No.98475

鬼畜王文台 蘇りし虎は曹魏を食らう 02 第七章

Degradationさん

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2009-10-02 12:00:36 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:12296   閲覧ユーザー数:9368

第七章

 

 

 

 

 

孫呉軍三十万は高揚していた。

孫策は助かった。九死に一生を得た。

彼女は、華佗という医者の治療を受けるため、

兵たちに手足を担がれ、半ば強制的に建業の城へと叩き戻されていった。

その孫策の救世主、呉の前王、孫堅こと孫文台。

彼らは最初、突然の前王文台の再臨に内心戸惑う者が多くいた。

 

だが、彼女の文字通り鬼神と化した戦いぶりに、孫呉の戦士の闘争心に火が点いた。

彼女は先陣を切って、真っ先に魏の退却部隊に突っ込むと、南海覇王一振りで、

一気に五人の敵兵の首を跳ね飛ばした。

そして絶命した兵が持っていた剣を奪い取ると、それを二・三本束ね、

さらに別の兵士の首に向かって投げつけていく。

残った一本で二刀流にすると、まるで竜巻が起きたかのごとく

十人、二十人と次々に敵兵が宙に舞い飛んでいった。

後方から矢が飛んでくれば、それらすべてを弾き飛ばし、あるいは素手のまま握り止め、

それをまた別の兵士に投げ込んで命を奪い取っていく。

前方から槍をそろえて向けられれば、そのうちの一本をひったくって

一撃の下に兵たちの首を飛ばしていった。

 

 

結果、わずか半時(約一時間)もせぬうちに、孫堅ただ一人によって

葬られていった魏兵の数は、実に七千に上った。

武烈皇帝孫文台は、その武烈の名に恥じぬ勢いで

敵兵たちを次々にしとめながら、“匂い”と“勘”で、

ある場所を最短距離でひたすらに目指していた。

魏軍親衛隊が控える、曹孟徳の中核である。

 

 

 

曹魏軍百万は慌てていた。

伝令より、「後方から何かとてつもない勢いで迫ってくる部隊がいる。

だが、騎馬や敵兵が一人として見当たらない」

これを聞くないなや曹操・夏侯惇・夏侯淵の三名はすぐに軍を反転させ、

手勢を率いてなぞの突撃部隊にぶつかろうとした。

 

が。

 

彼女ら三人は、親衛隊を反転させるもそこから動くことが出来ずにいた。

なぜなら、ほかの兵士たちは退却することに夢中になっていて、

大軍を率いるにあたって根本的なことを失念していたのである。

 

前方の楽進らの部隊は、文台の猛攻撃を受け下がろうとする。

一方の曹操ら率いる親衛隊は、文台に立ち向かうため前に出ようとする。

進もうとする部隊、後退しようとする部隊、

五十万と五十万がぶつかり合い、もみ合い、押し合い、へし合って大混乱となった。

あちこちで罵声や怒号が飛び交い、味方同士で同士討ちを始め、

曹魏百万は連携を完全に失って烏合の衆と化していた。

 

そこへ、孫呉の戦士たちが容赦なく剣や槍をくれていく。

彼らは孫策を失いそうになった怒りと、孫堅が再来した喜びとがない交ぜになっており、

これまでになく士気が高かった。

今なら、曹魏を完全に破ることが出来る。今なら、曹操を亡き者に出来る。

復讐の鬼と化した文台率いる呉の戦士たちは、見る間に魏の中核の親衛隊にまで迫っていった。

後ろから襲い掛かられた魏の兵士たちは、たちまちのうちに算を乱して散り散りになっていった。

 

 

 

そして―――――――。

 

 

 

あの小さな金髪の女の子、魏王曹操は激しく後悔しているようだった。

自分と対峙している呉の王、煌蓮さんこと孫文台との実力差が、あまりにも開きすぎていたからである。

彼女は相手を舐めすぎていたのだ。

 

 

 

曹操「う………うぅ…… ゼェーーッ! ハァーーッ! ゼェーーッ! ハァーーッ!ゼェーーッ! ハァーーッ!

   ……ゲホッゴホッッッ!! ゼェーーッ! ハァーーッ!………」

 

夏侯惇「ぐううぅぅっっっ…… 何というすさまじさだ! 我らが三人がかりで挑んでも

     まるで手も足も出んとは……!! たった五合で手がしびれて、最早右手が動かん!!!」

 

夏侯淵「これが……呉の武烈皇帝と号された、孫文台の実力か……

    まさか、我が神弓の矢を…すべて、それも素手で握られてしまうとは…」

 

典韋「春蘭様、秋蘭様! 私たちも加勢します!

   どうか、戦列に加わらせてください!!!」

 

夏侯淵「よせ季衣、流琉!! この者はお前たちなどでかなう相手ではない!!

     我らが敵わぬ者にお前たちが太刀打ちできるものか!!」

 

夏侯惇「秋蘭の言うとおりだ!! こやつの強さは、まるで人間のそれではないぞ!!

     華琳様っ、ご無事ですか!?」

 

曹操「はぁ…はぁっ、はぁっ…ぜー、ぜー……あ…あまり無事とはいえないわね」

 

 

 

 

夏侯淵「申し訳ありません華琳様…我らの力が至らぬばかりに……」

 

曹操「い…いいのよ秋蘭……元はといえば、この私が相手の実力を読み間違えていたのが原因……

   知も……武も……軍も……すべて相手が上回っていただけのこと……」

 

煌蓮「グバルルァァ!! もうオシマイなのかい、魏の小娘さんたちよぉっ!!

   それとも今度はそっちにいるおチビちゃんたちが相手になってくれるんかい!!?

   どっちでもいいよ、みんなまとめて、力ずくで来ぉぅいい!!

   どいつもこいつもみんなみんな、うちの娘たちの代わりに相手になってやるわ!!!!

   宇卯迂理李異伊以意医胃鋳委威位夷囲!!!!!!!!!!」

 

蓮華「すごいわ母様……私たちが割ってはいる余地もない」

 

小蓮「うわっ、すっごーい☆ あーんなでっかい鉄のイガイガ球を、真っ二つに切り裂いちゃったわ!!

   がんばれー、おかーーーさまーー」

 

一刀「…どう見ても人外です、ありがとうございました」

 

 

 

本当に煌蓮さんは、復讐と断罪の鬼神と化していた。

夏侯惇を蹴り飛ばして四つんばいにして、その上に片足を乗せて踏み台代わりにすると、、

持っていた大剣を奪い取って南海覇王との二刀流にし、夏侯淵の放った矢をひとつ残らずはじき落とした。

そしてその矢を拾って典韋の太鼓に投げ返して大穴を空けさせると、

許緒の小脇をひっ抱えて典韋の体めがけて思いっきり投げ飛ばした。

さらに折れた曹操の鎌をひったくり、柄で鳩尾を打ち据えて一撃の下にダウンさせてしまう。

みぞおちを極(き)められてくるくるの髪を引っ掴まれた曹操は、

さらに頭を殴りつけられて問答無用で覚醒させられた。

今度はその辺にいた『曹』の牙門旗を掲げていた兵士に、夏侯淵の矢を投げ返して絶命させると、

その曹旗を口にくわえ、丸ごと食いちぎってしまった。

これを見た魏の兵たちは一様に恐怖と戦慄を覚え、直立不動以外の動作ができなくなってしまっていた。

 

 

煌蓮「オラアァッッ!! どうした!? 貴様らぁ、それでも、軍人かぁっ!?

   高祖劉邦配下の夏侯嬰(かこうえい)の末裔が、聞いて笑うわぁっ!!!」

 

夏侯惇「ぐううぅぅっっ、何たる屈辱だ! 我らの先祖を愚弄されるとは!!」

 

 

 

荀彧「華琳様ぁっ!!」

 

曹操「うぅ…………何、桂花」

 

荀彧「申し訳ありませんっ! 申し訳ありませんっっ!!!」

 

曹操「謝ってるだけじゃ……分からないわよ?」

 

荀彧「許貢を……許貢を取り逃しましたぁっっ!!」

 

曹操「なんですって……!!?」

 

稟「……許貢はこの混乱の中を脱走…西へ向けて逃げ去ったものと思われます……」

 

夏侯淵「やられた……!!」

 

煌蓮「あん? 誰だい、その許貢って奴ぁ」

 

夏侯淵「文台公…貴公の娘をその手にかけた張本人だ」

 

煌蓮「……ほうぅ???」

 

 

 

曹操たちと一騎打ちをしていた煌蓮さんの目が、天狼星のごとく、ギラリ、と青白く光った。

その瞬間、その場の空気が一気に絶対零度にまで下がったのを感じた。

 

 

曹操「……ひっ!」

 

煌蓮「フシュウウウウゥゥゥゥゥーーーーーッッ…… ナールホドネェ、そうかいそうかい。

   要は魏のヘボ軍師共は、他国の皇女を暗殺しようとした自分の国の反逆者の一人すら

   ろくに捕らえる事も出来ん出来損ないの寄せ集めだったってことかい」

 

荀彧「何よ、せっかくあんたたちの国の王をその手にかけた犯人を捜してあげたんだから、

   それぐらいありがたく思いなさいよ!」

 

曹操「いけない……あの子の悪い癖が!」

 

夏侯惇「よせ桂花ぁっ!! 相手が誰であるかをよく考えてから物を言えっ!!」

 

夏侯淵「姉者の言うとおりだ! 今すぐその発言を撤回するんだ、桂花!!」

 

煌蓮「………」

 

暴言を吐かれた煌蓮さんはすっと目を細めると、

無言で荀彧の目の前まで歩き、そして音もなく南海覇王を構えて仁王立ちした。

 

荀彧「……ひぃっ」

 

一刀「まずい…! 煌蓮さんっ!!」

 

煌蓮「坊主は黙ってな!!! あとお前たちもだよ!!」

 

一刀・蓮華・小蓮「……!!!」

 

 

 

煌蓮「さて…うぬら曹魏は、孫呉(ウチ)らの州(シマ)に殴りこみ、

   その皇女である孫伯符を危うく死の危険にさらし、

   挙句その犯人をとり逃した上に、『努力はしたんだからありがたく思え』などと、

   その親である、このあたしに対しても暴言を撒き散らした。 

   曹操よ、この落とし前、どうつけるつもりだい?

   もし下手なことを言ってみな、一刀(いっとう)の下に、その素っ首、叩っ斬るよ!?」

 

曹操「…北荊州と予州全域を、あなた方孫呉に割譲「甘いわあぁぁっっっ!!!!!!」

 

曹操の言葉が終わらないうちに、煌蓮さんの怒号がこだました。

曹操・夏侯惇・夏侯淵の三人は、気迫に圧され、息を呑んで硬直する。

 

煌蓮「甘いねぇ、甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い、あーーまーーーいんじゃーーーー!!!

   おい物分りの悪いガキ共、自分らの立場をちゃんと弁えてるのかい?

   あたしが望むのはねぇ…まず一つ! 魏王曹孟徳の禅譲!!

   二つ!! 魏領全域の孫呉への併合!!! 以上さね!!!!」

 

荀彧「いやよ! どうしてあんたたち孫呉なんかに私たちが降らなくちゃいけないわけ?

   冗談言わないでよね!!」

 

煌蓮「こんガキャーー……さっきからごちゃごちゃウルサいんだよ! その甲高い耳障りな声で

   キーキーわめくな鬱陶しい!!」

 

喚き叫ぶ荀彧のあまりの鬱陶しさに煌蓮さんは激昂し、首根っこを引っつかんで背中にコブシをくれると、

気絶した彼女を、バックブリーカーの要領で、伸びている許緒の真上に突き落としてしまった。

相手が武将か軍師かという問題は、このお母さんにとっては大したことではないらしい。

 

煌蓮「邪魔者は消す!! 奴みたいに罵倒しかできん口先だけの雑魚は呉には不要だ!

   文句がある奴は、前に出て来い! そいつら全員、一人残らず順番に斬り捨ててやんよ!!

   さぁ、どうする!? 降伏か! 皆殺しか! 好きなほうを選びな!!

   あたしゃ気が短いんだよ!!!」

 

 

 

 

曹操「……春蘭、秋蘭、武器を捨てなさい」

 

夏侯惇「しっ、しかし…」

 

夏侯淵「…宜しいのですか、華琳様?」

 

曹操「…もう私たちには後がないわ。 ここで無駄な抵抗を続けても、私たちはすべて殺され、

   兵たちの命も呉の大地の露に溶けてしまうだけ。

   良いでしょう、私たちは、堂々と戦い、堂々と敗れた。

   ならばもう、思い残すことはないわ」

 

煌蓮「……はじめからそう言やぁいいんだよ。 おい野郎共!

   魏の娘っ子たちを医務室へ放り込んでおやり! そいつらはもう敵じゃないよ、安心おし。

   これからあたしらが面倒見ることになるガキ共さ」

 

呉軍兵士「了解ですっ!」

 

煌蓮「おっしゃ。 なら…」

 

 

 

 

煌蓮「勇敢なる孫呉の戦士たちよ!!

   我、武烈皇帝孫文台! 魏王、曹孟徳を捕らえたり!!

   野郎共ぉーーー、勝ち鬨を挙げろおおおおおーーーいいぃぃ!!!」

 

 

 

 

 

 

呉軍兵士「オオオオオオオォォォォォォーーーーーー!!!!!!!!」

 

 

 

 

第八章に続く


 
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