しない、経済的な不平等な状況は正されないままだ」

 

「それで貧富の差が大きくなり労働者とそれを雇用する経営者との間での深刻な対立は激化する、だが政府はそれに対してはほとんど何もしなかった。政府参加も当時の民衆の政治参加は平等ではなく収入が多い人間限定のみ選挙権が与えられる状況だったからだ」

 

「頭の悪い民衆は優秀な人間が導き統治する・・・という奢りか?」

 

「もちろんそれもあるかもしれないが、先に挙げたが経済の発展を国家は求めたんだ。その当時は新天地への植民地化と市場の規模拡大を求め各国が俺たちのようにしのぎを削っていた。国力増強と市場拡大が第一命題だったため経営者の意見にそう形で反映をさせていけば国家が反映するという思考だったのだろう」

 

「経済を肥大させるには豪族たちの力を必要とした・・・というわけか」

 

「そうだ。だがそれも行き詰まってしまう。経済が高度に発展した結果いち国家の不況がほかの国家に連鎖するような状況が起きてしまう。交易がなくなればモノ・人・金の行き来がなくなるからね。そして他国の深刻な大不況が各国に飛び火してしまう」

 

「しかし政府は自由な経済と需要と供給の関係を信じ何もせずとも解決する・・・と考えた?」

 

「ああ、だが不況はいつまで経っても好転しない」

 

「不況の原因が需要と供給では解決できるほど簡単なものでなかったということね」

 

雪蓮が急に口を開く。なんだしっかり聞いていたのだなと安心をする。

 

「雪蓮の言うとおりだ。国内の要因により自然収束する不況ではなく世界情勢に関係するほどの大不況という外的状況が大きく作用する状況では需要と供給の関係では説明ができず、需要の増加というのがいつまで経っても発生はしなかった。そこで今までの国家の考え方の変換が求められた。

 

それが需要の創出を政府がつくるということだ。この当時は自由経済と経営者優遇に嫌気のさした国民が団結し対立も激化していたし、反政府運動も労働者側から起こるようになっていった。そういった問題に政府も無視ができなくなり選挙権の平等化と富の再分配を行うことで国民の不満を和らげる、需要の創出を作り出そうと考えた」

 

といった感じで昼間ではガッツリ政治・経済論を語り合った。

 

 

雪蓮はやっぱり聞いているのか良く分からなかったがそれでもちょくちょく質問したりと少し安心した。

 

「ふむ、非常に参考になる。やはり人間は歴史からの反省というのを繰り返すということか」

 

と周瑜はお腹いっぱいといった感じで目をキラキラさせながらメモをまとめていた。

 

「さてまだまだ聞きたいことがいっぱいあるが・・・街も案内しようか北郷、どうだ?」

 

「そうだな・・・雪蓮もどうだ?」

 

「は~い、行きまぁーす」

 

俺が誘ってみると雪蓮は片手を上げて同意した。凄まじい空瓶が転がっているがどれだけ飲んだんだ・・・?

 

「では行くか。警邏の護衛は・・・・いらないな。北郷と雪蓮では他は役不足か」

 

周瑜は苦笑をして俺たちを外に連れ出した。確かに雪蓮はともかくそこらの刺客に遅れをとることは俺自身もないはずだ。

 

「ようこそ、建業へ。北郷ここが我らの拠点である建業だ」

 

城から出て町並みを見ると少し寂しい町並みであった。

 

「どう思う?北郷」

 

「そうだな・・・、すこし寂しい町並みだなぁと思うよ」

 

「ですって冥琳、酷い言われようね」

 

「はははっ正直で結構だ。今は袁術の支配下だからな。税の取立てもあるし民たちも苦しい生活を強いられている」

 

「・・・・それをなんとかしたいということか」

 

俺がそう言うと周瑜は強くなずいた。それと同時に雪蓮が口を開く。

 

「この地域はもとは母様が支配していたんだけどねぇ。母様が死んで袁術に奪われてからは・・・孫呉の町は必ず私たちが元に戻してみせる・・・・」

 

「雪蓮・・・、そうだな、雪蓮ならできるさ・・・、俺もできる限り精一杯やってみるつもりだ」

 

「うん、その心意気は良しだ北郷。さて案内しよう」

 

それからは雪蓮や周瑜は色々な場所に連れてってくれた。だが周瑜は案内をしながらも今の住民の意見等を世間話をしたりと聴取したりと熱心であった。

 

「冥琳はああやって街の意見を聴いてるの・・・。それに街の人間でしか知りえない情報もある」

 

「なるほど・・・。このまえの孫呉の宴も君たちが?」

 

「想像に任せるわ」

 

雪蓮がフフンと自慢げに微笑む。孫呉の裏工作はかなりバカにできないレベルであるということか。

 

これはますます敵にしたら恐ろしい相手だな。

 

「しかし周瑜は・・・・」

 

街の人達と会話をする彼女を見ると、彼女はとても幸せそうでありその目は優しさで溢れている。

 

この前の冷たい冷静な態度と目線とは違い今の周瑜は一人の孫呉の民であり、また心優しい女性でもあった。

 

「周瑜はこの建業が、いやこの町の人たちが好きなんだろうな」

 

「・・・・・・・うん」

 

俺も雪蓮も彼女の姿を見て微笑む。だが今の雪蓮の目も周瑜同様に慈愛に満ちた目で街の人たちを見ている。

 

「ハハハ」

 

「な、なによ」

 

俺が笑うと雪蓮が怪訝そうにこちらを見る。

 

「雪蓮、君も同じだなって思ってさ」

 

「そうよ・・・。私はこの地で生まれこの地で育った。母さんが好きだったここをもっと幸せにさせたいの」

 

「でも・・・君はそれで幸せなのか?」

 

「え?」

 

「いや、周瑜もそうだ。君たちが犠牲になりこれで皆が幸せになったとして君たちを慕う民はそれで良しと納得するのかな・・・と思ってさ」

 

「一刀・・・・・」

 

周瑜は寄ってきた子どもたちを相手にしている。子どもたちは周瑜に集まりあれこれとせがんでくるが周瑜は苦笑をしながら相手をしている。

 

「自分たちの身を削ってそれが国の為、民草の為だというのなら幸せというのは間違っていると思う・・・・」

 

 

いつかで吐露した雪蓮の「疲れた」という言葉が頭によぎり心配になり言ってしまったが、雪蓮はそれを知ってか深く頷く。

 

「ええ、そうね。でも今はそうせざるを得ない事情もある。一刀わかるわね?今この大陸は大きく変わろうとしている。この先は理想と建前だけではどうにもならないこともある。意味、分かるわね」

 

雪蓮は強い眼差しで訴える。大丈夫だから。雪蓮はそう言っているように見えたがそれに俺も強く頷く。

 

「ああ、今はそうだとしても永遠にこのままということはないということだな。そのために戦う。そういう事なんだな。すまなかった」

 

「気にしなくていいわ、分かってくれたから。一刀、これからは激しい動乱がおそらく続くと思う・・・それでも私についてきてくれる?そして私が孫呉が目指す道を誤ろうとしたときは・・・止めてくれる?」

 

雪蓮は再度周瑜を見ながらもこちらをチラリと覗き見る。俺は隣にいた彼女の手を握る。

 

「俺でいいのなら・・・。それに大丈夫だ。周瑜や蓮華もいる、思春も、祭さんも・・・そして孫呉の民もいる。君は決してひとりじゃない」

 

ギュッと強く手を握ると雪蓮は少し驚いたようにこちらを見つめるが目を少し潤ませて顔を伏せ強く握り返す。そのあと彼女は少し俺の隣に寄り添い頭を預けてきた。

 

「うん・・・・・。そうね私は独りじゃないんだ。みんながいる・・・そして・・・貴方がいる。私は少し忘れていたようね・・・」

 

「雪蓮・・・・・君は・・・・」

 

小さくありがとうとつぶやき頭を肩にポンと預け俺の服を少し濡らす。その時間は僅かではあったがそれは彼女が本当に見せた年相応を本当の姿だった。

 

「さぁそろそろ他も行かないと!冥琳~」

 

「雪蓮、助けてくれ・・・・!私だけでは・・・・」

 

雪蓮はそのあと何事もなかったかのように周瑜に声をかけるが周瑜は子どもたちの巨大なエネルギーに翻弄されていた。眼鏡はずれ、髪は少しボサボサになっていた。子どもは無邪気であるが故か・・・。

 

「何やってんのよ~。しょうがないなぁ~ほーらガキどもお姉さんが相手してあげる!」

 

子どもたちはわ~と言って雪蓮に集まっていく。その光景がなんと幸せで至高な時間であるか・・・。今ある幸せを俺は噛み締めた・・・。

 

周瑜は髪を整え、眼鏡をかけ直すと隣に立つ。

 

「いいものだろう?ここは。寂しい町並みか?」

 

「いいや、先ほどの発言は撤回するよ。ここは・・・俺は好きだな」

 

「フフッ・・・そう言ってもらえると私も嬉しいものだ。それと北郷、私はこれからは冥琳でいい」

 

「いいのか?」

 

「いいのか?と言われてもな。これだけ気を許せる人間そうそうはいない。雪蓮しかりお前しかりだ」

 

「鼻水垂らして泣いてくれたもんな」

 

「・・・・それは言うな。ッたく雪蓮め余計なことを・・・」

 

コホンと咳をしてただし、あまり言ってくれるなと言う。俺は少し笑うと彼女に本音を話してみようと思った。冥琳なら話せるそういった安心感があったからだった。

 

「冥琳・・・・。俺、雪蓮が好きだ」

 

「そうか・・・・・そうだな・・・・私も雪蓮は好きよ。友人として、苦楽を共にする戦友としても、そして・・・」

 

え?っと思い冥琳を見ると彼女は眼鏡を外し遠い空を眺めていた・・・。

 

「・・・雪蓮はお前のことを相当意識しているようだからな。お前、脈はあるぞ」

 

眼鏡をかけ直し、いたずらっ子のような笑みでこちらをみた。先ほどの冥琳は・・・・?と思わせる彼女の豹変ぶりに驚くが俺も努めて動揺は表に出さず返事をする。

 

「え?!ほんと?」

 

「あれだけ嫉妬する雪蓮は見たことがないからな。お前が朝、広場に来る前の愚痴はそりゃもう面白い光景を堪能させてもらったよ」

 

フフンと冥琳は笑う。やっぱりヤキモチやいてたのか。というか何を愚痴っていたのか気にはなるがそこを聞くのは野暮というものだろう。

 

「やっぱりそうなのかな・・・・」

 

「雪蓮は顔に出るからな。まぁそれだけ純粋で真っ直ぐだということさ。ただ北郷、雪蓮はな・・・・、いろいろなものを背負っている。本人は表には決して出さないであろうが・・・・」

 

冥琳の言葉に雪蓮のあの涙、広場での言葉を思い出す・・・。彼女は非常に重い宿願を背負っているという涙ということか・・・。

 

「ああ、過酷すぎるな・・・・。冥琳、俺も・・・・彼女を支えていく。必ず彼女を天下人にしてみせる。そして彼女を解放させてみせる・・・」

 

「・・・北郷、頼む。雪蓮を支えてやって欲しい・・・それは私ではできない、お前にしか出来ないことだからな」

 

「何言ってんだよ冥琳。それは出来ない相談だな」

 

「え?」

 

「冥琳、君も雪蓮を今も支えているじゃないか。俺だけではだめだ。みんなで支えていく。そして彼女を王ではなく一人の女性に必ず戻してみせる」

 

「北郷・・・・そうだな・・・・雪蓮だけでは見ていられないからな。私たちが付いてやらないと・・・・」

 

冥琳の驚きの表情をあげたがその後雪蓮を見ながら冥琳は目を潤ませると絞り上げるようにそう呟いた。

 

「そうだよ。冥琳、共に戦おう。そしてこの乱世を終わらせよう」

 

「北郷・・・・そうだな!よろしく頼む。お前の、いや貴方の力を是非貸してほしい」

 

「改めてよろしく、江東の大都督」

 

彼女としっかりと握手を交わした。冥琳の覚悟が自分の体に流れ出てくるかのように力強い握りであった。

 

「一刀~冥琳~助けて~」

 

雪蓮がギブアップの声を上げると俺と冥琳はクスリと笑う。

 

「な?俺たちがついてないとだめだろ?」

 

「ハハハッ!そうだな!北郷行こう!!」

 

「うん!」

 

二人で雪蓮のもとへと駆けていく。

 

冥琳と雪蓮とそして俺。この三人の強い絆は決して断ち切れるものではない無敵なものだ。・・・その時は俺はそう思っていた。

 

 

 

 


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