No.696304

九番目の熾天使・外伝 ~短編その⑫~

竜神丸さん

幽霊騒動その18

2014-06-24 18:51:48 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2046   閲覧ユーザー数:1092

“鍵”が上空に浮遊する、高層ビル内部では…

 

 

 

 

 

 

≪ファイナルアタックライド・ディディディディケイド!≫

 

≪イエス・シューティングストライク!≫

 

「「どぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」

 

『『『『『ギシャァァァァァァァァァァァァァッ!?』』』』』

 

ひょんな事から偶然出会ったプロトディケイドとクリムゾン。二人は互いの素性をよく知らないものの、目的や利害の一致から共闘する事となったのだ。ちょうど今、プロトディケイドの繰り出したディメンションキックとクリムゾンの放ったクリムゾンシューティングがラットファンガイアの大群を粉砕。道を塞ぐ怪人達を次々と撃退し、二人は屋上目指す。

 

「なるほどな、お前さんも魔法使いとして絶望を乗り越えた時期があるって訳か…よっ!」

 

「魔法使いとなったのは、あくまで偶然です。とにかく今は、自分にやれるだけの事をやってみたいだけって話ですよ…とっ!」

 

タランテスワーム・パープラの頭を踏み台に、二人は怪人達の包囲網を飛び越えて突破。屋上に向かう為の階段前まで進んで行く。

 

「そういや、まだ名前を聞いてなかったな! アンタ、名前なんて言うんだ?」

 

「名乗る程の者でもありません、適当にクリムゾンとでも呼んで下さいな!」

 

「あぁそうかい、じゃあそうさせて貰う!」

 

『グルァッ!!』

 

「「邪魔だぁっ!!!」」

 

『ガァァァァァァァァァァッ!?』

 

二人同時に繰り出されたキックがワイルドボアオルフェノクを一撃で粉砕。二人はそのまま階段を駆け上がって行き、扉を蹴り開けて屋上まで到着する。しかし…

 

「!? 何ですって…」

 

「ん、どうした?」

 

「…あの鎧野郎、さっきまでここに突っ立ってやがった筈なのに見当たらないんです。何時の間に移動しやがったんだあのクソポンコツ鎧野郎が…!!」

 

「OK、何があったかは知らんが落ち着け……ま、いないなら別にいないで問題ない。ボスが留守で不在だってんなら…」

 

プロトディケイドが上空を見上げる。

 

「心置きなく、あれの破壊に専念出来る」

 

「…まぁ、仕方ないですね。あれを破壊してストレスを発散しましょう」

 

≪カメンライド・オーズ!≫

 

≪イエス・スペシャル! アンダースタン?≫

 

「更に…」

 

≪タカ・クジャク・コンドル! タ~ジャ~ドル~♪≫

 

この場にアザゼルがいない以上、自分達は“鍵”を一刻も早く破壊してしまおう。プロトディケイドはプロトディケイドオーズ(以下PDオーズ)に変化し、クリムゾンはスペシャルリングの効果によって背中に赤い竜の翼―――クリムゾンウィングを出現させる。更にPDオーズは赤いコアメダルを装填し、鳥の力を司る赤きコンボ―――PDオーズ・タジャドルコンボへと変化する。

 

「んじゃ、行こっかね!!」

 

「えぇ…!!」

 

そして二人が飛び立とうとした……その時だ。

 

『トランプショット!』

 

ーズガガガガァンッ!!-

 

「「な…がぁぁぁぁぁぁっ!?」」

 

翼を大きく広げた二人の背中に、ジェネラルシャドウの放ったトランプカードが命中。飛ぼうとしていた二人は撃墜されて屋上に落下し、瞬く間にジェネラルシャドウ率いる怪人軍団に取り囲まれる。

 

『お前達に鍵を破壊される訳にはいかん、今ここで始末させて貰おうか…!!』

 

「チッ……邪魔すんじゃねぇよこのクソッタレ共がぁ!!!」

 

「口調荒くなってんぞお前……まぁ良いや、出鼻挫かれてイラッと来てんのは俺も同じだ!!」

 

『行け!!』

 

『『『『『グルァァァァァァァァァァァァァァッ!!!』』』』』

 

ジェネラルシャドウの命令と共に怪人達が一斉に動き出し、PDオーズとクリムゾンはそんな怪人達を迎え撃つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人がジェネラルシャドウ達と対峙する一方、倉庫広場では…

 

 

 

 

 

 

 

「隼……ごめんね……お姉ちゃん、助けられなかった…」

 

たった一人の弟を失い、完全に気力が消え失せてしまった刀奈。フラリフラリと無気力なまま倉庫から出て来た彼女を、偶然近くを通りかかったメ・バヂス・バが狙おうとしたが…

 

≪Solid Shooter≫

 

『グギャアッ!?』

 

「刀奈!!」

 

一発の魔力弾がメ・バヂス・バを遠くまで吹き飛ばす。そんな光景に刀奈は目も暮れず、ロキが彼女の下まで駆け寄り手を掴む。

 

「一人で行動するな!! 今から安全な場所まで送る、だから―――」

 

「離してよ…」

 

「え」

 

「ッ…離してって言ってるでしょ!! もう放っといてよ、私の事なんか!!」

 

「待てと言ってるだろ!! 今、お前を死なせる訳にはいかないんだ!!」

 

「何が死なせる訳にいかないよ!! あれだけ私達の事を助けるとか言っといて、結局隼は助からなかったじゃない!!」

 

「ッ……それは…」

 

「この嘘つき!! 私もう、誰も信じられない!!!」

 

「!? ま、待て、刀奈ッ!!」

 

ロキの手を無理やり振り払い、刀奈は一人で走り去ってしまう。ロキがその後を追いかける中、後方の倉庫からは竜神丸達がその様子を見据えていた。

 

「おやまぁ、やはり傷付いちゃいましたか。予想していた通りですねぇ」

 

「……」

 

「! 二百式、何処に…?」

 

「…キリヤの後を追いかける。あんな状況じゃ何も声はかけてやれんが……まぁ、アイツ等の援護くらいは俺にも出来る筈だ」

 

そう言って、二百式もロキ達の後を追うべく走り去って行く。

 

「…やっぱり、私も見過ごせません!!」

 

「同感だ……アル、私達も向かおうじゃないか」

 

「あなたもお人好しですねぇ、全く…」

 

先程見てしまった光景から放っておけなかいと思ったのか、みゆきとキーラも二百式と同じように後を追いかけて行ってしまい、倉庫広場には竜神丸とガルムの二人だけが残る。

 

「どれ、俺もちょっくら行くとしま―――」

 

「ガルムさん」

 

「ほへ?」

 

同じく向かおうとしたガルムを、竜神丸が手招きする。

 

「何、どしたよ竜神丸」

 

「いえ。ちょっとばかり、裏工作を手伝って貰おうと思いまして」

 

「は?」

 

「今現在のロキさん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「若干ですが、覚醒の兆候が見えたものでして」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ…」

 

ロキの手を払い、路地裏まで走り去って来た刀奈。走り続けた影響か、弟の死で気力を失った影響か、走っていた途中で地面に膝を突く。

 

「隼…」

 

刀奈は携帯電話を取り出す。その待ち受け画面には、刀奈と隼が笑顔でピースしている写真が写っていた。

 

「ッ……ごめん……ごめんね、隼…!!」

 

最愛の弟を失い、心に大きな傷を負ってしまった刀奈。その悲しみはとても振り払えるようなものではなく、彼女の目から何粒もの涙が零れ落ちる。

 

その時…

 

 

 

 

 

 

『何をそんなに泣いてるのかしら、そこのお嬢さん?』

 

 

 

 

 

 

刀奈の目の前に、鳥の特徴を持ったファントム―――セイレーンが姿を現した。突然の出現に顔を上げた刀奈はビクッと仰け反り、セイレーンはフフフと妖艶な笑みを浮かべながら刀奈が持っている携帯電話の待ち受け画面を覗き込む。

 

『あら、あなたの弟かしら? 随分楽しそうに笑ってるじゃない』

 

「え、あ…」

 

『こういう、楽しそうに笑っている写真を見たりすると…………消し去りたくなっちゃうのよねぇ』

 

「ッ!?」

 

刀奈の手から取り上げた携帯電話を、セイレーンは片手で容赦なく握り潰してしまった。セイレーンの手から携帯電話の残骸がパラパラ落ち、セイレーンの右手には槍が出現する。

 

『フフフフフ…♪』

 

「あ、ぁあ…」

 

『大丈夫よ? あなたもすぐ、その子のいる場所へ行けるわ』

 

「!?」

 

セイレーンの告げる言葉に、刀奈はハッと気付く。

 

「ま、まさか……隼を殺したのは…」

 

『あぁ、言っておくけど私じゃないわよ…………殺すよう命令したのは私だけど♪』

 

『グルルルルルルル…!!』

 

「!? ひっ…!!」

 

セイレーンの背後からはライオンオルフェノクが姿を現し、それを皮切りに周囲からゴ・バベル・ダ、ガニコウモル、サボテグロン、ジャガーロード、シールドボーダー、コダマ、ホエールイマジン、スパイダーファンガイア、バイオレンス・ドーパント、ペルセウス・ゾディアーツなどが一斉に出現。あっという間に刀奈の周囲を取り囲み、逃げ道を塞いでしまう。

 

『さぁ、死の恐怖で絶望しなさい…♪』

 

「!? おい、何してやがる!!」

 

『…チッ。面倒そうなのが来ちゃったわね』

 

「刀奈から離れろ!!」

 

刀奈を取り囲んでいたセイレーン達の前にロキが駆けつけ、セイレーンは小さく舌打ちする。そんな事など知った事ではないロキはすぐさま駆け出し、シールドボーダーとバイオレンス・ドーパントがその行く手を阻もうとする。

 

≪Long Shooter≫

 

「どけ、邪魔をするなぁ!!!」

 

『ギャァァァァァァァァァァァァァッ!!?』

 

ロキの構えたドラグノフから白い魔力弾が放たれ、シールドボーダーとバイオレンス・ドーパントを二体纏めて粉砕。そのままロキはガニコウモルを蹴りつけてサボテグロンやコダマに激突させ、一気に刀奈とセイレーンの下まで駆け抜けようとしたが…

 

『シャア!!』

 

「な…ぐぅっ!?」

 

当然、他の怪人達がそれをさせない。スパイダーファンガイアの吐いた糸がロキの足を捕まえ、ロキはバランスを崩し地面に転倒。それでもロキはすぐに足の糸をデュランダルで切断して起き上がり、飛び掛かって来たジャガーロードとホエールイマジンの攻撃を防御する。

 

しかし、ここで最悪の事態が発生する。

 

『フンッ!!』

 

≪!? バ、バディ―――≫

 

「な、ユーズ!?」

 

ペルセウス・ゾディアーツが左手から放った光線を受けた所為で、なんとロキの左腕がユーズごと石化してしまったのだ。当然石化したユーズはそのまま機能を停止し、ロキの纏っていたバリアジャケットも強制的に解除させられ普段着の姿に戻ってしまった。

 

『あらら、いつの間にか形成逆転しちゃったわねぇ?』

 

「ッ…!!」

 

セイレーンの言う通り、ロキは窮地に陥ってしまった。彼は自身のデバイスであるユーズが無ければ、攻撃魔法どころか念話すらも碌に出来なくなってしまう。そのユーズが石化してしまった為に、ロキの戦闘手段は大幅に制限されてしまったと言っても過言ではないのだ。

 

「…がぁっ!!!」

 

-バガァンッ!!-

 

『ありゃ、自分でそういう事やっちゃう?』

 

「!? ア、アンタ…!!」

 

「ッ……はぁ、はぁ…これぐらい、何の問題も無い…!!」

 

石化した左腕は何の役にも立たず、重り以外の何物でもない。それ故、ロキはその石化した左腕を自ら壁に叩き付けて粉砕した(・・・・・・・・・・・・・)のだ。当然その苦痛は半端ではないが、ロキは持ち合わせている根性でその苦痛を耐えようとしている。

 

『ヤケに粘り強いわねぇ……ま、すぐに耐えられなくしてあげるわよ!』

 

『『『『『グルァッ!!』』』』』

 

「が、ぐ……ごはぁっ!?」

 

セイレーンの合図と共に、周囲にいた怪人達がロキを容赦なく攻撃し始めた。サボテグロンとコダマがロキの顔面を殴りつけてから地面に倒し、ゴ・バベル・ダとホエールイマジンが彼の背中を力いっぱい踏みつける。更にはスパイダーファンガイアの爪がロキの顔面に命中し、彼の左頬に大きな引っ掻き傷を残す。

 

「ゲホ……どう、した…その程度かよ…!!」

 

それでも、ロキは意識を飛ばさない。全身傷だらけの状態でフラフラと立ち上がり、セイレーン達を指で挑発する。

 

「こんなもん……兄さんの、特訓に比べりゃ……屁でもねぇ、よ…!!」

 

『言ってくれるじゃない……お前達、やってしまいなさい』

 

「!? ま、待って、やめて!!」

 

『フン…!!』

 

「ぐ…ごはっ!?」

 

刀奈の叫ぶ声も届かず、ライオンオルフェノクはロキの首を掴み上げてから壁に叩き付ける。地面に落ちたロキをジャガーロードが再び起き上がらせてから殴りつけ、今度はガニコウモルが左手の鋏で追い打ちをかけようとする。

 

「させるかぁっ!!!」

 

『『『グガァッ!?』』』

 

そんなガニコウモル達を、二百式がスナイパーライフルで狙撃。ガニコウモル達が怯んだ隙に二百式が素早く転がり込み、ロキに攻撃しようとしていたホエールイマジンをゼロ距離射撃で吹き飛ばす。

 

「一哉、か…?」

 

「まだ意識はあるかキリヤ!! 待ってろ、すぐに済ませる!!」

 

棍棒を振り下ろそうとしたサボテグロンをチェーンマインで攻撃し、二百式はセイレーンと対峙する。

 

『面倒な事をするわね。私達の楽しみ、邪魔しないで貰えるかしら?』

 

「残念だったな。お前みたいな悪女の楽しみなんかに、付き合ってやる義理など無い!!」

 

『あ、そう……ならあなたも死になさい!!』

 

「断る!!」

 

ライオンオルフェノクの振るった剣を二百式が回避する中、倒れているロキの下にみゆきとキーラの二人が駆けつける。

 

「ロ、ロキさん!? どうしたんですかそれ!!」

 

「大丈夫……これくらい、全然平気…ゲホ、ゴホッ」

 

「左腕が石になって砕けてるんだぞ、どう見ても大丈夫ではないじゃないか!!」

 

「ゲホ……大丈夫、です……それより、早く刀奈を…」

 

『『『グルァァァァァァッ!!』』』

 

「な、きゃあ!?」

 

「く、邪魔をするな!!」

 

ロキに治癒魔法をかけようとしたみゆきさったが、コダマが飛び掛かって来た所為で失敗。キーラの方にはガニコウモルが襲い掛かり取っ組み合いになってしまう。

 

「ゲホ……かた、な…」

 

そんな状況でも、ロキは右手を使って何とか身体を持ち上げ、両足でその場に立ち上がる。左腕は石化して砕けており、全身は切り傷だらけで左頬には爪で引っ掻かれて出来た傷跡。その姿は何処からどう見ても大丈夫じゃないにも関わらず、ロキは刀奈のいる方向まで足を引き摺る形で歩み寄ろうとする。

 

「待って、ろ…刀奈……すぐ、助ける…」

 

「ッ…もう良い……もう良いってば!! 私の事なんか放っといて、アンタだけでも逃げなさいよ!!」

 

流石の刀奈も、死にかけてまで自分を助けようとするロキの姿はとても見ていられなかった。しかし刀奈がどれだけ叫ぼうとも、ロキは歩みを止めようとしない。

 

「絶対、助けてやる……お前、だけ…でも…」

 

『シャアッ!!』

 

-ザシュッ!!-

 

「ッ…やめてぇっ!!!」

 

そんなロキをジャガーロードが斬りつけ、刀奈の悲痛な叫び声を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!? くそ、キリヤ…!!」

 

『ムゥ…!?』

 

ライオンオルフェノクと剣の鍔迫り合いになっていた二百式。ロキがジャガーロードの攻撃を受けている事に気付いた彼はライオンオルフェノクを蹴り倒してから、ロキの方まで助太刀に入ろうとする……が、当然サボテグロンやホエールイマジンなどがそれをさせない。

 

「チィ、どいつもこいつも……ソンナニ死ニタイノカ、雑魚共ノ分際デェッ!!!」

 

『『ガァァァァァァッ!?』』

 

“無の反響”を発動した二百式は衝撃波だけでサボテグロンとホエールイマジンを吹き飛ばし、ロキを攻撃している最中のジャガーロードをライフルで狙い撃とうとする。

 

「クタバレ、クズガァッ!!!!!」

 

しかし…

 

「―――ッ!?」

 

突如、二百式の身体がガクンと倒れかけた。その所為で彼の放った銃弾はジャガーロードに当たらず、そのまま壁を粉砕してしまう。

 

「ナ、何ダ…!?」

 

両足に違和感を感じた二百式は、足元を見て驚愕した。何と自分の両足が、いつの間にか地面に沈みかけていた(・・・・・・・・・・)のだ。彼は慌てて地面から足を抜く。

 

「ナ、何ダ今ノハ…」

 

しかし、ここで気を取られたのがいけなかった。

 

『ハァッ!!』

 

「!? グ、シマ―――」

 

驚いていた二百式にペルセウス・ゾディアーツが容赦なく光線を命中させ、彼に何の抵抗もさせる事なく石化させてしまったのだ。物を言わなくなった二百式は、そのままゴトリと地面に倒れる。

 

「二百式さん!?」

 

「マズいな、このままでは…!!」

 

二百式が石化した事に気付いたみゆきとキーラだったが、コダマやガニコウモル達の妨害もあってまともに身動きが取れない。まさに万事休すだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼女達の様子を、竜神丸は陰でこっそりと眺めていた。

 

「竜神丸、お前何してんだ!! 何で二百式の妨害を…」

 

「彼には悪いですが、ここはロキさんにピンチになって貰わなきゃ困るんですよねぇ。でないとロキさんが覚醒しない」

 

「ふざけるな、いくら何でもやり過ぎだ!! 今回ばかりは見過ごせん!!」

 

「では、あなたはどうすると言うのです?」

 

「…何?」

 

ガルムに胸倉を掴まれながら、竜神丸は淡々と告げる。

 

「ロキさんが“アイオンの眼”に覚醒するのを監視し、見届ける事……これは元々、私が団長さんから任命されていた仕事です。団長の勅命に従って、何か悪い事がありますか?」

 

「おい、それとこれとは話が…」

 

「同じ話です。勅命である以上は従う他ありません……それとも、あなたは私の邪魔をしますか? それも別に構いはしませんよ? その場合はあなたが処罰されるだけでなく、あなたの知人達にも何かしら悪影響が及ぶ事になりますがね」

 

「!? まさか、幻想郷の皆まで…」

 

「理解して頂けましたか? 分かったならこの手をとっとと離して下さい。ロキさんの監視に集中出来ないでしょう?」

 

「…チッ!!」

 

納得がいかないガルムだったが、彼は舌打ちしてから竜神丸の胸倉から手を離す。竜神丸はスーツを整えてからロキの監視を再開する。

 

「さて、ロキさんはここで覚醒出来るのでしょうかねぇ? これはまた、なかなかに見物ですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『グルァッ!!』

 

「!? が、ぁ…!!」

 

「お願い、もうやめてぇ!!」

 

『アッハッハッハッハッハッハッハッ!!』

 

ジャガーロードに両足を斬りつけられ、ロキが再び地面に転倒。刀奈が叫ぶ中、セイレーンは楽しそうに笑い声を上げる。

 

『無様なものねぇ? 助けるとか言っておいて、結局はこの様じゃない。所詮、あなたも口だけだったって事かしら』

 

「言って、くれるじゃねぇか…!!」

 

『?』

 

ロキはフラフラながらも立ち上がる。

 

「ほら、どうしたよ…こんなもん…痛くも、痒くもねぇぞ…!!」

 

『そう言ってる割には、随分とフラフラねぇ……あなた、本当は立ってるのがやっとなんじゃない?』

 

「ッ…大したもんじゃねぇ……身体の痛み、なんざ…いずれ消える…………けどなぁ」

 

ロキの目がセイレーンを睨み付ける。

 

「失った物の悲しみは……心の痛みは……一生消えやしないんだよ…!! それを分かって言ってやがんのか、このクソ共が…!!」

 

『…えぇそうね。あなたの言う通り、その苦痛は二度と消えない』

 

「なら……何で、お前等は…!!」

 

『それが快楽だからよ』

 

「何…!?」

 

『家族を失った悲しみや、夢を奪われた悲しみ……そこから生み出される絶望は、より強力なファントムを生み出す糧となり得る!! だからこそ、私はこの娘を絶望に誘ってあげるのよ!!』

 

「ッ…貴様ぁ…!!」

 

「もうやめて!!!」

 

「…刀奈?」

 

セイレーンに捕まっている刀奈が叫ぶ。

 

「私の事は放っといてって言ってるでしょ!! 何で逃げないのよ!? 私が逃げろって言ってんのよ、アンタだけでもさっさと逃げなさいよ!!」

 

「ッ……言った、だろ……お前を、死なせる訳には、いかないって…」

 

「どうして逃げないの……私は死にたいのよ!? 隼だって死んだ!! アンタだって死にかけてる!! 誰かが死ぬところなんて、私はもうたくさんなのよ!! これ以上、私にアンタの事を心配させないで!!!」

 

「刀奈…」

 

『アッハハハハハハハハハハ!! あなた今、ハッキリと拒絶されちゃったわねぇ!! それでもまだ助けようだなんて馬鹿な事をほざくつもりなのかしら?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁそうだよ、助ける気満々だこのアマァッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

『…何ですって?』

 

ロキの張り上げた声に刀奈はビクッと震え、セイレーンは笑みが消える。

 

「確かに俺は……お前の弟を、助けられなかった……俺も今、身体中が痛くて…今にも倒れちまいそうだ…」

 

「だったら何で!!」

 

「見捨てられないからだよ…!!」

 

「え…」

 

「お前……ユウナの奴と、そっくりなんだよ……家族の為に、危険を顧みない……そういうところ、アイツと似ていてな……何が何でも助けたい、俺にそう思わせるんだ…!!」

 

「ッ……私、アンタの事を嫌ってるんだよ…!?」

 

「関係ねぇよ……こんなになって、でも…俺は、お前を助けてやりたい……お前に、とっての…希望になってやりたい…!! 俺は今、心の底からそう思っちまってんだよ!!!」

 

「…ッ!!」

 

刀奈の目から涙が零れ落ちる。

 

『…下らないわね』

 

「!? きゃあっ!!」

 

「刀奈…ぐぅ!?」

 

セイレーンは舌打ちしてから刀奈を突き離し、自分達の方へ歩み寄ろうとするロキを蹴り倒す。

 

『希望になってやりたいとか、指輪の魔法使い共みたいな事を言っちゃって……実に不愉快だわ』

 

セイレーンが合図を出すと、ペルセウス・ゾディアーツがロキの腹部を踏みつけ剣を突きつける。

 

『良いわ。そこまで言うんだったら、その希望をこの場で消し去ってあげるわ!!』

 

「!? 待って、やめてぇっ!!!」

 

『グルァァァァァァァァァァァァァァッ!!!』

 

ペルセウス・ゾディアーツが剣を振り上げる。

 

「ッ……俺、は…」

 

ロキの顔面に、剣の刃先が迫る。

 

「俺は…」

 

「…キリヤさぁんっ!!!」

 

刀奈がロキの名を叫ぶ。

 

「俺は…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなところで……死ねるかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロキの右眼が、金色に光り出したのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――え?」

 

目の前の光景を見て、刀奈は唖然とした。

 

『グ、ガァァァァァァァァァ…!?』

 

『!? 何ですって…!!』

 

剣を振り下ろそうとしたペルセウス・ゾディアーツも苦しみ出し、セイレーンも驚きの表情を隠せないでいた。

 

「―――!? 石化が、解けた…?」

 

離れた位置では、石化していた筈の二百式も完全に復活していた。

 

「な、何ですか…!?」

 

「あれは…!!」

 

「あれが、ロキの…」

 

「…ほう♪」

 

みゆきやキーラ、陰で様子を見ていたガルムが驚く中、竜神丸は小さく笑みを浮かべる。

 

「遂に目覚めたようですねぇ……ロキさんの、アイオンの眼が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ふぃぃ」

 

≪お待たせしました、バディ≫

 

この時、ロキの全身は金色に光り輝いていた。全身の傷やなくなった筈の左腕も元通りに回復し、機能を停止していたユーズも再起動する。

 

「…初めて、俺の名前呼んでくれたな。刀奈」

 

「キリヤさん…!!」

 

『ば、馬鹿な!? あれだけの傷が、どうして…!!』

 

刀奈が安堵の表情を浮かべる中、セイレーンは想定外の事態に今までの余裕も消え失せていた。

 

「…待たせたな、性悪女」

 

『ッ!?』

 

ロキの全身が、バリアジャケットに包まれる。

 

「見せてやるよ……極限の、希望って奴をなぁ!!!」

 

炎に燃えるデュランダルを構え、ロキは堂々と言い放ってみせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、別の場所では…

 

 

 

 

 

 

「ショウ!!」

 

「はぁ、はぁ…!!」

 

エリカが叫ぶ中、ショウは右肩を抑えながら目の前に立っている人物を睨み付ける。

 

 

 

 

 

 

『もっと見せてくれ……リントが持つ、極限の力というものを』

 

 

 

 

 

 

黒軍服の男―――ゴ・ガドル・バは、ショウに対してそう言い放つのだった。

 


 
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