No.796274

学園恋姫~北郷一刀(を攻略する恋姫達)の恋物語~1

シンさん

偉大な先人達に触発されて、書きました学園恋姫です。
オリジナル設定、キャラ崩壊有りです。苦手な方はご注意を。
基本的にはラブコメディになります(予定)。

2015-08-14 23:46:31 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2472   閲覧ユーザー数:2140

 

早朝六時――末っ子たる彼の目覚めは早い。

世間一般の学生ならば、殆どがまだ夢の中の時間帯である。しかし彼は別であった。

自分が住む、この我が家には大学に通う三人の寝ぼすけが居る。心から慕う兄達だ。

 

彼は自覚していた。俺ってブラコンだなぁと。

小さな頃から自分は、親以上に兄達に溺愛されてきた――現在進行形であるが。

過剰に可愛がられれば、反抗心もすぐ沸きそうなものだが、彼は幸運にも素直に育った。

――全世界のブラコン共、我が家の弟はどうだ! と兄達がドヤ顔かましそうである。

 

それはさておき、こうして朝早くに起きて兄達に朝食を作ってあげるのも、末っ子たる彼の感謝の印だった。

親をして「お互い甘やかしすぎじゃね?」と苦言を呈されたこともあるが、何処吹く風であった。

 

 

「卵余ってたよなぁ。……目玉焼きにでもするか」

 

 

手馴れたもので、自分を含めた四人分の朝食を三十分も経たずと作ってしまった。

テーブルには食べやすいサラダ、メインの目玉焼き、食パンとジャム+バター。

長男は黄身固め、次男と三男は柔らかめと好みも万全である。ドリンクもあるよ。

 

準備完了、起こしてくるか――彼、北郷一刀は使ってない鍋とお玉を手に持った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

北郷家には、決まって騒がしい時間帯が存在する。近所の人ゴメンなさいである。

だが騒がしいといっても、ご近所トラブルに発展する程ではなかったりする。

寧ろ「あらあら」とか「北郷さんの家は賑やかだなぁ」とか言われそうなぐらい微笑ましいものであった。

 

――彼らは知らないが、この時間帯を目覚まし代わりに使っているところもあるとかないとか。

 

階段を上り、二階に着くと、廊下を見やった。

そこにあるドアには、それぞれ部屋の主たる名前札が掛けられている。

一刀は軽く息を吸い込んだ後、鍋とお玉を上に掲げた。

 

 

「あ~さ~だ~ぞ~!! 兄ちゃん達、お~き~ろ~!!」

 

 

カンカンッ! と、耳に思い切り響く不快音が自宅を包み込んだ。

ここで反応が無ければ――火の用心曰く――ドアの前まで行って集中的に鳴らす鬼畜な行動に出る予定である。

 

 

「おはよう一刀。今日も朝から騒がしいな!」

 

 

一刀のすぐ手前のドアが開き、赤髪(寝癖タップリ)の青年が姿を現した。

見た目爽やか、実態は松○修○張りに熱い長男・華佗である。

 

 

「おはよう兄貴。朝食出来てるよ」

 

「いつも悪いな一刀。早く起きるのは辛くないか?」

 

「それは言わないお約束でしょ。今日は目玉焼きだよ」

 

「黄身は?」

 

「兄貴のはもち固め」

 

「グッジョブ!」寝癖が無ければカッコいいサムズアップだった。

 

 

と、そんなやり取りをしている間にドアが次々と開き、次男と三男が姿を現した。

 

 

「おはようございます一刀。今日も可愛いですね」

 

 

今起きたばかりとは思えない程にキラキラしている次男・于吉。

 

 

「おはよう于吉兄ちゃん。相変わらずキラキラしてカッコいいね」

 

「ふふ。私のような大人になると、常にこの状態を維持しておかなければならないのです。

 更に言わせれば、朝から可愛い弟の前でだらしない姿を晒すなど「退けクソ兄貴」おぶぅ!?」

 

低血圧で朝に弱く、不機嫌モード全開の三男・左慈。自分の前で暴走しそうな兄を華麗な蹴りで見事に沈めた。

 

 

「おはよう左慈兄ぃ。駄目だよ朝から兄ちゃん蹴っちゃ」

 

「馬鹿。弟に手を出そうとした変態を駆逐しただけだ……」

 

「手を出そうなどと不埒な……。私はただ可愛い弟に感謝の言葉を……」

 

「まだ意識があったか」蹴りの構え。

 

「ちょっ!?」

 

 

北郷兄弟、今日も朝から欠けることなく揃い踏みである。一刀は満足していた。

廊下で騒ぐ二人を何とか宥め、一刀は華佗がいるリビングへ一緒に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「いただきます」」」」

 

 

リビングに集合し、テーブルに並べられた朝食を食べ始める四人。

北郷家、いつもの朝の風景である。

 

 

「兄貴、新聞は……?」

 

「お前達が来る前に取っておいたぞ。ほら」

 

「サンキュー……」砂糖とミルク無しのコーヒーを飲みながら新聞を受け取る左慈。

 

「左慈、貴方はどうせテレビ欄を見て終わりでしょう。兄さんに先を譲りなさい」

 

「うるせー……」

 

「はははは。俺は構わないよ于吉。そうだ一刀、醤油取ってくれるか?」

 

「あ、一刀。ついでに私はソースを」

 

「オッケー」

 

 

頼まれた物を渡した後、一刀は徐にテレビの電源を付けた。

ちょうど天気予報をやっていたらしく、お天気お姉さんの管輅が笑顔で映っていた。

当たるも八卦、当たらぬも八卦予報――今日はどうやら一日晴れるらしい。

 

 

「兄貴は今日も帰り遅いの?」

 

「そうだなぁ。医学科の宿命だな。学ぶことが沢山あるんだ」

 

「私はいつも通りですよ一刀ッ!」

 

「聞いてねえだろうクソ兄貴……」

 

「あははは。左慈兄ぃは?」

 

「……後輩と付き合いがあるから少しばかり遅ぇ」

 

「うん、分かった。じゃあ帰りに俺が買い物済ませてきちゃうね」

 

「……いつも悪いな」

 

「いいってこと。楽しんできなよ左慈兄ぃ」

 

 

一刀の言葉に照れ隠しなのか、さっさと新聞を華佗に返し、左慈は食べるのを再開した。

横で見ていた于吉はニヤニヤとしていたが、ここで茶々を入れようものなら蹴りが飛んでくるので黙ることにした。

 

 

「ところで一刀、あそこは慣れたか?」新聞を読みながら思いついたように聞く華佗。

 

「あ~、うん。みんな親切だから助かってるけど、やっぱりどうしても慣れないよ。

 俺と友達以外みんな女の子っていうのはさ」

 

「はははは。まあ聖フランチェスカは元々女学園だったからなぁ」

 

「恨むなら環境が良いからって編入させた親父を恨むんだな」

 

「ああっ!! 私は今でも心配です。可愛い弟を、一刀をあんな猛獣の檻に入れるなんて!」

 

 

役者張りに大げさに于吉はリアクションをした。

一刀は自分をブラコンと言うが、于吉の方が極度のブラコンであった。

 

 

「猛獣って……兄ちゃん大袈裟過ぎるよ」

 

「甘い、甘いですよ一刀。良いですか? 今まで女の園であった学園に男が来るのですよ?

 男というもの自体を知らなかった女達は当然興味深々です。まあ一刀なら仕方がないでしょう。

 そんな好奇心を武器に、女達は己の醜い欲望を右も左も分からない一刀に……ウゴゴゴゴ」

 

「男は俺以外に及川もいるんだけど……」

 

「あのエセ関西眼鏡はどうでもいいです」

 

 

及川、お前は泣いていい――肩身の狭い環境で唯一の話相手である友人に一刀は思った。

 

 

「お前も眼鏡だろうが。頭にクソが付くけどな」

 

「失礼なッ!!」

 

「まあ確かに于吉は心配し過ぎだろう。こんなんじゃあ一刀は恋人を作れないな」

 

「一刀に恋人……くう、想像したくもありません!」

 

「クソ兄貴は一刀を生涯独身にしてえのか……」

 

「それはちょっと……。それにさっきから聞いてるとさ、于吉兄ちゃんて女性嫌いなの?」

 

「嫌いではありません。頼りないのと信用出来ないだけです」

 

 

母さんは別ですが――と付け加えて、さも当然の如く、きっぱりと左慈は言い放った。

一瞬唖然とした空気が広がったが、それも華佗の笑い声によってかき消されたのだった。

 

 

「クソ兄貴……」

 

ポツリと言った左慈の言葉は、誰の耳にも聞こえなかった。

 

 

北郷家の朝はゆったりと過ぎていく――

 

 
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