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九番目の熾天使・外伝 ~短編その⑫~

竜神丸さん

幽霊騒動その16

2014-06-17 18:09:06 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2408   閲覧ユーザー数:920

「おらよ!!」

 

≪カメンライド・ダブル!≫

 

『グヌゥッ!?』

 

マンティスオルフェノク達と戦闘中だったPDファイズ。しかしファイズの姿になったのはあくまでマンティスオルフェノクへの挑発が目的だったからか、彼はすぐに姿をPDダブルへと戻し、マンティスオルフェノクを殴り飛ばす。

 

≪ルナ!≫

 

≪メタル!≫

 

「悪いな、お前はまた後で相手してやるよ……さて」

 

≪ルナ・メタル!≫

 

「そらよっと!」

 

『ズゥカッ!?』

 

『『『ブブブッ!?』』』

 

『ヌォ!? オノレ、小癪ナ…!!』

 

PDダブルはサイクロンメモリとジョーカーメモリを取り換え、代わりに黄色のルナメモリと銀色のメタルメモリをドライバーに装填。サイクロンジョーカーからルナメタルにチェンジしたPDダブルは手にした銀色の棍棒―――メタルシャフトを伸縮自在な鞭のように振るい、カメバズーカに何度も命中させてからその身体に巻き付かせ拘束。しかしかつての恨みを晴らしたいのか、マンティスオルフェノクが再びPDダブルに襲い掛かり両腕の鎌を振り下ろそうとする。

 

『喰ラエッ!!』

 

「はい残念、バレバレだぜ」

 

≪STAG!≫

 

『ナ…グワァッ!?』

 

「そしてお前等も……あらよいしょおっ!!」

 

『ズカァッ!?』

 

『『『ブブブ…!?』』』

 

が、当然PDダブルはマンティスオルフェノクの行動も予測済み。ギジメモリを差し込まれたスタッグフォンがクワガタムシの姿に変形し、マンティスオルフェノクの顔面を攻撃。その隙にPDダブルはメタルシャフトで巻き付けたカメバズーカを豪快に振り回し、迫って来たバズスティンガー達に命中させ転倒させる。

 

「ほら、返すぜ」

 

『ンナ、ゴブゥッ!?』

 

≪サイクロン!≫

 

≪サイクロン・メタル!≫

 

そのままPDダブルがメタルシャフトを振り下ろし、カメバズーカがマンティスオルフェノクの真上に叩き落とされる。カメバズーカが邪魔で身動きが取れないマンティスオルフェノクを他所に、PDダブルはルナメモリをサイクロンメモリに取り換え、サイクロンメタルへと変化。すると空中を飛び回っていたスタッグフォンがメタルシャフトに飛来しセットされる。

 

「さてと」

 

≪メタル・マキシマムドライブ!≫

 

「おっと、回転防御はさせねぇ…よっ!!」

 

『『『ブブッ!?』』』

 

メタルメモリがメタルシャフトに差し込まれた瞬間、メタルシャフトの棒先からクワガタムシの鋏らしい形状をしたエネルギーが出現し、三体一緒になって回転しようとしたバズスティンガー達を拘束する。

 

「メタル、スタッグブレイカーッ!!」

 

『『『ブブブブブブブ…!?』』』

 

鋏状のエネルギーに挟み潰され、バズスティンガー達が爆散。バズスティンガー達の消滅を確認したPDダブルはすぐさまメタルシャフトを振るい、マンティスオルフェノクの攻撃を防御する。

 

『殺ス、殺ス、殺ス、殺ス、殺スッ!! 貴様ダケハ絶対ニ殺スゥッ!!!』

 

「カルシウム足りてねぇなぁ……もっと気楽に行こうぜっと!」

 

『オグッ!?』

 

マンティスオルフェノクを蹴り飛ばしたPDダブルはすかさず、離れた位置から砲撃を放とうとしたカメバズーカに向かってメタルシャフトを投げつける。

 

「させっかよ!!」

 

『ズカッ!?』

 

なんと、投げられたメタルシャフトがそのままカメバズーカの背中の砲身に差し込まれてしまった。想定外の事態にカメバズーカが驚くも、放とうとした砲撃は止められず…

 

-ボゴォォォォォォォンッ!!-

 

『ズカァァァァァァァァァァッ!!?』

 

砲弾が放たれないまま、砲身が爆発を引き起こしてしまった。それが原因でカメバズーカ自身が大ダメージを負い、全身が炎に包まれた状態でのた打ち回る。

 

「あちゃあ、ドンマイとしか言い様が無いな…」

 

『デリャアッ!!』

 

「そしてお前、いい加減しつこいわ!!」」

 

≪カメンライド・ファイズ!≫

 

『グハァ!?』

 

「そこまでリベンジしたいなら良いぜ……テメェ等二人、一気に潰してやる!!」

 

≪Complete≫

 

マンティスオルフェノクのしつこさに頭が来た為、PDダブルは再びPDファイズにチェンジ。マンティスオルフェノクをファイズエッジで斬りつけてからアクセルメモリーをファイズフォンに装填、ファイズ・アクセルフォームとなる。

 

≪Start Up≫

 

「ぜりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

『『ッ!? ガァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?』』

 

≪Time Out≫

 

そこからは一瞬だった。ファイズがその場から姿を消すと同時に、マンティスオルフェノクとカメバズーカの全身をファイズエッジが連続で斬り裂き、ファイズが再び姿を現すと同時に『Φ』の紋章が浮かび上がり、二体はそのまま灰化し消滅してしまった。

 

≪Reformation≫

 

「…うし」

 

その音声と共にPDファイズはプロトディケイドの姿に戻り、両手を払ってから上空を見上げる。上空には未だ“鍵”が浮遊しており、その周囲をウブメやギガンデスヘブンなどが飛び回っている。

 

「急いだ方が良いっぽいかな? 空路だとまた危ないだろうし……仕方ない、バイクで駆け抜けるか」

 

その時…

 

「ぷはぁ、死ぬかと思った!」

 

「!?」

 

直後、近くの床に開いていた大きな穴からクリムゾンが顔を出して来た。その為…

 

「「…え?」」

 

二人が互いの存在を知るのも、そう時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、テニスコート場では…

 

 

 

 

 

「城戸、真司か…!」

 

「え、お前も俺の名前を知って…?」

 

クレアと戦闘中だった支配人は、真司の介入もあって何とか窮地から逃れていた。その介入して来た人物が真司だと知った支配人はその存在に驚き、真司も自分の名前を呟いた支配人に驚きを隠せない。

 

「城戸真司……何でお前がここにいるのかは知らんが、ちょうど良い。この状況を切り抜ける為に、力を貸して欲しい」

 

「え、あ、いや、どうなってんだ…!? 一城も何でか俺を知ってるみたいだし、てか早くしないとウル達がピンチじゃねぇか…あぁー!? 変身が解けちゃったから、龍騎になれねぇじゃん俺ー!?」

 

「落ち着け城戸真司(バカ)!!」

 

「あだっ!?」

 

何故か自分の名前が知られていたり龍騎の変身が解除されていたりと真司は思わず思考が混乱し、そんな彼を支配人が落ち着かせる。その落ち着かせ方は少々…というか結構乱暴ではあるが。

 

「たく、やっと落ち着きやがったか……良いか、よく聞け。お前の言う一城やウルと、俺は仲間同士だ。警戒はしなくて良い」

 

「え? あ、やっぱそうなのか? いや、でもライダーに変身しないで戦ってたのは…」

 

「別にならなくても戦えるんだよ俺は……それはともかく、変身出来ないならこれを使え」

 

「へ?」

 

支配人が生身で戦っていたという事実に疑問が尽きない真司だったが、支配人が懐から取り出した物を見て表情が一変する。

 

「カードデッキ…!?」

 

そう、龍騎のカードデッキだった。あまりに見覚えのあり過ぎる物に、真司は脳内にライダー同士が戦っている光景が映る。

 

「な、何でこれをお前が…」

 

「諸事情で、俺がカードデッキを一通り管理してんのさ。安心しろ、お前が想像してるようなライダーバトルは行われちゃいない。それにコイツは、ちょっぴり特殊でな」

 

「特殊…?」

 

「そう。契約したモンスターには生命エネルギーの代わりに、魔力などのエネルギーでも餌として与える事が出来るようになってる……要するに、人の命を与える必要は無いって訳だ」

 

「!」

 

「つい最近、ドラグレッダーには魔力を与えたばっかりでな。他のモンスターの世話も大変だぜ? 特に蟹や蛇なんて食欲旺盛で、俺の魔力が底を尽いちまいそうな時もあったんだからな」

 

「た、大変なんだな…」

 

支配人の言葉に苦笑する真司だったが、その表情には何処か安心したような感情も醸し出していた。そして真司は何かを決意した表情になる。

 

「なぁ…アンタ、名前は?」

 

「俺か? まぁ普段はコードネームで名乗るところなんだが……良いぜ。俺は暁零だ、レイって呼んでくれ」

 

「分かった。なぁレイ…」

 

「あぁ皆まで言うな。分かってるぜ、お前が何を言いたいのかは」

 

支配人は手で制してから、真司の右手にカードデッキを握らせる。

 

「! レイ…」

 

「関係の無い人達まで巻き込まれてる状況だ。お前の事だ、どうせ見過ごせないんだろう?」

 

「…あぁ。俺は皆を助けたい……だからウルや一城達に付いて来たんだ」

 

「お前がアイツ等とどういう形で関わるようになったのかは知らんが……そういう事なら、俺とも一緒に戦って欲しいところだな」

 

『キシャァァァァァァァァ…!!』

 

「「!」」

 

そんな二人の前に、復活した大蛇の幻影が立ち塞がる。

 

『レイィ~……今度コソ、一緒ニナロウヨ…!!』

 

「…まずは、アイツを解放してやらなきゃな」

 

支配人は再びブレイバックルを取り出し、それにカードを差し込む。

 

「行くぞ真司!!」

 

「あぁ!!」

 

支配人はブレイバックルを腹部に装着。真司はカードデッキを正面に突き出し、銀色のベルト―――Vバックルが出現すると同時に右腕を左斜め上へと突き出す。

 

「「変身ッ!!!」」

 

≪TURN UP≫

 

『ッ…!?』

 

ブレイバックルのレバーが引かれ、カードデッキはVバックルに装填。ブレイバックルから放出されたオリハルコンエレメントが大蛇の幻影を押し返し、支配人は返って来たオリハルコンエレメントを通過してブレイドに変身し、真司は三つの鏡像が重なり龍騎への変身を完了する。

 

≪SWORD VENT≫

 

「しゃあっ!!」

 

「ウェイ!!」

 

『シャァァァァァァァァァァァァッ!!!』

 

龍騎はドラグセイバーを、ブレイドはブレイラウザーを構え、赤い目を光らせる大蛇の幻影に向かって突撃するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、ロキと二百式は…

 

 

 

 

 

『いたぞキリヤ!! 西の方角、古本屋前だ!!』

 

「! あぁ、やっと見つけたぜお姫様…!!」

 

二百式の連絡によって、刀奈の居場所がようやく把握出来たロキ。すぐさま二百式の指示通り街中を突き進んで行き、刀奈がいるであろう古本屋前まで辿り着く。

 

「ショートボルト!!」

 

『『ギギャァァァァァァァッ!?』』

 

「な…!?」

 

刀奈に襲い掛かろうとしていたソロスパイダーやカマキリヤミーをロキが雷撃の爪で一閃し、あっという間に刀奈の下まで駆けつける。駆けつけて来たロキに驚く刀奈だったが、すぐに何処かに走り去ろうとしてロキに右手を掴まれる。

 

「待て、何処に行く気だ」

 

「離して!! アンタなんかに構ってる暇は無いわよ…ッ!?」

 

ロキの手を無理やり振り払おうとする刀奈だったが、そんな彼女の頬にロキの平手打ちが炸裂する。

 

「ふざけるな、そこまでして死にたいのか!! お前が何をしたいのかは知らんが、お前一人じゃ奴等に殺されて終わりだ!! そんな事も自分で理解出来ない馬鹿なのかお前は!!!」

 

「あ、ぅ…!?」

 

ロキが見せる鬼のような形相に、彼が本気で怒っている事は刀奈でも理解は出来た。しかし彼女には、それでも引き下がれない理由があった。

 

「だ、だって……だって、このままじゃ…隼が、隼がぁ…!!」

 

「何でも自分一人で解決しようとするな!! 誰かを助けたいのなら俺を頼れ!! 皆を頼れ!! お前もその隼って子も、俺達が助けてやる!!!」

 

ロキの必死な説得に、刀奈は涙目ながらも彼の服の袖を掴みながら訴える。

 

「お願い……あの子を…隼を…隼を見つけて!!!」

 

「頼まれた!!!」

 

そう言うと同時にロキは刀奈を背中に背負い、猛スピードでその場から駆け出した。猛スピードで駆け抜けている為に亡霊や怪人達でも二人を足止めする事が出来ず、中にはロキに障害物と見なされ蹴り飛ばされた怪人もいる。

 

「一哉、聞こえたか!! 刀奈の弟、湯島隼を一緒に探してくれ!!」

 

『また人探しか……まぁ良い。特徴を教えろ、じゃないと探しようが無い』

 

「刀奈、特徴は!?」

 

「あ、えっと…髪は茶色で、背が低くて、右目に白い眼帯を着けてるわ…!!」

 

「そういう事だ一哉!! 茶髪で背の低い眼帯の少年、急いで見つけ出してくれ!!」

 

『分かった、見つけ次第すぐに連絡する』

 

「おう、頼むぞ!!」

 

二百式との通信を一旦切った時、刀奈が口を開く。

 

「あ、あの……迷惑かけて、ごめん…」

 

「お前は気にしなくて良い。安心しろ……お前の弟も、俺達が絶対に見つけ出してやる」

 

「ッ……うん…!!」

 

ロキは刀奈を背負ったまま、怪人や亡霊を無視する形で道路を走り抜けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ギシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?』

 

「よぉし、これで100匹目!!」

 

『『『グルァァァァァァァァッ!?』』』

 

「…散れ」

 

海岸の灯台に登っていたFalSigは、スナイパーライフルを用いてレイドラグーンやウブメ、ギガンデスヘブンやピラニアヤミーなどを射撃し撃墜していた。その灯台の下では、awsが迫って来る怪人達を刀で次々と斬り伏せていっている。

 

「awsさーん、そっちはどうですかー?」

 

「今のところ、問題は無しだ。だが気を抜くな、何が起こるか分からんからな」

 

「OK、了解ですよっと!」

 

『グギャアッ!?』

 

FalSigはawsに対して気楽に返事しながら、飛んで来たオウムヤミーをロケットランチャーで撃墜する。その時だった。

 

「―――ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」

 

-ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!-

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉうっ!?」

 

「!? 何だ…!!」

 

突如、炎に燃えたスカイライダーが彼等のいる灯台まで墜落して来たのだ。灯台に激突した爆発したスカイライダーは変身が解けてげんぶの姿に戻りawsの目の前に落下、FalSigはスカイライダーが灯台に激突した衝撃で危うく足を踏み外しそうになる。

 

「げんぶ!? 何故お前が…」

 

「ぐぅ……二人共、気を付けろ…!! 奴は、ヤバい…!!」

 

「奴だと? どういう…ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ホウ……人間の戦士が、こンナにも存在シテいようとはなァ…?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

げんぶやawsの前に、剣を構えたアザゼルが姿を現した。その全身からはドス黒く邪悪なオーラが放たれており、げんぶやawsをその闘気だけで圧倒する。

 

「げんぶ、コイツは…!!」

 

「スカイライダーになって飛んでいる最中、奴の攻撃で撃ち落とされたんだ……並の攻撃じゃ、奴は簡単には倒せない…!!」

 

『フフフフフフ…』

 

「そぉい!!」

 

『ムッ!?』

 

ゆっくりと二人に歩み迫ろうとしたアザゼルの鎧に、ロケットランチャーの砲撃が命中。爆風でアザゼルの姿が見えなくなる中、FalSigが二人の間に降り立ち着地する。

 

「FalSig、お前の魔眼は使えるか?」

 

「それが……駄目なんです」

 

「何? どういう事だFalSig、お前の魔眼は亡霊にも効くんだろう?」

 

「それはそうなんすけど……視えないんですよ。アイツ、死の線も点も何にも視えないんです。これじゃあ魔眼の能力が通用しない」

 

「視えないだと? なら、奴は一体どういう存在なんだ―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『貴様等如キが、知る必要ナド無いだろウ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!? がはぁっ!?」

 

「「FalSig!!」」

 

爆風の中から飛び出したアザゼルが、FalSigを蹴りの一撃で灯台まで吹っ飛ばした。FalSigが灯台に叩きつけられ一撃で戦闘不能になったのを見て、げんぶとawsはすぐさまアザゼルから距離を離し、げんぶはその手に斬魄刀を出現させる。

 

「結び割れ、蜻蛉切!!」

 

げんぶの全身が一瞬で黒装束に変わり、awsも刀を鞘に納め居合いの構えを取る。そんな二人を相手にアザゼルは余裕そうに構える。

 

『死神の力を持ッテいるのか……良いだロウ、来たまエ』

 

「その余裕、何時まで持つだろうな!!」

 

ほんの数秒の間にげんぶがアザゼルの前まで接近し、その鎧を斜めに一閃する。彼の斬魄刀“蜻蛉切”の能力を持ってすれば、事象その物を割断する事は造作も無い事である。そう…

 

 

 

 

 

 

『それダケか?』

 

 

 

 

 

 

戦っている相手が、アザゼルでなければ。

 

「ッ!? 馬鹿な…がぁっ!?」

 

「げんぶ…ッ!? チィ!!」

 

驚くげんぶの顔面にアザゼルの裏拳が叩き込まれ、彼を吹っ飛ばすと同時にアザゼルの左手から放たれた黒い魔力弾をawsに放つ。awsはギリギリでそれを回避したものの、アザゼルの威圧感もあってか上手く隙を見極める事が出来ずにいる。

 

(隙がまるで見えない……私が奴の気を引く間に、げんぶ達に攻めて貰うか…!!)

 

『貴様が我の気ヲ引キつけ、ソノ隙に攻撃サセる』

 

「!?」

 

『実に単純、実ニ対処の簡単過ギル考えだナ』

 

「く…がぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

awsの繰り出した居合い斬りも回避され、代わりにアザゼルの剣がawsの腹部を斬り裂く。更にawsの血が流れる腹部を思いきり蹴りつけ、複数の魔力弾を連続で放ち容赦なく爆発させる。

 

『…ム?』

 

「我、全てを断ち、穿つ者也…」

 

アザゼルが振り向いた先で、煙に包まれたままのげんぶが言葉をブツブツと呟く。

 

「来たれ、闘尖荒覇吐(とうせんあらはばき)!!!」

 

卍解を発動し、げんぶの周囲を覆っていた煙が一瞬で払い除けられる。げんぶの身に纏う黒装束は袖、籠手、手甲、脛当が新たに装備されていた。

 

「貴様の全てを、森羅万象を、俺が断ち斬る…!!」

 

『面白い、やってみルガ良い』

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」

 

げんぶが吼え上がると共に、大地や空気が震え出す。それを感じ取って関心するアザゼルを、げんぶはその場で刃を振るい、全てを断ち斬る―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――筈だった。

 

「…え」

 

気付いた頃には、げんぶの視界は赤く染まっていた。アザゼルに全身を斬られた事で、げんぶ自身の血飛沫が宙に舞っていたからだ。

 

「ッ……あぁっ!!!」

 

『! …ホウ』

 

それでも、げんぶはその場に踏み止まった。今ここで倒れる訳にはいかない。コイツだけは絶対に倒さなければならない。そういったげんぶ自身の意思が、全身を斬られているにも関わらず彼の身体を倒れさせずにいるのだ。

 

『粘るものダナ。我からすレバ、迷惑以外の何物デモありはしなイガ』

 

「はぁ、はぁ……潰、す…!! 貴様は…何と、して…でも……俺が、断ち……斬、る…!!」

 

『ナラバ、貴様は我がこの手デ捻り潰してクレヨウ…』

 

「ッ…おぉあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

『ヌ…!!』

 

剣で斬り伏せようとしたアザゼルの鎧を、げんぶの一閃が再び斬りつける。想像以上の威力だったからかアザゼルも一瞬だけ怯んで剣を落とし、その隙を見逃さなかったげんぶは全身の痛みを耐えながら連続で攻撃を叩き込んでいく。

 

「俺はここでは死ねん!! これ以上、お前を野放しにしておく訳にはいかない!!」

 

『言うものダナ、死に損ないノ分際デェ!!』

 

「ごはぁ!? ぐ、ぅ…どぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

アザゼルが地面に右手を突っ込み、そのまま地面から禍々しい形状の大剣を出現させげんぶを一閃。吹っ飛ばされたげんぶは左腕の感覚が鈍くなっているのを感じながらも、痛みで震える両足を無理やり動かしアザゼルに立ち向かい、互いの刃をぶつけ合う。

 

「妻も…!! 娘も…!! 俺は絶対に死なせはしない…!!! 俺は貴様を倒し、あの二人の下まで帰らなければならないんだ!!!」

 

『何…!?』

 

血反吐を吐きながらも、げんぶは残っている魔力でバインドを繰り出しアザゼルを拘束。一瞬だけ出来たその隙を逃さず、げんぶは最大限まで刃に魔力を充填させる。

 

「断ち斬れ!!! 闘尖荒覇吐!!!」

 

『チィ…!!』

 

「ッ!? よせ、げんぶ!!!」

 

アザゼルは力ずくでバインドを粉砕し、大剣をげんぶに向けて振るい上げる。起き上がったawsが声を張り上げるも、両者は止まらない。

 

『オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!』

 

「うぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

互いの一撃が炸裂し、その場で大爆発が発生する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方…

 

 

 

 

 

「―――うぉわっと!?」

 

「おやま」

 

とある倉庫前まで、謎の転移で強制移動させられていたガルム。彼は慌てて積まれているドラム缶や木箱の山に突っ込み、近くで戦闘中だったキックホッパーがそれを発見する。

 

「ガルムさんですか。こんなところに来て、一人で何してるんですか?」

 

「あぁ~びっくりした……あ、竜神丸!? お前か、俺を転移させたのは!!」

 

「? 何の事ですか? 私はさっきから、そこら中の怪人共を退治するので忙しいのですが」

 

「へ? じゃあ誰が…」

 

「あなたの場合、恐らくあれが原因でしょう」

 

キックホッパーの指差した方向を見上げたガルムは、ピラミッドのような三角錐に目玉の付いた変な姿の怪物が遥か上空で浮遊しているのを確認する。

 

「…何だありゃ?」

 

「ゾーン・ドーパント、空間操作系の能力を用いて、ありとあらゆる物体を地帯から地帯に移動させる事が可能のようです。ガルムさんの場合、あれの所為でここまで転移させられたのでしょう」

 

「…よし、あのピラミッド後で撃墜してやる」

 

「まぁ、ガルムさんの弾幕ならノープロブレムでしょう……それより」

 

キックホッパーは変身を解除し、竜神丸の姿に戻る。

 

「つい先程、二百式さんから連絡がありましてね」

 

「二百式から?」

 

「えぇ。何でも、ユウナ・タカナシの元教え子が探している家族を一緒に探して欲しいとの事です。見つけたらすぐに連絡するようにとも」

 

「ユウナちゃんの元教え子? そんな子の願いまで、よく二百式が引き受けたな」

 

「正確には、引き受けたのはロキさんだそうです。大方、お人好しな部分が出ちゃったんでしょうよ」

 

「はは、ロキらしいな」

 

「まぁ問題はここからでして……実を言うと、もうそれらしき人物は見つけてまして」

 

「へ? じゃあ何で連絡を―――」

 

「それは、これを見れば分かる話かと」

 

倉庫内部に入った竜神丸が“それ”を指差し、ガルムはそれを見て表情が変わる。

 

「これは…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、海岸の灯台…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…フム』

 

禍々しい形状の大剣が、音を立てて罅割れ砕け散った。アザゼルはそれを興味深そうに見つめてから、一番最初に落とした剣を拾い鞘に納める。

 

『我ノ剣を一本でも打ち砕クトハ……人間、何時までも甘ク見て良いようナ存在デハないという事カ。恐ロシイものだ』

 

そんなアザゼルの後方では、げんぶ、aws、falSigの三人が血を流した状態で倒れていた。先程の勝負は、アザゼルが勝利したのだ。

 

『ダガ無駄な事だ。いずれはコノ世界モ、同ジように滅ビヲ迎える事になるのダカラナ…』

 

まだげんぶ達にはトドメを刺してはいない。しかしこれだけの傷を負わせておけば、彼等が再び起き上がる事は無いだろう。そう思い、アザゼルは敢えてその場から転移するのだった。

 

 

 

 

 

 

-ピクッ-

 

 

 

 

 

 

げんぶの指が、ほんの僅かに動いた事に気付かずに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪エキサイト・ナウ≫

 

「うぉりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃあっ!!!!!」

 

『『『グガァァァァァァァァァァッ!!?』』』

 

≪ドリル・プリーズ≫

 

「どぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

『シャァァァァァァァァッ!?』

 

≪スキャニングチャージ!≫

 

「セイヤァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

『『『グルァァァァァァァァッ!?』』』

 

ウォーロック、ウィザード、オーズの三人は前線に出て次々と怪人達を撃破していき、その後方からはアスナが美空と咲良を守る形で亡霊を退治していた。ちなみに守られてはいるものの咲良自身も戦ってはおり、美空に襲い掛かろうとする亡霊は片っ端から冷気で氷漬けにしている。

 

「ッ…ぐ、身体が…!?」

 

「さっきのクリームちゃんがかけてくれた魔法、効果が切れちまったみたいだな…!!」

 

「うげぇ、効果が切れた瞬間に疲労が一気に襲って来たよぉ…」

 

どうやら、クリムゾンがかけたドゥレイションの効果が切れてしまったようだ。流石の彼等も先程よりかは動きのキレが少しずつ悪くなってきており、それが影響してか怪人達の方が彼等を押し始めている。

 

「はぁ、はぁ……くそ、こんな所で…!!」

 

『『『『『グギャァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?』』』』』

 

「「「!?」」」

 

「ウル、皆、お待たせ!!」

 

「凛!?」

 

一本の矢が怪人達を纏めて粉砕し、矢が飛んで来た方向からは赤いドレス状のバリアジャケットを身に纏った凛が飛来してきた。

 

「ふぅ、やっと合流出来た……ウル達を見つけるだけでどんだけ時間がかかった事か…!!」

 

「それは良いけど、凛も早く手伝って!! コイツ等、さっきよりも数がどんどん増えてきてる!!」

 

「あぁ、それなら心配無用よ。何せ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕が駆けつけたのだからな」

 

「あら、私の事も忘れちゃ困るわよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「!!」」」」」

 

聞こえてきた声に、ディアーリーズ達は表情に笑みが戻る。

 

「ショウさん、エリカさん…!!」

 

「すまないウル君、だいぶ苦労させてしまったようだね」

 

「私達にも、いくらか手伝わせて貰うわ」

 

また二人分、強力な助っ人が参戦するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ガセロ、リントボゲンギバ……ゴロギソギ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新たなる強敵も、すぐそこまで迫って来ていた。

 


 
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