No.661244

ランドシン伝記 第17話

ヴィルと聖騎士ミリトの決闘は幕を下ろした。
しかし、一方で、聖騎士エリーはクオーツを
止めるため、剣を抜くのだった。

2014-02-07 16:31:40 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:130   閲覧ユーザー数:128

 第17話  護衛民

 

 聖騎士エリーの闘気に、周囲の白百合-騎士団の隊員達は

畏(おそ)れを感じていた。

クオーツ「それは、本気で言ってるのですか?」

 と、クオーツは困ったふうに言った。

エリー「はい。皇子殿下・・・・・・。なにとぞ、なにとぞ、反逆者と

    行動を共に、なさらないでください」

 と、エリーは剣を構えながら言うのだった。

ミリト「ま、待て、エリーッ!お前、自分が何をしているか」

エリー「分かっておりますッ!皇子殿下に剣を向けた時点で

    死を覚悟しております」

 そう言って、エリーは手首を斬った。

 エリーの左手からは-おびただしい血が、こぼれだした。

エリー「皇子殿下。皇子殿下が強い決意でククリ島へと

    赴(おもむ)かれようと-しているのは、分かります。

    ですが、皇国に忠誠を誓う聖騎士として、

    それは、それだけは絶対に、許す事が出来ません。

    故に、力づくで止めさせて頂きたく存じます」

クオーツ「・・・・・・聖騎士エリー。頼むから手当(てあて)をしてくれ。

     いや、何を言っても無駄か・・・・・・。分かった。

     決闘だ。その血が尽きる前に、君を倒し、俺は

     先を進むよ」

エリー「私の心配は-ご無用。この決闘の勝敗が-どうであれ、

    私は命を捧げる所存で御座(ござ)います」

クオーツ「・・・・・・重いな。それが、聖騎士の覚悟か。

     なら、俺も真剣に-かかろう。ヴィルさん、

     使わない方の剣を貸してください」

ヴィル「は、はい」

 そう言って、ヴィルは安物の剣をクオーツに渡した。

クオーツ「行きます」

 そして、クオーツは一気にエリーへと剣を振った。

 それに対し、エリーは-その大きな体に似合わず、俊敏(しゅんびん)な

動きを見せ、次々とクオーツの剣を弾(はじ)いていった。

 その死闘を見て白百合-騎士団の面々は、唖然(あぜん)とした。

ミリト(馬鹿な・・・・・・。何て速さだ。これが、エリーの本当の

    実力?気付かなかった。これだけ離れて居ても、動き

    を目で捕らえきれない)

 と、ミリトは半ば放心しながら思うのだった。

 周囲を大量の火花が散っていった。

クオーツ「クッ・・・・・・」

 流石(さすが)のクオーツも一級の聖騎士-相手では、苦戦していた。

 すると、何かが白百合-騎士団の方へと飛んできた。

女騎士「何・・・・・・これ?」

 そして、頬を拭(ぬぐ)うと、それは血だった。

 エリーの血が周囲に-まき散っているのだった。

女騎士「ヒッ」

 と、女騎士は叫びをあげるのだった。

クオーツ(マズイ・・・・・・早く戦いを終わらせないと、エリー

     さんの体が・・・・・・仕方無いッ)

 そして、クオーツは一旦(いったん)、エリーから距離を取った。

 一方で、エリーは血を大量に流しながらも、唇を噛(か)み、

意識を保(たも)っていた。

クオーツ「・・・・・・俺が甘かったです。本当の本気で行きます」

 そう言って、クオーツはヴィルからもらった剣を地面に-

突き立て、背中の自身の剣を抜き放ち、魔力を通すのだった。

 その剣は-あまりに神々しく、並の剣では無いと-その場の

誰もが感じた。

 対して、エリーは魔力を全開にして、最上級-剣技を構築した。

 それに対し、クオーツは-ただ、肉薄し、剣を振るった。

 次の瞬間、エリーの最上級-剣技と、その剣は砕けた。

エリー「ッ・・・・・・」

 エリーは自身の敗北を悟り、力なく両膝(りょうひざ)を地面に着いた。

 クオーツは-ゆっくりと剣を鞘(さや)に収め、エリーの方を

向き直った。

 誰もが言葉を発せ無かった。

エリー「無念です。皇子殿下が死地に向かわれるのを見ている

    事しか出来ぬなど・・・・・・」

 と、言うのだった。地面には血だまりが出来つつあった。

 それを見て、クオーツは悲しげにエリーを見つめた。

クオーツ「・・・・・・分かりました。俺の負けです。ククリ島に

     行くのは諦めます。ヴィルさん、申しわけ-ありま

     せん。俺は、そっちには行けません」

 と、クオーツはヴィルに対し、言うのだった。

ヴィル「いえ。その優しさこそが皇子殿下の美徳です。確かに、

    皇子殿下が来て下されば、百人力どころでは無いで

    しょうが、我々も戦士です。自分達の力だけで、何とか

    やってみます」

クオーツ「旅の安全を願っています。ヴィルさん、それに

     ヒヨコ豆-団の皆さん」

 と言って、クオーツは胸に手を当て、敬礼した。

 それに対し、ヴィル達も敬礼を返すのだった。

クオーツ「ともかく、手当(てあて)を」

 そう言って、クオーツは包帯を取りだし、エリーの手首に

巻いた。

エリー「お、皇子(おうじ)殿下、お止め下さい」

 と、エリーは-うろたえるのだった。

 そして、騎士団の治癒(ちゆ)術士が駆けつけ、治療を開始した。

 それを軽く見届け、ヴィルは背を向けた。

ヴィル「さぁ、行こう。旅は-これからが本番だ」

 とのヴィルの言葉に、トッセ達は『オオッ!』と答えるのだ

った。

 その様子を聖騎士ミリトは見ている事しか出来なかった。

ミリト(負けた・・・・・・完全に私は負けた。私じゃ手の届かない

    領域の騎士達が、これ程まで存在するなんて。何より、

    エリー・・・・・・。お前、お前が-それ程、強かったなんて。

    滑稽〈こっけい〉だな。あぁ、滑稽だ、私は)

 と思い、ミリトは天を仰(あお)いだ。

ミリト「フフッ、フハハハハッ。アッハッハッハッハ!」

 と、乾いた笑いをあげるのだった。

エリー「ミリト様?」

 と、治療を終えたエリーが心配そうに声を掛(か)けた。

ミリト「エリー・・・・・・。聖騎士エリー。以後の指揮は-お前が

    とれ・・・・・・」

エリー「で、ですが・・・・・・」

ミリト「私は疲れた・・・・・・。ふ、フフフ」

 と、言うミリトの瞳には-どこか狂気が感じられた。

エリー「・・・・・・了解いたしました。カレーヌ分隊は、ミリト様の

    護衛の任につけ。伝令隊は急ぎ、状況を最寄りの-

    ケセラ支部へと伝えよ。残りは第3守護陣を皇子殿下を

    中心に展開。急げッ!」

 とのエリーの命令に、白百合-騎士団は迅速(じんそく)かつ規律正しく

従った。

 そして、クオーツを囲うような陣が出来上がった。

エリー「全体ッ、半歩で、前へ進めッ!」

 との号令で、騎士団は規則正しく、足を上げ、ゆっくりと

進むのだった。

 

 ・・・・・・・・・・

 夜の海を灯台からの光が照らしていた。

 その光は漁船や貨物船が座礁(ざしょう)しないように

導いているのだった。

 そして、その灯台の上に、一人の杖を持った女性が立っていた。

女性「風・・・・・・風の声が聞こえる。あの人が-やって来ると」

 と、呟(つぶや)くのだった。

 そして、女性は目を瞑(つむ)った。

女性「ヴィルさん・・・・・・」

 との女性の-か細い声は、誰の耳にも届かぬまま、夜の海に

消えていった。

 

 ・・・・・・・・・・

 ヴィル達は夜の道を歩いていた。

トゥセ「団長・・・・・・しかし、なんか、パーティが-どんどん

    むさくなっていく気がするんすけど」

ヴィル「はは、まぁ、楽しくていいじゃないか」

トゥセ「でも、そろそろ女性も増えていいと、思うんす」

 すると、カシムが口を開いた。

カシム「そうだ。トゥセさんは知らないと思いますけど、

    ケシャさん-は女性ですよ」 

 と言って、カシムは茶猫のケシャを見た。

トゥセ「あ・・・・・・そうですか・・・・・・」

ケシャ「ちなみに、陛下も女性です」

 と、茶猫のケシャは口を開き説明した。

ヴィル「あ。ケット・シー陛下も女性だったんですか」

ケシャ「はい。とても-お美しいです」

 と、頷(うなず)いて言うのだった。

ギート「しかし、猫がしゃべるというのも、不思議なモン

    じゃな」

 と、ドワーフのギートは言うのだった。

ケシャ「普段は-しゃべらないように、しています。

    私が-ただの猫と思わせておいた方が、

    後々、役立つ事も-あるでしょう」

アーゼ「はぁ・・・・・・。良く考えているんですね」

トゥセ「ところで、団長。港町で漁船を-どうやって、調達

    するんです?」

ヴィル「実は港町クーリカに知り合いが居るんだ。風守(かざも)り-の」

アーゼ「風守り-って船が無事に港に着くように、監視している

    ヒトですよね?」

ヴィル「ああ。獣魔-大戦の折り-に知り合ってな」

トゥセ「へぇ、まぁ、どうせ、ゴツイおっさん-なんでしょ?

    今までの流れから行くと」

ヴィル「いや、当時、15だったから、今は27か、そこらだと

    思うぞ」

トゥセ「あ、そうすか」

アーゼ「トゥセ。風守りって、ほとんど女性だぞ」

 とのアーゼの言葉に、トゥセは耳をピクつかせた。

トゥセ「団長ッ。なんすか、それ。おかしいですよね?

    そ、そんな知り合いが居るなんて。し、しかも

    出会いが、15?は、犯罪ですよ、これ」

 と、トゥセは全身を震わせながら、ヴィルに詰め寄った。

ヴィル「別に、お前が思ってるような事は、何も無いって」

トゥセ「嘘だッ。俺の第六感がビンビン反応してますよ。

    団長、実は結構、もててるんじゃないっすか?」

ヴィル「いやぁ、そんな事、無いと思うけどなぁ」

 すると、ドワーフのギートが口を開いた。

ギート「ふ。ヴィル殿はなぁ、我が祖国、ストルヘイブにては、

    大モテじゃったのだぞ」

トゥセ「うう。いいなぁ、団長・・・・・・」

ヴィル「い、いやぁ、まぁ、そういう事もあったけど」

トゥセ「どうせ、その風守りの女の子も、獣魔-大戦で格好良く

    現れた団長に、惚(ほ)れて、今もなお、団長を待ち続けて

    いる、とか-そういうオチなんすよ。かー、やってらん

    ないっすよ、ほんと」

ヴィル「・・・・・・トゥセ、お前の想像力は結構、すごいな」

トゥセ「あ、ども」

アーゼ「トゥセ、多分、褒(ほ)められて無いぞ・・・・・・」

トゥセ「うるせぇ、自覚させんな。しかし、団長、それ、

    やばいですって。絶対、俺達に協力して-くれま

    せんよ。ガチで」

ヴィル「どうしてだ?」

トゥセ「だって、憧れのヒトを、ククリ島なんて危険な所に

    行くのを見過ごす事なんて、きっと出来ませんよ」

アーゼ「確かに。トゥセ、お前、彼女居ない歴が実年齢の

    割に、女心が分かってるかもな」

トゥセ「うっせぇ!」

ケシャ「でも、恐らく、その可能性は-ありますね。その場合、

    むしろ、最大の敵となる可能性すら-ありますよ」

 と、茶猫のケシャの言葉に、ヴィルは頭をかいた。

ヴィル「いや、でもさ。12年前の話だし、そもそも、すごい

    綺麗な子でさ、そんな子が、そんな長い間、俺を好き

    でいるなんて、あり得ないと思うんだよなぁ。

    いや、そもそも、何で俺に惚(ほ)れてる設定なんだ?」

トゥセ「分かってない。分かってませんよ、団長ッ!俺には

    分かります。今でも、その風守り-ちゃんは団長を

    待ち続けてるんですよ、きっと」

アーゼ(彼女いないのに、妙な説得力があるんだよなぁ。

    まぁ、俺も彼女-居ないけど)

 と、思うのだった。

カシム「何か、泣けて来ますね」

ヴィル「いや、あのさ。お前ら、考え過ぎじゃないのか?」

トゥセ「でも、団長、安心してください。万一、戦う事になっても、

    団長が『一緒に来てくれ、愛してる』って言ってチュウす

    れば、絶対、付いてきますよ」

 それに対し、茶猫のケシャも大きく頷(うなず)いていた。

ヴィル「はいはい・・・・・・。ともかく、先を進むぞ。夜のうちにな」

 と、ヴィルは先導するのだった。

 すると、先に灯りが見えた。

ヴィル「止まれ・・・・・・」

 とのヴィルの言葉に、皆は立ち止まった。

ヴィル「トゥセは俺と一緒に偵察だ。他のみんなは-ここで待機

    しててくれ」

 との指示に全員が了解した。

 そして、ヴィルとトゥセは気配を殺し、様子を伺(うかが)い

に行くのだった。

 そこには護衛民の検問(けんもん)が存在した。

 護衛民とは自治組織であり、一種の警察機構のようなモノ

であった。ただし、その役割は、モンスターの掃討なども-

入っており、かなりの実力者も居るのだった。

 

トゥセ(うわ・・・・・・嘘だろ。あいつら、メチャクチャ、強い

    んじゃねぇの?ってか、マジでやばい。これ以上、

    近づいたら、ばれる。どんなに気配-隠してても

    ばれる・・・・・・)

 と、トゥセは背筋を凍らせながら思うのだった。

 そんなトゥセの心情と裏腹(うらはら)に、ヴィルは草むらから出て、

護衛民に近づいていった。

トゥセ(団長ーーーーッ!)

 と、内心、叫びをあげるも、トゥセは-その場で見ている事しか

出来なかった。

 護衛民もヴィルの存在に気付き、抜刀した。

 しかし、ヴィルが話しかけると、雰囲気(ふんいき)が変わり、彼らは

剣を収(おさ)めた。

ヴィル「トゥセ、大丈夫だ。来ていいぞ」

 とのヴィルの言葉に、トゥセは『へ?』と、ポカンと口を

開けるのだった。

 しかし、ヴィルの言うとおり、トゥセも草むらから出てきた。

 そして、ヴィルとトゥセは護衛民にテントの中へと連れられて

行くのであった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 


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