No.681471

義輝記 別伝 その七 青州攻略編

いたさん

義輝記の続編です。 宜しければ読んで下さい。

2014-04-25 21:47:14 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1497   閲覧ユーザー数:1352

【 一刀の活躍 の件 】

 

〖 黄巾賊 野営地 にて  〗

 

危険だ……。 漢王朝より偽物と判断されたはずの『北郷一刀』が、

英傑の呼び名も高い『曹操』に組みすると、こうも手が付けれなくなるのか───!?

 

早く……奴らを潰さなければ、久秀様や順慶様にお仕置きを受ける羽目に……!!   

 

 ──────ん?

 

体罰は…喜んで─お受けする! 放置…あの快感をもう一度?! 

 

叱責、罵詈雑言も、ご褒美の範囲じゃないか!

 

これは、負けた方が………美味しいのか…………?

 

 

 

────いやいやいや! 

 

そんな考えより……まずは、奴らを片付けなければ────!

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

閔純「 全軍に命じる! 曹操軍を壊滅せよ!!

 

『左校』! お前に三万の軍勢を預ける! 左側の砦を必ず落とせ!

 

『大洪』! 二万の軍勢で、右の砦を攻略せよ! 

 

『白爵』! お前にも二万の兵を預けよう! あの御遣いを語る忌々しい者共を葬るのだ!!! 」

 

一同『はっ───!!』

 

 

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〖 左舌状台地 先端部 にて 〗

 

 

なだらかな傾斜が続く舌状台地。 低地との差は十数㍍しかない、守りには不向きな砦。

 

最初は度肝を抜かれた『大洪』だが、周囲を見渡しても……台地の頂上近辺を柵が囲むという簡単な防御しかしていないのを見て、三方から攻める!

 

内側から流れでている川の水は、何故か水が細く……砦を攻める事に障害とは、ならなかった。

 

しかし、何十人が斜面を登ると間抜けな悲鳴が響きわたる。

 

 

「おぉ───!?」 「うひゃぁ──!!」 

 

「ヒャアア──!」

 

 

理由は、前方に隠してあった『落とし穴』に嵌まった……莚で巧妙に隠してあったからである。  

 

本来は、曹操軍の某軍師の意見を取り入れ、英知を極めた落とし穴を用意するつもりだったのだが……嵌まっても腰ぐらいまで止まり、蛇も虫も入っていない。 

 

集める時間もなかったのは当然だが、一番の理由は……某軍師のやる気の無さがあった。 

 

『 某種馬を陥れるのなら、どんな苦労もするけど~? ただの雑兵如きに、この私の完璧にして巧妙多才な陥落技術を、どうして披露しなければならないのよ!!! 』

 

そんな秘密主義で非協力な態度のため、中途半端な落とし穴になってしまったのだ。 嵌まった者にとっては、非常に幸運だが………。

 

そんな場所を乗り越えて、砦付近まで近付いた時、声が挙がり同時に─────────

 

 

ズルッ…… ズルズル────!

 

   『────地面が動いた!?───』

 

 

**************

 

 

〖 左舌状台地 砦内 にて 〗

 

星「敵、『壱の壱』に数人侵入! 引けぇ───ぃ!!」

 

兵士達『おおぉぉぉーーーーーーーーー!!』

 

矢倉の上で、敵の様子を望んでいた星が叫ぶ!

 

その声を受けて、十数人の兵士が地面から伸びている縄を引っ張った! 地面に敷いてあるのは、長く伸びて砦外まで出ている『莚』である。 筵に紐を編み込み、筵の位置を引っ張れば、動かすように出来ている!

 

 

**************

 

 

ズズッ………! ズズッ! ズズッ!

 

 

黄巾兵「うわぁ!? なっ、なんだぁ!?」グラリ ゴロゴロ!

 

黄巾兵「ぎゃあーーーーーー!!!」 ゴロゴロ!

 

急な事でバランスを崩して、斜面を転げ落ちる黄巾兵達。

 

しかも、下には多数の黄巾兵達が集まっていた! 中には『落とし穴』に入り込んで藻掻いている者…………。 そんな所に、上から転げ落ちれば………!

 

 

ドォ───ン! 「ーーーー!」 「━━━━?!」

 

 

ズドォ──────ン! 「────────★☆★」

 

 

**************

 

 

星「まだまだ来るぞ! 『弐の四』、『弐の六』引き倒せ!!」

 

兵士『おおぉぉぉ!』  グイッ!!

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

桃香「莚は、両端と真ん中を結んで下さい! 出来ましたぁ? それで『松脂』を少し垂らして───よし、完成!」

 

兵「では、持って行きます!」タッタッタッタッ

 

桃香「本当は………こんな事に……ブンブン! うぅん! 今は、勝たなきゃ! 勝ってから考えなきゃ!!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

兵「準備出来ました!」

 

朱里「────はい! ありがとうございます!」

 

他の兵より結果報告を受け終わり、準備が終わった兵士に振り向く朱里。 指示を待つ兵士に、莚の置き場所を伝え置きに行かせる。

 

朱里「─────え~と、敵の集中している所は、どこですか?」

 

副官「はっ! 我々が、現在確認している場所では、あそことあちらの方角になります!」

 

朱里「それでは、『巻き筵』二本使用した後、木の輪切りを転がして下さい! 他に集中し始めたら、同じように蹴散らして下さい!!」

 

副官「御意!」

 

─────この後、巻かれた莚が、炎に包まれて何回か転がり込んでいき、黄巾兵の集団侵入を阻んだという────

 

 

▼▽▲  ▲▽▼  ▼▽▲

 

 

北郷一刀の計略  その参

 

《 莚返しの計 》《 火炎莚の計 》

 

 

▲▽▼  ▼▽▲  ▲▽▼

 

 

 

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〖 右舌状台地 先端部 にて 〗

 

 

兵士「敵の数が、多くなりました! 莚の付け直しが困難です!」

 

雛里「わかりました! ご主人様……いえ、一刀さんの次の計を実行する時です! 」

 

兵士「はっ!」

 

 

**************

 

 

黄巾兵「やっと、入れる───」

 

一人が砦から、斜めに突き出ている壁へ……手を掛け、少し待つ。

 

  ──────────────────

 

───何も攻撃が無い。 気付かれていないのなら、好都合。

 

下で同じように崖を登る兵達に、侵入する合図を出し、その兵は身体を持ち上げて、踊り込んだ!!

 

 

  『──────ご苦労』

 

   シュ─────ン!

 

兵士の目の前に、青い髪、片目を隠した将が、目の前に居て──その姿を確認したが最後に………意識が………暗転した………。

 

黄巾兵「!!!」

 

壁から飛び込もうとした黄巾兵達は、倒れている仲間の兵士を見て一瞬動きを止める!!

 

雛里「今です!!」

 

兵士『はっ!』 シュルリ~  パッ!!   ガタン!!

 

黄巾兵『ーーーーーーーーーー!!!』 シュ──────ン!

 

三段からなる砦の壁、一番外側の壁が………黄色兵を乗せたまま、崖下に落ちていき─────────

 

その下に集まる多数の兵を………押し潰した!!!

 

しかも、壁と壁の間に岩が多数挿入していたため、一緒に落ちて岩の雨を降らせ、黄巾兵達に出血を強いる!!!

 

▼▽▲  ▲▽▼  ▼▽▲

 

 

北郷一刀の計略  その四

 

《 赤坂、千早城の謀計 》

 

 

▲▽▼  ▼▽▲  ▲▽▼ 

 

 

 

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〖 黄巾賊 舌状台地の間 平原 にて 〗

 

こちらは、異様な熱気に覆われていた。

 

精神的に………では無く、物理的に………………。

 

平原の砦、前方には……三段の柵が、敵の侵入防止のため構築されているが、更に……その最前線の柵の手前に、井桁状で組まれた物が置かれていた。

 

全部で七つ。 どれもが松脂をたっぷりと塗り込んだ材木ばかり。

 

それが、七つとも大きな焔を出しながら、盛んに燃えている!!

 

白爵「くそぉ!! 近付いて攻める事が…全然出来んじゃねぇかぁ────!!」

 

しかも、風が向かい風だから、熱が……まともに黄巾兵達へ吹き付ける! そのため、ただでさえ……御遣いに敵対する事へ躊躇しているところを、この状態。 必然的に士気も下がる─────。

 

白爵「消そうとしても、弓で狙われるしぃ! この焚き火が消えるまで、自重しなければならないのか?!─────!! 」

 

 

**************

 

 

〖 曹操軍 舌状台地の間 平原 にて 〗

 

敵が二の足を踏んでいる頃、一刀達は準備を始める。

 

風「北郷のお兄さん? これが、本当に空を舞うのですか?」

 

『竹で補強し、四角に張った莚』を不思議そうに眺める四人の将。

 

一刀は、肯定の表すために頷き、兵士達を呼び集める!

 

一刀「『莚』に漆を塗って固めたから、風を受け止めてくれるはずだ。 二人一組になって、今から言う指示を行ってくれ!」

 

集まった兵士達に説明を始め、その間、柵沿いに黄巾兵の様子を窺う四人。 幸いにも、焚き火の熱で入り込む事が出来ず、二の足を踏んでいるため、近寄る者は居ない。

 

      チラッ  チラッ

 

鈴々「あれが空を飛ぶなんて、信じられないのだぁ!」

 

季衣「なにぉー! ちびっこは兄ちゃんの話す内容……信じてないなぁ! あれは、絶対に飛ぶんだぁ!!」

 

鈴々「にゃー! 鈴々、お兄ちゃんの事、大好きだから信用してるのぉ! だけど、あの『可笑しな物』は、何か胡散臭くて信用なんてしたくないのだぁ!!」

 

流琉「二人共、喧嘩してないで、敵を見て───!?」

 

風「ぐぅ……………」

 

流琉「───駄目ですってばぁ! 起きてください!!!」

 

風「おぉ──! 風は、一日半分を寝ないと、お化粧のノリが悪いのですよー?」

 

宝譿「お前が、化粧をしているところなんて、見たとこないぜぇ?」

 

風「………それは、言わない約束ですよぉー?」

 

 

ーーーーーーーーーーー  

 

 

一刀の説明は続く。

 

一刀「 一人がこれを持って、一人が紐を持って待機! 

 

周りから、竹串が出てるので、怪我しないように気を付けるように! そして、コレをを持つ人が柵側に残り、紐を持つ者が少し離れているんだ! 

 

柵側の者は、合図があるまで、離さないでいてくれ!!」

 

 

**************

 

 

〖 黄巾賊 舌状台地の間 平原 にて 〗

 

    

 

   シュバァ─────ン! シュバァ──ン!

 

 

白爵「なっ! なんだぁ!?」

 

炎の火勢が……少し弱まりつつ中、突如、曹操軍より飛び出し、空高く舞い踊る飛行物体が現れた! 

 

四角い形で風の力で浮き上がる───『凧』が、黄巾兵達の頭上に連なって動き回る! しかも、凧には巨大な目玉を剥き出し、舌を出した人物の顔、一刀の書いた「たいふへんもの」と揮毫した物と様々。

 

黄巾兵「て、天を飛んでる! い、今、俺を睨んだぁ!!」

 

黄巾兵「天の文字、天の言葉………やはり、偽物なんかじゃねぇ!」

 

その時、一枚の顔が描かれている凧が、火勢の弱まりで下に降りてきた。 『ギョロメの武者絵』といい表した方が、分かりやすいかも知れない。 

 

その凧の紐が、焚き火の上に重なり、風に煽られた凧が、軍勢に向かい襲いかかるように、動き始めた!!

 

黄巾兵達『うおぉぉ───! 喰われるぅぅ!』

 

黄巾兵達『逃げろぉ! 逃げるんだぁ~~!!』

 

黄巾の軍勢達は、凧に浮き出ている『顔』に驚き、逃げ惑う!

 

白爵「逃げるなぁーーーー! 鎮まれ!!! 鎮まれー『 ガーン! 』 ──────グフッ!! ガハッ! ゴホッ!!!」

 

白爵が大声を挙げて、黄巾兵達の逃走を食い止めようとするが、逆に弾き飛ばしされ、錯乱する兵士達に蹴られまくり──死亡した!!

 

 

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北郷一刀の計略  その五 

《 唐人凧 の計 》

 

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〖 黄巾賊 舌状台地の間 平原 にて 〗

 

閔純「何をしているのだ!! もういいー! 俺が直々に手を下してやる!!!!」

 

閔純は、手勢を三万を率いて攻めあげた!! 

 

だが、逃げる軍勢と鉢合わせして、進むも引くも……にっちもさっちも出来ない状態! 逃げる二万と攻める三万が混乱に拍車を掛ける。

 

 

しかも、ここで一刀が計略を仕掛けた!

 

一刀「凧の紐を持つ者は離せ! 手の開いている者は、準備してある『水』を桶で汲み出し、焚き火を消せ!!」

 

数十人の兵が、桶を手にして焚き火を消す! 

 

すると……『灰神楽』が巻き起こり、黄巾の軍勢に向かって行く!

 

黄巾兵「目がぁ、目がああぁぁぁ────!」

 

黄巾兵「見えん! 前がぁ──見えん!!」

 

閔純「どけ! ゴホッ! どっ──ゴホッ! ゴホッゴホッ!!」

 

 

▼▽▲  ▲▽▼  ▼▽▲

 

北郷一刀の計略  その六 

《 火遁 灰神楽の術 》

 

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〖 曹操軍 舌状台地の間 平原 にて 〗

 

一刀「今だ! 全員退避!! 本隊まで退却するんだぁ!!!」

 

鈴々「鈴々が殿を守るのだぁ!」

 

季衣「ちびっこに──『季衣、流琉! 手伝ってくれ!』兄ちゃん────?」

 

流琉「ここは、鈴々ちゃんに任せて! 季衣! 私に出来る事を!! 」

 

季衣「……うん、わかった! 

 

おい、ちびっこ! ………必ず、戻って来るんだぞ!? まだ、勝負が着いていないんだからな!!」

 

鈴々「…………ツルペタハルマキに言われるまでもないぞぉ! 鈴々が軽~くちょちょいのプーと、やっつけてやるのだぁ!!!」

 

一刀「鈴々! 無理しちゃダメだ! ───呼びに来るから、その時まで無事に居るんだぞ!!」

 

鈴々「わかったのだぁ! お兄ちゃん!!」

 

 

**************

 

 

〖 黄巾賊 舌状台地の間 平原 にて 〗

 

 

黄巾兵「くそ───酷いめにあったぜぇ! ………むっ!」

 

三段の柵を抜け出した黄巾兵の目の前に、鈴々が立ちふさがる!!

 

鈴々「待ちくたびれたのだぁ! この燕人張飛、自慢の丈八蛇矛で、お前達の進軍を悉く阻んでやるのだぁ! ──覚悟はいいかぁ!!」

 

 

**************

 

 

〖 曹操軍 舌状台地の間 川の源 にて 〗

 

この地に来て、最重要地点と認識し、桂花や真桜、沙和や兵達に頼んで、木枠を作成し土嚢を積み上げ作った『簡易堤防』!!

 

勿論、そのままでは堤防が、水圧で負けて決壊する恐れもあるので、一定の域に達したら、別の川に流れるように調整してある。

 

あれから、一昼夜経過したため、水もかなり溜まった。

 

と、言っても、飲料水や生活用水では無く、これこそ──北郷一刀最大の計略実行のために準備された物。

 

その場所を一刀、季衣、流琉の三人だけで訪れたのだ。 

 

一刀「季衣! 流琉! この土嚢を壊してくれ!! だけど、破壊すれば水が激しく流れ込む。 当てたら、素早く離れるんだ! 

 

それと、鈴々に知らせて、連れて逃げてくれ!!」

 

   コクリ……    コクッ!

 

流琉「それじゃ、私が土嚢を破壊します!!!」

 

季衣「じゃあ、ボクが、ちびっこに知らせるよぉ!」ダッ!

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

〖 曹操軍 川の源 にて 〗

 

 

流琉「でええぇぇりゃああぁぁ━━━━━!」

 

流琉は、愛用の武器『伝磁葉々』を振り回し、自分の身長を遥かに越える土嚢の壁に向かい、ぶち当てた!!

 

土嚢の中は、満水まで溜まった水が溢れかえっている。 勿論、土嚢の壁を突き破れば、水は───────

 

  『ドドドドオオォォォ━━━━━━━━!!』

 

急激な勢いで流れ出て────大地を水で覆っていく!!

 

流琉は当たる瞬間に、逃げの体勢に入り駆け出したが、あまりに急いでいたため、次の瞬間─────石に躓き転んでしまう!!

 

土嚢の堤防は、崩壊寸前。 早く逃げなくては、濁流に飲み込まれる! しかし、恐れで身体が硬直して動けない!!

 

流琉「キャア───『大丈夫かぁ!? 流琉!!』 に、兄様!?」

 

一段高い場所に待機していた一刀が、慌てて近寄り、流琉を抱き上げたあと、高い場所へと軽やかに移動していく!! 

 

  ヒョイ ヒョイヒョイ トン! ピョン──ン! ダン!!

 

武器も含めると、かなりの重さになるのだが、流石に毎日の鍛錬は欠かさなかったため、巧みに重心を移動させ、凸凹の斜面を駆け上る!

 

流琉「………あ、ありがとうございます………」

 

一刀「ごめんな───! 流琉が、いつも頑張ってくれているから、俺は……いつの間にか、任せっきりにしてしまったようだよ。 こんな事では………三人の兄貴分、失格だよな……」クッ!

 

流琉「いえ! 私も…兄様が居てくれるから、頑張れるのですから……あっ──────!!」

 

一刀の謝罪と後悔の言葉に、恥ずかしそうに答えた流琉は、顔を横に向けた。 その時、流れ出た水量と平地を見比べて──声を失う!

 

一刀の策は、『水を溜めて、急激に放出する事で完了する』と聞いていた。 尊敬する秋蘭からの話ゆえ、間違いは無い筈だ! 

 

そこから推測すると……『敵兵を水没させる水攻め』ではないか? そう、流琉は考えていた。 それなら、少ない味方の兵でも勝ち目はある! 水を溜めた理由も納得がいく!!

 

しかし、水は、平原に流れ込むが……深さは踝が隠れる程。 黄巾兵を溺れさせるには、あまりにも水量が足りなすぎるのではないか…!

 

しかも、これは一時凌ぎ、三方は囲まれているが、一カ所は、柵だけの準備で、堤の用意さえも……していない。 これでは、水は一刻も持たず引いてしまい、水攻めの意味が無くなってしまうだろう。

 

そうなると…今までの皆の活躍、北郷一刀の献策が無駄になり、曹操軍の敗北が決まってしまう!!!

 

そう、流琉は…悲しそうな表情を浮かべて、愛しき男を見るが……一刀の顔には、絶望や悲壮感どころか、満足げな表情を浮かべていた。

 

─────この計略を持ちかけた一刀には、この水量でも、充分成果があると信じていたのだ。 

 

何故ならば………『敵兵を溺死させる策』ではなく、『敵兵の動きを制御する策』だったのだから……………。  

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

〖 曹操軍 黄巾賊 舌状台地の間 平原 にて 〗

 

 

      ドドドドドドドド────!

 

季衣「お──い!! ちびっこ! 兄ちゃんが逃げろって!!!」

 

鈴々「うがあぁぁぁ─────って、お兄ちゃんがか!?」

 

───辺りには、鈴々に薙ぎ倒された黄巾兵が数十人、周りを数百人の黄巾兵達に囲まれている。

 

そんな中を岩打武反魔をブンブンと振り回し、数人纏めて吹き飛ばしながら、鈴々に近寄り説明する季衣。

 

そんな事で、話をしていたら…いつの間にやら、再び囲まれている。 

 

まぁ、手を止めれば……柵から通り抜け出した兵士の包囲網が出来るのは、当然の事である。 小さい身体で、身の丈の合わぬ武器を操る将など、脅威にしかならない! 

『味方なら可愛いのだがな……』と、漏れる声も聞こえそうだが…

 

鈴々「にゃ~、吹き飛ばしたいけど………鈴々、お腹が空いて力が出ないのだぁ…………………」

 

季衣「大人しくしていろ! ボクの岩打武反魔を────こうやって振り回してぇぇぇ───っ!!」

 

鉄球と鉄球を繋げる鎖をクルクルと回し、鈴々に向かって言い放つ!

 

季衣「ちびっこ! 早く、ボクの手を握れ!!」

 

鈴々「よく、分かんないけど………頼むのだぁ!!」ニギィ!

 

季衣「じゃぁ、離すなよぉ!! どおぉりゃあぁぁ─────!!」

 

季衣は振り回した鉄球を、三段程高い場所に向かい投げ出した。 それと、同時に鎖を持っていたため一緒に跳ぶ事になる!

 

       ヒュ─────ン!  グィ!!

 

季衣「ウワァ!」 鈴々「にゃぁ!!」

 

       ズドォ━━━━━ン!!

 

 

**************

 

 

〖 黄巾賊 舌状台地の間 平原 にて 〗

 

二人も同時に高みに移動し、残された黄巾兵が唖然としていたが、足下に水が溢れ返った時に慌て出した!!

 

閔純「鎮まれ!! 心配するな、三方は囲まれているが、我らが通って来た所は、開いたままだ! そのため、水はすぐさま排出されて、我らを溺れさせる事など、到底無理な話だぞ!? 

 

それに、我らの後方には、数十万の味方がいる! 囲まれて困るのは、奴らであって我らでは無い! 我らは、神の遣いの守護があるのだ! 心配には及ばぬ!!!」

 

黄巾兵「うおぉぉ! その通りだぁ────!!」

 

黄巾兵「このまま、揉み潰せぇ!!」

 

黄巾兵達は、突撃を開始する!! 約三万が奥の中腹を目指して行動する! しかし、水は───ついに、平原全体を覆い隠した!!

 

黄巾兵七 「────ウワァ!」  バアシャン!! 

 

黄巾兵八 「馬鹿野郎! 何を転けていやがる!」

 

黄巾兵七 「な、何か、足に引っかかって……………!」

 

黄巾兵八 「積み倒れでもしたら、身動きが取れなくなるぞ!!」

 

黄巾兵七 「す、すまん!」

 

それから、四半刻(約30分)かけて進むが、後少しで中腹だというのに、黄巾兵達は疲労困憊の様子で、ゼェゼェ言いながら進んで行く。

 

いくら、水位が足の踝までと言っても、普段の平地を歩くのと訳が違う。 しかも、動く事に地面が掘られ泥と化す! それが足に余計な疲労を与え、動作を鈍くさせ、到着時間を更に延長させる。

 

そして、また疲労が蓄積される……の悪循環。 

 

今更、戻る事も出来ず、先に進むしかない黄巾兵達!! 

 

最後は、身体が徐々に動かなくなり、足運びもかなり遅く、武器を持つ手も下に垂れ、ただただ前に向かって進むのが、目的になってしまっていた様子。

 

 

─そして、ようやく……目的の砦の足下に、たどり着いた結果は!!

 

 

    ザァ───!!

 

 

そこには、曹孟徳率いる本隊が待ち構えていた!!!

 

 

華琳「待っていたわよ! 青州黄巾賊の者共! 我が物顔に兗州を暴れ回った報い、今こそ受けてみよ!!  

 

───そこに見える牙門旗は、青州黄巾賊を率いる総大将か!

 

お前さえ討ち取れば、百万の兵士いえど烏合の衆!! 我が軍を寡兵と侮った事────後悔するがいい!!!

 

───────全軍、この機会を逃がさず、討ち取るのだ!!」

 

曹兵『オオォォォ──────!』

 

     ━━━━ドドドドオオォォォ!!

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーー━

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

一刀の計略第二段になります。 

 

う─────ん、一刀の策謀が軍師並みに凄くなりましたが、一応教科書からの知識です、と言うか………して下さい。

 

一夜城、水攻め、赤坂、千早城は、歴史マニアの方なら、ご存知だと思います。

 

颯馬と一刀の策の違いは、颯馬は自分自身で編み出した戦術を多様する。 一刀は、本等で知った策を、殆どそのままで使用している違いになります。

 

また、よろしければ読んで下さい。

 

 

 


 
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