No.977644

真・恋姫†無双 異伝「絡繰外史の騒動記」第三十二話


 大変お待たせしました!

 一刀の新兵器によって混乱に陥る劉焉軍。

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2018-12-23 13:17:41 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:3713   閲覧ユーザー数:3098

 

 ~劉焉軍の陣にて~

 

「痛たた…何だ今のは?一体何が起きて…桔梗様!?桔梗様、ご無事ですか!?ご無事でし

 

 たらご返事を!」

 

 大砲の弾が着弾した本陣にて意識を取り戻した魏延の眼に入ったのは、何かが落ちて来た

 

 ような大きな穴とその周りに散らばったように広がる物と人であった。しかも肝心の厳顔

 

 の姿が何処にも見えず、魏延は必死に呼びかけを続けていた。

 

「焔耶ちゃん、大丈夫!?」

 

「紫苑様!紫苑様は大丈夫でしたか!?」

 

「私は後方にいたから特には…桔梗は!?」

 

「それが、先程から呼びかけてはいるのですが…まさか、そのような事は無いとは思うので

 

 すが…」

 

 本陣に轟いた音を聞いて駆けつけた黄忠に魏延は沈痛の面持ちでそう答えていると…。

 

「ぐっ…勝手に殺すな、この馬鹿者が。だが、少々不覚は取ったな…」

 

 うめき声と共に側のガレキの中から厳顔が姿を現す。しかし、それは明らかに深手を負っ

 

 た姿であった。

 

「桔梗!…誰かある!厳顔将軍を後方へ!!それと陣を三十里後方へ移動させます、すぐに

 

 準備を!!」

 

「紫苑様、さすがに三十里も下げれば劉焉様がお怒りになるのでは!?」

 

「向こうは雷をも操る術があるのよ、三十里でも足りない位かもしれないわ。これ以上の被

 

 害は出来得る限り抑えるのが私達の役目よ!!」

 

 こうして、深手を負った厳顔は後方へと移送され、残った兵は黄忠と魏延の指揮の下で相

 

 手側の追撃に備えていたのだが…。

 

 

 

 ~同時刻、一刀達の陣にて~

 

「七志野権兵衛、覚悟!!」

 

 その声がした方向に眼を向けると、眼の前に赤い物が飛び散る…えっ、血!?俺が斬られ

 

 て…ないって事は!

 

 そう思って改めてその方向を見ると、肩口を斬られてうずくまる公達とその前に仁王立ち

 

 となって止めを刺そうとしている女性の姿が…公達が危ない!

 

 敵わぬまでもと飛び出そうとした俺の横を、一瞬早く動いた恋が公達に斬りかかった女性

 

 の剣を戟で撥ね上げる。

 

「くっ…邪魔をするな、呂布!」

 

「何の邪魔かは知らないけど、公達が死んだら一刀が悲しむ…だから、死ぬのはお前の方…

 

 孫策」

 

 そう言って恋が戟を構えるが、対する孫策の顔は何やら驚いたような風になっていた。

 

「公達?そいつが七志野権兵衛じゃなかったの?」

 

「こいつは驚いたな…人に斬られるような覚えは多少はあったつもりではいたけど、まさか

 

 人違いで斬られるとは思いもよらなかったぞ。それと、七志野権兵衛って誰だ?」

 

 そう言って公達が起き上がってくる。

 

「大丈夫なのか、公達?」

 

「おい、一刀。これをどう見たら大丈夫に見えるってんだ…まあ、お前さん特製の着込みの

 

 おかげで死ぬ程ではねぇみたいだけどな」

 

 公達は立ち上がって気丈にそう答えるが、その間にも腕を伝って血がポタポタと流れ落ち

 

 ている。

 

「とりあえず早く治療をしないと…恋、孫策の相手は頼めるか?」

 

 

 

「うん…分かった。一刀は早く公達を連れて行く」

 

 恋はそう言うとそのまま孫策の方を向いて戟を構える。

 

「ちょっ、待って!私は…『理由はどうあれ、私達に剣を向けた。このまま逃がすわけには

 

 いかない』…くっ」

 

 孫策は戸惑いを見せるも、恋の前で背中を見せるわけにもいかず、苦い顔をしたまま剣を

 

 構える。

 

「では、此処は呂布将軍に任せて一時撤収!十人位、此処に残って劉焉軍と孫策の動向を確

 

 認!!」

 

 色々と気になる所はあるものの、此処は恋とねねに任せて俺達は襄陽へと引き揚げたので

 

 あった。

 

 ・・・・・・・

 

 ~一刀達が帰ってから半刻後~

 

「どうした?威勢良くかかってきたのは最初だけ?」

 

 恋と孫策は対峙した時の体勢のまま、にらみ合いを続けていた。

 

「もう一度だけ聞くわ…本当にさっきの男が七志野権兵衛ではないのね?」

 

「そもそも、そんな変な名前に心当たりはない…そろそろこうしてるのも飽きてきたし、終

 

 わりにする」

 

 孫策の質問に恋はそう淡々と答えながら攻撃の構えを取る。対する孫策は苦い顔をしたま

 

 ま防御の態勢を崩さないでいた。

 

(まずいわね…このまま呂布を相手にして無事に切り抜けられる保証なんて無いし…しかも、

 

 まさか此処で人違いで斬っちゃうなんて…母様を殺す程の兵器を造った奴だから、あの中

 

 で一番頭の良さそうなあの男が七志野権兵衛だと思ったのに…私の勘もヤキがまわったっ

 

 て事かしら?何にせよこの状況…全然良くないわね。でも、何とか切り抜けないと…)

 

 

 

 孫策は内心で大いに焦りながらも、必死にこの場を切り抜けようと考えを巡らすが、眼の

 

 前にいる恋が全く隙を見せない以上、どうする事も出来ずにいた。

 

「なら、こっちから行く…」

 

 恋はそう事もなげに言うと、一気に孫策の懐に踏み込み戟を一閃する。

 

 孫策はそれを何とか受け止めたものの、数m程吹き飛ばされ大きく態勢を崩してしまう。

 

「逃がさない、止め…誰?」

 

 恋が孫策に止めの一撃を加えようとしたその瞬間、恋は背後からの気配を感じ取り身を翻

 

 して距離を取る。

 

「ご無事ですか、雪蓮様!?」

 

「…明命!?何で此処に!?」

 

 そこに現れたのは周泰であり、彼女は即座に孫策に駆け寄ると庇うように恋の方を向く。

 

「呂布様、孫策様は我が主孫権様の命により、この周泰が責任を持って連れて帰るよう命を

 

 受けております。どうか此処はこれまでにしていただきたく。孫策様の事は孫家で責任を

 

 持って裁きます故」

 

「…それは無理、孫策は公達を斬った。裁きは月…董卓様の名の下で行われる」

 

「そうですぞ!実質はどうあれ孫家は今は董卓様に従う身分である以上、その一族の者が董

 

 卓様直属の家臣に手をかけてそのまま逃げおおせるなどと思わぬ事です!」

 

 周泰の願いをあっさりと断ずる恋の言葉にねねがそう言い添える。その言葉に孫策の表情

 

 が驚きに包まれる。

 

「…どういう事よ、孫家が董卓の配下って?」

 

「…申し訳ございません、雪蓮様。袁紹に従い連合に参加した孫家…雪蓮様の罪を免れる為

 

 の条件として董卓様が提示してきたそれを蓮華様と冥琳様がお飲みになられたのです」

 

 

 

「…なっ!?」

 

「お怒りにならないでください!例え孫家として辛酸をなめる事態となろうとも、雪蓮様に

 

 戻って来てもらえるようにお考えになられた結果なのです!」

 

 話を聞いた孫策は驚きと怒りに満ちた表情を見せるも、周泰のその言葉に苦虫を噛み潰し

 

 たかのように唇を歪める。

 

「周泰殿、孫家が董卓様に従う条件として孫策の罪を赦したのは確かですが、それと此度の

 

 事とは別問題なのですぞ!大人しく孫策をこちらに引き渡すのであればそれで良し、さも

 

 なくば周泰殿も同罪とみなす事になりますぞ!そしてそれは孫権殿にも迷惑をかける事に

 

 なりますが、それでも良いのですか!?」

 

 ねねのその問いに周泰の表情からは迷いが生まれる。

 

「明命、あなたは離れなさい」

 

「雪蓮様!?」

 

「私も色々思う所がないわけではないけど今の孫家の当主は蓮華、蓮華が決めた以上それを

 

 今更出奔した私がどうこう言う権利は無いわ。今回の事は私が独断でやった事、それをあ

 

 なたが庇いだてするような事になれば、孫家全体に責任を負わす事になるわ。だから此処

 

 は離れなさい」

 

「しかし、私は蓮華様や冥琳様の命であなたを!」

 

「こうなった以上は仕方ないでしょう。董卓直属の家臣に怪我を負わせてそのままってわけ

 

 にもいかないでしょうし…さすがに今更そんな人間を抱え込む程、劉焉もバカじゃないで

 

 しょうしね。でも…」

 

「でも?」

 

「やっぱり、七志野権兵衛の首は取りたかったわ…折角、その好機だと思ったのに人違いだ

 

 ったなんてね。やっぱり七志野権兵衛は洛陽にいるのかしら?」

 

 

 

「えっ?七志野権兵衛は襄陽にいるはずです。こちらに来ている部隊の中にいるのを私は見

 

 ましたから!」

 

 孫策の呟きに周泰がそう答えると、孫策だけでなく恋とねねも驚きの表情を浮かべる。

 

「…ねね、そんな人いた?」

 

「いるわけないのです!何度も言っているようにそんなふざけた名前の家臣など我らが軍に

 

 はいないのです!!」

 

「でも、私は実際に七志野権兵衛に会ってますから間違いありません!嘘だと仰るのであれ

 

 ば、張遼様に聞いていただければ分かります!私が虎牢関で捕まった時にその場にいたの

 

 ですから!」

 

 周泰のその反論にその場にさらなる困惑が広がる。

 

「で、それを確かめるのは良いとして…孫策は大人しく連行されるつもりでいやがるのです

 

 か?」

 

「そうね…首を刎ねられる前に本当の所くらいは知っておきたいわね」

 

 そう言って孫策は剣を恋に差し出す。

 

「分かった…一応、捕縛させてもらう。ねね」

 

「はい!孫策、大人しくするのですぞ!」

 

「…さすがにこの期に及んで反抗はしないわよ」

 

「あの…陳宮様、孫策様はやはり…」

 

 ねねの命を受けて兵達が孫策を捕縛しているのを見ながら、周泰は不安そうな顔でねねに

 

 問いかける。

 

「孫策が大人しく降った以上、この後の裁きは董卓様から下されます。孫策がどうなるのか

 

 は我々が今此処で分かるものではないのです。今、出来るのは周泰殿を見逃す事だけなの

 

 です」

 

 

 

「ふぇっ…見逃されるのですか、私?」

 

 ねねの言葉に周泰は困惑の声を上げる。

 

「おや、あなたは孫家の家臣、この罪人とは無関係のはず…そうですな、孫策」

 

「ええ、私は以前に孫家にいただけの人間、今回の事も独断でやった事よ。孫家には何の関

 

 係も無いわ。だからあなたは蓮華の所に帰りなさい」

 

 ねねの問いに孫策もそう答える。

 

「しかし…私は、私は…」

 

「何を言っているのです?我々はとりあえず孫策を連れて襄陽に戻るのです。そして、その

 

 七志野権兵衛とやらについて調べた後、孫策を洛陽に連行する事になるのです。孫権殿か

 

 ら何やら別命を受けてたまたま此処にいた周泰殿には、とりあえず説明の為に襄陽に同行

 

 はしてもらいますが、その後で孫権殿へ報告の為に建業へ戻られようが、孫策を洛陽へ連

 

 行したと同時位に孫権殿が洛陽に来られていようがとりあえず我らの今の職務に関係ない

 

 話なのです」

 

 まだ戸惑いを見せる周泰にねねがそう言葉をかけると、途端に周泰の表情が変わる。

 

「ありがとうございます、陳宮様」

 

「ふ、ふん、勘違いしやがるなです!礼を言われるような事など何一つしていないのです!

 

 とりあえず劉焉軍の様子を確認したら襄陽へ戻るのです!」

 

 ねねは若干照れたような表情を浮かべながら兵士に劉焉軍の様子を見て来るように指示を

 

 出す。

 

 ・・・・・・・

 

 半刻後。

 

「随分早かったで…そちらは誰なのです?」

 

 予定より早く戻って来た兵士に声をかけようとしたねねが、同行者がいる事に訝し気に眉

 

 をひそめながら問いかける。

 

 

 

 

「初めまして、陳宮殿。私の名前は黄忠…劉焉様にお仕えする者の一人です」

 

「うなっ!?劉焉軍の将が何故此処にいるのです!?軍勢はいないようですな…そちらのお

 

 子は?」

 

「はい、軍勢は同僚に任せて三十里先まで退かせてあります。それとこちらは私の娘の璃々

 

 です」

 

「璃々です!よろしくね、ちんきゅーお姉ちゃん♪」

 

 黄忠がそう紹介すると璃々は無邪気そうな顔でねねに声をかける。

 

「恋殿、どうです?周りに不穏な気配は?」

 

「…無い。本当に黄忠は二人だけで来たみたい」

 

 恋のその言葉を聞いてねねは若干緊張を緩める。

 

「そうですか…しかし、一応は交戦状態にある我らの方に護衛も無しで来るとは随分と大胆

 

 な事ですな」

 

「しかし、そうでもしないと話し合いになど応じてくれないでしょうから」

 

「話し合い?」

 

「はい。停戦についての、です」

 

 黄忠の口からはっきりと『停戦』という言葉が出た事にねねだけでなく恋の表情にも驚き

 

 が浮かんでいたのであった。

 

 

 

                                       続く。

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 大変にお待たせしまして申し訳ございません!

 

 mokiti1976-2010です。

 

 何度も書き直している内に気付けば四ヶ月…しかも、

 

 書き上げた物の出来もあまり…文才の無さに苦悩す

 

 る毎日です。

 

 何とか今後も続けていきたいと思っておりますれば、

 

 何卒温かく見守っていただけると幸いです。

 

 

 さて、今回は一刀の新兵器である大砲によって混乱

 

 する劉焉軍と雪蓮の乱入によって混乱する一刀達の

 

 顛末をお送りしました。

 

 雪蓮への尋問や七志野権兵衛についての解決や紫苑

 

 との話し合いによる劉焉軍との戦の結末などは次回

 

 にお送りしますので。

 

 

 それでは次回、第三十三話にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 追伸「うぬ…筆が進まぬ!」…ごめんなさい、言って

 

    みたかっただけなんです(土下座)。

 

 


 
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