No.796460

学園恋姫~北郷一刀(を攻略する恋姫達)の恋物語~2

シンさん

登校風景。女の子達も徐々に出していきます。
英雄譚のキャラ実も出すかは悩み中です。

2015-08-15 22:49:21 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2112   閲覧ユーザー数:1808

意中の人と登下校する――全国の恋する男女が一度は夢見るシチュエーションだろう。

某恋愛ゲームでも必須イベントとされているそれは、実行へ移すとすればかなり難易度が高い。リアルにおいても、ゲームにおいても。

簡単? リア充ですね、ありがとうございます。

 

ついでに言えば断られたりした場合、気まずさで今すぐ消えてしまいたくなるのもお馴染みである。

具体的に言うと『ゴメンね。一緒に帰って噂されると恥ずかしいし……』とか。

 

それはさておき、ここで一人の恋する乙女の行動を見てみるとしよう。

 

 

(うう~……緊張するのです)

 

 

乙女の名前は明命。聖フランチェスカ学園に通う元気いっぱいの一年生。

時折角から顔を出し、彼女は辺りの様子を伺っていた。傍から見れば怪しさ満点である。

そんな明命の目的は唯一つしかない。それは意中の人と一緒に登校すること。

更に言えば、つい最近本で読んで得た知識――偶然を装って会い、そのまま~etcを試すため。

 

 

(リサーチによれば、今日もここを通る筈です!)

 

 

報道部に所属する彼女のリサーチ能力は群を抜いており、同じ部の先輩達から一目置かれる程である。

徐に彼女は懐からメモ帳を二冊取り出した。内一冊は、いつも取材で使っているごく普通のメモ。

もう一冊は、意中の人の名前が書かれた(ハートマーク付き)特別なメモ帳だ。子猫の絵が可愛らしい。

 

 

 

家族構成――父、母、大学に通うお兄さんが三人。

 

 

好きな食べ物、嫌いな食べ物――和洋中何でも。嫌いな物は無し。

 

 

好きなタイプ――不明。最重要項目。

 

 

所属部――帰宅部。残念だが、デートの時間があると思えば……。

 

 

登下校ルート――寄り道多数。但し買い物等が目的で家庭的。

 

 

 

パタン、と特別なメモ帳を閉じ、彼女は人知れず心の中で身悶えた。

ここまで調べ上げるのに色々なものを犠牲にしてきたのだ。

その苦労が今、実を結ぼうとしている。身悶えるのは仕方がないのだ。

 

――しかし彼女は知らない。

その行動は世間一般で言うとスト……暴走する思春期の行為ということを。

 

 

(ッ!? き、来ました!)

 

 

もう何回目になるだろう、角から顔を覗かせると目的の“彼”が姿を現した。

 

 

(はうう~……一刀先輩)

 

 

一刀が友人と楽しそうに会話しながら登校している。明命の目にはもう一刀しか映っていない。

隣の眼鏡? そんな者はOUT OF 眼中だ。

 

 

「っくしゅ!」

 

「うわっ、風邪か?」

 

 

おのれ眼鏡。一刀先輩に風邪をひかせるなど許せない。

 

 

「いやいや、身体が丈夫なのが取り得やし。これはあれやなぁあれ」

 

「あれ?」

 

「女の子が噂しとるに違いない! いやぁ、モテる男は辛いわぁ」

 

「…………」慈愛に満ちた目。

 

「そんな優しい目で見んといてーッ!! せめてツッコミ入れたって~かずピー!」

 

「はいはい」

 

 

ドンドン彼が近づいてくるに連れ、心臓の音も同時に高鳴る。

ここで怖気づいてどうする明命。覚悟を決めるんだ。

 

目標をセンターに入れて、スイッチッ! 今だ!

 

 

「おおおおおおおはようござ「おはようございます一刀さん」えっ……?」

 

「あっ、おはよう愛紗。最近ここでよく会うね」

 

「えっ、ええ。部活動がこの時間帯だと丁度良いので……」

 

 

以前取材したことがあるので覚えがある。あの綺麗な黒髪にスタイル抜群の身体。

密かに一年の間でファンクラブがあるとかないとか――二年生の愛紗先輩である。

 

 

「愛紗ちゃんや~。おは~」

 

「及川さんもおはようございます」

 

「そんな遠慮せんと、親しみ込めて佑と「朝から及川さんは冗談がお上手ですね」はい……」

 

 

出 し ぬ か れ た。そしてライバルですかそうですか。

自分の想像していたものとは、遥か斜め上を行く展開に明命は開いた口が塞がらなかった。

背後の気配に気付かなかったのもそうだが、角から出た瞬間のあの迅速な行動はどうだ。

 

手馴れてやがる。そう思わざるを得なかった。

 

 

(ここで負けるわけには……!!)

 

 

幸運なことに、その場で止まって愛紗が一刀と会話をしている。

割り込むのは簡単だ――明命が意を決して、角から飛び出した。

 

 

「お、おおおおはようございます! 北郷先輩ッ!」

 

 

一刀の視線が愛紗から明命へと移った。

「むっ」と声が聞こえそうな程に愛紗の顔が不機嫌一色に染まる。

 

 

「おはよう……って、あ。君は確か明命ちゃんだっけ」

 

「何やかずピー。この娘と知り合い?」

 

「うん。前に聖フランチェスカ学園で数少ない男子生徒って内容で取材されてさ」

 

「えっ、何それ。ウチ全然知らんねんけど……」

 

 

及川が知らないのも当然のことだった。

明命が一刀の情報を得る為だけに、先輩を言い包めて実行した取材だからである。

――ちなみに会話を中断されたせいで愛紗が物凄いジト目で明命を睨んでいた。

 

 

「あの時はありがとうございました。とても良い記事が書けそうです!」

 

「質問が俺の個人的なことばかりだったけど、面白い記事になるのかな?」

 

「そこは報道部の腕の見せ所なのです。思春先輩も協力してくれてますので!」

 

 

記事は一般向けの通常版。

と、自分と諸々の関係者に配るリミテッドエディションを製作予定だったりする。

無論一刀に後者が内緒なのは言うまでもない。

 

 

「楽しみだな。完成したら張る前に見せてくれる?」

 

「もちろんなのです!」

 

(私も一部欲しい……)

 

「そうだ。佑も今度取材を……って、佑?」

 

 

先程からずっと黙りっぱなしの友人に視線を向けると、身体をブルブル震わせていた。

顔は俯いて見えない。気になった一刀が肩に手を置こうとした瞬間――

 

 

「かずピーの裏切り者ぉ!! ウチより後から来て何でもう両手に花やねん!!!」

 

 

そう叫んで走り出してしまった。目から涙が流れていた……ような気がする。

唖然と立ち尽くす一刀の背中で、愛紗と明命が視線を交わしていた。

 

 

(よくも出し抜いてくれましたね)

 

(笑わせるな。あの場所はお前が来るよりも以前から私が目を付けていたんだ)

 

(……まあ今回は負けを認めるのです。但し次は先輩と言えども負けません)

 

(私も後輩に負けるつもりは毛頭無い。なによりライバルは多いのだ。

 こんなところで一刀さんを、初恋を諦めてたまるものか!)

 

(同じくなのです!)

 

(……ところで新聞なのだが、一部貰えるか)

 

(いくつかの一刀さん情報と交換でなら考えても良いのです)

 

(ぐっ……ここぞとばかりに足元を見おって)

 

「佑は先に行っちゃったし、俺達も行こうか」

 

 

一刀のその言葉を機に、恋する女の戦いは一つの終わりを迎えるのだった。

 

 

「「はい。行きましょう」」

 

 

そこにあるのは可愛い同級生と後輩の笑顔である。

――女って怖いねホントにね。


 
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