No.661503

ランドシン伝記 第18話

護衛民のレイヴンの協力を得たヴィル達。
一方、そのレイヴンは奇妙なビジョンを
見るのであった。

2014-02-08 06:56:51 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:165   閲覧ユーザー数:164

 第18話  聖女

 

 ヴィルとトゥセはテントの中で護衛民の隊長であるレイヴン

と向き合っていた。

ヴィル「・・・・・・お久しぶりです。教官」

 とのヴィルの声にレイヴンは精悍(せいかん)な顔をほころばせた。

レイヴン「教官か。懐かしいな。とはいえ、お前やローの面倒を見たのも、

     せいぜい、半年くらいだろう?」

ヴィル「はい。そうでした・・・・・・」

レイヴン「しかし、お前達は本当に優秀だったよ。特に-お前は

     最年少で聖騎士の資格を得た。いや・・・・・・剣聖を-

     除いてだが」

ヴィル「運が良かっただけです」

レイヴン「運だけで聖騎士になど-なれるモノか。もっとも、

     最近では、コネさえあれば簡単に聖騎士になれる

     ようだがな・・・・・・。嘆かわしい事だ」

トゥセ「あ、あのー・・・・・・」

 と、トゥセは-おずおずと声を出した。

レイヴン「ん?何だ?」

トゥセ「ええと。何で助けてくれるんですか?」

レイヴン「はは、単刀直入だな。だが、戦場では必要な事だ。

     まぁ、単純に言えば、昔のよしみかな。それにだ。

     俺はヴィルに大きな借りがある。こいつは俺の-

     故郷を守ってくれた。港町のクーリカを」

トゥセ「な、なる程・・・・・・」

レイヴン「しかし、良く俺達が味方だと分かったな」

ヴィル「いえ。遠目から、あれが教官の部隊だと分かりました。

    ただ、もし、教官が本気で俺達を捕まえようとする

    なら、灯りなど点(つ)けるワケが無いと思ったんです」

レイヴン「なる程。確かに、その通りだ。まぁ、ともかく、

     簡潔に事情を話してくれ。そっちのダーク・エルフは

     他の仲間達に-その場で待機するよう伝えておくと良い」

ヴィル「トゥセ。そうしてくれ」

トゥセ「あ、はい」

 そして、トゥセはヴィルの指示に従い、テントを出て行った。

レイヴン「さて、話してくれ。お前が何を思い、反逆者と

     なったかを」

ヴィル「はい。実は・・・・・・」

 そして、ヴィルは事情を全て説明した。

 それに対し、レイヴンは真剣に聞き入り、頷(うなず)いていた。

ヴィル「というワケなんです」

レイヴン「なる程。大体の事情は把握した。フッ、しかし、

     お前は-いつも、変な道を行(ゆ)くな、ヴィルよ」

 とのレイヴンの言葉に、ヴィルは罰が悪そうに頭をかいた。

ヴィル「すみません・・・・・・」

レイヴン「いや、褒(ほ)めているんだ。お前の理念は俺も頷(うなず)ける。

     まぁ、ゴブリンどもが憎くないかと言われれば、

     憎いとしか言いようも無いが。しかし-だ。

     確かに交戦規定は守るべきだ。そう、たとえ相手が

     ゴブリンであろうと、非戦闘員を攻撃するのは良くない。

     何故なら、もし、それをすれば、ゴブリン達も発狂して、

     反撃してくるだろうからな」

ヴィル「はい・・・・・・」

レイヴン「俺は正直、皇国とゴブリンが仲良くしている未来を

     思い描く事は出来ない。しかし-だ。戦争が最も効率

     の悪い外交であるとは認識している。いたずらに、

     ゴブリンを殺し、憎しみの種をまき、新たな戦争を

     巻き起こすのは、皇国にとりも、良くない。

     俺は-そう思うよ」

ヴィル「はい・・・・・・」

レイヴン「もし、お前の言う事が正しければ、ゴブリンの姫は

     人間やエルフを憎む事は無いだろう。彼女が生きている

     内くらいは、戦争が起きづらくなるかも知れない。

     もっとも、ククリ島への侵攻の結果しだいでは

     あるがな」

ヴィル「はい・・・・・・」

レイヴン「そう暗い顔をするな。俺だって素直に、ゴブリンと

     ヒトが仲良くするのは良い事だとは思う。

     頭の中じゃ分かってるんだ。しかし、腹の底には

     落ちてかない。やはり、仲間がゴブリンに殺され

     ているしな。とはいえ、だ。それでも、それが、

     正しいとは思うワケだ。だから、お前達に協力を

     しよう」

ヴィル「ありがとう-ございます」

レイヴン「いや、いいんだ。さっきも言ったが、お前には借りがある。

     大きな借りがな。少しは借りを返させろ」

ヴィル「すみません・・・・・・」

レイヴン「謝るな。ともかく、時間を稼いでやる。それと、

     部隊から一人、信用できる男を貸してやる。

     ただし、そいつはククリ島へは連れて行かないで

     くれよ。俺の右腕なんだ」

ヴィル「分かりました」

レイヴン「良し、なら早速、とりかかろう。善は急げだ」

 そう言って、レイヴンは部下を呼びに行くのだった。

 

 そして、レイヴンは一人のガタイのいい男を連れてきた。

レイヴン「こいつはザンフだ。寡黙(かもく)だが、良いヤツだぞ。

     こいつに道案内と船の手配をさせよう」

ヴィル「ありがとう-ございます」

レイヴン「しかし、ヴィルよ。お前も運が無いな。

     あの獣道、主な道は一本だが、少し外れれば

複雑に入り組み、追う事は出来なくなる」

ヴィル「もう少し、早く道を外れているべきでした」

レイヴン「だが、裏目に出てしまったな。あの道を聖騎士の

     お嬢さんに教えたのは俺なんだ。ずいぶんと、まぁ、

     あっさりと信じてくれたよ」

ヴィル「聖騎士ミリトの事ですか?」

レイヴン「ああ。もっとも、あれを聖騎士とは呼びたく無い-

     がな。まぁ、才能は-あるから後、十年ほど鍛えれば

     少しは-まっとうになるだろうが」

ヴィル「相変わらず、手厳しいですね」

レイヴン「それが仕事だったからな。特に、お前やローを

     育てた後では-なおさらだ」

ヴィル「そ、そうですか・・・・・・」

レイヴン「フッ。しかし、聖騎士ミリトか。あれは危(あや)ういな」

ヴィル「と言いますと?」

レイヴン「生真面目(きまじめ)すぎる。ああいう手合(てあ)いは、戦場ですぐに

     壊れるぞ。もしくは正義に殉(じゅん)じ、クーデターでも

     起こすようなタイプだ」

ヴィル「まさか」

レイヴン「いや、俺の勘は当たるぞ。もしかしたら、彼女は

     いずれ世に名を残すかもな。しかし、それは偶像

     としてだろう。たとえば、聖女として、とかな」

ヴィル「はぁ・・・・・・?」

レイヴン「まぁいい。まぁ、戦術書でも言うだろう?

     有能な怠(なま)け者は指揮官に、無能な働き者は

最前列に出せと。お前は前者だな」

ヴィル「そ、それは光栄です」

レイヴン「まぁいい。とはいえ、辛口になってしまったが、

     俺としても聖騎士ミリアは嫌いでは無いんだぞ。

     むしろ、可愛(かわい)らしいと思うがな」

ヴィル「教官の好みですか?」

レイヴン「どうかな?ただ、放っておけない儚(はかな)さが-あるな。

     ただ、あれはジイさん-うけするだろうなぁ。

     聖騎士のジイさん達の好みだろうさ」

ヴィル「はは。かもしれませんね」

レイヴン「まぁ、悪い子じゃ無いんだろうさ。悪い子では。

     だからこそ、タチが悪いんだがな・・・・・・。

     さて、つい長話になってしまったな。

     名残(なごり)は惜しいが、お別れだ。

     生きろよ、ヴィル」

ヴィル「はい。教官こそ、お気を付けて」

レイヴン「誰にモノを言ってる。まぁ、いいさ。ザンフ、

     任せたぞ」

 との言葉に、ザンフは無言で頷(うなず)いた。

ヴィル「では。行って参ります」

レイヴン「ああ」

 そして、ヴィルとザンフはテントを出るのだった。

レイヴン「フッ。しかし、何も変わってないな、あいつは。

     とはいえ、俺の運命も-どうなってしまう事やら」

 すると、レイヴンの胸が不自然に高まった。

 そして、レイヴンの脳裏にビジョンが浮かんだ。

 それは白銀の鎧をまとい、偽(いつわ)りの聖十字をかかげ、人々を

導く-壮麗(そうれい)なミリトの姿だった。

 その後ろをレイヴンと部下達が、誇り高く付き従っていくの

だった。

 しかし、その道の先は髑髏(どくろ)と血にまみれており、骨の山と-

血の池の中、冷たく、暗い霊気が立ちこめるのだった。

 さらに、景観は一転し、美しい泉の前でレイヴンは血まみれ

のミリトの肢体(したい)を抱きかかえていた。

 泉の底へ、幾千の灯火にも勝る輝きを放つ-精霊より

 賜(たまわ)りし-宝剣が帰っていく情景。

 その果てに、レイヴンの意識は現実に戻った。

レイヴン(今・・・・・・のは。俺の婆さん-は呪〈まじな〉い士で先読みの力

     を持っていたが、まさか・・・・・・な)

 と、レイヴンは不思議な予感の中、思うのだった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 


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