No.763056

IS ゲッターを継ぐ者

後編です。

2015-03-08 15:10:26 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:885   閲覧ユーザー数:868

~千冬side~

 

 あれは、私が第二回モンド・グロッソに出場した時の事だった。

 

 私は弟の一夏に観戦チケットを渡し、観に来るように言って、一夏は開催地であるドイツまで来てくれた。

 

 『あの事件』以来、一夏には出来るだけISに関わりを持たせないようしてきたが、やはり一夏も男で強い者には憧れを持つというもの。私の活躍により肩身の狭い思いをしてきたであろう弟に対して、せめてもの罪滅ぼしとばかりにチケットを渡し、一夏も喜んでくれた。

 

 順調に私は勝ち進んだ。だが二連覇をかけた決勝戦の直前、事件が起こったのだ。

 

 一夏が誘拐されたとの連絡がドイツ軍から入ったのだ。私は決勝戦を放り出して愛機『暮桜』を纏い、ドイツ軍から送られてきたデータにあった誘拐場所に向かった。

 

 そこは使われなくなった倉庫で、私は一刻も早く一夏を助けなければ、と倉庫へ飛び込んだ。

 

 だが、倉庫内には誰もおらず、代わりに人間でもISでもないナニカがいた。

 

 そいつらは鎧を着こんだ緑のトカゲのような奴らで、私を姿を見るなりいきなり襲いかかってきた。

 

 私は自衛と、場所からしてそいつらが一夏を誘拐したのだと思い、最初は驚いたものの戦った。

 

 緑のトカゲ達は奴らは数では勝っていたがそこまで強くなく、倒す事が出来たが、直後に黒いコウモリのようなものが現れ、そいつは剣で斬りかかってきた。

 

 そのコウモリ人間の操る剣術に私は圧倒され、何とか追い払ったが暮桜は私を守る為に大破してしまい、コアにも深刻なダメージを負い、再起不能の凍結状態へとなってしまった。

 

 その後の捜索でも一夏は発見されず、トカゲ達については話したものの弟がいなくなったショックで錯乱していた、と理由づけられ、奴らの証拠等は一切残ってなかったそうだ。

 

 『あいつ』にも捜索を頼んだが、私が現役をドイツ軍の教官となり、IS学園の教師になった今でも手がかり一つ掴めていない……。

 

 世間では既に生存は絶望視されているが、私は一夏の生存を信じている。

 

 私の弟であり、たった一人の家族なのだから。

 

 そんな折、目の前に一夏に似た滝沢が現れ、思わず取り乱してしまったのだが、それに関しては言い訳が出来ないしするつもりもない。

 

 私が間違えただけだし、よく見れば一夏と違う部分も多々ある。だがそれでも、私は滝沢が決して他人には思えなかった。

 

 

〜千冬sideout〜

 

 

 

 

〜光牙side〜

 

 

「成程、そういう事情でしたか」

  

 

 織斑さんの説明が一通り終わると納得した。そうならば、一夏さんに似てる僕が現れて間違えてしまっても無理はない。

 

 

「本当に大事なんですね。その一夏さんの事が」

 

「あぁ……」

 

「その一夏さんを誘拐したと思われるトカゲですけど、心当たりがあります」

 

「なんだと?」

 

「ええ。奴らの名は『ハチュウ人類』、そいつらが作り上げた『恐竜帝国』です」

 

 

 かつて、太古に地球を支配していたが、降り注いできたゲッター線により地中に逃げこんだ恐竜帝国。奴らはゲッター線が弱点とし、僕がいた世界にも現して存在が確認されていた。

 

 でもおかしい。少なくとも僕の世界の恐竜帝国は百鬼帝国ともども、竜馬さん達のゲッターに倒され、早乙女博士がクローンとして生成したゴールとブライも倒された筈。

 

 ひょっとしてでも、何かでこの世界に次元転移したとかは考えられない。

 

 一番妥当なのは、この世界にもゲッター線があり、それによって“この世界”の恐竜帝国が地中に逃げ、今になり活動を再開した、といった所だろうか。

 

 一夏さんを誘拐したのも、奴らは優れた人間を連れ去り改造して兵士にしているから頷ける。織斑さんの弟である一夏を狙ったのだろう。

 

 

「では、一夏は」

 

「……もし、連れ去られていたとしたら、残念ながら人間ではなくなっているかもしれません。あるいは、という可能性も捨てきれませんが」

 

 

 一応最後にそう付け足して言ったが、織斑さんの表情は暗く「そうか……」と呟いて目を瞑る。

 

 ……無理もないか。僕が何を言っても可能性に過ぎないし、僕が一夏さんに似ているらしいなら余計に辛い。

 

 これ以上はあまり言わないようにと口を閉じる。

 

 医務室に重い空気が流れて……。

 

 

 

 

 ……ナデナデ。

 

 

「……すみません。何故に頭を撫でるんですか?」

 

「すまん。……滝沢を見ているとこうしたくなって」

 

「まあ良いですが」

 

「では堪能させて貰う」

 

 

 ナデナデナデナデナデナデ、ギュッ。

 

 

 撫ですぎな気が。というか抱きつかれたよまた。

 

 いやね、顔をへにゃ~ってしちゃってますけどシリアスはどこいった!?

 

 ピンク空間が再びだよ!

 

 

「……あ、あのすみません。ちょっといいですか?」

 

「なんだ山田君」

 

 

 ギロリ、と睨み付ける織斑さんだが僕を撫でながら言っても全くきまらねえよ。

 

 山田さんの表情微妙だよ、ひきつってますよー。

 

 

「ば、場違いなんですが、滝沢君のISについてなんです」

 

 IS? 確かこの学園で習っているパワードスーツだっけ。けどそんのなもの、僕は持って……。

 

 

「もしかして……」

 

 

 左手のイタイ三色ガントレット。もしやこれか?

 

 

「そうだろうな。今は待機状態なのだろう」

 

 

 織斑さんが手を取りながら言う。ISにはパワードスーツの展開状態と、アクセサリーや小物になった待機状態の二パターンがあるそうだ。

 

 じゃあこのガントレット、そのISだとしてなんなんだろう?

 

 

「…………あ」

 

 

 そういやこの三色。

 

 白、黒、紫。どれもベーオに使われていたカラーリングだ。

 

 てことは、これがベーオか? 

 

 信じがたいけど僕がこの世界に来たのもあるし、それが影響したのだとしたら。

 

 ……ベーオがISにチェインジゲッタァァァァ!! した可能性は……ある。あるな。大いにある。

 

 

「心当たりがあるのか?」

 

「ええ。まあ」

 

「ではそのISについて知りたいのだが」

 

「分かりました」

 

 

 とりあえず、多分愛機だったベーオがISになってしまった事を説明すると、織斑さんと山田さんから詳しく知りたいとの事になったので、機密には聞かない、触れない、喋らないを条件に応じる事にした。

 

 ISは基本、この学園では『アリーナ』という場所で展開するらしく、僕は身体的にも大丈夫になっていたのでそこへ案内してもらう事になった。

 

「でも織斑さん」

 

「なんだ?」

 

「案内とはいえ、手をとって行かなくても……」

 

「むっ……す、すまん」

 

「ブフッ……」

千冬と光牙の手を繋いだ図に思わず写メった真耶、ただし鼻血ブシャッた。

 

 

 こん時の山田先生のやつで後々騒ぎになるのはまあ置いとき……着替え云々でちょっとあったのは別の話だけど。

 

 

〜光牙sideout〜


 
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