No.695335

九番目の熾天使・外伝 ~短編その⑫~

竜神丸さん

幽霊騒動その17

2014-06-20 18:31:06 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2627   閲覧ユーザー数:1043

『ギシャアッ!?』

 

「…なるほど。だいぶ面倒な状況になってるようだね」

 

ショウ、エリカの2人と合流したディアーリーズ一行。近付いて来たアルビローチを蹴り倒しながら、ショウは上空に浮遊している“鍵”を見据える。

 

「取り敢えず、黒幕を潰すまでの間は民間人の避難と怪物達の討伐を優先すれば良いって事かな?」

 

「はい。ショウさんとエリカさんが来てくれて、とても心強いです!」

 

「ははは、そう言われると嬉しいね。それじゃあ…炎の剣(フレイム・ブレード)

 

『『『ギ…ガァァァァァッ!?』』』

 

ショウの右手に炎が纏われ、そこから一瞬で炎の魔剣が出現。そこから放たれた炎の一閃で、正面から迫って来ていたスコーピオンロード、ジラフオルフェノク、アルター・ゾディアーツの三体が纏めて爆散する。

 

「うっはぁ、相変わらず凄い威力…」

 

「こっちの方は、ショウさんにエリカさんがいれば問題なさそうですネ」

 

「はい、僕達は早く鍵を目指しましょう…!!」

 

「レッツゴーだぞー!!」

 

この場をショウとエリカに任せ、ディアーリーズ一行は“鍵”を目指して突き進んで行く。彼等が先に進んだのを確認したショウとエリカは、自分達に向かって来る怪人達を睨みつける。

 

「さて、これ以上君達に好き勝手させる訳にはいかないよ」

 

「あなた達はここで、足止めさせて貰うわ」

 

『『『『『グルァァァァァァァァァァッ!!!』』』』』

 

怪人達が一斉に駈け出して来た中、ショウの横に立ったエリカは両手をパンと合わせ、地面に手をつける。

 

「ショウ!!」

 

「あぁ!!」

 

『『『『『!? ギィィィィィィィッ!?』』』』』

 

直後、二人のいた地面が一気に盛り上がり、一瞬で高所に上がっていく。怪人達が驚いて立ち止まる中でショウは盛り上がった地面から飛び降り、炎の魔剣を構えたまま怪人達に向かって急降下し、その一撃で怪人達を次々と焼き斬っていく。

 

『シャアッ!!』

 

「あら、不意打ちなんて卑怯よ?」

 

『!? ガァァァァァッ!?』

 

ショウを無視し、真っ先にエリカを仕留めようと飛来するバットイマジン。しかしエリカが左腕の義手からアンカーワイヤーを放ち巻きつけた事でそれは叶わず、そのまま他の怪人を巻き込む形で地面に叩きつけられる。

 

「ほう? 人の妻に手を出そうとは、良い度胸だな…」

 

怪人達がエリカを狙った事に、ショウは眉がピクピク動いてから左手に冷気を纏い、そこから氷の魔剣を出現させる。右手には既に炎の魔剣を出現させている為、これで二刀流の構えになる。

 

「纏めて散れ…!!」

 

『『『『『ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?』』』』』

 

ショウの振るった二本の魔剣が怪人達を焼き斬り、そして一瞬で凍結させる。凍った怪人達はそのままバラバラに粉砕され、怪人達の全滅を確認したショウの横にエリカがゆっくりと降り立つ。

 

「ふむ、奴等もそれほど強くはないようだね」

 

「これなら問題なく殲滅出来そうね。ショウ、他のメンバー達とも合流しましょう」

 

「そうだな、行くとしよう」

 

この程度なら何も問題ない、一気に退治してしまおう。そう思った二人は他のメンバー達と合流すべく、その場から移動する―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ビガラサ、リントボゲンギザ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――事は出来なかった。

 

「「―――ッ!!!??」」

 

黒軍服を纏った、寡黙な雰囲気を持った高身長の男。その姿が目の前に現れた途端、二人は思わず戦慄してしまったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『ギシャァァァァァァァァァァァッ!!!』』』

 

「通行の邪魔だテメェ等ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

一方、刀奈を背負った状態で街中を駆け抜けていたロキは、迫り来る怪人達の妨害をものともせずに突破し続けていた。行く手を阻もうとするたびにロキのデュランダルで吹き飛ばされ続けているのだから、並の怪人では彼を止める事は不可能だろう。

 

「一哉、周囲に反応は!?」

 

『まだ反応は掴めない、今も探してはいるんだが……ッ!! いたぞキリヤ、お前が向かおうとしてる先の海鳴公園だ!!』

 

「!! 見つかったの!?」

 

「あぁ、そのようだ!! しっかり捕まってろよ!!」

 

たった今、探している人物の生体反応を掴めたようだ。居場所もハッキリ特定された為、ロキは今まで以上にスピードを上げて突き進み、刀奈も振り落とされないようにロキの背中にしがみ付く。そして二人はあっという間に海鳴公園の前まで到着し、反応の確認された方向を見据える。

 

「!? いた、あそこだ!!」

 

「隼ッ!!」

 

『『『『『グガガガガガガガ…!!』』』』』

 

「あ、あぁ…!!」

 

二人が見据える先では、一人の少年がグールの大群によって取り囲まれている状況が出来上がっていた。茶髪で右目に眼帯を付けている事から、湯島隼本人で間違い無いだろう。

 

「隼を助けて!!」

 

「任せろ…スピリットボルトォッ!!!」

 

『『『『『グガァァァァァァァァァァァ…!?』』』』』

 

「…!?」

 

ロキの投げつけたデュランダルが電撃を纏い、少年に槍を突き立てようとしていたグール達を粉砕。自分を襲おうとしていたグールが一瞬で全滅した事に唖然とする少年の前にロキと刀奈が辿り着き、刀奈が少年の下まで駆け寄る。

 

「隼!!」

 

「お姉ちゃん!!」

 

二人は互いに抱き合い、再会の喜びを分かち合う。そんな二人を見たロキは笑みを浮かべ、二百式に通信を入れる。

 

「無事に目標を保護した。俺はこれから二人を避難させに向かう」

 

『了解した。なるべく早めに戻って来い、こっちも人手が足りないんでな』

 

「はいはい、分かってるよ」

 

ロキは通信を切り、湯島姉弟に声をかける。

 

「そこの二人。感動の再会のところ悪いが、ちゃっちゃと安全な場所まで避難して貰うぜ。状況が状況だからな」

 

「わ、分かってるわよ……さ、行こう隼」

 

「うん……お姉ちゃん、見つけてくれてありがとう」

 

「礼ならそこの人に言いなさい。彼がいなかったら、私もあなたも助からなかったんだから」

 

「うん! お兄ちゃん、ありがとう!」

 

「…礼なんていらねぇよ。ほら、とっとと行くぜ」

 

隼から満面の笑顔で礼を言われ、ロキも若干恥ずかしく感じたのかそっぽを向く。

 

「ほら、隼」

 

「うん! あ、そうだお姉ちゃん」

 

「ん、何?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いけど、ここでさようならだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ドシュッ!!-

 

 

 

 

 

 

 

「―――え」

 

その瞬間、刀奈は硬直した。

 

何故なら自身の右肩が、気付けば隼の人差し指によって貫かれていたのだから(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「!? 刀奈ッ!!」

 

隼が人差し指を抜いた瞬間、異常を察知したロキが刀奈を引き離すべく隼を蹴り飛ばし、隼の小さい身体はそのまま砂場まで吹っ飛ばされる。

 

「痛ぅ……し、隼…?」

 

「違う、そいつ(・・・)は隼じゃない!!」

 

刀奈の傷付いた右肩に治癒魔法をかけてから、ロキは長刀を構え砂場の方を睨み付ける。砂煙の上がっている砂場からは隼がゆっくりと姿を現し、笑顔のまま服の砂を手で払う。

 

「ちぇ、仕留め損なっちゃったや……遊んでないで、本気で殺しにかかれば良かったかな」

 

「!?」

 

隼はニヤリと醜悪な笑みを浮かべてから、本来の姿を露わにする。金色の殻に纏われた身体、両腕の巨大な鋏と頑丈な盾、そして長い触角を持った怪物―――サブストワームはシュルルルと唸り声を上げながら、あちこちから出現したサナギ体を率いてロキ達と対峙する。

 

「ひっ……し、隼が…隼がぁ…!?」

 

「偽物が化けてやがったんだ……面倒なマネしてくれるじゃねぇか」

 

『アハハ……さぁ、ぶっ殺しちゃって』

 

『『『『『ギュルルルルル…!!』』』』』

 

「ッ…させる訳にはいかねぇな…!!」

 

サブストワームの指示で、複数のサナギ体が一斉に二人に迫る。ロキは恐怖に震える刀奈を庇うように長刀を構えて立つ。

 

-ズドォンッ!!-

 

『ギュルゥッ!?』

 

『『『『『!?』』』』』

 

「「!?」」

 

その時、一体のサナギ体が銃弾に貫かれ爆発。その後も何発もの銃弾がサナギ体達を次々と撃ち抜いていく。

 

『キリヤ、後ろに下がれ!!』

 

「一哉!?」

 

『奴等、最初からお前等を誘い込むつもりで弟に化けてやがったんだ!! 理由は分からんが、とにかくお前等は後方まで下がれ!! 奴等は俺が全て倒す!!』

 

「ッ…刀奈、立て!!」

 

ロキは尻餅をついていた刀奈を強引に引っ張り立たせ、その間にも二百式の遠方からの狙撃はサナギ体達を一体ずつ確実に撃ち抜いていく。それを見たサブストワームは面倒そうに首を捻る。

 

『面倒臭いなぁ……さっさと殺させて貰うよ』

 

『『ギュルルル…ギシャァァァァァァァァァァァァァッ!!』』

 

「!? な、何…!?」

 

「くそ、二体ほど脱皮しやがった…!!」

 

二体のサナギ体は一気に脱皮し、それぞれジオフィリドワーム、レプトーフィスワームに変化。それにより、ワームの成虫体がサブストワームを含め三体に増えてしまった。

 

『くそ、脱皮なんて面倒な事を…!!』

 

二百式の狙撃は今だ続くも、成虫体であるサブストワーム達は全くダメージを受けていない。サブストワームは楽しそうに唸り声を上げながら、右腕の鋏にエネルギーを集中させる。

 

『じゃあ、死んでよお姉ちゃん…!!』

 

「刀奈!!」

 

「きゃあっ!?」

 

ロキが刀奈を伏せさせると同時に、二人の頭上をサブストワームの放ったエネルギー弾が通過。エネルギー弾はそのまま滑り台に命中し、跡形も無く粉砕してしまう。

 

『避けないでよ、時間かかっちゃうでしょ…?』

 

「し、隼……もうやめて!! 私が分からないの…!?」

 

「アイツは隼じゃない!! 割り切れ、アイツは化け物だ!!!」

 

『アハハ、アハハハハハハハハハハハハハ…!!!』

 

『『ギシャァァァァァァァァァッ!!』』

 

未だ目の前で起こっている現象を信じられない刀奈。そんな彼女をロキが力ずくでも引っ張って行こうとするが、そんな二人にジオフィリドワームとレプトーフィスワームが襲い掛かる。

 

「くそ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

≪RIDER PUNCH≫

 

「ライダーパンチ…!!」

 

「断裂せよ、切り裂くモノ(フラガラッハ)!!」

 

『『ギシャァァァァァァァァッ!!?』』

 

『!?』

 

飛び掛かって来たパンチホッパーの拳がジオフィリドワームの身体を粉砕し、みゆきの振るった両刃剣がレプトーフィスワームを真っ二つに両断。突然の助っ人参戦に、サブストワームの余裕だった表情が焦りに一変する。

 

『く、僕の邪魔をしないでよ…!!』

 

「すまないが、それは出来ない相談だな」

 

「家族に化けて襲うだなんて、最低です…!!」

 

『ぐぅっ!?』

 

みゆきの両刃剣がサブストワームの頑丈な鎧を斬り裂き、パンチホッパーの拳がサブストワームの顔面を思いきり殴りつける。その衝撃で吹っ飛ばされたサブストワームはクロックアップを繰り出そうとしたが、その直後に彼(?)の両足が無数の鎖に巻かれ拘束される。

 

『!? しま―――』

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」

 

目の前まで接近したロキが長刀に雷撃を纏わせ、そのままサブストワームの胴体を切断。不意を突いた一撃にサブストワームは断末魔を上げる事も無く、その場で爆散し消滅してしまった。

 

「…消えたか」

 

サブストワームの消滅を確認し、ロキは刀奈を立ち上がらせる。

 

「刀奈、大丈夫か?」

 

「…隼は、何処」

 

「!」

 

「…隼は何処よ!! 一体何処にいるっていうのよ!!」

 

「ッ…落ち着け!! 叫んでも何も変わらない!!」

 

「落ち着いてられる訳ないでしょ!? 隼の身に何かあったら、私は…!!」

 

「頼むから落ち着け、大丈夫だから…」

 

「キリヤ!」

 

若干ヒステリックになりかけている刀奈をロキが落ち着かせていたところに、二百式が合流する。

 

「偽物は無事、始末したようだな」

 

「あぁ……だが、肝心の湯島隼はまだ行方不明のままだ。何とかして見つけ出さないと―――」

 

「その湯島隼という人物ですが」

 

直後、ロキ達の目の前に竜神丸とガルムが転移してきた。

 

「竜神丸、それにガルム?」

 

「付いて来て下さい。あなた方が探していた人物、取り敢えずは見つけましたので」

 

「!? 本当!?」

 

「こんな時にまで嘘をついてどうするんです。確認したければ、私が会わせてあげましょう……ただし」

 

「ただし……何だ?」

 

「…これから目撃する現実を、しっかり受け止められるならの話ですけどね」

 

「……」

 

竜神丸の告げる言葉に、ガルムの表情が少しだけ曇る。それを見た二百式は、嫌な予感を感じ取った。

 

(まさか…?)

 

「何処にいるの!? お願い、隼に会わせて!!」

 

「はいはい、分かりましたよ。では案内しましょう」

 

竜神丸が指を鳴らすと共に、その場にいた全員が一斉に転移する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――はい、到着です」

 

「ッ…酷い状況だな」

 

横一列に並ぶ倉庫が存在する広場。そこには怪人や亡霊達によって殺されたと思われる、民間人の死体が複数転がっていた。転移して来た竜神丸は一同を連れて、とある倉庫の目の前まで導く。

 

「私が見たのは、この倉庫の内部です」

 

「隼ッ!!」

 

竜神丸が言い切るよりも先に、刀奈が彼を押し退ける形で倉庫内部へと入り……そして言葉を失った。

 

「…しゅ、ん?」

 

「分かりましたか? これが、その現実って奴ですよ」

 

刀奈達の目の前に映る光景…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには、壁に寄り掛かったまま息を引き取っている湯島隼の姿が存在していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…隼?」

 

目の前の光景を見た刀奈は言葉が震えるも、ハッと我に返り隼に駆け寄る。

 

「隼ッ!!!」

 

-サァァァァァァァァァ…-

 

「あ…」

 

刀奈の手が触れた瞬間、動かない隼の身体が一瞬で灰化。跡形も無く崩れ落ち消滅する。

 

「言ったでしょう? これが現実だと」

 

竜神丸が説明する。

 

「…私とガルムさんが見つけた頃には、既にオルフェノクの使徒再生を受けて死亡していました。そのままオルフェノクに覚醒しなかった事は、彼にとって幸いなのか、不幸なのか……まぁ、その辺は私にも分かりませんけども」

 

「…手遅れだったという訳か」

 

「そ、そんな……こんなの、酷過ぎます…!」

 

「ッ……畜生!!!」

 

あまりに無情過ぎる光景に二百式は目を逸らし、みゆきは口元を手で覆う。特にこの光景はロキにとっても非常に苦痛とも言える物で、彼は思わず壁を殴りつける。あれだけ刀奈に「助けてやる」と言っておいて、結局救えないまま全てが終わってしまっていたのだ、その悔しさは尋常ではないだろう。そして今、この場で一番精神的なショックを受けているのは他でもない刀奈自身だった。

 

「う、嘘……嘘よ…」

 

刀奈の掌から、かつては隼だった灰(・・・・・・・・・)が零れ落ちる。今の刀奈には、その灰が隼自身の血のように見えてしまっていた。

 

「い、嫌……嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!???」

 

あまりに悲し過ぎる慟哭。

 

刀奈の泣き叫ぶ声に、ロキ達は何も声をかける事は出来ないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――せ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――わせ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――壊せ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぅ、ぐ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――壊してしまえ、何もかも!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――はっ!?」

 

とある部屋にて、げんぶは目覚めた。包帯を巻かれたままの状態でベッドに寝かされていた彼は、そのまま起き上がろうとするも全身の傷が痛む為に叶わず、仕方なく上半身だけを起こした状態になる。

 

「痛ッ……くそ…」

 

「耕也、起きたんだな!!」

 

「パパー!」

 

「うわぷっ!?」

 

そんな彼に、白蓮と蓮が同時に飛びついた。げんぶは思わず倒れそうになるも何とか耐え、二人が妻と娘だと気付き優しく抱き締める。

 

「すまない、心配させてしまったな…」

 

「全くだ。お前が重傷を負った状態で運ばれて来たと聞いて、こっちはいても立ってもいられなかったぞ」

 

「あぁ、本当にすまない……白蓮、ここは何処だ?」

 

「海鳴図書館だ。人が誰もいなかったから、無断で借りさせて貰っている。お前の仲間達も一緒にいる」

 

「!! awsとFalSigは…」

 

「二人共、命に別状は無い。今は別の部屋で、アザミが治療中だ」

 

「そうか、それなら良か……ッ…!!」

 

「ま、待て!? 無理に動こうとするな!!」

 

立ち上がろうとしたげんぶは再び傷が痛み、そんな彼を白蓮が無理やりベッドに寝かせる。

 

「今はまだ動くな。傷はお前が思ってる以上に深いんだ、治るにはかなりの時間が必要だ」

 

「だが、何時までもこうしてはいられん……奴だけは、絶対に倒さなきゃならん…!!」

 

「だからってお前が無茶をしてどうする!? これ以上、私達に心配させないでくれ!!」

 

「ッ!! …あぁ、すまなかった」

 

今にも泣きそうな白蓮の表情を見て、げんぶは頭を冷やし再びベッドに倒れ込む。

 

「白蓮、外の状況は今どうなってる…?」

 

「…民間人は皆、旅団の部隊によって海鳴市の外に避難している。残ってるのは逃げ遅れた民間人と、私達のような旅団の関係者だけだ」

 

「そうか……白蓮、通信機を貸してくれ。俺の服の中にある筈だ」

 

「あ、あぁ。だがどうしたのだ?」

 

「伝えなきゃならない……奴の危険性を、早く他の皆にも伝えなければ……ぐ、ぅ…!!」

 

「!? 耕也、どうした!?」

 

「パパ!!」

 

げんぶは白蓮から通信機を受け取ろうとした途端、突然の頭痛で再び苦しみ出した。白蓮や蓮が彼の名を呼んでいる中、げんぶの意識は少しずつ薄れていく。

 

(何、なん……だ…これ、は…!!)

 

そのまま、彼の意識は再び闇に落ちていく。その時、彼の視界には…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…クウ、ガ…?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬だけ、全身黒ずくめの禍々しい姿をした戦士が映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、海鳴市商店街…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギャァァァァァァァァァァァ来んじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!??」

 

『『『オォォォォォォォォォォォ…』』』

 

「コラーBlazを苛めるなー!」

 

「…まだやってたのかよアイツ等」

 

亡霊に追いかけられているBlazと、そんな彼を助けようと追いかけているニューの姿があった。そんな二人から少し離れた位置ではmiriがショッカー戦闘員にアイアンクローをかましている。

 

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ何コイツ気持ち悪い全然離れてくんないアン娘ちゃんお願いマジでこのしつこい幽霊どうにかしてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」

 

「ちょ、姉貴、そんな気持ち悪いのをこっちに近付けるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!??」

 

「…あっちもかよ」

 

別方向を見てみれば、全身真っ青で顔の無い亡霊に纏わりつかれた朱音が泣き叫び、Unknownはそんな彼女から幽霊を擦り付けられまいと逃げ回っていた。流石のmiriもこれには溜め息をつかざるを得ない。

 

「デルタさんは勝手にどっか行っちまうし、団長には全く連絡つかないし……さぁて、マジでどうしてくれようかこの状況…」

 

「だ、大丈夫ですかmiriさん…?」

 

「あぁ、大丈夫だ……早いところ、アンタもガルムの奴を見つけ出したいんだろ?」

 

「当然です!! 私は早く裕也さんと合流して、久しぶりにキャッキャウフフしたいんです!!」

 

「うん、それはここで言わなくても良い事だからな?」

 

その時…

 

「いぃぃぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

『『『オォォォォォォォ…』』』

 

「「!」」

 

金髪の女性が悲鳴を上げながら、複数の亡霊に追いかけ回されていた。

 

「逃げ遅れた民間人か」

 

「早く助けなくてはですね!」

 

「僕が行きます!」

 

「! ルカ…?」

 

「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

『『『ウォォォォォォォ…!?』』』

 

miriと早苗の間をルカが素早く通過し、そして金髪の女性を襲おうとしていた亡霊を瞬殺。すぐに金髪の女性の下に駆け寄る。

 

「もう大丈夫です!! 怪我はありませ、ん…か…」

 

「…アキヤ?」

 

「ア、アリサッ!!?」

 

金髪の女性、その正体はアリサだった。助けた人物がまさかの知り合いだった事に驚くルカだったが、そんな彼の気持ちも知らないままアリサが胸倉を掴む。

 

「ちょっとアンタ、今まで何処で何をしてたのよ!! こっちはマジで呪い殺されそうだったのよ!? もうちょっと早く助けに来なさいよ!!!」

 

「ちょ、苦じいっでアリザ…!?」

 

「…青春ってところか?」

 

アリサに胸倉を掴まれたまま揺さぶられているルカを、miriは敢えて放置する事に決定。ひとまず他人のフリをしてから、亡霊達の退治に集中するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、テニスコート場では…

 

 

 

 

 

 

『アハハハ…アハハハハハハハハハハハハハハハ!!!』

 

「ぐ、この…!!」

 

「ちょ、ぬぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 

クレアが出現させた大蛇の幻影に、ブレイドと龍騎は苦戦させられていた。先程から何度攻撃しても、あっという間に再生されてしまうからだ。

 

「お、おい、どうするんだ!? これじゃ埒が明かないぞ!!」

 

「俺も何とかしたいと思ってはいるんだが……残念ながら、まだ策が思いつかん。すまん真司、しばらく引き付けといてくれ」

 

「ちょお!? おま、どんだけ鬼畜な……だぁー!? ギャー!? おわー!?」

 

龍騎が必死に叫びながら大蛇の幻影が繰り出す攻撃を回避し続けている中、ブレイドはブレイラウザーから手札のカードを展開する。

 

(今のところAPはそこまで消費しちゃいないが……これだ、と言い切れる程のカードが無いな。せめて他のスートのラウズカードがあれば良いんだが…)

 

その時…

 

≪Birst Mode≫

 

『シャァァァァァァ…!?』

 

「!? ユイか…!!」

 

「兄さん、やっと見つけた…!!」

 

上空から飛来してきたサイガはブレイドの横に降り立ち、サイガフォンをフォンブラスターに変形させて大蛇の幻影を狙い撃つ。

 

『チィィィィ…小癪ナァッ!!!』

 

「!? く…うぁっ!?」

 

「ユイ!!」

 

しかし大蛇の幻影は長い尻尾を伸ばし、サイガを思いきり薙ぎ払った。サイガはフェンスに叩きつけられた衝撃でベルトが外れ、ユイの姿に戻ってしまった。

 

『死ネ、死ネ、死ネ、死ネ、死ネェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!!!!!』

 

「な、ちょ…おわぁっ!?」

 

「真司!!」

 

大蛇の幻影は龍騎を尻尾で吹っ飛ばしてから、今度はブレイドに狙いを定める。

 

『ネェレイ、モット私ヲ楽シマセテヨォッ!!!』

 

「クレア…!!」

 

その時…

 

 

 

 

 

 

-ポォォォォォォォォォォォォッ!!-

 

 

 

 

 

 

『!? ガァァァァッ!!』

 

「!」

 

突如出現した時空の穴から、SLのような形状をした列車が突撃して来た。列車はそのまま大蛇の幻影を弾き飛ばしてから、ブレイドの目の前で停車する。

 

「レイ、お待たせ!」

 

『遅れてすまなかった』

 

「その声はフィア……それにジンバも…!」

 

駆け付けたのはフィアレスが変身したカリスと、何かを脇の下に抱えたジンバだった。しかしブレイドは仮面の下で、思わず困惑の表情になる。

 

「…ジンバ、その抱えてるのは?」

 

『彼か。こんな状況にも関わらずサボろうとしていたので、ひとまず捕縛して来た』

 

「畜生~見つからないと思ったのになぁ~…」

 

「ってkaitoかよ!!」

 

どうやらサボろうとしていたkaitoを、ジンバが見つけて無理やり連れて来たようだ。ブレイドは呆れた様子を見せるも、ここである事を思いつく。

 

「いや、ちょうど良いかも知れんな。ジンバ」

 

『む?』

 

「俺が許す。kaitoの身体、お前が使って良いぞ」

 

「ファッ!?」

 

『…ほう?』

 

ブレイドのとんでも発言にkaitoは顔を上げ、ジンバは面白そうに相槌を打つ。

 

『そうか。レイの許可が出たならば、仕方あるまい』

 

「ちょ、ちょい待って!? 何で俺が憑依されなきゃあかんの!? ていうかジンバって支配人にしか憑依出来ない筈じゃないの!?」

 

『言い忘れていたが、私は既に一度だけ契約を完了している。それ故、今の私は制限がなくなり誰にでも憑依する事が可能なのだ』

 

「初耳なんですけどそれぇ!? と、とにかく待って!! 一回考え直し…」

 

『悪いが待たんぞ』

 

「あばちゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

逃げようとしたkaitoに、ジンバが容赦なく憑依。一瞬でkaitoはふざけた雰囲気からジンバのような真面目そうな雰囲気へと変わってみせる。

 

「…さて、これで良いのだな?」

 

「問題ないぜ。kaitoの奴、ほっとくとまたサボるだろうしな」

 

「にゃははは……あ、そうだ! ユイ、ジンバ、これ使って!」

 

「「!」」

 

カリスは持っていた二つのバックルをそれぞれユイ、kaito(ジンバ憑依)に投げ渡す。

 

「ギャレンバックル…!」

 

「ふむ、王騎以外でライダーに変身する事になるとはな」

 

ユイはクワガタムシが描かれたスペードのカードをバックルに通し、kaito(ジンバ憑依)は蜘蛛の描かれたクラブのカードをバックルに通して腹部に装着。そのまま二人は変身ポーズを取る。

 

「「変身!!」」

 

≪TURM UP≫

 

≪OPEN UP≫

 

ユイは青いオリハルコンエレメントを通過してクワガタムシを模した赤いダイヤの戦士―――仮面ライダーギャレンに変身し、kaito(ジンバ憑依)は紫色のオリハルコンエレメントを通過して蜘蛛を模した緑色のクラブの戦士―――仮面ライダーレンゲルに変身してみせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『シャアッ!!』

 

「どわたたたたっ!?」

 

『オノレ、マダ逃ゲル気カ……ッ!?』

 

逃げ惑う龍騎を攻撃し続けていた大蛇の幻影は気配を感じ取り、龍騎がいる方向とは別の方向を振り向き、その先に並び立っている者達を見て驚愕する。

 

「さぁ、仕切り直しだ!!」

 

「あぁ!!」

 

「応!!」

 

「…!!」

 

 

 

 

 

 

ブレイド、カリス、ギャレン、レンゲル。

 

 

 

 

 

 

全てのスートのライダーが、大蛇の幻影と対峙した。

 


 
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